Coolな芸術を求めて 作:COOL!
まだやられてないのか・・・?
あなたは、
一口にヴィランと言いましても、いろんなタイプがいますね。
窃盗を繰り返すもの、快楽殺人鬼、戦闘狂・・・。
わたしはその中でも、猟奇殺人犯というやつに分類される敵なのです。
しかし、わたしは殺しを楽しんでいるわけではありません。
あくまで“素材”として使った結果、死んでしまうだけですから。
“cool”な作品のためには、人命など些細なものです。
同じような考えを持つ同志は世界中にいますよ?
KUNIEDA様、ギャシュリー様、ブレイディ様・・・。
まあ、今名前を挙げた方々は全員、もれなくタルタロスにいらっしゃるのですが。
KUNIEDA様は植物と死体を、ブレイディ様は拷問の様子を収めたテープを専門分野にしておられます。
ギャシュリー様は・・・気分を悪くされるかもしれませんので、やめておきましょうか。
そしてわたしは、人体の組み換えを専門分野にしています。
あなたのような楽器にするだけでなく、椅子や机などの家具にもできるんですよ?
・・・さて。これであなたも、立派なピアノの仲間入りです。
ちょっと弾いてみましょうか・・・いい音ですね。
では、最後に1つ。
Are We Cool Yet?
都市伝説、というものをご存知だろうか。
口裂け女、八尺様、テケテケ・・・。
国や地域によって、様々なものが存在している。
この世界における都市伝説の1つに、『黒いドレスの女』というものが
『黒いドレスの女』は、その名の通り黒いドレスを着た女で、大人・子供問わずに攫ってしまうらしい。
路地裏を1人で歩いているとき。
家で留守番しているとき。
彼女はどこにでも現れる。
そして攫われた人は、生きたまま芸術作品の材料にされてしまうという。
長い間、都市伝説として子どもたちに恐れられてきたそれは、どうやら実在しているらしいということが、近年明らかになった。
発端は日本のとある廃ホテルで発見された、人体を素材とした机。
調査が進むにつれ、恐ろしい事実が次々明らかとなる。
人間からかけ離れた姿となったそれの死因は餓死。
机に“加工”された時点では生きており、放置されたことで死に至ったと判明した。
解剖の結果、内臓の配置や骨の形状がめちゃくちゃになっているものの、栄養を与えていれば問題なく生存していた可能性があることも発覚し、世界を震撼させた。
マスコミはこの事件の犯人を『黒いドレスの女』だとし、大々的に報道した。
その後、中国で赤子を素材にした置き時計が、アメリカで男女16人の体を素材とした帆船が発見される。
これらも死因は餓死であり、アメリカで発見されたものに至っては16人が1つの生命として機能していたらしい。
こうして『黒いドレスの女』は、都市伝説から『どこかに潜んでいる凶悪敵』へと変化したのである。
「・・・ふふっ、今日も“素材”がたくさんですね」
こんばんは。
わたしは、アルティステと名乗っている者です。
『黒いドレスの女』とも呼ばれていますね。
私は今、近所の森に“素材”となる動物を集めに来ています。
普段の作品には人間を使っていますが、小物を作るのに大人は大きすぎますし、胎児はそうそう手に入りませんからね。
「鳥はもうこのくらいでいいでしょう。次は蛇でも・・・あら?」
集めた鳥を個性で結合させ、ひとかたまりにしていると、なにやら焦げ臭い臭いがしてきました。
「火事でしょうか・・・?」
ヒーローが来れば厄介ですし、今日は早めに帰りましょうか・・・ね・・・?
「・・・ガスですか。これは本格的に不味そうですね」
地中からガスが漏れたという可能性もありますが、明らかにこれは通常の気体とは動きが違いますね。
つまりこれは、個性によって操作されているものだということ。
わたしを狙うヒーローの仕業であれ、わたしのことを知らない敵であれ、危険であることは明白です。
「『潜影』で逃げましょうか・・・」
影に潜り込もうとしましたが、なぜか潜り込めません。
「・・・あらあら」
わたしの
もっとも、体の6割以上が隠れていればよいのですが。
「おい、あんた!」
背後から声をかけられる。
若い声・・・まだ10代でしょうか?
「両手を上げて、ゆっくりこっちを向け!」
指示に従って振り向くと、ガスマスクを着けた男女が立っていました。
少年の方は肌に金属光沢が見られ、
「・・・なんでしょうか」
「あんたが、このガスを操ってる敵か?」
・・・なんだか目の前が歪んできましたね。
「・・・いいえ」
「なら、なんでこんな所にいるんだ!」
「野生動物の収集ですよ、ほら」
結合を解除すると、集めた鳥達が一斉に飛び立ちました。
「おわっ!?」
2人が鳥に気を取られ、わたしから目がそれました。
「では、失礼・・・」
視線がわたしから逸れたことで『潜影』が発動。
体が影に沈み込みます。
「なっ・・・」
「逃がすか!」
金属の手がこちらに届く前に、わたしの体は完全に影の中へ沈みました。
「ふう・・・。なんとかなりましたね」
拠点に戻ったわたしは、ベッドに座り込んで一息ついていました。
「・・・あの子の腕、治しておきましょうか」
そして、彼の腕にかけた個性を解除しました。
彼らが何者なのかはわかりませんが、個性の痕跡を残したくはありませんからね。
「はぁ・・・集まった材料はこれだけですか」
集めた鳥の大多数は気をそらすのに使ったため、持ってこられたのはたった4羽です。
最低3羽いれば作れるので、まあよしとしましょう。
翌日。
テレビをつけた私は衝撃を受けました。
なんと、我々AWCYの名誉会長を務めるオール・フォー・ワン氏が、オールマイトに敗北し逮捕されたというのです。
それだけならまだしも、わたしにとってもっと衝撃的だったのは次の発表です。
『今回の林間合宿襲撃犯の中に『黒いドレスの女』と見られる敵の姿があったことが、関係者への取材で明らかになりました。その敵の似顔絵がこちらで・・・』
「これは・・・まずいことになりましたね・・・」
わたしのことは『何もしないで逃げた変な敵』くらいに考えてくれていればいいと思っていましたが、そううまくは行きませんよね。
ジリリリリン!
突然、黒電話が鳴り響きました。
「はい、もしもし」
『もしもし、会長。ニュースはご覧になりましたか?』
ああ、この人でしたか。
彼女の名はレクター。
AWCYの中でも古参メンバーで、専門分野は料理。
先日いただいた『各国16歳少女ハム詰め合わせ』は非常に美味しかったですね。
「・・・ええ。厄介なことに『素晴らしい機会ですね』・・・はい?」
嫌味ですか?
『会長ほどの偉大な芸術家が、世間に知られぬままでいるなどもったいない。これを期に、メディア露出を解禁しては?』
「そんなことをすれば捕まるでしょう!?創作活動ができなくなるなんて、わたしは嫌です!」
AWCYの幹部で現在逮捕されずに残っているのは、わたしとレクターの2人だけ。
オール・フォー・ワン氏もいない今、我々を援助する勢力はなく、ヒーローや警察との抗争に突入するのは望ましくありません。
『大丈夫ですよ。会長の作品は、裏社会では高値で取引されていて人気があります。「支援したい」との申し出もたくさん来ていますよ?』
初耳ですね。
わたしの作品を理解してくださる方がたくさんいるというのは、非常に喜ばしいことなのですが・・・。
「しかし・・・」
『現状、AWCYの存在を知っているのはごく一部です。会長が表に出て宣伝してくだされば、きっとAWCYに加わりたいという同志達が現れますよ!』
ふむ・・・なるほど。
我々の“cool”が世間に広まれば、いつの日か堂々と作品制作ができるようになるかもしれませんね。
「・・・いいでしょう。なるべく人が集まるイベントに、襲撃をかけて宣伝しましょうかね」
『でしたら、来週パリで開かれる国際サミットを襲撃しては?テレビも来るでしょうし、話題性は抜群ですよ?』
警備は厳重でしょうが、『潜影』があれば意味を為しません。
「いいですね・・・。我々の“cool”を、全世界に届けましょう」
1週間後。
各国代表が集まる国際サミットにて、事件は発生した。
「・・・故に、国際社会の連携が必要で──」
コツ、コツ、コツ。
背後から聞こえてきた足音に、スピーチをしていた日本の首相が振り返る。
そこには、真っ黒なドレスを着た美女が立っていた。
「な、なんだね君「ちょっと失礼」
女が首相の肩に触れた瞬間、体がねじれ、地面に崩れ落ちる。
「きゃあぁぁぁぁ!」
会場から悲鳴が上がる。
警備のヒーロー達が女を取り押さえようとするも、体が動かない。
なぜなら既に下半身が大きく歪み、同じく歪み始めた会場の床と絡み合っていたからだ。
「えー、会場の皆様。そして中継を見ている全世界の皆様。はじめまして、わたしはアルティステという者です」
混乱する会場をよそに、女はテレビカメラに向かってスピーチを始める。
「わたしは『黒いドレスの女』としても知られていますね。人間を素材として──」
床に転がっている首相に手で触れると、その体がめちゃくちゃに歪んで変形し、箪笥のような形になった。
「──こんな作品を作っています。わたしたちは“cool”な作品を求めて活動する団体、AWCYです」
建物の歪みが大きくなり、全体がねじれ始める。
「わたしが会長を務めるAWCYは、“cool”を求める方であればどなたでも大歓迎です」
もはや人としての原型をとどめていない会場の人々から、うめき声が上がる。
変形を続ける会場に取り込まれ、ひとかたまりにされていく。
「今回の作品は、わたしが作った物の中でも最大級の大きさです。皆様、ぜひご覧ください」
カメラも歪み始め、音声しか聞こえなくなる。
「では、わたしはこのへんで。Are We Cool Yet?」
AWCY・・・アルティステが初代会長にして創始者。coolな作品のためには法律は無視。元ネタは「要注意団体 AWCY』で検索すれば出る
個性『変形』自分の触れたものを自由に変形させる。『伝播する変形』の域に到達しているが、自分から離れるほど変形の細かいコントロールができなくなる。
『潜影』影に潜り、他の影に自由にワープできる。ただし影 に潜るときは体の6割以上が他者の視界から外れていなければならない。オール・フォー・ワンからもらった個性。