Coolな芸術を求めて   作:COOL!

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かわいそうなオール・フォー・ワン・・・
やっぱかわいそうじゃねえなこれ。


緋色の終局

「オール・フォー・ワン。聞こえていますか?」

 

「ここは・・・」

 

僕の目の前に広がっているのは、真っ暗な空間。

そこにアルティステだけが立っていた。

 

「ここはあなたの精神世界ですよ。こういう場所、以前も来たことがあるでしょう?」

 

「なるほど・・・しかし、なぜ君がここにいるんだい?」

 

首飾りの効果は、人格の制御を行うものだと言っていたが・・・。

 

「わたしを管理者として置くことで、人格を制御するんですよ。あ、ここでの時間は外とはリンクしてないので安心してください」

 

「ふむ・・・つまり君は、アルティステのコピーというわけだね」

 

「はい」

 

僕が言えたことではないが、簡単に自分の人格を複製するとは・・・

 

「ところで、あなたは本来どうやって死柄木の肉体を完全に乗っ取る気だったんですか?OFAを奪取した後は彼の人格を完全に消すと言っていましたが・・・」

 

「ああ、それかい。いいよ、ちょっと見せてあげよう」

 

そして僕は、僕がどうやって弔を作り上げたのかの記憶を見せた。

アルティステはそれをずっと黙って見ていたが、記憶を見終わると突然笑い出した。

 

「ふふふ・・・ははははっ!」

 

「どうだい?面白かっただろう?」

 

「ええ、そうですね!わたしと同じ手段(・・・・・・・・)を取ったところが特に面白かったですよ!」

 

「何・・・?」

 

僕と同じ手段?

彼女も誰かの体を乗っ取ったと言う事か?

 

「わたしも育成ゲームをやっていたんですよ・・・魔王(・・)のね」

 

「は・・・?」

 

魔王の、育成?

それはつまり・・・。

 

真っ暗だった空間に、映像が映し出される。

それは、娼婦か何かに話しかけている人物の視点だった。

 

『大丈夫ですか?脱水症状を起こしているようですね・・・これを飲んでください』

 

視点が変わる。

そこに映し出されているのは、見覚えのある女。

 

『並子さん、例のウイルスの研究は進みましたか?』

 

『ああ、これは素晴らしいぞ!感染した生物に超常的な力を与えるウイルス・・・しかも、世代を重ねるごとにその力は増す!見たまえこの最強のミジンコを!』

 

『なるほど、連中が隠したがるわけですね・・・これがあれば、作品の材料確保には苦労しなくて済みそうです』

 

『個性』を世界中の人間に発現させたのは、なんと彼女達らしい。

そうなると、彼女は僕よりずっと年上だと言う事になる。

 

「・・・個性が病気であるという説は、本当だったというわけか」

 

「ええ。ですが、これで終わりではありませんよ?」

 

更に場面が移り変わり、AWCYの幹部たちが集まった場面になった。

 

『皆さん、異能にはもう慣れましたか?』

 

『・・・問題ない。血を浴びれば浴びるほど力が湧く。素晴らしい』

 

ギャシュリー、KUNIEDA、平峰並子、如月瑞稀。

現在と全く同じ面子だ。

 

『私達全員で、世界を巻き込んだ大作を作りましょう。世界のすべてを手中に収めんとする魔王・・・しかしその人生は、すべて作られたものであった・・・“cool”でしょう?』

 

『そのために、変異した異能をあらかじめ与えておいた兄弟がいます。まだ腹の中ですが、彼らを上手く誘導しましょう』

 

「・・・馬鹿な」

 

僕の人生が、すべて作られたものだったと?

野望も、個性も、全て。

そんな馬鹿な、と否定したい。

しかし実際に、僕はそうして弔を作り上げたのだ。

 

『彼に反抗する者たちと、弟の方を引き合わせましょう。英雄は仲間と共に魔王を討つものです』

 

さらに場面が切り替わり、あの時の映像が映し出される。

 

『力を受け渡す異能・・・いいですね!他者から奪った力と、他者から受け継いだ力の対決です!』

 

僕が与一を失ったのも、全てこいつらの差し金だったのか。

 

「お前が・・・僕から与一を奪ったのか」

 

「与えたのもわたしですよ。全ては、わたしの掌の上。あなたの全ては(All)“cool”のために(For One)。」

 

「ふざけるな!」

 

真っ暗だった空間が崩壊していく。

「僕」が崩れて失われていく。

 

「さて、そろそろお別れの時間ですね」

 

「アァァァルティステエェェェェッ!!!」

 

アルティステの方へ手を伸ばすが、既に腕は崩れ落ちていた。

嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁぁっ!!!

 

「さようなら。愚かで哀れな魔王もどき」

 

最後に聞こえたのは、そんな言葉だった。

 


 

「どうやらうまくいったようですね、わたし」

 

「ええ。あんな嘘(・・・・)に騙されるとは・・・」

 

こんにちは。

わたしは今、『AFO』を奪い取ったところです。

 

「一体何が起こっている?」

 

ヒーロー側は、何が起きたかわからないようですね。

まあ無理もないでしょう。

 

「さすがの魔王も、精神まで無敵ではなかったということですよ」

 

精神を破壊する猛毒。

まず相手の記憶を読み取り、そこから精神へ攻撃を仕掛ける『毒』を作成。

それで元の人格を破壊し、宝石に保存されたわたしの人格で上書きする。

それが、あの首飾りの仕組みです。

 

「死柄木弔は?」

 

「オール・フォー・ワン氏の話した内容で、精神がやられたようですね・・・もうどこにもいませんよ」

 

ふむ・・・まあ、彼のことはどうでもいいです。

世界をめちゃくちゃにするのは構いませんが、何もなくなるのは困りますしね。

 

「それでは、全てを貰いましょうか」

 

死柄木(わたし)は『AFO』を使用。

その体に蓄えられた全ての個性を、コピーしたわたしの人格ごと本体であるわたしに移しました。

 

「ほう・・・これが『AFO』ですか。実に素晴らしい力・・・“cool”ですね」

 

抜け殻になった死柄木の肉体を放り投げ、ストックされている個性を確かめます。

ふむふむ・・・これだけの個性があれば十分でしょう。

計画通り、最終目標の達成は叶いそうです。

 

「では、わたしはこれで」

 

「待て!」

 

迫りくるヒーロー達に向けて傘を開き、『潜影』を発動。

無事、KUNIEDA様達の元へ帰還しました。

 

「ただいま帰りました。中期目標、達成です」

 

「おお!やりましたね会長!」

 

『AFO』の回収に成功した今、わたし達の達成すべき目標はただ1つ。

 

「“cool”を妨げ得る全ての排除。つまり・・・AWCY構成員以外からの個性剥奪(・・・・)です」

 

今ヒーローを鏖殺しても、いずれ新たなヒーローが現れるでしょう。

そもそも、世代を経る毎に強力かつ複雑になっていく個性問題は、いずれ解決しなくてはなりません。

 

せっかく作った作品達を、地球ごと破壊されてはたまったものじゃないですからね。

 

「皆さん、ちゃんと『祝詞』は読みましたね?始めますよ」

 

『部位複製』+『身体拡張』+『翼』+『変質超再生』!

 

背中から口が沢山ついた翼を生やし、それを猛烈な速度で拡張します。

地球全土を包み込むような、巨大な翼を。

 

『テレパス』×4+『電波ジャック』×4+『拡声』×4!

 

世界中に、確実に届けましょう。

今のわたしであれば、『あの世界』を介して他者に干渉できますからね。

 

「あかしけ やなげ 緋色の鳥よ くさはみ ねはみ けをのばせ」

 

 

その日、全人類が『緋色の世界』に招かれました。




アルティステ(コピー)がオール・フォー・ワンに見せた記憶はほぼ全て捏造されたもの(『個性』ウイルスを撒き散らしたのはガチ)。
オール・フォー・ワンの精神を弱らせるために、首飾りが作成した。
たとえオール・フォー・ワンが捏造だと気付いても精神世界に入り込まれた時点で手遅れであり、5分以内に精神が上書きされていた。


根底から覆された個性社会。『最高のヒーロー』を目指す彼らの未来は!?
次回、最終話『新世界』
デュエルスタンバイ!
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