Coolな芸術を求めて 作:COOL!
この世界には、禁忌とされる言葉があります。
差別的な意味を持つものであったり、不吉なものを連想させたり・・・。
しかし、それらとは次元の違う『禁忌』もあるのです。
口に出してはいけない、知るだけで害になる言葉。
「ふむ。もはや忘れ去られ、人知れず朽ち果てるのを待つだけ・・・そのような前時代的禁忌にこそ、私の求める“cool”はあるのさ!」
と、熱く語るこちらの方。
彼女は『日本生類開発局』の創始者にしてトップ、
『禁忌と禁断こそ、人類の進歩へのヒント!どんどん暴いて行こう!』という思想を持ち、倫理的タブーにも余裕で踏み込む愉快な人物です。
非常に優れた頭脳の持ち主ですが、完成した作品をばら撒いては効果を試し、うっかり人類を滅ぼしかねない危険人物。
今回の作品もそうですが、ばら撒く前にわたしがチェックし、わたし達に害を齎さないようにしてからばら撒くことになっています。
彼女の専門分野は『禁忌』。
見てはいけないもの、知ってはいけないもの、隠さねばならないもの。
「いや〜、キツかった。『祝詞』を原文のまま書いちゃ意味がない。でも、『目印』としての役割を果たすようにしなくちゃならない。この調整で被検体を何人使ったか!」
また補充しなくては、と彼女は言いました。
今回の『禁忌』は、『精神を貪る緋色の鳥』。
しかしそれ自体は我々の作ったものではなく、遥か昔から存在する超常の存在。
わたし達はそれに繋がる『祝詞』を活用しただけです。
「最近はこの手の『禁忌』もめっきり減ってしまった・・・。この世の不可思議は『誰かの個性』で片付いてしまうからねぇ」
「実に悲しいことです・・・」
科学技術の発展と共に、人類が失ったもの。
未知への恐怖と、自分達の力が及ばぬものへの信仰。
それは人々が個性という『力』を手に入れたことで、より一層喪失が進んでいます。
「今回の作品が、それを取り戻すきっかけになるといいねぇ」
ねぇ、知ってる?
〇〇神社の境内に、赤い鳥の像があるんだって。
ねぇ、知ってる?
いつからあるのか、なぜそこにあるのかわからないんだって。
ねぇ──
「・・・っ!」
またこの夢だ。
最近、同じ夢をずっと見ている。
誰かが私に語りかける夢。
とある神社についての噂話だ。
「はぁ・・・。やっぱり、行ってみたほうがいいのか?」
俺はブログを趣味で書いている。
その中でこの夢のことを書いたところ、読んだ人達からその神社へ実際に行くことをおすすめされた。
「赤い鳥・・・ね」
地図を見てみると〇〇神社というのは実在するようで、自宅から5km弱の所にあるらしい。
特に曰く付きの心霊スポットというわけでもなく、ただ山の中にある神社だ。
「・・・よし。行ってみるか!」
幸い今日は日曜日で、特に用事もない。
天気もいいし、ちょっと歩いて行ってみよう。
「ふう、ふう・・・」
長い石段を登り終え、ようやく神社に辿り着く。
本殿は崩れかかっており、荒れ果てた廃神社という感じだ。
「・・・廃神社って、行っちゃ駄目なんだったか」
神を祀っている所が荒れると、良くないものが集まってくるとかなんとか・・・。
「ふっ、くだらない迷信だな」
馬鹿馬鹿しい。
神なんぞ人の作り上げた幻想に過ぎない。
人は死んだらそこで終わりだし、祈ったところで神は来ないのさ。
俺が見た変な夢も、誰かが話していた噂話か何かを覚えていただけだろう。
ただ、『赤い鳥の像がある神社』の話なんて、聞いたことないんだがなぁ。
「・・・まじかよ、あったぞ」
神社の境内を見て回っていると、崩れかかった本殿の真裏、そこに赤い鳥の像があった。
今にも飛び立ちそうな赤い鳥。
鶴なのか、鷲なのか、烏なのか、よくわからない姿をしている。
「ほほう・・・。こいつは不気味だなぁ・・・ん?」
像に近づいて見てみると、台座に何か文章が刻まれている。
「あかしけ・・・やなげ・・・緋色の鳥よ・・・くさはみ・・・ねはみ・・・けをのばせ・・・」
『けをのばせ』は『毛を伸ばせ』だろうか。
『緋色の鳥』以外はひらがなで刻まれていて、非常に読みづらい。
かろうじて読めたのはそこだけで、下はかすれて読めなくなっていた。
「・・・変な文章。詩か何かか?」
おおかた大昔の誰かが詠んだ歌か何かだろう。
歌の情景をイメージして、この像を作ったってところか。
「なーんだ、つまんねーの」
そして、俺は神社から立ち去った。
「・・・あ?どこだここ」
目が覚めると、見知らぬ場所に立っていた。
空は赤く、地平線の向こうまで草原が広がっていた。
「どうなってんだ、こりゃ」
俺は確かに、ベッドに入って眠りについたはずだ。
寝てる間にどっかに攫われた?
いや、夢だろうか。
「・・・うおっ、なんか飛べるぞ」
突然、体がふわふわと浮かびだした。
これは夢だな、確実に。
「うおっ、すっげぇー!」
自由に飛び回れることに、テンションが上がる。
俺の個性は空を飛べるようなものじゃないから、新鮮な体験だ。
「うっひょー!楽しー!」
体が風を切る感覚を楽しんでいると、
『██████!』
「あ・・・え・・・?」
叫び声と共にやって来たそれは、いともたやすく俺の体を引き裂く。
悲鳴をあげることもできないまま、俺は意識を失った。
「・・・はっ!?」
そこで目が覚める。
そうだ、夢じゃん。
「ったく、あの像のせいで変な夢を・・・」
そこで俺は気づいた。
ここがあの赤い草原であることに。
「なんだ・・・まだ目が覚めてなかったのか」
さっきはとんでもないのに襲われたな。
神社で見た像に影響を受けて、あんなのを見ちまったんだろう。
『██████!』
「はっ・・・?」
あいつの鳴き声がした。
なんだよ、また来やがったのか?
「来てみやがれ・・・今度は捕まら『████!』
飛び上がって逃げようとしたが、一瞬で近づいた
「がっ・・・」
体の中が熱い。
メキメキと音を立てて、体中の骨が折れる。
声を上げそうになるが、口から溢れるのは血液だけだ。
「██████!」
自分の内臓が潰される音を聞きながら、俺は意識を失った。
「・・・くそっ、ど『██████!』
もう嫌だ。
あれから何度殺されたのかわからない。
あいつが来て、殺される。
そしてまた、草原で目覚める。
ずっと、死に続ける。
『██████!』
死ぬたびに、あいつが現れるまでの間隔が短くなる。
100回死んだあたりで、目覚めた瞬間に襲われるようになった。
(誰か!誰か助けてくれ!)
悪夢は、未だ覚めない。
「うわ・・・なんだこりゃ」
部屋の扉を開けた刑事が顔を顰める。
その部屋は赤黒く染まり、猛烈な腐敗臭が漂っていた。
「で?仏さんの死因は?」
「栄養失調・・・飲まず食わずで
そう言って捜査員が目をやったのは、壁一面に血で書かれた文章。
「あかしけ やなげ 緋色の鳥よ くさはみ ねはみ けをのばせ・・・」
「どういう意味だ?さっぱりわからんな」
指から溢れる血でこの文を書いていたらしく、遺体の肉は削れ、骨まで見えていた。
強い執念を感じられるが、何を伝えたかったのかさっぱりわからない。
「・・・ここ。最後の一行だけ、違う文がありますね」
その意味不明な文章の最後には、一際大きな文字で書かれた一文と、奇妙な『鳥』の絵があった。
緋色の鳥よ 今こそ発ちぬ
今回の元ネタ・・・SCP444JP
読み上げると、幻覚の世界で鳥に食べられる文章・・・だった。
えさをやるな
知るな
閉じ込めろ
・・・詳しくは本家記事を見よう。
本作では、とある場所に封印されていた『祝詞』をAWCYが発見し、改良を加えて作品とした。
『赤い鳥の像』に刻まれた文章を見たものは、幻覚の世界に囚われ未来永劫『鳥』に喰われ続ける。
ついでに『像』には、夢を見せて人を引き寄せる性質がある。
本家と違い幻覚からの脱出手段はなく、肉体は衰弱死するまで『祝詞』を書き続ける。
書き写された『祝詞』にも同様の効果がある。
「じゃあ主人公たちはなんで無事なんだ」という話であるが、実は『赤い鳥の像』に刻まれているのは『祝詞』の全文ではなく一部。
本来の『祝詞』の内容は、「声に出して読み上げることで、『緋色の鳥』が対象を認知し、襲わなくなる」ものである。
しかし、『赤い鳥の像』に刻まれたものやそれを書き写したものはその断片、しかも『認知してもらうための目印部分』であるため、当然襲われる。
もしインターネット上に公開された場合、AWCYの構成員以外は全滅するだろうが、それはそれで“cool”なのでいいらしい。
・・・ちなみに、自分が『緋色の鳥』に認識された場合、『祝詞』は赤い文字で書かれているように見えるらしい。