Coolな芸術を求めて 作:COOL!
「素晴らしい光景ですね・・・」
双眼鏡の向こう、崩壊する街を眺めながら、わたしはポツリと呟きました。
今回の作品は最初、『蝗害』をコンセプトとしていました。
全てを食い尽くしながら移動する、生きた災害。
しかし、いくらバッタがいようと虫は所詮虫。
コンクリートに囲まれて暮らす人類にとって、さして脅威にはなりません。
そこでわたしは、もっと人々の嫌悪感を煽り、さらに恐怖を抱かせるものを作り上げました。
文明の破壊者たる、暴食の化身を。
わたしの育てたレタスを台無しにした、忌々しい巻貝を。
「あぁ・・・実に“cool”!」
呑み込まれる。
人も、建物も、なにもかも。
「・・・ははっ」
助けに来たヒーローは、ついさっき呑まれた。
車で逃げてた人達も、押しつぶされた。
「こんなの、どうしようもないじゃん・・・」
ビルの屋上に一人で避難した私は、地上で蠢く
小さな建物は押し潰され、大きな建物は基礎を食われて崩壊する。
ここが崩れるのも時間の問題だ。
「私に、空を飛べるような個性があればなぁ・・・」
私の個性は、『光合成ができる』というもの。
光と水さえあれば何ヶ月でも籠城できるけど、建物が食べられちゃうんだから意味がない。
「きゃあっ!?」
そんなことを考えていると、突然建物が大きく傾き、空中に放りだされた。
ナメクジが基礎を食い尽くしたのだろう。
「あぁ・・・」
ナメクジの中に落っこちて死ぬなんて、嫌だなあ。
そんなことを考えながら目を閉じ、私はナメクジの海に落ちていった。
「うひゃっ!?」
誰かに抱きかかえられる感触。
目を開くと、大きな翼を持つ誰かが、私のことを掴んでいた。
その姿はまるで、神話に出てくる天使のようだった。
「天使・・・さま・・・?」
そんなことを呟いて、私は気を失った。
「ふむふむ。絶体絶命のピンチに駆けつけるヒーロー、それもまた“cool”!」
私は今、双眼鏡で救助の様子を観察しつつ、ポップコーンを食べています。
建物の屋上に取り残された人々を、赤い翼を持つヒーローが次々と救出しているようです。
あれはおそらく、ホークスというヒーローでしょう。
作品の方は、飛行機から塩か何かを撒いて対処している様子。
「・・・このままやられてしまうのはつまらないですね。少し、妨害しましょうか」
憎きアレをモチーフにしているとはいえ、「今回の作品は大したことなかったな」とは思われたくないですからね。
愛用している黒の日傘を手に取り、わたしは準備体操を始めました。
「こんにちは、ホークス」
「!?」
崩壊する超高層ビル内へ移動し、『潜影』を解いて即座に奇襲。
ビルを変形させ、ホークスに攻撃を仕掛けます。
しかしそこはトップヒーローと言うべきか、翼で粉々に砕かれました。
「まだまだです!」
ビルと接している地面を変形させ、地上のナメクジをホークスに向けて放り上げました。
当たれば死ぬレベルの速度ですから、回避するか撃ち落とすしかありません。
羽を手に取り、迎撃を選択するホークス。
「それは悪手でしょう?」
スピードが落ちた瞬間を狙い、ビルを変形させて攻撃を仕掛けます。
今度は、わたし本体も同時に。
ガキン!
「あら、思っていたより硬いですね」
変形させたビルは飛んできた羽に砕かれ、突き出した傘はホークスが手に持っていた羽で受け止められました。
「しかし、それも想定内」
傘を変形させて引き伸ばし、ホークスの右肩を貫きました。
「くっ・・・」
「あらあら」
翼でわたしを吹き飛ばし、距離をとるホークス。
・・・こうも計算通りに行くと、なかなか爽快ですね。
「よいしょっと」
飛び散った瓦礫を変形させ、わたしが乗ってきた足場と繋げます。
わたしが乗った途端に崩れ始めますが、完全に崩落する前にジャンプ。
その先にいたのは──塩をばら撒いていた飛行機。
ナメクジに塩が当たるように、高度を下げたのが仇になりましたね。
ただのジャンプでは距離が足りないので、右腕を変形させて引き伸ばし、傘で胴体部分を貫きました。
「今回は・・・花にしましょうか」
変形させた右腕を元に戻すと、体が飛行機側に引き寄せられます。
そして、左腕で直接タッチ。
変形して薄く引き伸ばされた飛行機は、折り紙の要領で折り曲げられ、花の形になって落下しました。
当然、それに掴まっていたわたしも落下します。
「ふう・・・ちょっとした運動も、たまにはいいものですね。次回も“cool”な作品をご覧に入れますので、ご期待ください」
「待て!」
こちらを追いかけてくるホークスに向け、傘を開く。
これで『潜影』の発動条件は満たされましたね。
「では、またいつか。Are We Cool Yet?」
今回の元ネタ・・・SCP030JP
石油製品を食ってめちゃくちゃ増えるカイコガの幼虫。
単為生殖もできる上に、一度に300個以上卵を産む。やばい。
やっぱり日本生類総研作。詳しくは本家記事を見よう。
本作では石油製品ではなくコンクリートを食べ、カイコガではなく人間サイズのナメクジになっている。
アルティステの家庭菜園をナメクジが荒らしたことから、ナメクジが採用された。
素材となったのは、個性『ナメクジ』『悪食』『成長促進』の3人。
アルティステが去ったあと、残っていた個体はエンデヴァーに全部焼却された。
AWCYの作品群が、人間を素材にしていることは既に知れ渡っている。
可能であれば保護することが推奨されているが、今回のように極めて危険かつ大きな被害を出した作品は“破壊”が許可されている。
AWCYの作品に対する各国の方針は、材料とされた人の人権を考慮し、
確保(Secure)
収容(Contain)
保護(Protect)
となっている・・・表向きは。