Coolな芸術を求めて   作:COOL!

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ナメクジを許すな!


作品No.030

「素晴らしい光景ですね・・・」

 

双眼鏡の向こう、崩壊する街を眺めながら、わたしはポツリと呟きました。

 

今回の作品は最初、『蝗害』をコンセプトとしていました。

全てを食い尽くしながら移動する、生きた災害。

 

しかし、いくらバッタがいようと虫は所詮虫。

コンクリートに囲まれて暮らす人類にとって、さして脅威にはなりません。

そこでわたしは、もっと人々の嫌悪感を煽り、さらに恐怖を抱かせるものを作り上げました。

 

文明の破壊者たる、暴食の化身を。

わたしの育てたレタスを台無しにした、忌々しい巻貝を。

 

「あぁ・・・実に“cool”!」

 


 

呑み込まれる。

人も、建物も、なにもかも。

 

「・・・ははっ」

 

助けに来たヒーローは、ついさっき呑まれた。

車で逃げてた人達も、押しつぶされた。

 

「こんなの、どうしようもないじゃん・・・」

 

ビルの屋上に一人で避難した私は、地上で蠢くナメクジの海(・・・・・・)を見ていた。

 

小さな建物は押し潰され、大きな建物は基礎を食われて崩壊する。

ここが崩れるのも時間の問題だ。

 

「私に、空を飛べるような個性があればなぁ・・・」

 

私の個性は、『光合成ができる』というもの。

光と水さえあれば何ヶ月でも籠城できるけど、建物が食べられちゃうんだから意味がない。

 

「きゃあっ!?」

 

そんなことを考えていると、突然建物が大きく傾き、空中に放りだされた。

ナメクジが基礎を食い尽くしたのだろう。

 

「あぁ・・・」

 

ナメクジの中に落っこちて死ぬなんて、嫌だなあ。

そんなことを考えながら目を閉じ、私はナメクジの海に落ちていった。

 

「うひゃっ!?」

 

誰かに抱きかかえられる感触。

目を開くと、大きな翼を持つ誰かが、私のことを掴んでいた。

 

その姿はまるで、神話に出てくる天使のようだった。

 

「天使・・・さま・・・?」

 

そんなことを呟いて、私は気を失った。

 


 

「ふむふむ。絶体絶命のピンチに駆けつけるヒーロー、それもまた“cool”!」

 

私は今、双眼鏡で救助の様子を観察しつつ、ポップコーンを食べています。

 

建物の屋上に取り残された人々を、赤い翼を持つヒーローが次々と救出しているようです。

あれはおそらく、ホークスというヒーローでしょう。

 

作品の方は、飛行機から塩か何かを撒いて対処している様子。

 

「・・・このままやられてしまうのはつまらないですね。少し、妨害しましょうか」

 

憎きアレをモチーフにしているとはいえ、「今回の作品は大したことなかったな」とは思われたくないですからね。

 

愛用している黒の日傘を手に取り、わたしは準備体操を始めました。

 

 

 

 

 

「こんにちは、ホークス」

 

「!?」

 

崩壊する超高層ビル内へ移動し、『潜影』を解いて即座に奇襲。

ビルを変形させ、ホークスに攻撃を仕掛けます。

 

しかしそこはトップヒーローと言うべきか、翼で粉々に砕かれました。

 

「まだまだです!」

 

ビルと接している地面を変形させ、地上のナメクジをホークスに向けて放り上げました。

当たれば死ぬレベルの速度ですから、回避するか撃ち落とすしかありません。

 

羽を手に取り、迎撃を選択するホークス。

 

「それは悪手でしょう?」

 

スピードが落ちた瞬間を狙い、ビルを変形させて攻撃を仕掛けます。

今度は、わたし本体も同時に。

 

ガキン!

 

「あら、思っていたより硬いですね」

 

変形させたビルは飛んできた羽に砕かれ、突き出した傘はホークスが手に持っていた羽で受け止められました。

 

「しかし、それも想定内」

 

傘を変形させて引き伸ばし、ホークスの右肩を貫きました。

 

「くっ・・・」

 

「あらあら」

 

翼でわたしを吹き飛ばし、距離をとるホークス。

・・・こうも計算通りに行くと、なかなか爽快ですね。

 

「よいしょっと」

 

飛び散った瓦礫を変形させ、わたしが乗ってきた足場と繋げます。

わたしが乗った途端に崩れ始めますが、完全に崩落する前にジャンプ。

 

その先にいたのは──塩をばら撒いていた飛行機。

ナメクジに塩が当たるように、高度を下げたのが仇になりましたね。

 

ただのジャンプでは距離が足りないので、右腕を変形させて引き伸ばし、傘で胴体部分を貫きました。

 

「今回は・・・花にしましょうか」

 

変形させた右腕を元に戻すと、体が飛行機側に引き寄せられます。

そして、左腕で直接タッチ。

 

変形して薄く引き伸ばされた飛行機は、折り紙の要領で折り曲げられ、花の形になって落下しました。

当然、それに掴まっていたわたしも落下します。

 

「ふう・・・ちょっとした運動も、たまにはいいものですね。次回も“cool”な作品をご覧に入れますので、ご期待ください」

 

「待て!」

 

こちらを追いかけてくるホークスに向け、傘を開く。

これで『潜影』の発動条件は満たされましたね。

 

「では、またいつか。Are We Cool Yet?」




今回の元ネタ・・・SCP030JP
石油製品を食ってめちゃくちゃ増えるカイコガの幼虫。
単為生殖もできる上に、一度に300個以上卵を産む。やばい。
やっぱり日本生類総研作。詳しくは本家記事を見よう。

本作では石油製品ではなくコンクリートを食べ、カイコガではなく人間サイズのナメクジになっている。
アルティステの家庭菜園をナメクジが荒らしたことから、ナメクジが採用された。
素材となったのは、個性『ナメクジ』『悪食』『成長促進』の3人。

アルティステが去ったあと、残っていた個体はエンデヴァーに全部焼却された。
AWCYの作品群が、人間を素材にしていることは既に知れ渡っている。
可能であれば保護することが推奨されているが、今回のように極めて危険かつ大きな被害を出した作品は“破壊”が許可されている。

AWCYの作品に対する各国の方針は、材料とされた人の人権を考慮し、

確保(Secure)
収容(Contain)
保護(Protect)

となっている・・・表向きは。
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