最強の黒い鴉-レイヴン-   作:星乃 望夢

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今回はウォルター視点に挑戦。

ごすずんのキャラが上手く出ていればいいなぁと思いながら書きました。

ご感想をお聞かせください、ご友人。


第2話 618、お前は…

 

『ミッション開始。敵輸送部隊を撃破しろ』

 

 ウォルターの声を背に戦場に躍り出る。

 

 敵を確認して、面倒な事になりそうだ。

 

『敵MT部隊はどうやら物理シールドを装備している機体が多いようだ。正面から当たるな、回り込め。背後からならば問題なく倒せる』

 

 そう、盾持ちMTが多いのだ。

 

『ACだと!? アーキバスか!?』

 

『いや、識別に無い。独立傭兵か?』

 

『たった1機で何をするつもりだ!?』

 

『各機迎撃! 積み荷を破壊されたら堪らん。輸送車は全力で待避! 防盾MT部隊は前へ、支援型は火力支援、四脚で仕留めるぞ!』

 

 こちらを捉えた輸送部隊の護衛MT部隊が展開していく。

 

『流石は企業か、統率が取れている。掻き乱せ、618。お前にならば出来る』

 

 嬉しいことを言ってくれるウォルターに内心でニヤリとする。

 

 歴代のオペレーターで誰が好きか。

 

 甲乙付け難いが、願いを託してこちらを全力でサポートしてくれるウォルターは──すまん、俺は猟犬だからよ。

 

 そんなウォルターが好きなんだ。

 

 ホモって意味じゃないぞ?

 

 それに俺には、こんな戦うしか能の無い俺を受け入れて愛してくれた女がたくさん居てくれたんだ。

 

 フィオナ…、セレン…、フラン…。

 

 そう、愛しているんだ。

 

 エネ、ジナ、アンジェ、メノ、…………マギー。

 

「愛してるんだァ! お前達をォ! アハハハハハハハ!!!!」

 

『618!?』

 

 ウォルターが驚いているが無視。

 

 久し振りの戦場だ。

 

 愉しませてくれッ!!

 

 ロザリィを忘れてる? 籍入れたわけじゃないし、どっちかって言ったらあれはフランが泣きついてセフレ感覚みたいなかるーい気がねない付き合いだったな。

 

 姉御肌のロザリィはそこんところノリが軽いからね。

 

 今はルビコンに居るんだろうカーラに雰囲気は近いかねぇ。

 

 いや、ノリの軽さならカーラの方が多分上かな?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 俺の託された使命の為、多くの強化人間を犠牲にして来た。

 

 今回もまた、手駒の補充として第四世代型強化人間を買った。

 

 旧式の強化人間は最早需要もなく、忘れ去られた存在だ。

 

 そんな彼等を使い潰し、今日まで戦い続けてきた。

 

 残りの在庫も少ない。

 

 それが、俺に設けられたタイムリミットのように思えてしまう。

 

 いや、必ず成し遂げなければならない。

 

 託された使命、そして、犠牲にして来た命に贖う為にも。

 

「調子はどうだ、618」

 

「良好だよ。ウォルター」

 

 第四世代型強化人間C4-618。

 

 617の稼いだ金が貯まり、新たに設けた駒。

 

 しかしこれまでの旧式は機能以外は死んでいて、まともなコミュニケーションを取ることが出来ない。

 

 感情が死んでいるのだ。

 

 いや、死んでいるわけではない。

 

 彼等にも感情がある。

 

 それを再び開花させる前に、使い潰してきてしまっただけだ。

 

 だが、618は別だ。

 

 異色と言ってもいい。

 

 規格外──イレギュラーだった。

 

 最初から感情があり、コミュニケーション能力に問題はない。

 

 いや、見た目からすればまだ齢10程にも届いていないのだろうの少年であるはずなのだが、まるで重厚な人生を送って来たかのよたうな確かな知見、知恵、知識を有していた。

 

 なによりも驚かされたのはACの操縦技術だ。

 

 シュミレーター難易度EX。

 

 企業の専属AC部隊でもクリアした者は極めて僅かのそれを──。

 

「I'm a thinker♪ トゥートゥートゥートゥトゥー~♪」

 

 鼻唄を歌いながらあっさりと、無被弾で、最速でクリアした。

 

 スコアは勿論、満点だ。

 

 他にも満点を出していた者が居るのも信じられんが、その記録よりも0.1秒差で、618が上回った。

 

 一切の無駄が削ぎ落とされた、幾多の戦場を潜り抜けてきた傭兵特有のそれを618は有していた。

 

 当たりを引いたか──。

 

 見た目通り経験など積む暇などないはずだ。

 

 強化手術を受けたあと、程無くして冷凍睡眠保存されているはずだ。

 

 天賦の才能──いや、違うと、俺の勘が告げている。

 

 あれは経験によって培われた技術に基づいて構築された動きだ。

 

 あのミシガンよりも洗練され、尖鋭されている。

 

 その違和感、それを気にするよりも大きな力を前に、計画に対する大きな躍進の可能性を掴めた予感がした。

 

 そして初の“仕事”──。

 

 試金石とも言えるそれは、今の機体構成では、617では任せられない難易度の仕事だ。

 

 実績を作ってきたとは言え、現状の戦力で相手にするには無謀とも言える護衛戦力だが。

 

 618ならば問題にもならないだろう。

 

『愛してるんだァ! お前達をォ! アハハハハハハハ!!!!』

 

「618!?」

 

 いきなり愛を叫んだかと思えば、618は敵部隊を──文字通り蹂躙し始めた。

 

『なんだこのAC、速すぎてFCSが追いきれない!?』

 

『探査用のACだろ!? なんでこんな動きが出来るんだ!!』

 

『回り込まれ──ぎゃあああああ!!』

 

『支援型の砲撃も当たらねぇ! 背中に眼でも着いてんのか!?』

 

『このっ、ちょこまかとぉ!! ギャアアアアア──!!』

 

『四脚がやられた!? まだ20秒経ってないぞ!!』

 

『ダメだ! 速すぎて動きが鈍い四脚がカモにされてやがる!!』

 

 そう、蹂躙だ。

 

 パルスブレード、キック、それを用いて敵のMT部隊を蹴散らして行く。

 

 ライフルとミサイルも撃つが、その立ち回りはQBとアサルトブーストを多用した高速機動戦闘で敵を錯乱する近接戦闘が主体らしい。

 

 いや、装備している武装で攻撃力が高いのがパルスブレードであるから近接戦闘になっているだけだ。

 

 手持ちの武装が換われば、それに合った戦い方をする。

 

 シミュレーターで様々な武装を駆使して617を鍛えている光景を見れば、618はオールラウンダーの極限を体現している。

 

 本当に当たりを引いたな。

 

 大豊部隊には気の毒だが、618の名を売る礎になって貰う。

 

 ピーピー──ッ

 

「むっ。618、敵の増援だ。この速さはACだ、数は2機。識別は──」

 

 レーダーで確認した増援の情報を検索する間に、敵は618の前にやって来ていた。

 

『有澤重工だ…。すべてを焼き尽くす。巻き込まれるなよ』

 

『メリーゲートよ。行きましょう、社長さん』

 

『はい……?』

 

 少々間抜けな618の声が聴こえるが、今はそれを無視して敵のデータを伝える。

 

「敵ACは有澤重工の雷電とメリーゲートだ。雷電は見た目通りの重装甲戦車型、武装は両手右肩の単発と左肩の連装グレネードという高火力ACだ。メリーゲートは重装甲重量2脚型AC。武装は右手のライフルと左手のバズーカ、右肩の垂直型ミサイルと左肩の多連装ミサイルからなる火力も侮れん。正面からは付き合うな。お前の機体では削り敗けをする。機動力を生かして翻弄しろ」

 

 どちらも大豊製のパーツで固められ、頭部はBASHOという耐久力に割り振るなら理想的な構成だ。

 

 その重装甲と高火力は下手な要塞より硬く火力を持っている。

 

 今の618の機体で通用するのはパルスブレードを当てるくらいだろう。

 

 幸いにして618の機体と戦闘スタイルならば、重装甲型の相手をするのは無理ではない。

 

 いや、むしろ得意な相手であるだろう。

 

 相手が木偶であればの話しだがな。

 

 有澤重工はベイラムグループ傘下では大豊を抑えて1位の傘下企業だ。

 

 そしてその社長の有澤隆文は優秀なAC乗りとして名が通っている。

 

 あのレッドガンのミシガンですら手を焼くとなれば、その腕は疑うべくもない。

 

 その僚機として任務に同行するメリーゲートも、レッドガンのG2ナイルと引けを取らないとなると、ただの木偶ではない。

 

 だが、618ならば──。

 

『なるほど…、リンクスの動きだ。あの男を思い出す…』

 

 リンクス? 山猫とはどういった暗喩だ。

 

『ミサイルが全部振り切られる。社長、頭を抑えるから狙って!』

 

『委細承知…』

 

 雷電から放たれるグレネードの弾幕をQBで難なく避け、メリーゲートのミサイルもアサルトブーストとQBを駆使して振り切る。

 

 メリーゲートがバズーカとライフル、ミサイルと、全身の火器で弾幕を張るが、そのひとつも掠りもせずに618は避ける。

 

 雷電からもグレネードが撃たれるが、それも掠りはしない。

 

 まるでグレネードの弾速など見切っていると言わんばかりだ。

 

 反撃の牽制に右手のライフルをメリーゲートへ撃ち、距離が詰まれば左肩のミサイルを撃つ。

 

『この呼吸、貴方なの?』

 

 なにやら通信からは618を知っているような言葉が聴こえてくる。

 

 他人の空似か?

 

 いや、あれ程の腕を持つAC乗りが早々居る筈もない。

 

『ミサイルの煙で視界が、っ!? しまっ──』

 

 メリーゲートから焦った声が聴こえる。

 

『どんな装甲だろうと、撃ち貫くのみ!』

 

 そう言って右手のライフルから換装していた、チャージされたパイルバンカーを撃ち込む618。

 

 そう、618が現状の機体で唯一注文を付けた武器。

 

 癖が強く、扱えるACパイロットはほぼ居ないその武器は、故に必殺となる威力を持っている。

 

『きゃあああああ!!』

 

 その一撃はメリーゲートの左腕を捥ぎ取った。

 

『っっっ、その入りの動き、やっぱり貴方なのね…。レイヴン!!』

 

『──その声は、やっぱりメイ。なら、向こうは』

 

『久しいな、レイヴン…』

 

『社長…』

 

 オープン回線でメリーゲートと雷電が呼び掛けると、618の動きが止まった。

 

 向こうも止まり、戦闘は静寂に包まれた。

 

 いったいどう言うことだ。

 

 618は有澤と知己の関係だったのか?

 

「知り合いか、618」

 

『──旧い友人だよ』

 

 そこに込められた重さは計り知れない。

 

 618、お前は何者なのだ?

 

『色々と話したいことがあるけど、ごめん。仕事だからやらせて貰う』

 

『来い、レイヴン…。この雷電を削り取ってみせろ…!』

 

『言われずとも!』

 

『レイヴン、あとでゆっくりとお話しましょ』

 

『あとで、ね!』

 

 戦闘が再開した。

 

 苛烈を増した雷電とメリーゲートの弾幕を、やはり618は被弾せずに躱す。

 

 反撃のライフルとミサイルは、重装甲型の2機の前では豆鉄砲も同然。

 

 スタッガー値も溜められず、動きを止められない。

 

 ACⅥにはACS(姿勢制御システム、Attitude Control System)が存在し、AC以外にもMTや、ACとは規格が異なる惑星封鎖機構のLC/HC機体、果ては技研製の各種C兵器まで、作中で登場するほぼ全てのメカに搭載されていることから、機体を動かす際にはほぼ必須レベルの基盤技術が存在している。

 

 「衝撃」「負荷限界」「直撃」といった作中の用語から推測するに、外部からの衝撃に対してシステムが自動で機体の入射角を調整することでダメージを「弾く・いなす」ような仕組みだと考えられる。

 

 スタッガーに関しては、短時間で大量の衝撃が加わることで制御処理が追い付かず、システムが一時的にフリーズしてしまう…といった所だろうか。

 

 中々致命的な欠陥を孕んでいるように思えるが、「軽量さと高防御の両立」が叶うと考えれば、軍事的にはそのような弱点を考慮してなお喉から手が出るものだろう。

 

 戦略レベルの話に限定しても、軽ければ戦地への移動と輸送の手間やコストを減らせるし、燃費も良くなる。

 

 また、足回りへの負担が軽減されて整備の手間が減り、野戦的な修理も行いやすくなるなど莫大なメリットがある。

 

 ACSが正常に作動している間はほとんどの射撃が有効打にならず、これを破るには絶え間なく負荷を与え続け、更にスタッガー中にも追撃を行う必要がある。

 

 ACSの普及により狙撃戦術の優位性が薄れ(単発高衝撃の射撃だけでは、スタッガーさせる事はできても追撃ができない)、そこから「接近戦に持ち込み、手数を活かした継続的な火力投射を加える」という戦術がACⅥの世界では普及し、ACⅥの最初期のACの腕が作中1位の近接能力を持つのも頷ける設定とも考えることはできないだろうか。

 

『相変わらず、よく動くものだ…』

 

『ええ。それが最強足る彼だもの』

 

 互いに手の内を知り尽くしているかの攻撃。

 

 雷電もメリーゲートも引き撃ちに徹して618を近づけまいとするが、QBを駆使して、その弾幕をやり過ごす。

 

 両機とも衝撃値の高い武装を積んでいることから、捕まれば一瞬でスタッガー値を蓄積され、ACSの負荷限界をシステムがダウンし、身動きが取れなくなる、その状態を単に『スタッガー』と呼ぶのだ。

 

『っ、メインブースターを!?』

 

 そして的確にメリーゲートの背中に回り込んだ618は、その背中のメインブースターをライフルで撃ち抜いた。

 

 よってメリーゲートはただの固定砲台に成り下がる。

 

『下がれ、グリンフィールド。あとは私が請け負う…』

 

『ええ。ごめんなさいね、社長』

 

 これ以上戦闘には着いてこれないと判断したメリーゲートは、唯一生きているアサルトブーストで距離を取った。

 

『いいの? メイを下がらせて』

 

『他を巻き込む気遣いをせんで済む…』

 

『確かに』

 

 しかし重装甲戦車型ACで、見切られているグレネードの弾速で、618は止まらない。

 

『撃ち抜く!』

 

 618がパイルバンカーを撃ち込む。

 

 直撃を受けた雷電はしかし、まだ健在だ。

 

『くっ、貴様の相手は寿命が縮まる…。この後温泉でもどうだ…?』

 

『いいね。敗けた方の奢りで』

 

『フッ、いいだろう…!』

 

 まるで本当に友人との会話を楽しむようにしながらも、銃火を交えて退かないのは互いに立場があるからだろう。

 

 あちらもこちらも、仕事は仕損ずることは出来ない。

 

 618は初のミッションだ。

 

 それで仕損じれば今後の依頼に支障が出る。

 

 有澤も、社長が名無しの傭兵に敗けたとなればその信用が落ちる。

 

 故に退くことはない。

 

『ぐぅっ、おのれっ、動け雷電…!』

 

 ライフルとミサイル、キックにパルスブレードを叩き込まれた雷電はとうとうスタッガー値の限界を迎えた。

 

『どんな装甲だろうと、ただ撃ち貫くのみ!』

 

 そして618のパイルバンカーは雷電の脚部を撃ち抜き、その勢いで跳ねた雷電はスタッガーから立ち直ったが、復帰した筈であるが動きは鈍い。

 

『制御系をやられたか。ここまでだな…。輸送部隊は荷を捨て離脱せよ。責はこちらが負う』

 

『し、しかし…』

 

『なら、彼の相手をする? 間違いなく死ぬわよ』

 

『ぐっ、そ、総員、撤退する。要救助者の収容急げ!』

 

 MT部隊は撤退を渋るが、あれ程の圧倒的な戦闘力を前にしては戦闘を続行しても犬死にだ。

 

 有澤の説得を受けて撤退するようだ。

 

 どうやら依頼は達成出来そうだな。

 

『ウォルター、二人と話がしたい』

 

「……いいだろう、618。有澤と顔を繋げられるメリットもある」

 

『わかった』

 

 心配はそれほどしてはいなかったが、あのレッドガンのトップツーと同等のACを単騎で、しかも戦闘を考慮していない探査ACで一方的に制圧した。

 

 618──。

 

 俺は、お前に賭けてもいいのだろうか?

 

 

 

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