陰と影の実力者   作:黒ソニア

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・一人称がゼータだったりリリムだったり、ユノやフェイカーだったりややこしいかとは思いますが…フィーリングでお願いします。


・『七陰』との戦いを一話に纏めるのが想像よりも難しかった…。


sol0322様、ももちもちもちももちもち様
Fuyuto様、もう二度と動かない点P様
ウルフウッド様
評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。





第11影:『ユノvs七陰』

 

 

 

本音を言えば、ユノはアルファ達には争いから離れて新しい人生を送って欲しいと思っていた。

 

 

───けど、俺にはゼータ達(彼女達)を止める権利がない。

 

 

ユノは迫り来るゼータとアルファを見て走馬灯の様に振り返る。

 

 

───彼女達は復讐者だ。当然、復讐の権利がある。

 

 

一人一人が『悪魔憑き』を発症してしまった故に世間から…家族から、疎まれ否定された。

その原因である『ディアボロス教団』に裁きの鉄槌を、粛清する権利がある。

 

 

───だが、奴等の力は強大だ。

 

 

アルファ達が調べた限り、表社会でも影響力をもたらす権力達に塗れているという。

場合によっては国そのものを牛耳っているとさえ言われている。

 

 

───そんな敵を相手にする以上、力が必要だ。

 

 

シドによって力をつけた彼女達は更に力を付けようと、ユノ達から離れ様としている事は充分理解している。

けど…

 

 

───彼女達が…心配で仕方ないんだ…

だから…俺を納得させてくれ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユノが止めに来る事をゼータは予想していた。

 

 

───ユノは優しすぎる。

 

 

ゼータはそれを誰よりも熟知していた。

 

 

───けど…その優しさが、時に人を弱くさせる事だってある。

 

 

彼の優しさに依存しすぎてしまう。

それは詰まる所、彼がいなければ自分が何も出来なくなってしまう様になってしまう。

 

 

───それでは駄目なんだ。

 

 

彼女は理解している。

彼は優しく強い…けど、同時に脆く弱い所がある。

それを補う為に、彼と誓いを立てた。

 

 

───その誓いをこれからも守るためには…っ!

一度離れて強くならなきゃいけないんだ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はあぁぁぁ!!!」」

 

 

アルファとゼータが同時にフェイカーへと特攻する。

それに対しフェイカーは───

 

 

「─── 《影掴》。」

 

 

フェイカーの体から無数の『影の腕』が伸びて、アルファとゼータを地面に押さえつけた。

 

 

「…っく、この技を受けたのは初めてじゃないけど…っ!」

 

 

「全然身動き取れないわね…っ!」

 

 

ゼータとアルファは払い取ろうとしても剥がれず苦戦していた。

 

 

「フェイカー様…本気なのですね…!」

 

 

「そうね。一瞬でも油断すると、私達も捕まるわ…!」

 

 

「…研究の為、色々と…試したいけど…無理そう。」

 

 

ベータ・ガンマ・イータはユノの本気に警戒心を強める。

 

 

「そうね…って、デルタ!?」

 

 

「あの時はデルタが油断したから負けたのです。

でも、今はそうはいかないのです!」

 

 

イプシロンは無鉄砲に素早く突撃するデルタを見て驚愕するも…

デルタに放たれる《影掴》を素早く回避していく。

 

 

「早い!」

 

 

「…悔しいけど、戦闘ではデルタが一番頼りになるわね。」

 

 

「今の内にベータとガンマはデルタに続いて!

私とイータはその内にアルファ様とゼータを解放するから!」

 

 

イプシロンの指示にベータとガンマは頷き、イータは面倒くさそうにするも従う。

アルファは『シャドウガーデン』のNo.2。

基本リーダーなのでアルファが指示するのが多いが、場合によっては臨機応変に案を思いついた者が指揮をする。

…ユノが立てた案をアルファ達は忠実に行っていた。

 

 

(流石イプシロン、瞬時に切り替えて指示をしたな。

それが正しい。後は─── )

 

 

フェイカーは《影掴》を潜り抜け、スライムの爪で斬りかかろうとするデルタを見る。

 

 

「…デルタ、お前の戦闘力の高さは評価するけど…。」

 

 

「でりゃ! くらえ! なのです!」

 

 

「…考えなしの行動がお前の悪さだ…!」

 

 

フェイカーはデルタの攻撃のラッシュを最小限の動きで躱していき…

 

 

「はっ!」

 

 

「ぐびゃ…!?」

 

 

隙を見て、魔力を込めた掌底打を素早く放って吹き飛ばした。

 

フェイカーはシャドウの教えで基礎的な武術や剣術を覚えたが、アルファ達に負けていた。

そこで…どうしたらいいか、真面目に考えていた。

 

 

 

『フェイカーってさ、シャドウの技術だけじゃ駄目なんじゃない?』

 

 

そう言ったのはゼータだった。

 

 

『…具体的に言うと?』

 

 

『何って言ったら良いかな…。

正しく戦う…うん、正当な戦いには向いてない気がするかな?』

 

 

『…それはつまり、不正的…暗殺の様な戦いをしろと?

具体的に…背後からの攻撃とか絡めてとか?』

 

 

『そうそう! シャドウの教わった技術を自分なりに改良して好きな様にやってみたら?

フェイカーは気配を消すのが一番得意だし。

そしたら、アルファ達に勝てるかもしれないし、ゆくゆくはシャドウにだって───』

 

 

 

こうして、フェイカーは自己流の『暗殺術』を生み出したのだ。

 

 

(ゼータのお陰で、俺はアルファ達『七陰』と良い勝負をする様にはなった。

…お陰で俺と訓練する時に対する嫌なオーラを隠しきれない者達がいたが…。)

 

 

それは主にベータ・イプシロン・デルタである。

 

 

「…くぅ…フェイカー様の戦い方、楽しく無くてデルタは嫌いなのです!」

 

 

「…実戦では好き嫌い言っていられないぞ?」

 

 

そう言ってフェイカーは魔力で脚を強化して素早くデルタの背後に回って背中に魔力の込めた打撃を与える。

 

 

「ぎゃう…!」

 

 

「次は───」

 

 

「てやー! シュシュシュシュ!!」

 

 

「…!」

 

 

デルタを叩きつけて振り向くと、ガンマがスライムの大剣を連続で突き始める。

 

 

「…ガンマはある意味危険だから、距離を置い───っ!?」

 

 

遠くからの攻撃でスライムの矢が頬に掠る。

よく見れば、ベータが背後から弓矢による攻撃を放って援護していた。

彼女は『七陰』一の遠距離攻撃を誇り、近中両方の距離でも対応できる。

 

 

「(これは厄介だな。ガンマの攻撃は規格外。

威力は勿論の事、的を狙ってのもので無く、当てずっぽうのやり方だからこそ、やりにくさがある。

加えて、ベータの的確に狙う弓矢があって高確率で大怪我をする。だが…)─── 《影斬》。」

 

 

ユノは距離をとって『影の刃』を無数形成して放った。

 

 

「わあぁぁぁぁ!?」

 

 

「くっ…!」

 

ガンマは殆どの攻撃を受けて大ダメージとなる。

彼女はスライムスーツの耐久性と本人の魔力も噛み合って、アルファ達やシャドウも驚きの『七陰』随一の防御力を誇っていた。

ベータは大きなダメージが入っていないものの、一撃を受けて苦渋な顔を浮かべる。

 

 

「イプシロン!!」

 

 

「ええ、もう二人を解放したわ!」

 

 

イプシロンがそう言うと、アルファとゼータが立ち上がる。

 

 

「イプシロン、助かったわ。」

 

 

「イータもね。」

 

 

「…それは、良いけど。」

 

 

イータは前に指を指すと…ガンマが吹き飛ばされてアルファ達に衝突する。

 

 

「うぎゅっ…も、申し訳有りませんアルファ様…。」

 

 

「ガンマ…!」

 

 

「…やはり、ユノ…フェイカーは強い!」

 

 

ゼータは歩み寄って来るフェイカーを見る。

 

 

「ええ…やはり『影』を使う以上、全員同時に仕掛けるべきだったわ…。私の失態ね…。」

 

 

「いや、ガンマは兎も角、あのバカ犬は私達に合わせないだろうね。

でも、それより…フェイカー!」

 

 

「?」

 

 

「…どうして『呪力』は使わないの?

私達相手なら無しでも余裕って思ってる?」

 

 

『!?』

 

 

そう、フェイカーは『影』と『魔力』を使っているが、『呪力』を使っていない。

 

 

「…余裕だとは全く思っていない。

けど、呪力はお前達相手には猛毒で有効的すぎる。

だから、魔力で身体能力を高め、『影』で全力で挑む。

これでイーブンだ。」

 

 

「…やっぱり、甘く見てるよ…!」

 

 

「いいや、違う!

まぁ…でも、そう思っても仕方は無いし、いくら言っても無駄だよな。

だったら…!」

 

 

フェイカーはスライムを剣とは異なる…ある形状にする。

 

 

「出させてみせろよ…!!」

 

 

ジャリン…と、アルファ達が見た事のない形の()を持って、構えた。

 

 

「アレは…?」

 

 

「…アレだよ、事前に伝えたフェイカーの武器…『手錠』って言うらしい。

枷と同じ部類の物で、捕まえる事に特化して───」

 

 

ゼータが説明する中、フェイカーは手錠から複数の棘の刃を出現させて伸び放った。

それは鎖による攻撃力にも似ており、加えて速度が早かった。

 

 

「早い…!?」

 

 

ベータがそう叫んで、瞬時にスライムソードで防御するも、軌道を変えてスライムの鎖で全身を素早く拘束した。

 

 

「ベータ!?」

 

 

アルファが驚くも、ベータだけで無く全員に放たれていた。

 

 

「くっ…!」

 

 

アルファは魔力を強く込めたスライムソードで払うも、第二第三の攻撃が襲う。

 

 

「な!?」

 

 

「気をつけて! 分かっている筈だけど、スライムで出来てるから無数に生成される!」

 

 

「こんなの無理じゃないですか…!?」

 

 

ガンマがそう泣き叫ぶと───

 

 

「はっ!」

 

 

イプシロンが『魔力の斬撃』を()()()()相殺していく。

彼女は魔力の操作と制御で形を保って放つ術を有しており、『七陰』随一の中距離攻撃を誇る。

 

 

「よし、今の内に───イータ!!」

 

 

ゼータがイプシロンの援護を受けながら攻撃を回避しつつ、イータがスライムを操ってフェイカーの足元へと素早く仕掛ける。

 

 

「…なら素早く行動するまで───ぐっ!?」

 

 

フェイカーが動こうとすると、背後から…デルタの奇襲を受けた。

 

 

「ぐ…っ!?」

 

 

「デルタは…まだ…やられて、ないのですぅ!!」

 

 

デルタは再度攻撃を仕掛ける。

彼女は『七陰』随一の近距離攻撃を誇り、更には『狩り』を誰よりも好み、潜んで奇襲する事にも長けていた。

 

 

「…油断したか…!?」

 

 

「…更に仕掛ける…。」

 

 

イータはフェイカーの足元にスライムを展開して《影縛》と同じ技を行った。

彼女はガンマに並び戦闘に不向きだが、『七陰』随一のスライムの扱いを誇り、様々な仕掛けを得意としている。

 

 

「…技を真似られた挙句、このザマ…んぐっ!?」

 

 

「油断大敵だよ、フェイカー?」

 

 

ゼータが素早くスライムの圏で…斬った。

スライムスーツという軽鎧は高度の耐久性を誇っており、斬ったと表現されているが、実際は斬られた衝撃が彼を襲っていた。

 

 

「…っぐ!」

 

 

「カッコつけて呪力を使わないからこうなるんだよっ!」

 

 

ゼータは素早い動きで様々な地形を活かした攻撃で相手を斬り刻む事の出来る、『七陰』随一の高速攻撃を誇っていた。

 

 

「雌猫!! デルタの邪魔…するな!!」

 

 

同じ獣人なのに全く息の合わない二人がフェイカーを斬り刻んでいく。

 

 

「ちょっ、ちょっと!?

二人がそこまでやると、流石のフェイカー様も───」

 

 

「…いいえ、ガンマ。よく見てみなさい!」

 

 

「へ……あぁ!?」

 

 

アルファの指摘でガンマは気づいた。

 

 

「あぁ!? これ、フェイカー様じゃないのです!」

 

 

「…いつの間に()()に入れ替わってたんだ!?」

 

 

「おい、雌猫が邪魔するから匂いに気づかなかったのです!」

 

 

「バカ犬が邪魔するからでしょ!

…でも、本当にいつ分身を作って───わっ!?」

 

 

ゼータが疑問に抱く瞬間に分身が『影』にへと溶けると、()()()()にへと変換され、群がる。

 

 

「な、何なのです!?」

 

 

「コレは…【脱兎】!?」

 

 

そう、その大量の兎の正体は『式神』の【脱兎】だった。

そして───

 

 

「…何、これ?」

 

 

イータが足元の違和感に気づく。

よく見れば、足元がスライムとは異なる…フェイカーの『影』に呑まれていた。

 

 

「何なのです!?」

 

 

「やられた…!!」

 

 

「スライムごと、吸い込まれる…。」

 

 

皆が疑問を抱く瞬間…『影』が足を身動き取れない様に沈ませ、そこから再び『影の腕』がデルタ・ゼータ・イータを『影』の中心にへと掴み拘束する。

 

 

「きゃ!?」

 

 

「わわわわわ!!」

 

 

「いつの間に〜!?」

 

 

残る四人の内、イプシロン・ガンマの二人が油断し、まだ拘束されているベータと同じ様に手錠で拘束されて三人共々『影』の方にへと連れられ、アルファを除いた六人が『影』の中心に纏められ、更に手錠で拘束された。

 

 

「皆んな!」

 

 

「……流石にデルタの不意打ちと、ゼータの一撃で結構効いたな。」

 

 

フェイカーが痛そうにヨロッとしながら『影』から現れた。

 

 

「…その言葉から推測して、ゼータの攻撃を受けた後に《影化》をしたのね?」

 

 

「…そう。ゼータとデルタの攻撃を《影分身》を身代わりにして、その間に俺は《影沼》を展開する為に【脱兎】を顕現させて、仕込みをしていたのさ。」

 

 

簡単に状況を説明するなら…

①《影化》と同時に《影分身》を展開。

②【脱兎】を顕現。

③《影沼》を展開。

④《影掴》《影縛》の両方を仕込み展開。

⑤ゼータ達が気づく。

こういった流れであった。

 

 

「…やられたわね。」

 

 

「……とは言え。そこまで神経使った挙句、アルファには…避けられたけどな。」

 

 

「当然よ、私はアルファ。

『シャドウガーデン』のNo.2として簡単にやられる訳にはいかないわ…!」

 

 

アルファはスライムソードを構えた。

 

 

「……だな。」

 

 

フェイカーもスライムソードを構えて…

 

 

「「はっ!!」」

 

 

二つのスライムの剣がぶつかり合う。

最初は互いに拮抗したいが…次第にアルファの方が動きが早く、フェイカーは何とか凌ぎる形で押されていた。

彼女の実力は『七陰』随一の剣術を誇り、様々な状況で臨機応変に対応出来る実力を誇る。

 

 

「そこっ!」

 

 

アルファが一気に攻め上がると、フェイカーの姿が消え…既にアルファの背後にへと剣を構えていた。

 

 

「くっ!?」

 

 

視線に咄嗟に気づいて何とか防御するも、衝撃で『影』と手錠に拘束されている皆の所へと吹き飛ばされた。

 

 

「…っ、その瞬発力…相変わらず油断ならないわね…!」

 

 

そう。フェイカーが決意を固めて強くなった成果である『暗殺術』の一つの『瞬発力』。

『魔剣士学園』へ入学する事を踏まえて、魔剣士としての技術を磨いていた。

その成果として、魔力を手足のそれぞれに一点集中させて素早く動いて攻撃する術である。

基本的に魔力で強化する際、全身に流すのが主流だが、フェイカーの魔力量はシャドウと七陰全員の中でダントツで最下位。

その魔力量は王都の魔剣士より多い位なのである。

…フェイカーは限られた魔力を有効に使う為に、全身ではなく力を使う部分を一点に集中させる手段で火力を上げ、かつ節約できる手段を身につけた。

 

 

「…感心してくれるのは嬉しいが、防御に魔力を集中するといい。」

 

 

フェイカーはアルファを《影縛》で体を抑える。

 

 

「…流石に七陰全員を相手に『式神』無しでは無理だな。

───だから、コイツも遠慮なく行くぞ!」

 

 

フェイカーは掌印を結ぶ。

 

 

「─── 【貫牛】。」

 

 

その掌印は【貫牛】の印。

2メートルを超えるだろう、黒い闘牛が顕現する。

 

 

『!?』

 

 

アルファを含めて拘束されているゼータ達も驚愕する。

 

 

「…俺は魔力でも『式神』が顕現出来るか試した所、顕現には成功した。

けど、呪力ではない事で一部の能力が使えなくなっていた。」

 

 

そう、それこそ本来の『十種影法術』の『式神』の力だった。

彼の『呪力』によって顕現した『式神』は想定されていなかった特性を宿したのだ。

それが、【大蛇】の毒や、【蝦蟇】の酸である。

更に言えば彼に対する甘えたりする所も、彼の魂の一部を受け継いでいる影響なのである。

(※当然、その事に彼は気づかない。仕方ない事である。)

…因みに【脱兎】も魔力で顕現されていた。

 

 

「…コイツの力は目にしているよな?

呪力が無い分、全体的に火力は落ちているが…今のアルファはコイツの攻撃を耐えつつ、皆を守れるか?」

 

 

「…っ!!」

 

 

「……行け、【貫牛】!!」

 

 

フェイカーの指示にただ従う様にアルファに目掛けて突進する。

『呪力』で顕現されてないから反応も薄いのだ。

 

 

「ぐぅぅぅぅぅ……!!!」

 

 

それでも本来の【貫牛】のパワーは凄まじく…

 

 

『あぁぁぁぁぁああ!!!』

 

 

アルファ達は【貫牛】の力に負ける。

手錠は破壊されたと同時に破片状態でアルファ達を斬り刻み、吹き飛ばされ、衝撃と共に至る所に叩きつけられて、壮絶な痛みがアルファ達を襲った。

 

 

「…」

 

 

フェイカーは辛うじて小さく呻き声を漏らすアルファ達の方へ歩む。

 

 

(………やり過ぎだとは思っている。

本当なら……、こんな苦しむ様なんて見たくないし、今直ぐにでも【円鹿】で回復させたい所だ………。

けど、ディアボロス教団と戦うという事を考えると……奴等の恐怖を別の形とはいえ、理解してもらい、尚且つ立ち上がらないといけない。

………じゃないと、あのクソ司祭の様な相手がいつ何処で現れるか分からないからな。)

 

 

フェイカーは…ユノはゼータ達のこれからの事を考え、容赦無く破壊力の高い【貫牛】で攻撃したのだ。

 

 

「………っ、まだ…まだ、戦えるよ…!」

 

 

「!!」

 

 

ゆらゆらと立ち上がるゼータを見てユノは目を見開いた。

それは…彼女の目が、心が折れていなかったからだ。

 

 

「そうよ……私達は…立ち上がるわ…!」

 

 

アルファも立ち上がり、他の五人も立ち上がった。

 

 

「……皆。」

 

 

「何…驚いてるの? 私が…私達が、これで…折れると思った?」

 

 

「私達は……一度、人生を失っている…!」

 

 

「大切だった……人から…見捨てられた悲しみを……!」

 

 

「その全てを……乗り越えて……!」

 

 

「もう……弱くなりたくない……!」

 

 

「私達は……負けない…!」

 

 

ゼータ達はボロボロな状態で立ち上がる。

 

 

「………俺は───」

 

 

「分かってる…ユノが私達の事を一番に考えて行動してくれる。

その優しさは…誰もが知っている…。

知っているから…一人で背負って欲しくないから…!

一緒に教団を倒す為に…!!

行くよ……フェイカー!!!」

 

 

ゼータの言葉に……フェイカーは気持ちを切り替える。

互いにフラフラとしている。

これが…この勝負の勝者を決める一手となるだろう。

 

 

「……あぁ…コッチも出し惜しみ無しで挑む!!」

 

 

フェイカーは【貫牛】を『影』にして側にへと結集させ、フェイカーの残る魔力と『影』に残る魔力を結合させて、掌印を結ぶ。

ゼータ達はそれぞれのスライムの武器に魔力を込めて構える。

 

 

「─── 【満象】!」

 

 

フェイカーが顕現させたのは【満象】だった。

 

 

「成程……確か【満象】は『式神』の中で…一番に消費が激しいんだったね。

けど、全員で掛れば───っ!?」

 

 

ゼータは【満象】の鼻が膨れ上がっている事に驚愕する。

 

 

「……確かに一部の能力が…使えないと言った。

けど、対象外の『式神』がいるんだ…!」

 

 

そう、【満象】の水の性質は元々有してた力である。

故に…鼻から凄まじい水圧のブレスがゼータ達を襲う!

 

 

「…ここまで来て、引けないよね…!!」

 

 

「その通りよ…!!」

 

 

ゼータ達全員による魔力の突撃で対抗する。

互いの力がぶつかり合う。

拮抗し……爆裂する。

 

爆裂によって倒れ込む両陣。

その中…ヨロヨロと立ちあがろうとする……ゼータ。

 

 

「勝負は……私達の───なっ!?」

 

 

ゼータは目の前にいる……【鵺】に驚愕する。

 

 

「……諦めが悪いのは…お互い、様…だな。」

 

 

フェイカーもまたガタガタと震える足を保ちながら、『影』に戻る【満象】を気合いで【鵺】にへと変換させていた。

そう、この技術も強くなった成果である。

『式神』から別の『式神』にへと変換させる事により、消費を抑える術を手にしたのだ。

【貫牛】から【満象】にしたのもコレであり、最後に【満象】を【鵺】に変換させたのだ。

更にフェイカーは『スライムスーツ』を解除する事で、維持させていた『魔力』を使ってギリギリ可能にしたのだ。

そして…【鵺】も【満象】に並び、電撃を元々有しており、『呪力』で顕現されてない分、雷程でなく電撃程度だが…この状況では問題が無い。

 

 

「……ハハ、流石……ユノ、だね?」

 

 

「………お前達も、な?」

 

 

互いに空元気に微笑む。

 

 

「……勝負は俺の勝ちだ。」

 

 

フェイカー……ユノは指示を送り、電撃を纏う【鵺】がリリム達を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ…はぁ、っ…不味いな、魔力を使い切って…呪力を扱う気力が…。」

 

 

片方の力を残っていれば大丈夫かと思っていたが、その考えは間違いだった。

意識が途切れる寸前で、誰かさんの手を借りたいものだった。

 

 

「…」

 

 

そんなユノの元に、その誰かさんが駆け寄る。

 

 

「……珍しく、お前に…感謝したよ。」

 

 

ユノは優しい表情で微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハッ!」

 

 

ゼータがパチリと目を覚ます。

同時に皆もその声で徐々に目を覚まし、体を起こす。

 

 

「ここは…私達の、拠点。」

 

 

ゼータがそう呟くと、机に書き置きが置かれた事に気がついた。

手に取ると───

 

 

 

『皆へ

 

勝負は悪いが勝たせて貰った。

けど…皆んなの覚悟はしかと受け取った。

寂しいけど、皆んなの意思を尊重する。

今の皆んななら、何があっても乗り越えられるって分かったよ。

…けど、何かあれば直ぐに言いに来いよ。

俺は…俺とシドは常にお前達の味方だからな。

 

簡単なご飯を用意しておいた。

風呂もいつでも温まれるように調整しておいた。

この拠点は俺が適度に管理しておくから安心しろ。

 

それから、偶には顔を見せに来いよ。

俺もシドも…寂しいからな。

 

だから……頑張れよ。 ユノより』

 

 

 

…これを読んだアルファ達は嬉しそうに微笑み。

ゼータは…

 

 

「……頑張るよ。」

 

 

静かに涙を流していた。

 

 

 







・想像以上に長くなった…!
簡潔に纏められないのが、本当に悔しい…!
…実はこれでもかなりカットしてます。
本当ならもっと全員で容赦無く襲ってるシーンとか考えてたけど、ボツりました。
…後、彼等の会話に変な所はないですかね?
自分、頭の中で会話しているのを勢いで描いてる感じですけど…リリムの一件以来の長い戦闘だから不安しかない。


・フェイカーの『戦闘スタイル』はこのファン(?)で良いんですかね?
カズマさんの禁断の姿を模した姿です。
アレを見た時、「これ、いい!!」
…っと、FGOの巌窟王(エドモン・ダンテス)の第三再臨を模した姿にしようかと考えてましたが、瞬時にチェンジしました。
仮面はこのすば3期の変装カズマさんのバニル仮面です。
髪の色も変色する形になります。
じゃないと正体がバレない様に仮面とかしている訳ですからね…。


『影掴』
影によって形状変化した腕による攻撃『影の腕』。


『影沼』
影による沼の身動き取れなくなる技『影の沼』。


次回、『霧の龍』
七陰達との対決をしてから数ヶ月、ユノ達の元に久しぶりにアルファが来て『シャドウガーデン』の新たな拠点について相談し始めたのだった。


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