陰と影の実力者   作:黒ソニア

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転スラ面白いなー。中でもヴェルザードとまだアニメに出てないけどヴェルグリンドが好み。
他にはガビルが好きです。あのキャラ、声の人といいベストマッチすぎて良き良き(笑)


ヨシハラカイト様
評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。





第18影:『強く…』

 

 

 

「…………ここ、は? いつっ!?」

 

 

意識を取り戻すると否や、全身に尋常ではない激痛が走った。

 

 

「…………俺の、部屋?

どうして俺が、ここに?」

 

 

「───私とゼータがここへ運んだのよ。」

 

 

「!?」

 

 

ユノの独り言に反応を示し、咄嗟に痛む体を起こす。

時刻は深夜、天井の光も切られており、真っ暗な部屋な故に誰なのか分からない人影だけが分かるだけの状況…だが、その声が誰なのかが分かった。

 

 

「目が覚めたようね。良かったわ。」

 

 

「アルファ……俺は、一体…。」

 

 

「……ええ、今から説明してあげるわ。」

 

 

そう言って、アルファはユノに説明し始める。

 

 

話によると【魔虚羅】の調伏の儀から10日が経っていた。

まず、何故アルファ達がユノ達の回収に直ぐに行けたについて…

それはゼータが急いでアレクサンドリアに戻って来て焦った様子でアルファ達に嫌な予感を知らせたからだ。

 

その時その場にいた皆がシドもいる事から大丈夫だろうとしていたのだが、ゼータが急いでカゲノー邸に向かい、他の者達はそれぞれの仕事からアルファ一人で対応しにゼータを追いかけて合流した。

カゲノーの領土に入った辺りでシドの『アトミック』を目撃し、それなりの手練れを相手にしていると判断したゼータ達はその先に向かい、二度目の『アトミック』を見た事から急いで向かった。

 

ゼータとアルファが戦場に辿り着くと、その場は既に戦いが終わった後であったが、戦闘跡が凄まじく土煙が酷かった。

2人が警戒しながら歩いていると…ゼータが血の匂いを察知した。

ゼータが血の匂いが強い場所へ向かうと、そこで目にしたのが大量の血溜まりで倒れていたユノとシドだった。

 

 

「……待って、くれアルファ。

その時、俺達以外に…巨体な生き物が…いなかったか?」

 

 

「生き物?

………いいえ、いなかったわ。」

 

 

(いなかった?

………可笑しい。【魔虚羅】の調伏は失敗した筈だ。

アレの調伏の失敗は…死を意味をする。

召喚者が死んだ後どうなるのかは分からないが…。)

 

 

「大丈夫? 辛いならまた日を改めるけど。」

 

 

「……いや、大丈夫だ。続けてくれ。」

 

 

気を取り戻し、再度話を続ける。

2人を見つけたゼータとアルファは急いで手当をし、様々な手を使いカゲノー邸に運ばれた。

カゲノー男爵達には爆薬を隠れて運んでいた盗賊達に出くわし、それを2人が対処した所で大爆発が起こり、被害があった様にしたのだった。

 

 

「義父上達には迷惑をかけたな…。

勿論、アルファ達にも迷惑かけてしまった上…後処理までさせちゃって…本当にすまない。」

 

 

「それについては気にしないで頂戴。

戦場跡も私達で証拠隠滅をしておいたから、安心しておいて。」

 

 

「…手間を掛けさせてすまないな。」

 

 

そして、カゲノー邸が慌ただしくなった翌日に何とシドは目を覚ました。

 

 

「……流石の一言だな。」

 

 

「ええ、彼が意識を取り戻してホッとしたわ。」

 

 

「……の割には、何処か浮かない顔をしているようだが。」

 

 

「…………実は、その……シドが───」

 

 

 

 

 

『またあの『式神』と戦いたいなぁ〜!』

 

 

シドが目を覚まし、アルファに向けて愉快そうにそう告げた。

 

 

『…シド? それは…つまり、また大怪我を負う事になってしまうのよね?

……お願いだから、それは止めて欲しいのだけど…。』

 

 

『ん? あぁ…アルファもユノと同じで心配性だからねー。

大丈夫だよ。直ぐにはやらないよ?

今よりも力をつけてからやるからさ!

大丈夫だよー、その頃には今の様にはならないからさ。』

 

 

シドが笑顔でそう話しているのをアルファはただ戦慄していた。

……因みに、その時のシドは身体中に包帯を巻いて如何にも危ないだろうという状態なのにも関わらず、巨大なダンベルで筋トレをしていた。

 

 

 

 

 

「いつも通りで安心したけど……

私はもう…彼が、血塗れになる姿なんて見たくないの…!」

 

 

「……うん。その気持ちは理解出来るが…

筋トレを止めない事について突っ込んで良いか?

後、何故かその状態での足の筋トレも止めろよな?」

 

 

「兎に角、ユノにはシドが再び頼まれても断って欲しいのよ。

…その【魔虚羅】という怪物は今後一切顕現させるのも禁止だからね?」

 

 

「……分かっているさ。今回の事で再度挑戦したくなる気なんてないし、あのバカの我儘も今後は聞かない様にするつもりだしな。」

 

 

「…ふふ、そうね。いつもみたいにそう言った発言が出来るのなら大丈夫そうね。」

 

 

アルファが少し微笑んでいたのを感じ取り、ユノは再び眠気に襲われて目を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユノが寝息を立てていると、体力が戻ってきた事で自動(オート)になっていた『魔力感知』に反応があり、かつ…その魔力で誰のものなのかハッキリと分かった事で目を覚まして痛む体をゆっくりと起こした。

 

 

「ゼー……リリムか?」

 

 

「……うん、私だよ。」

 

 

窓際からリリムの声に反応するが、姿を見せなかった。

 

 

「……ごめん、ユノの今のその姿を見ると胸が苦しくなるんだ。」

 

 

「良いさ。それより………すまないな、心配かけて。」

 

 

「……本当だよ。」

 

 

リリムは涙ぐんだ声だった。

 

 

「……ユノが血だらけで意識が完全に無かったと理解した途端…

体が凍りつく感覚に襲われた。

アレは…お父様とお母様を失ったあの時と、同じ感覚だったんだ。」

 

 

「…」

 

 

「もう二度と…あんな思いはしたくない。

だから、誓って欲しい。

───【魔虚羅】の調伏はもうしないと。」

 

 

リリムはユノに力強くハッキリと告げた。

 

 

「………あぁ、そうだな。」

 

 

ユノはあの戦いを思い出す。

すると、体中から汗が吹き出し始め、手も震え出した。

 

 

「……正直は話、最初は調伏する気は無かったんだ。

残る式神がアイツだけになった時、実はつい好奇心で調伏しようかとしたんだ。

けど…ふと、召喚の構えを仕掛けた途端に途轍もない恐怖が全身を襲ったんだ。

それ以来、アイツを調伏する気は無くまだ先の事だろうと考えていたんだが…。

【玉犬】が破壊された事がかなり焦りと、シドがいるならば何とかなる気になって、調伏出来たら恐る事なんてないと…前のように調子こいてしまった…。

その結果が、この有様だ。

シドの奴はまだ挑戦する気でいるが、俺は完全にやる気を失せたよ。」

 

 

「ユノ…。」

 

 

「俺はもう…死にたくないし、死ぬ事なんて…出来ないからな。

お前の親父さんと約束したんだ。

───お前達を守るって。」

 

 

「!! う、うん…。それなら…い、良いんだ。」

 

 

リリムは一人、頬を赤く染めてモジモジとしていた。

 

 

「(本音を言うなら、『お前達を』って部分を『私だけを』って言って欲しかった気持ちがあるけど…。

うん、でも(あの子)の事もちゃんと思ってくれてるのは嬉しいからこの辺に…。)

分かってくれているのなら安心したよ。」

 

 

「あぁ…。あ、そうだ。

どうして俺達が【魔虚羅】の調伏の事を知っていたんだ?

俺からは誰にも言っていないし、シドも一言声をかける様な奴じゃないし…。」

 

 

「ああ、それについてはね。

()()】が教えてくれたんだ。」

 

 

「何…!?」

 

 

「え、ど、どうしたの?」

 

 

「実は…。」

 

 

「………成程。主殿によって【玉犬】が…。

けど、それならどうして私の影に明確的に分かる様に現れたんだろう?」

 

 

「そうだな…。どうしてだろうか…。」

 

 

(…【玉犬】がリリムの元に、か。

俺と彼女には力の共有とかの出来事は一度も起きていない。

アルファの話を組み合わせると、【玉犬】が破壊された事でリリムの元に行った。

……つまり、タイミング自体は変な事は無く、そして…。)

 

 

ユノは自身の影に視線を向ける。

 

 

(…【玉犬(お前)】はまだ、生きているのか?)

 

 

「…おっと、そろそろ行かないと。

ユノともっと話がしたいのに、重大な任務がある以上は行かないと…。」

 

 

「はは……気持ちだけでも嬉しいよリリム。

また来てくれよ。」

 

 

「………それについてだけど。

───暫く顔を出せれないと思うんだ。」

 

 

リリムはとても悲しそうに、辛そうに声を発した。

 

 

「……何か、訳があるのか?」

 

 

「…強く、なりたいんだ。

いつまでも守れるだけじゃなくて、逆に守れる位に…

ユノを守れるくらいに強く。」

 

 

「…」

 

 

「任務もこなしつつ、私自身もっと強くならなきゃって…

『霧の龍』や『セルゲイ』の件では結局、ユノがあったお陰で何とかなったけど、コレでは本当に強くなれているかと問われればそうでは無いと思ったんだ。

そして…ユノでも負ける事があるって分かって決心がついたんだ。」

 

 

「…」

 

 

「勿論、納得いかないとは思う。

けど、ユノも傷を治したら強くなる為に行動するでしょ?

だから私も同じ事をするだけだよ。

大丈夫、教団は一緒に倒そう。

【魔虚羅】なんて無くても一緒に戦えば勝てるよ。」

 

 

「…そうだな。」

 

 

「さて、もう私は行くね。

…あぁそうそう、アイツ達の事も任せといて。

ユノはユノで頑張って。

私も、今よりも強くなるよ。

ユノが魔剣士学園に入学するその時

───2年後にミドガル王国で会おう。」

 

 

そう言って…彼女は今度こそシャドウガーデンの一員として行動に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………アレから10日か。」

 

 

ユノはベットで横たわっている状態で天井を見上げながら呟く。

少し前まで全身に巻き付かれていたミイラに近い状態の包帯は解かれており、体の怠さも完治前まで回復していた。

それこれも、通常より人間とは違い魔力があるからだ。

 

 

「……にしてもシドの奴、相変わらず鬱陶しいレベル位に元気だったな…。

如何にアイツとはいえ、ボロボロになるまでダメージを受けた事から少しは自重を覚えてくれると願っていたけど…それは叶わぬ願いだったか…。」

 

 

そう、シドは相変わらず狂人な精神と強靭な強さを持ったいつも通りに戻っていた。

先ずユノにかけた言葉も…

 

 

『や、ユノ! また何処かでリベンジしようねー!』

 

 

『死ね。』

 

 

『早々に酷くない?』

 

 

…とまぁ、あのシドが逆に落ち込んでいたりしていれば、そっちの方が大問題だろうからコレである意味良いのかもしれない。

ただし、ユノはしっかりとシドに【魔虚羅】には二度と調伏しない事を告げたのにも関わらず…

 

 

『楽しみだなぁ〜!』

 

 

これもまたいつも通りの自己中心的な自分の世界ならぬ自分の解釈により、全く耳に入ってなかったとか。

 

 

「ま、それも無視すれば良いだけの事さ。

俺がしっかりとすれば良いだけの話。

……後は今日一日位大人しくしておけば、『円鹿』の反転術式で回復して完治したとすればこれで解決だな。」

 

 

と、呟いていると…影から何かが飛び出しかねない勢いに聞き覚えのある声が頭に響いた。

 

 

「んん? この気配……まさか!?」

 

 

ユノは咄嗟に破壊された筈の式神の掌印を結んだ。

すると、影から元気いっぱいの大きな狼が飛び出て、ユノに甘える。

 

 

オオオォンッ! ヘッヘッヘッ!

 

 

「『玉犬』!! よしよし、あ、こらこら!」

 

 

ベロベロと舐められ、咄嗟に離すように手で触るも…

余りにも嬉しい出来事に頭を撫でた。

 

 

因みに、『玉犬』の声が聞こえたのか家の者達が急いで向かって来るのを感知して咄嗟に影に戻す事で難を逃れた。

 

 

「良かったね、ユノ!

これなら今度も破壊されても大丈夫そうだね!」

 

 

「……最後の一言で一気にお前に対して腹が立ってきた…!

もう二度と金借りに来ようとするなよ。」

 

 

「ごめんなさい、反省しました。

だからそんな酷い事を言わないで下さい。」

 

 

実はシドはユノからかなりの金額の金を借りているとかなんとか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、寝てばっかりでかなり体が鈍ってるな。」

 

 

んー!と、背筋を伸ばしながらユノはストレッチをする。

 

 

「…『玉犬』が復活したのは嬉しい事なんだが…俺の『十種影法術』についてもっと知らないとな。

どういう原理なのか…それから、スライムを用いなくても高出力の攻撃が出来るように特訓しないといけない。

やる事は多いが、やれる事が分かっているのはある意味幸いかな。」

 

 

…っと、歩きながら呟いていると。

 

 

「ん?」

 

 

ピキーンッ!と、瞳に何かが映し出される様に視界に映る。

それは…先にある大きな岩がシドによって何当分にも斬られた瞬間だった。

 

 

そして、それが現実として目の前で起こった。

 

 

「あ、ユノ! ユノも体鳴らしに運動でもしに来た?」

 

 

「…」

 

 

「ユノ? おーいユノー?」

 

 

シドによる声が聞こえない。

その位に今のユノは自分の可能性に手を振るわせていた。

 

 

(今の感じ…前のセルゲイって野郎と戦った後に見えた姉上の行動の様子と同じ…。

これってまさか…未来予知?)

 

 

未来予知、影の力の強化…と、この世界に転生してから考えらなかった様々な可能性。

そして、それを前世で見てきた漫画の知識を合わせて完全に自分のものに出来たとすれば───

 

 

「…ふっふふ、俺は強くなれる…!」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「…先は長いが、不思議な事に自分の可能性に気づいたら、笑いが止まらなくなってな。」

 

 

「ん? ふーん…良いじゃない?

正直、あの最強の式神くんに負けてから元気が無くなる一方だっけどさ。

今のユノはどんどん強くなれそうだよ?」

 

 

「そうか……お前がそう言うなら、そうだろうな!」

 

 

ユノは勢いつけて走り出す。

走る先にある大きな岩の山を『影の手』で伸ばして上空に吹き飛ばし、更に『影の刃』に素早く変化させて斬り刻み、ユノは斬り刻まれた石の雨を目に神経を研ぎ澄ませて、一つ一つの石の動きを予測しながら回避していく!

 

 

「やってやるよ!

全部…可能性の全てを引き出して、全てを俺のものにしてやる!

ゼータもアイツら頑張ってるんだ、俺もウジウジとしていられるかぁあ!!」

 

 

石の雨を素早く動いて回避し、更にはスライムに頼らずに『影の刃』のナイフで更に素早く斬り耐え抜いていくユノ。

…その姿を見てシドは。

 

 

「おー、なんかすっごく気合い張ってるねぇ〜。

何があったのかわっかんないけど、良いよ〜ユノ。

その調子で強くなってよー?

強くなって、僕と共になるんだ…陰の実力者に…!

ううん、良いねぇ。僕も負けてはいられないね!」

 

 

シドはユノを見て意味ありげな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある荒地にて───

 

 

 

「ぐぁぁぁあああ!!」

 

 

血飛沫が飛び散る。

 

 

「くたばりやがれ!」

 

 

「あぁぁああああ!!」

 

 

一人一人を槍で斬り裂かれる。

それと同時に盾で頭を叩き潰したりし…いつの間にか多くの死体が倒れていた。

 

 

「ハッ、どいつもこいつも大した事のねぇ奴等。

…本当に腹が立つぜ、こんな奴等に俺は…!!」

 

 

怒りのオーラが体中から溢れ出す。

魔力も加わった事でオーラが周囲を揺らしていた。

 

 

「……フンッ!」

 

 

とある男の言葉を思い出し、冷静を取り戻す。

 

 

「……チッ、気が削がれた。

次…の前に腹拵えにするか。」

 

 

頭に生えている小さな兎の耳をピクピクッと震わせ、腰布と長い髪で隠された可愛らしくも同時にボロボロの尻尾を揺らし、所々の銀の甲冑の鉄音を立てながらその獣人はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある夜の裏通り───

 

 

 

「ぐっ…くっ、クソォ…姿が見えないのに…

この町の教団の連中全員……やられちまった…!

ネームドの奴等もいたのに…!!」

 

 

教団関係者の男は数度刃物で刺された腕を押さえながら、とある建物の陰に隠れて息を吐いていた。

 

 

「…っ、後残っているのは───」

 

 

「キミ一人だけだよ。」

 

 

「!?」

 

 

突如として男の言葉に答える謎の声。

 

 

「な…何なんだよお前ぇ!!」

 

 

「キミは知らなくても良い事だよ。」

 

 

「っ!? ま、待てよ…黒いローブ…

ま、まさかシャド───」

 

 

男は最後まで口に出来ずに()()で首を切断され、絶命した。

 

 

「はぁ……その名、想像よりも早く出回っているみたいだね。

良かった。一応ボクはその組織に属している訳じゃないから、お陰でやりたいように動き回れる。

…とはいえ、いずれその組織に属する事になるだろうから、そうなると行動が制限されると考えると…悔やまれるな。」

 

 

溜め息を吐きながら、死体を素早く処理しながらその場を後にする。

 

 

「今夜は満月、か。

綺麗だけど、それだけでそれ以外に何も感じない。

……誰かと見れば違うのかな?」

 

 

そう呟き、自分を救ってくれた特殊な力を持つ彼を一瞬思い、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り…

ゼータがカゲノー邸を後にした頃───

 

 

 

「どうでしたか? あのお方の具合は。」

 

 

ゼータは声を掛けてきた人物に顔を向ける。

 

 

「ん? あぁ、来てたんだ。」

 

 

「はい。それで…。」

 

 

「大丈夫だよ。ユノは元気だったよ。」

 

 

「…そうでしたか。良かった…。」

 

 

安堵の溜め息を漏らした。

 

 

「…それと、あの件についても報告をしたよ。

ユノは黙ってそれを受け入れてくれた。

だから悪いけど、暫くはユノに会えないよ。」

 

 

「…勝手に決めてくださりますね。

その約束自体はあくまでゼータ様と()()との約束であって、わたくしは含まれないと思いますが?」

 

 

「上司命令。」

 

 

「…嫌な上司を持ってしまいました。

まぁ、他の方々よりかはマシですが。」

 

 

「アルファやベータにイプシロンは主殿よりだから、分からなくもないけど。

ガンマやイータは良いんじゃないの?」

 

 

「ガンマ様は他の方々よりかは信頼出来る方に見ましたが、その…何も無いところで転けたりしているのを見ていると、大丈夫なのかと違う意味で心配気味です。

ガンマ様の指示下ですと、違う苦労をすると分かっておりますので。」

 

 

「確かに、ガーデン全体のフォローに入ってるコンチェッタからの報告だと、特にガンマのフォローは大変だと聞いているよ。」

 

 

「…それからイータ様はガーデンやボスの意向よりも、自分の意思を尊重なさっている事や人体実験を平気で行おうとしている時点で論外です。」

 

 

「まぁ、それはそうだね。」

 

 

「という訳で、ボスの意向の元仕方なくゼータ様についているのです。

…本当はボスの側にいたかったのですが。」

 

 

「それは駄目だね。ユノの側近は私だ。

その居場所は誰にも渡さない。」

 

 

「あら、わたくしが側にいると何か不都合でも?」

 

 

「キミが有能なのは私自身も認めているからね。

…そのせいでキミにユノの側近を奪われたら困る。」

 

 

「…そうですか。」

 

 

上司からの高い評価で素直に嬉しい気持ち半分、それ故にボスであるユノの側にいられない事に不満を抱いた。

 

 

「───お迎えに参りました。」

 

 

突如、2人の前に馬車で迎えに来た執事服を着たコンチェッタが礼儀正しく現れた。

 

 

「お迎えご苦労様、コンチェッタ。」

 

 

「ご苦労様です。」

 

 

「いえ。それからユノ様の身の回りはゼータ様の指示により、定期的に私がしますのでご安心を。」

 

 

「…コンチェッタさんは宜しいのですか?」

 

 

「コンチェッタは私に忠実だからね。」

 

 

「勿論でございます。私はユノ様とゼータ様の御二方が一緒にいる事を考え何よりも優先に考えておりますので。」

 

 

コンチェッタはそう言い、さっさと2人を馬車に誘導した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬車に乗って目的地に向かう中、ゼータは窓から月を見ていた。

 

 

(…ユノ、私は何処までも一緒に着いて行くよ。

『ディアボロス教団』を滅ぼすにあたって、必ずアルファ達と意見のすれ違いになる事は明白。

それで『シャドウガーデン』がバラバラになろうとしても…私はずっと、キミの側にいるからね。

そのためにも───)

 

 

「…ゼータ様、お客様です。

数は30、中には元魔剣士だろう者達が約7名。

お時間が掛かるので、少しお待ちくださいませ。」

 

 

「いや、私が出るよ。」

 

 

「ゼータ様が?」

 

 

「ゼータ様、わたくしも手伝います。」

 

 

「いや、私だけで良い。

軽い運動がてらに体を慣らしておくよ。」

 

 

ゼータはそう言って、馬車の扉を開けて飛び出した。

 

 

「おいおい、それなりの荷物を運んでいるからそれなりの魔剣士かと思ったら。」

 

 

「それなりの女じゃねぇか。コイツは高値で───」

 

 

喋っている途中、ゼータが目に見えぬ速さで蹴った後…

下品な事を考えていた大柄の男が真っ二つに裂かれた。

 

 

「な、何だ!? 何をしやがった!?」

 

 

「知る必要は無いよ。」

 

 

そう言いながらゼータはトントンッ!と、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お、おい!? 空を飛んでやがるぞ!?」

 

 

賊達はあり得ない物を見ているかの様な顔をしていた。

 

 

(ユノ……強くなろう。

そしてこの世界を…共に変えよう。)

 

 

ゼータは誓いを胸に、足元に力を集中させて蹴り放つ!

 

 

「全てはユノ(我が主)と共に!───《嵐脚》!!」

 

 

大きな鎌風の斬撃が賊達を一瞬で全滅させた。

 

 

「流石です。()()()使()()()して敵を殲滅…

これが『七陰』の力。」

 

 

「この場合、『七陰』だからじゃないよ。

ユノの配下だからこそ、だよ。」

 

 

ゼータは『ユノの配下』である事を強く誇張した。

 

 

 







・『2年後に、シャボンディ諸島で!』のネタがやりたかったからノルマ達成したぜ!
それにちなんで、自分の好きな要素である『六式』をゼータに披露して貰いました。
因みにアルファ達は使えません。
使えるのはユノ派であるゼータ達のみで、今後他の者達が使うからどうかは未定です。
…まぁ、使えた方がいいですかね。
それを混みにしてこれから設定を明るめにしていきますので、ご期待ください。
では───


・次回、『それぞれの場面』
ユノやシド達とは異なる視点のお話。
この物語の裏でそれぞれに思う者や暗躍する者達が明らかとなる…!


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