陰と影の実力者   作:黒ソニア

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お久しぶりです。『影実』再開します!




【第二部】影使いの劇場
第20影:『ミドガル王国』


 

 

 

高い建物から下に見える王国の街並みを見下ろす二つの影。

 

 

「…フッ。」

 

 

漆黒の衣を靡かせ、深く被るフードから見える赤く光る瞳。

男は小さく笑っていた。

 

 

「…はぁ。」

 

 

もう一人の影は…小さく溜息を吐いていた。

 

 

「心配は要らないわ。」

 

 

「敵は既に包囲済みです。」

 

 

「全ては主様達のご観察通り。」

 

 

「久しぶりの狩りなのです…!」

 

 

「皆、主様達の号令を待っております。」

 

 

「…うん。」

 

 

金髪、銀髪、藍髪、黒髪、水髪、赤紫髪のエルフまたは獣人達が前にいる2人に従う様に立っていた。

 

 

「…いいだろう。

何が良いのか分からないけど、良いだろう。(※小声)」

 

 

「適当に答えるなよ…。(※小声)」

 

 

一人がフード越しから頭を抱える。

 

 

「ここは勢いに任せて良いと思うよ。(※ボソッ)」

 

 

白金髪の獣人が溜め息を吐いた影に耳打ちで伝え、一瞬の内に6人の元にいつの間にか立っていた。

まるで最初から居たかのように。

 

 

「…そうだな。行くぞ…!」

 

 

「今宵は───」

 

 

「───我等の時間だ…!」

 

 

二つの陰と影が夜の世界にへと飛び出す。

それに続く様に七つの陰も飛び出した。

 

 

「我が半身たる影の眷属達よ…お前達の力を見せてやろう…!」

 

 

足元から九つの獣型の影が呼応する様に飛び出る。

…そして、その深淵の影から目を怪しく睨む。

 

 

 

 

 

そして───とある場所にて、その者達を迎え撃つ様に座っていた者がいた。

 

 

「来るかい。ならば僕等も相手しよう。」

 

 

「この世の全てはアナタ様の物です。」

 

 

「ふふ…。」

 

 

男は立ち上がり、目隠しを上げて青い瞳を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「着いたね。」

 

 

「着いたな。」

 

 

2人は馬車から降りると、辺り一体を見渡す。

 

 

「都会だなぁ…しか感想が無いや。」

 

 

「もう少し感想を述べたらどうだ?」

 

 

「ユノだって特にないでしょ?」

 

 

「……都会、だな。」

 

 

「ねー。」

 

 

2人は案内紙を懐から取り出して歩き出す。

 

 

「一応俺等って貴族なんだよな?

何故目的地まで馬車で案内してくれないんだ?」

 

 

「この世は階級社会だからねー。

田舎貴族じゃ、都会貴族様方程の待遇は望まないんだ。」

 

 

「酷い世の中だ。」

 

 

「しょうがないんじゃない?」

 

 

「………どんどん人の少ない所まで歩いてるな。

寮から学園までかなり距離がないか?」

 

 

「そだねー。まぁ、貴族達が通う学園の中でモブとして振る舞えるのなら、僕は文句ないよ。」

 

 

「……俺は異世界に転生してまで早起きして学校行く羽目になるとは思わなかった。」

 

 

「ある意味あるあるじゃない?

あ、ほら。駄弁ってる間にも着いたよ。」

 

 

「……すげー庶民的な寮だなー。」

 

 

「あんまり言わない方が良いよ。」

 

 

「だな。」

 

 

ユノとシドは寮に入り、荷物を置く。

 

 

「……でも、不思議と実家に帰って来たような感覚がある。

いや、俺にとっては寧ろそれは最悪な事だった。

全然マシだわ。この寮生活も。」

 

 

ユノはそう呟くと…

 

 

「……見られている。だが…この魔力は…。」

 

 

 

 

 

「それじゃ、僕達のモブ友達を作りに行こうよ、ユノ!」

 

 

「俺は良い。そういう陽キャ的な考えを持ち得ないんで。

それより、街並みを見ておきたい。」

 

 

「えー。」

 

 

シドと別れ、ユノは単身…感知した魔力を追いかけに行った。

 

 

「この辺か……随分と人混みが激しいな。

………んん?」

 

 

ユノはガラス越しから見える物を見て、目を凝らして二度目する。

 

 

「………可笑しいな。この世界に()()()の概念は無かった筈。」

 

 

そう、この世界は中世ヨーロッパ風な異世界。

その為、ユノの…いや、只野真人の時代にあったスーツの概念は無い筈の物が…マネキンに着せられて展示されていた。

 

 

「…マネキンも何故この世界にあるんだよ…。」

 

 

そう呟いていると…

 

 

「ん……俺の寮に入ったみたいだな。」

 

 

スーツやマネキンなどに意識を持ってかれていたせいか、魔力感知で察知していた魔力がいつの間にか、先程いた寮にまで移動していたらしい。

 

ユノは直様切り替えて寮まで歩き……部屋の前まで来てドアノブに手をかける。

周りを見て、そして人の気配を探り、誰もいない事を把握してドアを開ける。

 

するとそこに───

 

 

「や、ユノ。元気にしていた?」

 

 

窓枠に座って猫のポーズを取る美女───成長したリリムの姿があった。

 

 

「───」

 

 

ユノは2年で爆発的な成長を遂げていたリリムの姿に言葉を失っていた。

勿論悪い事では無い。それくらい衝撃的だったのである。

 

2年前とは全く別人レベルの肉付き……豊満な胸、さらっとした脚、大人びた顔。

 

子供から大人になっていたリリムがそこにいた。

 

それも、魔剣士学園の服を着て。

 

 

「どうしたの? 何か声をかけてよ。」

 

 

「…………ハッ! すまん。

初めて会った頃のリリムを思い出した…。」

 

 

「何それ。それって………私が成長してないって事?」

 

 

「そんな訳ないだろ! 

2年前に比べてスゲー美人になってたからビックリしたんだよ!」

 

 

「…!! そ、そっか…そうだったのなら、良いんだ…。

良かったぁ(※小声)」

 

 

「ホントに……お前、なんだなリリム。」

 

 

「うん。そうだよ。」

 

「見違えたな。以前とは格段に強くなってるし、何より……すごく綺麗になったな。」

 

 

「ふふ…ありがと。」

 

 

リリムは立ち上がって、ベットに座り込む。

 

 

「それにしても、特待生以外は平民と変わらない生活を強要するなんてね。」

 

 

「それは俺も思った。けど同時に、自分がそんな大した人物じゃない事を思い出して理にかなってると思ったよ。」

 

 

「そんな事はないさ。

ユノはもっと優遇されて当然だよ。」

 

 

「気持ちだけ受け取っておくさ。」

 

 

ユノもリリムの隣に座る。

するとリリムは透かさずユノに密着して肩に頭をのせる。

 

 

(やべぇ……フェロモンって言うのか、大人の魅力というのか…兎に角すんごい刺激される…!

以前まで、成長途中の女子中学生だったのが、あっという間に美人モデルまでに成長を遂げてしまった感…!

何を言っているのか分からないと思うが、俺も分からない…!!)

 

 

「緊張しすぎじゃない?

ほら、私だけなんだから、リラックスリラックス。」

 

 

(逆にキミだからリラックス出来ないんですが!?

この子…とんでもなく美人さんに成長しちゃってるよ!

元から素養あったからもしかしたらって思ってたら、それ以上の成長を遂げちゃってるよ!

てか、リリムさんや、おっ…大きなたわわを押しつけちゃってるよ!?)

 

 

「どうしたの? 何かあったの?」

 

 

(自分からやっておいて何を言ってるんのだぁ!?

この子ぉ!! ありがとう神様!!)

 

 

と、どの神様に感謝しているのか知らないが、ユノの心情は20代に求婚して来た子が、30代になっても求婚してきた時の様な気分になってた。

まるで意味が分からないが。

 

 

「おっほんっ! ごほほん!

……リリムよ、お前が来たのには何かあるんだろ?

報告を聞いて……おこうかなぁ。」ユノの声が若干上擦っていた。

 

 

「はぁーい。

───このシャドウガーデン『七陰:第六席』ゼータ、我が主の到着心よりお待ちしておりました。

全てはディアボロス教団を祓うため…()()共々、フェイカーに並ぶ為、力を付けてきました。」

 

 

リリムは立ち上がるとユノに向かって膝をついた。

 

 

「んんんっ! そうか。

確かに……以前とは比べ物にならないレベルになったな。

魔力量は勿論……その()()、モノにしたんだな?」

 

 

「勿論。ユノの教えてもらった()()は既にマスター済みさ。

……ただ、私は()()()をまだモノには出来てないんだ。」

 

 

「……そうか。だが…!

焦る必要は無い───俺がついている。」

 

 

ユノがリリムに語りながら立ち上がり、窓の前へ立つ。

すると、開いた窓から強い風が吹き始めた。

 

 

「…うん。」

 

 

その有志が、強い風を黄金の風に思わせる。

リリムはその風を受け、先程の不安が掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

「さ、こっちだよ。」

 

 

「ここは接待室……に見せかけた場所だな。」

 

 

「そう。この本棚が()()()だよ。」

 

 

ゼータはユノに分かるように仕掛けの解き方…黒、青、紫の本の順番に押し込む。

すると……本棚は扉の様に開いた。

 

 

(この仕掛け扉、シドの奴が知ったら絶対に喜ぶな。

まぁ当然、俺も大絶賛な訳だが…!)

 

 

ユノはゼータに連れられ、螺旋状の階段を登る。

 

 

(あの銅像……シドのシャドウの姿のだよな。

まるで宗教みたいだな。俺もアイツ程…に近いが、宗教を好まない奴が宗教の象徴みたいな扱いをされるとはな。)

 

 

そんな事を考えながら歩いていると、長い廊下の先に大きめの扉に誘導され…扉を開ける。

 

 

「あら。来たみたいね。」

 

 

そこにいたのは、ゼータ同様に急成長していたアルファだった。

 

 

「アルファ…! お前も…随分と大人びた…っていうか、大人だな。」

 

 

「ふふ…ありがとう。」

 

 

ユノが驚きのあまり呆けていると、ユノの横を通る様にベータがアルファに資料を手渡す。

 

 

「アルファ様、頼まれていた資料をお持ちしました。

そしてユノ様…お久しぶりでございます。ベータです。」

 

 

「ベータ…! お、お前も随分と……大人になったな。」ユノは無意識にベータのとある部分を見てしまい、慌てて目を逸らした。

 

 

「ふふっ、ありがとうございます。」

 

 

………ベータは微笑んで流してくれたが、ゼータは不機嫌そうな顔で無言でユノの横っ腹をつねった。

 

 

「痛い痛いっ!」

 

 

「ふふ。」

 

 

「クスクス。」

 

 

アルファとベータは二人の仲睦まじい姿を見て微笑を浮かべていた。

 

 

「失礼します。ユノ様、ようこそミツゴシへ。」

 

 

「ガンマか…!?」

 

 

「はい!」

 

 

今度はガンマが部屋に入り、ガンマが歩み寄ると───

 

 

「ぐびゃあ!?」

 

 

「ふむ…。」

 

 

ガンマは頭から転びそうになり、それをユノが影で支えた。

 

 

「うん、ガンマだな。」

 

 

「ううぅ……お恥ずかしい。」

 

 

「まぁ、俺がいる時は転ぶ事は無いって思っておけ。」

 

 

「…!! はい!!」

 

 

「…………にしても、ゼータの時にもビックリして薄々そんな気はしていたが…皆んな、凄く大人びたなぁ…。

アルファとベータは俺達と同い年だっていうのに…俺達よりも大人になってるな。」

 

 

「ふふ。女の子は成長が早いのよ。」

 

 

「その様なのを聞いた事はある様な気はするが……だとしても、急成長しすぎだ。」

 

 

皆が大人の対応と大人の貫禄がある仕草を見て…ユノは自分が彼女達に比べて成長していない事に心の中で愕然としていた。

 

 

「あ、副ボスなのですぅ。」

 

 

「その声……デルタか!

お前も随分と大きくなったなぁ…。」

 

 

「デルタは賢くもなったのです!」

 

 

「あぁー……そうだね。」

 

 

「ワンちゃんは余計な事を言わなくてもいいよ。

ユノが困惑してる。」

 

 

「メス猫!」

 

 

ゼータ()デルタ()は昔と変わらずに睨み合っていた。

 

 

「…やれやれ。」

 

 

「困った子達ねぇ。少しは落ち着きを覚えなさいよ。」

 

 

「…イプシロンか!」

 

 

「はい。お久しぶりでこざいます。ユノ様。」

 

 

イプシロンもゼータ達同様に成長していた事により、驚きを隠せずにいた……が。

 

 

(……ん? イプシロン…何でスライムスーツで私服を補っている……いや、私服だけじゃない!

イプシロンの身体全体がスライムで出来ている!?

どういう………本人は…昔と変わって…ない!?)

 

 

ユノはイプシロンを相手に無言で見つめていた。

 

 

「やだ、ユノ様。その様に見つめられてしまうと…イプシロン困ります。」

 

 

「ん………あぁ、すまん。」

 

 

「…!(まさかユノ様、私の秘密に気づいた!?)」

 

 

「わ、私も成長を…。」

 

 

ガンマは自分を見つめていた。

 

 

「…?(ユノのイプシロンに向ける視線がなんか怪しい?)」

 

 

皆が特に気づいていない中、ゼータはイプシロンに対するユノの反応に疑問を抱いていた。

 

 

「……ユノ様。少し…宜しいでしょうか?」

 

 

「あ、あぁ。」

 

 

イプシロンに連れられ…一時離れた所で───

 

 

「……ユノ様。何か気になる事がありますか?」

 

 

「……その言い方は何、かな?」

 

 

「……知ってしまいましたね?」

 

 

「……なんの事、でしょう。」

 

 

「……この事はくれぐれも……くれぐれも!

内密に……お願いしますっ!!

特に、あの天ね……ベータには…!」

 

 

「お、おう…。(何でベータを名指し?)」

 

 

「……所で、ユノ様はお気付きになられた…という事は……主人様も…!!」

 

 

「いやぁ…どう、だろうね?

俺は感知に関してはアイツよりも優れている時があると…思う、し。」

 

 

「それはつまり……気づかれない可能性もあると…!?」

 

 

「た、多分。」

 

 

「そうですか……このイプシロン、“緻密”の二つ名にかけて更に腕を磨きます!」

 

 

「うん……ガンバレ。」

 

 

こうして、何とかイプシロンの圧から解放されたユノ。

ユノは部屋に戻って、疲れた様子を見せていたため、ガンマが椅子にへと誘導して紅茶を渡す。

 

 

「ズズ……ミツゴシの紅茶、美味いな。」

 

 

「お褒めに預かり光栄でございます。

はっ! そうですそうです!

イータのお陰で、ユノ様が仰っておりましたフルーツティーの開発に成功いたしました!

直ぐに持ってくるように手配します!」

 

 

「おお、凄いなぁ。」

 

 

ユノは財布を取り出して金貨を出そうとする。

 

 

「ユノ様。お金なんて必要はありません。

このシャドウガーデンはユノ様と主様の為の組織である故…金貨を納め下さいませ。

何でしたら、必要な金貨をご用意致します。」

 

 

「そ、そう、なのか?

……金貨は不要だ。ガンマ達が稼いだ資金は全てお前達の資金だ。

この話に関してはシドに無言…資金を渡さなくても良い。

何なら、俺を通してからにしなさい。良いね?」

 

 

「はい! 承りました。」

 

 

(……これで、シドが闇雲に資金を使いまくる被害は阻止できた。)

 

 

ユノが一安心していると…ズルズルと服と大きなスパナを引きずっていたイータが入って来る。

 

 

「仕事、終わった…。」

 

 

「ご苦労様、イータ。」

 

 

「イータ……お前も大人びたなぁ…。」

 

 

「あ、ユノだ。」

 

 

イータはユノの姿を見るや否や、ユノに抱きついた。

 

 

「「「「!?」」」」」

 

 

「……イータ、しれっと俺の血液を採取するの止めてくれ。

後、謎の薬も投与しようとするのも、な。」

 

 

「うー……折角ユノが、いたから…チャンスだと、思ったのに…。」

 

 

「俺は以前よりも感知の技術が上がってるんだ。

残念だったな。」

 

 

「……胸とか、強めに…当ててたのに?」

 

 

その一言にゼータ達各々が反応する。

 

 

「……俺がそういうのに弱い事は認めるし、駄目なのは認める。

けど…それで油断するとは、思わない事だな。」

 

 

「……ちぃ。」

 

 

「舌打ちは止めなさい。女の子だろ…。」

 

 

ユノはイータの頭に軽くチョップするのであった。

 

 

「イータ、ユノに迷惑をかけない。

以前、ユノがそのせいで大変な目に遭った事…忘れてないよね?」

 

 

ゼータがイータの襟首を掴んでユノから引き離した。

 

かつて……七陰達が一度、ユノ達から離れる前。

最重要研究対象であるユノ(※イータの話)をイータが隠れて薬剤やらを投与し、ユノを人体実験やらして被害に遭わせていた。

イータは他のメンバー(※主にベータ)にも手を出しており、皆に迷惑をかけていた。

ある意味デルタとは異なる意味で困ったちゃんだった。

 

話は戻して……ユノは被害にあってイータに少し苦手意識を抱き、ゼータがストッパーになった。

因みに、それにはシドも関わっていた事もあり…お陰でユノは体調を崩しやすい体質になってしまった。

 

 

「うぅ……ユゥノォ〜…ゼータママから助けてぇ…。」

 

 

「私、イータのママじゃないけど。」

 

 

「ユノママァ〜…。」

 

 

「俺もママじゃない……それ以前に俺、男なんだけど…。」

 

 

ユノ・ゼータ・イータのやり取りにアルファとイプシロンは面白愉快そうにクスクスと笑っていた。

ベータ・ガンマはイータの対応の苦労に理解があり、苦笑い。

デルタは先程から無言でオヤツの肉を食べていた。

 

 

「…デルタ、オヤツはお外で食べる様に言っているでしょ?

ガンマ、どうしてここに置いておくの?」

 

 

「デルタが自分で持ってきてしまうみたいです。」

 

 

「はぁ…またカーペットに汚れが…。」

 

 

イプシロンが嘆息吐きながら掃除しようとするも…ユノがスライムを通して魔力を用いて、一瞬で新品同然に綺麗にした。

 

 

「す、凄く綺麗になってる…!」

 

 

「あら…これはどうやったの?」

 

 

「魔力はエネルギー…エネルギーの熱を用いて汚れを消したんだ。」

 

 

「それは……操作と制御による技術、ですか?」

 

 

「そうだ。」

 

 

淡々と答えるユノに、アルファ達は驚きつつ称賛をする。

 

 

「……流石ね。私達にも出来るかしら。」

 

 

「ああ、勿論だ。」

 

 

「ユノの教えて貰った事は全て完璧にマスターするよ。」

 

 

「ああ、ゼータはその辺器用だからな。

感覚を掴めれば直ぐだ。」

 

 

「わ、私も頑張って直ぐに会得します!」

 

 

「ガンマ、そう焦らなくても良い。

お前はお前のペースでな……何、お前が戦闘に貢献出来ない悩みは理解している。

その辺について…俺なりの考えがある。

それもまた時間ある時に、な。」

 

 

「はい! ありがとうございます、ユノ様ぁ!」 

 

 

ユノの言葉を受け、ガンマはパァァと晴れやかな表情を浮かべた。

 

 

「…私も、理解早いよ。」

 

 

「このイプシロン、そういった技術に興味深々です!」

 

 

「ユノ様、このベータにもご教授を!

…それから、シャドウさ…シド様はどちらに?」

 

 

「アイツは……今友達作りに夢中になってるから、その内連れて来る。」

 

 

「…友達作り。彼が取る行動には意味がある。

なら、私達は彼の害にならない様にしないと…!」

 

 

「はい! ベータ、シド様のお邪魔にならない様、気をつけます!

ユノ様、シド様の空いた頃に是非!」

 

 

「デルタは早くボスと遊びたいのですぅ!」

 

 

「こらデルタ! 主様の邪魔をしては駄目よ!」

 

 

アルファ・ベータ・デルタ・イプシロンのやり取りに…ユノはバレないように溜め息を漏らす。

 

 

「……やれやれ、アイツは自分の都合の良いよう話が進む特殊能力でもあるのかね。」

 

 

「まぁまぁ。ユノにも特別な力がある訳だし…都合が良いなら良い訳だから、思い悩む事は無いよ。」

 

 

「……そうだな。」

 

 

ユノは頷いて、ゼータ達が成長したとしても変わらない所を見て微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

ユノはある場所に向かっていた。

それはこれから通う魔剣士学園への道……もあるが、その近くの特待生達の寮である。

 

 

「さてさて…いるかな……あ、いた。」

 

 

ユノは探していた人物の元へと歩む。

 

 

「お久しぶりです、姉上。

ユノ・カゲノー、入学に合わせて挨拶しに参りました。」

 

 

「偉いわね、ユノ! 流石は私の弟!

それから私の事は『おねーちゃん』よ!」

 

 

「……姉上、家ではそう呼ばさせて貰いますけど…外ではお許し下さい。」

 

 

「むぅぅ…!」

 

 

クレアは珍しく頬を膨らませていた。

彼女としては血の繋がりが無いが、仲は睦まじい事を示す為に『おねーちゃん』と呼ばせたかった。

……否、ただ単にそう呼ばれたかったのが一番だろう。

 

 

「キミ、見ない顔だな。

特待生じゃないキミは此処に来るべきでは無い。

さっさと、寮に戻りたまえ。」

 

 

「私の可愛い弟なのよ?

口答えしないでくれる…!?」

 

 

「ひぃ!? し、失礼致しました!」

 

 

クレアの凄まじい殺気を含んだ睨みで、ユノにキツく当たる魔剣士は怯えて逃げた。

 

 

(悪いな魔剣士さん。姉上には…ある意味誰にも勝てないんだ。

少なくても、俺とシドは、な。)

 

 

「ふぅ。大丈夫、ユノ?

悪い奴はおねーちゃんがいつだって追い払ってあげるからね!」

 

 

「あ、ありがとう…アハハ。」

 

 

「…それにしても、ユノは挨拶しに来たのに…シドは来ないの!?」

 

 

クレアは無論、ユノだけで無く、実の弟であるシドに対しても可愛がっているので、この場に来ていない事が許せなかった。

 

 

「(しまった…アイツと一緒に来るべきだったな。)

き、きっと、シドは恥ずかしがってるんだよ。

ほら、シドってあまり姉上に側に寄らないでしょ?

それは姉上とは異なる形で思ってるから、恥ずかしいんだよ。」

 

 

勢いに任せてデタラメな嘘を吐いてしまったシド。

正直、やり過ぎた嘘だと思ったが───

 

 

「…!! そう、そういう事だったのね!!

なーんだ、これで全ての行動に納得がいったわ。

あの子…まだまだおませさんなのね!

全くぅ、そういう事だったらおねーちゃん、少しはアンタに合わせて可愛がってあげるわ!」

 

 

(…都合がよく、何とかなったようだ。

アイツに悪…いや、良いか全然。)

 

 

この後、シドがクレアに何されていくのか少し考えていると───

 

 

「クレアー! ゼノン先生が呼んでいるよー!」

 

 

クレアに呼びかける…褐色のギャルの様な女性がタタタッ!と駆け寄って来た。

 

 

「ニーナ…たくっ、面倒くさいわね。」

 

 

「えー、折角教えてあげたのに酷くなーい?

…所で、彼がキミの弟くん?」

 

 

「そうよ。私の可愛い弟の一人…ユノよ!」

 

 

「ユノ……ああ、彼が…ね。」

 

 

「ん?」

 

 

「何? ユノが何かしたって言いたいの?」

 

 

「ああ、違う違う!

ほら……彼って、その…養子なんでしょ?

その事から学園内では既に彼にあまり良くない風に知らされてるみたいなんだよ。」

 

 

「…どういう事よ。」

 

 

「クレアが良くも悪くも有名だからだよ。

実力者の弟の一人が養子という…本来貴族じゃない人物が、有名になる事を考慮してるお偉いさん方がいるって話だよ。」

 

 

「何よそれ…!!

ちょっとそいつ等をシバいてやるわよ!!」

 

 

「ちょっ! 姉上!」

 

 

「こらこら、クレア…大丈夫だよユノくん。

クレアは私が抑えておくから、さ。」

 

 

「え、ええ。宜しくお願いします。」

 

 

「ほら、さっきの話は置いといて、ゼノン先生の所に行くよー。」

 

 

「あのいけ好かない魔剣士教師ね!

きっとあの教師も、心の内ではユノの事を快く思ってないわ!

直談判しに行くわよ!」

 

 

「…おねーちゃん、俺の事を思ってくれているのなら、お願いだから事を起こさないでよ。」

 

 

ユノは頭を抱える。

 

 

「…!! そ、そうね。ちょっとどうかしてたわ。」

 

 

「あはは…さ、行こ行こう。

じゃあね、ユノくん。」

 

 

そう言って、クレアを押しながらニーナという人物は去って行く。

クレアと親しげな所から、彼女の友人であるのは明白だろう。

 

だが…

 

 

「……何故、一瞬俺を見て()()()()()

気のせい……じゃないと思うんだが…。

思い当たらない以上、考えても…仕方ない、か?」

 

 

ユノ自身、彼女と面識は無いので…シド絡みで何かがあって被害ならあったのではと考える。

シドに出会ってからも、七陰達との生活からも、彼女達と別れてからも、修行していた時からも…ユノはシドの我儘をずっっと聞き続けてきた。

 

 

「ともあれ、これからも……アイツの我儘に付き合わさせるんだろうなぁ…。

あー…ヤダヤダ。

せめて、学園生活だけは穏やかに過ごさせて欲しいものだ…。」

 

 

ユノは切実に願う。

 

 

 

───実際は波乱の学園生活が待っているのを…まだ彼は知らない。

 

 

 






ちょっと文字数がかなりオーバーしてるけど…良いか。
次回からは所々まきで行きます。
……ユノの晴れ舞台を出せるのは…いつ頃かな?


次回、『魔剣士学園』。
魔剣士学園に入学するユノ達…物語は進んで行く。


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