前回のお話投稿後、ランキングに乗り、一瞬でも評価が赤ゲージになって嬉しかったです。
………本音を言うと、赤ゲージを維持したかったなぁ(泣)
霧闇煌炎様
評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。
それから誤字報告して下さった方々、ありがとうございます。
ミドガルから古都:アレクサンドリアに辿り着き、久し振りな気分でゼータ(リリム)の弟に顔を出してやるかと思ったユノだったが……訓練場へ足を運ぶ途中に悍ましい物を見てしまい、足を止めてしまった。
そう……その正体は───シャドウ(シド)の巨像だった。
「何…アレ?(※ドン引き)」
「はい。あの像はシャドウガーデンを象徴とする主様の像でございます。」
「うん………それは見れば分かるんだけど……俺が聞きたいのは、何故こんな悍ましい物が見ない内に作られていたんだって、思ったんだよ…。」
「悍ましい物……一体、何処にそんなものが……。
はっ! ユノ様が開花なされたという、魔力の波長を見抜く力が何かを見据えたのでしょうか…!?」
「あ……うん…まぁ……そんな所…。」
どうやらガンマ達にはシャドウ(シド)の巨像が悍ましい物には一切関与していないらしい。
「……酷いね、アレ。よくこんなのを作っておいて、オリアナ王国で芸術評価を受けているのか……疑問しかないね。」
モニカはユノの気持ちを代弁するように呟いた。
モニカ…彼女はオリアナ王国出身で、芸術の家庭で育った。
それもあってか、楽器や絵画においてセンスがあったのだが……彼女の生み出す芸術には魂が籠っていないとの事で、家族に馴染めずにいた。
彼女自身、芸術自身に興味は無く、かといって魔剣士の剣技にも興味が無かった為に毎日が退屈だった。
しかし……彼女は
人生に喜びを得られなかった彼女としてはこの様な末路に、他の悪魔憑きとは異なって恐怖を抱かなかった。
そんな時に───ユノに出会った。
彼と出会った頃には、モニカはもう既に人としての原型どころか、この世に生きる生物とは思えない悍ましい何か…『呪い』そのものだった。
それが縁となったのか…ユノの呪力に当てられて、彼女の世界が一変した。
彼の呪力が彼女自身を蝕んでいた『呪い』を祓ったのだ。
これまで苦痛な事があっても、魂に響かずにいたモニカの心を動かす『何か』を、ユノを見て認知したのだ。
───美しいと感じた、刹那の輝きを。
本当に一瞬だった…どのタイミングで見えたのか、分からないが…。
少なくてもユノの内に秘める『何か』であった。
それだけは確信があった。
モニカ本人としては忠誠こそ誓ってはいないが、ユノを陰でずっと観察していた。
どう見ても、見た目は何処にでもいるような青年だが…。
呪力や魔力に『影の能力』とは無関係で違う何かを…ユノを通して、感じ始めたのだ。
モニカはその感覚を『悦び』だと知ったのだ。
それを実感した事で、モニカはユノについていこうと…本人では気づいていないがそれはまさに忠誠とも呼べるものだった。
「さて……アルファ達が戦わずに待ってるな。
ゼータが俺達が来るまで止めている感じか。」
「なら、サッサと向かった方が良いね。
あの脳筋兎…待たせすぎると五月蝿いしね。」
ユノ達は直ぐに訓練場に足を運ぶと、そこには既にカイネウスとアルファが睨み合っており、ゼータが二人を止めていた状態だった。
「やっと来た……。」
「悪いな。グレーテに関してザックリだが説明していた。」
困惑していたゼータにユノが訳を話し、これから行われる二人の戦いを見守る為に距離を保つ。
この場には後から来たユノ、モニカ、グレーテ、コンチェッタ、ガンマ、ニューにゼータと、カイネウスの実力を測るためにラムダがこの場に募っていた。
「負けの言い訳は考えてたか?」
「その必要は無いわ。負けるのはアナタよ。」
アルファは普段クールでいるが、戦いにおいてはかなりの負けず嫌いな一面があった。
両者が睨み合う……その中、ユノが手を振り上げる。
そして、下ろした瞬間───両者の剣と槍がぶつかる。
アルファがシャドウから学んだ剣技にこの二年で磨き上げた実力を披露する。
カイネウスも槍術もアルファに匹敵する実力で、互いに拮抗していた。
「ま、まさか……あのアルファ様に匹敵する者がいたとは…!?」
ラムダがアルファと互角の戦いを見せるカイネウスの実力に度肝を抜かれていた。
ニューもカイネウスがこれ程の実力を持っていた事に驚きを隠さないでいた。
「ここまでは互角だが…。」
「そうだね。ここから、アルファは苦しくなるだろうね。」
ユノとゼータは既に両者の実力を見極めていた。
二人が述べた通り…アルファは段々と開幕の勢いが無くなっていき、カイネウスの方が勢いがあった。
「どうしたどうした!?
所詮は口だけだったのかぁ!?」
「…!? 舐めないで…!!」
アルファがカイネウスの挑発に乗って、魔力を乗せた強力な一撃を放つ。
しかし……カイネウスはその攻撃が放たれる前に一度助走をつけるために距離を取り、そして勢いをつけてアルファと同等の魔力を籠った一撃で抵抗する。
カイネウスの瞬発的な高度によって、アルファは力に負けて吹き飛ばされる。
「ぐっ…!!」
「そんな…!? アルファ様が力で負けた!?」
「いや……本来なら互角…。
恐らく、一度距離をとっての行動がアルファ様の攻撃を打ち破ったのだろう…。
(とはいえ……一瞬でその行動を取ったあの動き…アレはコンチェッタが自主練している時の動きと似ている…。)」
ラムダはカイネウスの動きに心当たりがあるのか、顎に手を当て始めた。
「……少しは、出来る様ね。」
「そういうオメェは大した事がねぇな。
俺の動きに目で多少は追えた様だが、見切れてなかった。」
カイネウスは槍をグルグルと回しながら、片腕に円盤の盾を形成する。
「テメェには槍を使わなくても、盾で相手が出来そうだ。」
「……舐めるな…!!」
再びアルファがカイネウスに向けて特攻する。
今度はカイネウスを真似てか、高速で動き回りながら勢いよく魔力を乗せた斬撃を落とす。
その一撃はこの前の騒動で怪物に変貌された悪魔憑きを倒した一撃だ。
「そぉぉうらぁああ!!」
カイネウスが斬撃を落とされると同時に盾でその斬撃を受ける……ではなく、押し込む。
盾での体当たりで対抗する様だ。
二つの力が拮抗する………が、剣と盾でのぶつかり合いは互角な為、両者が壁に吹き飛んだ。
「ふむ……今のは互角だったか…。
ま、アルファ相手にメインの槍でなく、盾で勝てると考えたのは甘く見過ぎたな。」
「けど、互角だったって事はさ……本命の槍だとアルファは厳しいって事が明るめになったって事じゃない?」
「いや、そもそもカイネウスの奴は六式をまともに使ってない辺り、全然本気じゃなかったでしょ。
今のに《鉄塊》を使っていたら、あのエルフは確実に負けていたでしょ。
つまり、あのエルフは本気でやってて、カイネウスが本気じゃない時点で勝負は決まったもんじゃない?」
ユノとゼータの会話にモニカが指摘する。
グレーテも二人の決闘はしっかりと見ていた様で、頷いていた。
「あ、アルファ様が…押されてる…なんて…!!」
「これが…ユノ様が力を教えになった者の実力か…。
(獣人が戦いに特化した種族とはいえ、こうも力の差が出てしまう辺り……あのカイネウスという者はどれだけ戦い続けているのだ…!?)」
ガンマはアルファが力負けしていた事実に困惑している最中、ラムダは冷静にカイネウスの実力に元軍人として疑問を抱いていた。
そう…彼女は気づいたのだ。
カイネウスが今まで教団やそれに関わった連中を相手に戦い続けていた事に…。
「…ブッ、少しは歯応えあるじゃねぇか。」
「………言ったでしょ……舐めないで、と…。」
カイネウスは口から軽く血を吹き、対してアルファはフラフラと少し前までの余裕は完全に無くなっていた。
「う、嘘!? アルファ様が…ボロボロになってる!?」
「ちょっとベータ。
そんなあり得ない事を冗談でも言わないでよ。
───って、本当にボロボロになってる!?」
事情を知ったベータとイプシロンがやって来て、アルファの今の姿に驚愕していた。
「…ちっ、観客が増えてきやがって…。
おい、これ以上増やすような───」
カイネウスが舌打ちをしている中、アルファが魔力を最大限に解放し、怪我を無理矢理修復していき、剣を構える。
「はっ、良いねぇ。そうこなくっちゃ、なぁ!!」
カイネウスが負けずと魔力を解き放ってアルファと再激突する。
アルファの剣技と魔力の斬撃がカイネウスにダメージを与えていく。
カイネウスも槍術と盾を合わせた戦いでアルファにダメージを与える。
互いの実力が拮抗していく中…アルファの剣の一撃がカイネウスの槍を吹き飛ばした。
「お、これは意外な…。」
モニカが予想外な行動に驚いた顔をする。
ガンマ達は「勝った…!」と言わんばかりの顔を浮かべるも───
「これで勝った気になってるなら……甘ぇよ!!」
カイネウスは凄まじい速度で、人差し指に闘気を硬化した指で電光石火の如くアルファの魔力の流れが一番循環している点穴を突いた。
「ゴホッ……!!」
「───《指銃》。アイツが考案した技の中で、最も使う機会が少ねぇ技だ。
聞いたぜ? お前等、シャドウって奴の力のみで充分だと…アイツのこれらの技を覚えるどころか聞き耳すらしなかったみてぇだな。」
「…っ!!」
「カイネウスってユノに腹を立てているんだよね?
……なんで、キミの事を庇う様な事を言ってるんだろうね。」
「…さぁ、何でだろう…な。」
モニカの指摘に…ユノは目を細めてカイネウスを見つめる。
(よくよく思い返せば、カイネウスはああ見えて結構武人タイプな奴だ。
……もしかして、お前は俺の事を高く評価してくれているからこそ、俺に腹を立てているのか?)
ユノはカイネウスと出会いや経緯を思い返す。
(……あぁ、そうだな。
カイネウス……お前は───
ユノはカイネウスと出会った日を思い出す。
その頃はアルファ達『七陰』は強くなる為にユノとシドから独立し、霧の龍との戦いの後…。
ユノはシドから離れ、強くなる為に独断で様々な地を巡っていた事があった。
その間にゼータと会う事が多く、悪魔憑きを救出する事にも手を貸していた。
そんな時……数多くの教団の手下、それもラウンズの息が強くかかった施設にて見るも無惨な姿の悪魔憑きを発見した。
当初はもう既に教団によってもう助けられないレベルまで陥っていたのだが…その悪魔憑きは生きていたのだ。
シドがアルファ達に伝授した解呪の魔力制御では絶対に助けられない状態だったが、ユノの魔力制御に呪力を用いた解呪で、カイネウスは息を吹き返したのだ。
カイネウスが意識を取り戻した時、
ユノは急に暴れて狂うカイネウスを止め……事情を把握する。
カイネウス……彼は正真正銘の男子で、海近くのベガルタに住んでいた。
そこでは獣人らしく力こそが偉いという場で、カイネウスは生まれ持った力強さで歯向かってきた者達を屈させ、若くありながらリーダーとなっていた。
彼等の力を戦力として従えようとするベガルタ兵相手にも牙を向く存在であり、ベガルタや同志達に恐れられていた。
そんな時…カイネウスはベガルタ兵相手に戦っていた時に悪魔憑きを発症してしまう。
それを好機に思ったカイネウスに屈してた獣人達はカイネウスを売り渡し、ベガルタ軍に所属する事となった。
カイネウスは裏切られ、数少ない男性の悪魔憑きとして様々な人体実験などを受け……その度に刃向かい、暴れ回った事がキッカケに男性の象徴である大事な所を切断されてしまった。
それでも悪魔憑きの特性から奇跡的に生きており、教団は嬉々としてカイネウスを利用していた。
自身を裏切った故郷の者達や人体実験や女にした教団に激しい憎しみを抱きながら、彼は人とは異なった姿で生き続けた事で凄まじい生命力と、悪魔憑きを完治した事による魔力の向上、そしてユノの呪力による解呪した事で変異した『特殊な魔力』を得た。
カイネウスは自身を助けたユノに感謝はするも、もう誰にも屈したくない気持ちから一匹狼として生きていこうとし、先ず裏切った連中に復讐しようと試みた。
だが、一人では危険だと告げるユノやシャドウガーデンに入らなくても、貴重なカイネウスを野放しにしたくないゼータによって阻まれ、ユノと一騎討ちで戦い…惨敗した。
当時のユノはセルゲイを倒せる実力やゼータがユノが考案(漫画の知恵)した六式を目の当たりにして、渋々だが彼等を認めようと行動を共にしてた。
とは言え、群れるのを嫌うカイネウスはゼータとその辺が気が合い、力を得て制御出来るようになると、出来る限り目立った行動は慎むように指示を受けるも、裏切った故郷や自身を実験にしてきた者達を根絶やしにしながら力を磨いて生きていたのだ。
そんな生活を送っていながら2年が経ち、ゼータから独立部隊として行動する為に集まるように指示を受ける。
本来なら断る所だったが、ユノの実力や人柄をある程度認めていた事もあって、腕試しをしながらもミドガルに向かっていた。
そんな時に……本来の実力で戦えないとはいえ、認めていたユノが負けた(?)と聞き、かつ話を聞く限り、平然と過ごしていると聞き、苛立ちが抑えられなくなったのだ。
(……ならば、俺がアイツに対して示す行動は───)
ユノがカイネウスとの過去を振り返り、現実に振り返る。
カイネウスは魔力の流れ…『魔力回路』を維持する点穴の一番激しい箇所を撃たれて身動き取れなくなっていたアルファに勝負のトドメをさそうとしていた。
ガンマ達がそこまで止めようとする中───ユノがカイネウスの手を掴んだ。
「そこまでだ。」
「あぁん?」
「……待って、まだ……勝負は───」
「いや、お前の負けだアルファ。
魔力を使えなくなっている今のお前では最後の一撃も躱せない。
今のだって、カイネウスが手加減していても今後に支障が出る大怪我を負う所だったんだぞ?」
「!?」
「………お前が実は負けず嫌いなのは理解している。
だが、認めろ。今のお前ではカイネウスには勝てない。」
アルファは敗北した事実に悔しそうに顔を顰めた。
それと同時に、ユノがベータとイプシロンに視線を送る。
唖然としていた2人は視線に気がついて、急いでアルファを回収する。
「強くなったな、カイネウス。」
「たりめぇだ。教団に負けたお前とは違って、俺は強くなった。」
「……コンチェッタから事情は聞いた。
先ず言っておくが…アレは敗北では無い。」
カイネウスがコンチェッタから聞いた報告はアルファ達から受けた報告書に綴られた内容をそのまま読み上げた内容であり、そこにはユノはゼノンに負けたと…シャドウを上げるような説明文であったそうだ。
「……だから、そんな屁理屈で俺が───」
カイネウスが怒りを露わにしようとすると、ユノがスライムスーツを纏い、力を解放する。
「アルファとの勝負は終わった。
ならば、次の相手は俺だ。
……あぁ、それともなんだ。
アルファとの決闘で負った傷を癒してからにするか?
俺は別にそれでも構わないが?」
「はっ! ソイツとの戦いで負った傷なんかダメージにすらなってねぇよ!
寧ろ、本命前のウォーミングアップだ。
いいぜぇ? お前よりも強くなった俺の実力を…お前に見せてやるよっ!!」
カイネウスが槍と盾を構え、魔力を纏う。
アルファとの戦いでは使わなかった戦法で、戦いを見ていたガンマやニューにラムダは驚愕していた。
───まだ、本気で戦っていなかったのか…!?
と…。
「そうだな。だから、お前にも見せてやる。
この2年で強くなったのはお前だけでなく、俺もだ。
───お前相手なら、本気で戦えそうだ…!」
ユノはそう言って魔力で身体能力を上げ、呪力で全身を覆って更に強化して…オーラを一定に維持する。
ユノのその新たな戦闘スタイルにガンマ達『七陰』は鳥肌が立つと同時に驚き、ユノの呪力を初めて目の当たりにするラムダとニューは震える体に驚愕し、その圧倒的な強者の実力に戦慄していた。
───これが、盟主シャドウに並び立つ者。
七陰を従え、教団に立ち向かう心強い味方であると…!
ユノがゼータに視線を送り、ゼータは即座に頷いて手を上げる。
ユノ…フェイカーは構え、カイネウスは気を引き締める。
ゼータが手を振り下ろした瞬間───
フェイカーの拳とカイネウスの槍がぶつかった。
今回のお話はアルファとカイネウスの決闘をしつつも、カイネウスとモニカの過去について語りました。
長々しいかと思いますが、キャラ紹介でもあるのでご了承を。
次回は『ユノvsカイネウス』です。
【魔虚羅】との戦いを経て、得た力が明らかに!?