今回のお話は前回や前々回に比べれば物足りないかもしれませんが、ご了承を。
あ、因みに今回はウィクトーリア登場回でもあります。
モハン・ドラゴン様、天羽々矢様
評価ありがとうございます。
お陰様で更にこの作品に対しての意欲が高まりました。
それから誤字報告して下さった方々、ありがとうございます。
ユノとカイネウスの戦いを目の当たりにしたシャドウガーデン。
彼女達はユノ達が使用していた『六式』をモノにしようと直様行動をとっていた。
「フッ!」
特にカイネウスに負けたアルファは直ぐにモノにすると有言実行しようとしていたのだが…。
「くっ…。」
彼女が放った《嵐脚》もどきは、的にしてた岩を『蹴りの斬撃』ではなく、蹴り圧で衝撃を与えた程度だった。
「はい、駄目。形にすらなってない。」
「………『六式』という技術、本当に魔力を一切使用していないの?」
「当然。それだったらアルファやイプシロンはとっくに扱えてるよ。」
「ゼータ、もう一度見せてもらえないかしら?
そうね……もっと言えば、気の力というのを分かりやすく見せて欲しいの。」
「んー……気の力『覇気』というのはぶっちゃけると闘気なんだよね。
ほら、戦う時に気合、気迫、殺気、威圧を無意識に出す感覚あるでしょ?
それらを魔力の様にエネルギーとして自在に扱える様にするんだよ。」
「……それって、本当に出来るの?」
「出来るよ?
ほら、あそこにいるモニカを見てご覧?」
ゼータが指差した方にはモニカが自己鍛錬中で、アルファと同じ様に目の前の大きな岩に向かって飛び上がって…体を回転させながら、足に魔力とは異なるエネルギーを纏い始めた。
それこそ、ゼータの語っていた闘気をエネルギーとして扱う覇気である。
そして、そのエネルギーを放つ『蹴りの斬撃』こそ六式の一つ、《嵐脚》である。
その《嵐脚》によって、岩は綺麗に真っ二つに割れた。
「アレが《嵐脚》ね。
破壊力自体はそこそこだけど、斬れ味は高いのね。」
「そだね。けど、モニカの場合は戦闘スタイルが暗殺だから、無駄にエネルギーを使いすぎない様に力をセーブしているからね。
だから、目立った破壊力は無くても威力は高い。」
「───だってその方が、暗殺に向いてるし、無駄な体力を使わずに済むからね。」
アルファは一瞬で気配を悟らせずにやって来たモニカに驚愕する。
ゼータは目では追い切れていなかったが、気配は感じ取れていた。
「速さが上がったね。目では追いきれなかった。」
「そりゃ、ボクだっていつまでもキミに負けっぱなしはゴメンだからね。
それよりも……アルファ、だっけ?
キミ、気配に気づかなかったのは不味いよ?
ボクよりも戦闘経験やパワーはあっても、キミよりも早く、それ相当の力のある相手にはやられちゃうよ?
───カイネウスがいい例だ。」
モニカは挑発する様にカイネウスの名を上げる。
アルファは仲間達の前で『七陰:第一席』が負けた事……完膚なきまでに下された記憶が蘇り、怒りで闘気が増幅していく。
「……態々後半の部分を強調するなんて、良い度胸ね。
六式を使えるからって、調子に乗らない事ね。
それだけが、全てでは無いのだから…!」
「良いね。丁度ボクもあの戦いを見合えてからウズウズしていたんだよね。
ボクの調整に付き合ってもらうよ?」
両者は会話を終えると、直様スライムのナイフと剣を形成してぶつかり合う。
カイネウスに負けたとはいえ、アルファは実力者。
そう簡単には倒されない。
だがそれはモニカも同じ事だった。
彼女はカイネウスやアルファの様なパワータイプとは異なるスピードタイプ。
ゼータと同じ様なスタイルだが……彼女とは異なり、仕掛けを施してそれを利用した地形を作って、攻め上がるタイプ。
アルファとぶつかり合った後、彼女はアルファに押されるような流れだったが……いつの間にか形成されたスライムのワイヤーの鳥籠に閉じ込められていた。
「さぁ。時間の限り、愛し抱け。」
モニカがそう呟くと瞬時に、姿を消す。
それと同時にワイヤーと《剃》を利用した動きでアルファをナイフで斬り刻んでいく。
アルファはその高速の攻撃に対応出来ずに防御に徹する。
ナイフだけで無く、肘打ちや蹴りによる打撃をしていき、アルファを追い詰めていく。
「くっ………っ……調子に、乗らない事ね!」
アルファは攻撃を受けながらも、防御中に魔力を溜め込んでそれを一気に爆発させる。
それにより、モニカは吹き飛ばされるも咄嗟の《鉄塊》によってダメージを軽減させた。
「はぁー危ない危ない。
魔力量はボクなんかより遥かに高いね。
そこは認めるよ。
けど、キミはカイネウスと同じパワータイプだから、お陰で対策しやすかったよ。」
「……ただのパワータイプに見えるなら、アナタの目は三流止まりね。」
「へぇ………言ってくれるじゃん。
ゴリラみたいな戦いをしていてさ。」
モニカの逆鱗に知らずに触れたアルファは更に魔力を高めながら、モニカに警戒しつつ剣を構える……が。
「アルファがパワータイプで若干ゴリラっぽいのは事実だけど…。
実はアルファ以上にゴリラでかつ、無鉄砲で考えなしで、目障りで、人に迷惑しかかけない馬鹿がいるんだよねー。」
「え、何それ……キミ以外の七陰って頭おかしいのしかいないの?」
「頭おかしいのはその馬鹿だけだよ。
後は……戦闘センスが正直無さすぎて、周りに影響を及ぼすガンマに頭を悩ませるくらいなものかな?
アルファは戦闘スタイルがパワー寄りなだけで、冷静な判断力がある感じだね。」
「ゼータ……悪いけど、アナタは戦いの邪魔だから離れてくれる?
今の私……気が立ってるのよ。」
パワー寄りという事実を突きつけられ、若干冷静を欠け始めているアルファがゼータに向けて言い放った。
「やれやれ、2人が争い始めたから巻き込まれただけなのになぁ。
ま、余計な事を言った自覚はあるから、サッサと退散するよ。」
ゼータが2人の戦いから離れると……ラムダが駆け寄って来た。
「ゼータ様……大変恐縮なのですが、六式のコツを教えていただけないでしょうか。
七陰の皆様なら、直ぐに会得なされるかと思ったのですが……ベータ様やイプシロン様でも会得するのに苦戦しており、このままでは新人達に教える所では…。」
「だから何度も言ってるでしょ?
六式というのは人界の究極技術。
そう易々と会得出来るものじゃ無いよ。
……というか、全ての六式をモノにするのに私でも一年以上もかかったんだし、簡単に会得されちゃたまったもんじゃないよ。」
「なっ!? 六式とは、そんなにも会得するのに時間がかかるのですか!?
確かに……フェイカー様とカイネウスが戦った際に使われていた六式はどれも高度かつ、精錬されたモノでした…。」
「そう。さっきも言ったけど、六式とは人界の究極の技術。
一つ一つの技が、長い訓練を得てようやく形になる武術なんだよ。
だから、如何に実力のあるアルファやベータ達でも直ぐには出来ない。
私の見込みでは……半年くらいはかかるんじゃないかな?」
「半年…!? そこまで…。」
「これでも高く盛っての、だけどね。
シャドウによって力をつけられているのは伊達じゃないから。
ま、例外はいるけど。」
ゼータの視線を送る先には「えいやー!」と叫びながら、《剃》を会得しようと勢いよく走り出すも…思いっきり転ぶガンマと、そもそも体を動かすのが好まないイータはアルファとモニカの戦いのデータを見て、六式を分析しているのだった。
「ガンマ様は……その………イータ様は六式を会得しやすくする為に解析をなされていますので…。
所で、コンチェッタはこれから仕事に出向くので、手が離せないので分かるのですが、あともう1人の……グレーテという人物は?」
「そう言えば、いないね。
今何処に………んっ!」
ゼータは魔力感知でグレーテの居る場所を特定する。
その場所で……何かが起こっている事に気がつき、直ぐに向かうのだった。
◆◆◆
「なぁグレーテ、どうしても嫌か?」
「恐れながらボス、わたくしは皆様と共に教団を殲滅する事は承諾しましたが……シャドウを慕う彼女達と仲良くする事に関しては、いささか抵抗がございます。」
ユノはゼータの弟に挨拶をしに向かう途中、グレーテが寄ってきたので、道中グレーテにシャドウガーデンに六式を教授してあげて欲しいと頼んだのだが……彼女の父:オルバを殺めたシャドウを慕う者達と仲良く出来ない為、彼女は彼女の慕うユノの頼みであっても拒んだのだ。
ユノもユノでグレーテの気持ちを察し、加担した立場な故にこれ以上は頼めなかった。
…と、そんなやり取りをしていると、ユノ達の前に阻む者が現れる。
ピンクブロンドの長髪を持つスライムスーツを纏うナンバーズがスライムソードをユノ達を睨みながら矛先を突きつける。
「お前達、一体何者だ………それと今、何と言った?
我が偉大なるシャドウ様を悪く言う言葉が聞こえたぞ。」
「失礼ながら、疑問を疑問で返させていただきますが、アナタ様こそどちら様でしょうか。
ナンバーズ……中でも、腕が立つ所から推測して『コードナンバーズ』でしょうか?」
「……いいや、今はまだ一ナンバーズの559番だ。」
(このレベルの実力なら、ガンマは例外として…イータと同レベルか戦闘なら上回る可能性があるんじゃないか?
……それにしても、559番か。
少なくてもそれだけの悪魔憑きが、教団によって人生を狂わされたのか…。)
「今度は私の質問に答えろ。
お前達は何者だ? シャドウ様に無礼を働く言動……まさか、教団の手がここまで…ラウンズか!?」
「失礼ですね。アナタは力はあっても敵味方の区別が出来ない程の実力不足でしたか。
わたくし達はシャドウガーデンではございませんが、アナタ方の味方で───」
「シャドウ様に忠誠を誓うシャドウガーデンでないのならば、敵だ!
この私が引導を渡してやる!」
「ちょっ、待て───」
559番という女性はユノの声に聞き耳を立てずにユノに向け、斬撃を放つ。
その攻撃をグレーテはスライムスーツと《鉄塊》で硬化した腕で剣を受け止めた。
「なんだ、その力は……だが、シャドウ様から力を与えられた私が、この程度だと思うな!!」
(力を与えられたか……その力は単に悪魔憑きの魔力暴走を治しただけで、その本質はキミ自身の力なんだがな…。
アルファ達といい、アイツまじで宗教のトップみたいな感じだな…。
いや、そもそもアイツの巨大な銅像を建てられてるくらいだしなぁ…。)
グレーテと559の戦いを見ながらそんな事を考えていた。
戦いは…最初は559が勢いよく攻めていたが、段々とグレーテが巻き返し始めた。
やはり、いかに潜在能力が高くても、六式を扱える者と使えない者とでの実力は大きな差があるようだ。
559の攻撃を《鉄塊》であえて受けたり、《剃》で躱したりして559の戦意を奪っていく。
現に559は自身の力が全く通じない事に戸惑いが見え、その隙に《指銃》で点穴を突いて、確実に559を追い詰めていく。
「くっ…!!(何だ、この強さは…!?
これ程の強さ…七陰に匹敵するのは明白…!)」
(彼女もグレーテの強さを実感したな。
…にしても、《鉄塊》が苦手とか言っていたけど、使いこなしているじゃないか。
何が苦手なんだろうか…。)
そんな事を考えていると……559が勢いよく突撃する。
その勢いは魔力をかなり込めていたので、グレーテを通り抜け、ユノに迫った。
だが、ユノは考え事をしていても、未来視によって感知しており、冷静に攻撃を《鉄塊》で攻撃を無効にして、559の腕を捕らえた。
「ぐっ……体が…!」
(………彼女、感知して見れば、このピンクの髪……異様な魔力変化による影響だな?
彼女に一体、何が起こって───)
ユノが魔力感知を通して分析していると……ゼータが急いで駆けつけて来た。
「……ねぇ、何をやっているの?
ウィクトーリア。」
ゼータはユノに剣を向けていたのを瞬時に見抜き、凄まじい殺気を飛ばす。
その反応にウィクトーリアと呼ばれた559は動揺する。
「!? ゼ、ゼータさん!?」
「……ウィクトーリア?
………ああ! 2年前に言っていた…!
彼女がそうなのか。」
「そ。よく覚えてたね。」
「…覚えは悪いが、お前とのやり取りは殆どは覚えているさ。
(それに、あの時のお前は…とても見ていられなかった。
…もう絶対にあんな風にさせない…!)
…ん? 確かその時は彼女は聖女って言ってたよな?」
「そう。ユノが力をつけている間に色々とあってね。
彼女も悪魔憑きを発症してしまったんだ。
……後、ユノの事だから気づいているよね?」
「ああ。彼女の髪……その色は元々じゃないよな?」
「流石だね。ウィクトーリアは聖教によって薬物を摂取させれて、髪が変色したんだ。」
「……そうか。」
「あの……ゼータさん。いえ、ゼータ様。
その者達とはどういう…。」
「……あぁ、そうだった。
ちゃんと教えてあげられてなかったから、分かんないのもしょうがないか。
先ず、彼がユノ…私のリーダーにして、ボス。
───フェイカーだよ。」
「!?」
559ことウィクトーリアはユノがシャドウと肩を並べる存在:フェイカーと聞いて姿勢を正し、膝をついた。
「も、申し訳ございませんでした…!
シャドウ様と肩を並べるフェイカー様と知らず、無礼な行動をとってしまいました…!」
「いや、そこまでしなくても良い。
碌に返答しなかったから…。」
「ユノ、組織のトップが威厳の無い態度をしてちゃ駄目だよ。
堂々としていないとね。
それに、ウィクトーリアの事だ、見ず知らずの相手を勝手に教団の者と決めつけて仕掛けて来たんじゃない?」
「はい。その通りです。」
ウィクトーリアの相手をしていたグレーテが真っ先に答えた。
「その辺にしておけって…。」
「ま、ユノの言った通りだね。
所で、ウィクトーリア…グレーテと戦った感想は?」
「……強いです。彼女は一体何者なのですか?
ゼータ様が扱っていた六式と思わしき力を自在に扱えていましたが…。
───はっ! まさか、彼女は…!」
「そ。グレーテは私と同じ、ユノに忠義を誓い、シャドウガーデンとは独立して教団と戦う部隊だよ。」
「……そう、ですか。」
「まだ、シャドウに忠誠を誓わない事を認めないの?
前にも説明したけど、グレーテの様にシャドウガーデンやシャドウとは馬が合わないのがいるんだよ。」
「だとしても、ここはシャドウ様が統治する国。
ここにいる以上、シャドウ様を絶対として忠誠を誓うのが当たり前なのです。」
ウィクトーリアの言葉にグレーテがポーカーフェイスをしていても分かるくらいの不機嫌なオーラを出し始める。
「まぁいいや。
何を言っても今は納得いかないだろうし。
兎に角、私達は共に教団を祓う為に戦う仲なんだ。
仲良く、ね?」
「「…」」
「…ユノの意に反するって事はシャドウにも反するって事だよ?」
「うっ…。」
「で、グレーテはユノの意に反するの?」
「……いえ、分かりました。」
(……俺、何も言ってないんだけど…話が纏まるなら良いか。
正直、俺が言ったところで纏まるとは思わなかったし。
えっと…独立部隊(?)のボスは俺よりも、ゼータが適任なんじゃ…。
そもそも、独立部隊とか初耳…いや、グレーテ達の事を伏せてた事を考慮すれば分からなくもないが…。
いや待てよ? 独立部隊とかの話って、シドと2人で厨二話で盛り上がっていた時にしか語っていなかった気が───)
「てな訳で、私達のボス。
グレーテ達の為にも、ビシッとしてよ。
大丈夫。全部私がフォローするから。」
「あ、ああ…。」
ユノが曖昧な返答をする中、ゼータはユノの側近である事をアピールする。
その姿にグレーテは面白くないものを見せられている顔をしていた。
「ささ、あの子に会うために向かってたんでしょ?
早く行こう。
私も、最近顔を見てあげれなかったからね。
2人で会いに行こう。
あ、そうそう。グレーテにお願いがあるんだ。
戦ってて分かったと思うけど、ウィクトーリアはシャドウガーデンでは上位の実力を有しているけど、私達に比べればまだまだなんだ。
だから、今から六式を一通り教えてあげて欲しい。」
「…それは、ご自分でやったらどうなんです?
確か、彼女とは他の方々とは違い、親しげですが。」
「無論、教えているよ。
けど、私と違う人に教えられるとでは覚えが変わるんじゃないかと考えてね。
私の友人なんだ。よろしく頼むよ。」
「…」
「あー…その、グレーテ頼む。」
「…承知しました、ボス。」
「ウィクトーリアも、しっかりグレーテの言った事を聞きなよ?
実力では負けているんだから。」
「…はい。」
「よし。解決したから行こうか。」
ゼータはユノを押すように進んで行く。
「え、こんな感じで良いのか?」
「良いの良いの。ウィクトーリアには良い薬だし、グレーテもこれからは教団と戦う為には最低限の交友は大事だし。
あ、それから私達のボスはユノしか適任いなからね?」
「え、また俺の心を読んだのか?
本当にどうやってるんだよ…。」
ユノとゼータは二人だけの会話をしている。
その姿を後ろから見ているウィクトーリアとグレーテ。
「……それで、如何なさいますか?」
「……命令ですので。
それにしても、ゼータさん……あんな風に振る舞われる一面があったのですね。」
「……羨ましい…!」
グレーテは仲睦まじい仕草をしているのを羨ましがり、ウィクトーリアは滅多に見ないゼータの姿に、自分もシャドウ(シド)とあんな風にしたいと思っていたとか。
い、伊●美来さんと伊藤美●さんの戦い…なんか想像したら面白い。
後、気の力(闘気)を『覇気』とまんま採用してますけど、許してください。
他に適したのが浮かび上がらなかったんです。
あ、次回は原作の方に戻ってシェリーのお話こと、学園崩壊編に入ります。
どう進んでいくのか……乞うご期待。