・陰実の設定を基本重視するつもりですが、多分そのうちオリジナルになると思う。
・それにしても、漫画の方の七陰結構好きなビジュアル。
特にアルファ、デルタ、ローズはこっちのが好きだな。
・この投稿と共に話数表記を『影』にします。
盗賊に遭ってから数日後…
「ユノ、ここ文章に誤字があるわ。
ここはこう書くのよ。」
「は、はい。
ありがとうございます、クレアお姉様。」
今現在、ユノはこの世界での文字の読み書きを教えてもらっている。
元が日本人なのと、前世からの意思を引き継いでいるせいなのか、中々上達しない。
まぁ、7歳といえば小学校1年生レベルだからこの様に読み書きを真剣に取り組むレベルであるため、問題無いように思ったが…
執事やメイドからは哀れんだ視線を感じることから価値観が違う事を理解して、恥ずかしい思いをしているユノであった。
(それはさて置いて…姉上殿?
以前よりも、優しく接してくれる様になったのはとても嬉しいのですが…
距離感バグってはいませぬか!?
体も…もうくっついてるし…。
相手は9歳の子供なのに、何で俺はこうも…っ!)
内心では大きく苦戦しているユノであった。
「おねーちゃん。」
「はい?」
「おねーちゃんと呼びなさい。」
「…」
「言わないと駄目よ?♡」みたいな笑顔で圧をかけるクレア。
選択肢はただ一つ…
「わ、分かりました。
クレアおねーちゃん。」
「よろしい。」
とユノの頭を抱きしめて優しく撫でるクレア。
この撫で…抱擁は今まで実弟であるシドだけにしていた事。
コレをユノにもするって事はクレアはユノを完全に認めたという証である。
…尚、この抱擁を受けているシドは「早く満足してくれないかなぁ?」的な顔をしてるとかしてないと…か…?
ぽんっ!
抱擁を受けているユノの肩に手が置かれる。
「…に、兄さん?」
「ユノ…。」
顔が暗くなっている。
嫉妬しているのかと、ユノが振り向くと───
シドがこれまでに見せた事のない明るい顔で親指を立てていた。
(え…どういうこと…?)
「シド!? 大丈夫よ、おねーちゃんは二人のおねーちゃんだからね!」
と、クレアはシドにも抱擁をする。
すると、シドの表情が一気に元気のないボーッとした顔になった。
(…マジで何なんだ、コイツ?
考えどころか、どういった心境の表情なのか分からないわ…。)
ユノが困惑していると、通りかかった当主のオトン…『ハゲ』がやって来た。
「今誰か、俺の事を『ハゲ』と言わなかったか?」
「何言ってるのよ、ハゲ。」
「今、愛娘からハゲって言われてしまったっ…!?」
「ハゲはハゲでしょう?」
「酷い! 母さんも承認!?」
「しょうがないねー。」
「シドも!?
ユノは…ユノはそんな事を思ってもないし、言わないよな!?」
「は、はい。当然ですよ…義父上。」
「おお! 流石はユノだ!」
「ユノ、遠慮しなくても良いのよ…。
所詮、ハゲはハゲなのだから。」
「酷い!」
…全くもって信頼されていないハゲ。
どうやってオカンという二人の子供を産んだ様子に見えない人物を妻に向かい入れたのか…知りたいけど、知らなくても良いやと思うユノであった。
「それより、ユノ?
クレアから聞いたけど、
そう。ユノは襲いかかってきた盗賊を撃退した。
…という事になっている。
だが、真実は当然違う。
ユノは盗賊達を
クレアは意識が朦朧としており、ユノの姿だけしか見えてなかった。
クレアの剣についていた血も偶然見えておらず、ユノの目先に転がっていたバラバラの死体も見えてなかった。
幸運だったのだ。
ユノとしては色んな偶然が重なり、複雑な心境だった。
自分が人を殺めたところを見られなかった事による幸運。
仇である盗賊を自身の手で葬れた幸運に。
…しかし、同時に───前世を含めて、初めて人を殺めた事にユノは罪悪感と酷い物をみた嫌悪感の両方に苦しめられていた。
死体は気づかれずに片付けたものの、気絶したクレアを担ぎながら、ヨロヨロと顔色を悪くしたユノ達を見たオトン達は速やかにユノに事情を聞き、ベットに寝かしたのだ。
その間、ユノは盗賊に対しての激しい毛嫌いを抱く事になった。
自身の手で…盗賊とはいえ、人を殺めた…手を汚した事に、『殺人者』としての片棒を…慣れさせるのに日が必要だった。
「…両親を殺した連中だと聞き、怒りが…抑えられないでいて…。
おねーちゃんの剣をとって、魔力を放出しながら振り回していただけです
…。」
「そうか…。」
両親はその話を聞き、一瞬間が空くも───
「ユノ、お前は『魔剣士』の才能があるぞ!」
「…え?」
「その歳で盗賊を複数人を撃退するとは、将来が楽しみだ!」
「そうねー、我が事の様に嬉しいわー。」
「当然ね、何せ私の弟だから!」
3人は「わっはっはっは!!!」と高笑い、更に調査に乗ってダンディな感じで語ろうとするハゲを殴る妻と娘という何ともシュールな光景、それを見慣れ始めてるユノ。
(……やれやれ、コッチは色んな感情で一時情緒不安定になったというのに…。
この人達はホント…心が救われるよ。)
前世では妹の秀奈しか心の拠り所が無かったが、今はこうして大事だと思える者達に出会えて、嬉しさのあまり罪悪感が薄れていくユノ。
この世界では魔剣士として剣を持っている事がある種の当たり前である故に人を殺めても、前世の世界の様に大パニックにはあまりならない。
勿論、殺人鬼として暴れ回ったりしていたら話は下手だが…
今は関係の無い事だ。
そして、『カゲノー家』は代々優秀な魔剣士を輩出している家系で、中でも歴代で最も優秀であるクレアは大きく期待されている。
娘にハゲ呼ばわりしてもお咎めないのはこの為だろう。
そんなクレアを救ったユノは魔剣士として大きく期待されるのであった。
(…やれやれ、大変な事が増えていったが…何とかなるだろう。
その為にも勉学をより頑張りつつ、『呪力』と『魔力』を完全にものにしておかないとな…
でなければ、『才能』…『特別』になれた意味がない。)
その様に自分に言い聞かせるユノだった。
ぽんっ!
またもやユノの肩に手が置かれる。
「…兄さん?」
ユノがシドを見ると、シドはぷるぷると体を小刻みに震わせていた。
(ハッ!? まさか、俺のせいで自分の居場所が無くなるのではと不安がっているのか!
俺のせいで兄さんの人生を奪うわけにはいかない!)
『影の能力』を有した事で正義感を持つようになったユノはシドに労いの言葉をかけようとするも───
「流石だよ、ユノ! これから期待してるよ!」
「え? あ、あぁ、うん。」
思っていたのと真反対に肯定的な言葉に反応が悪くなるユノであった。
「(いやー、これは思ってたよりもいい展開になってきたね!)」
シドはユノに大きく期待を寄せ、笑顔でキラキラな雰囲気を晒し出す。
「(姉さんもユノに肩を持つようになった。
お陰で、擦りつける事が出来るようになった訳だ。
これで、必要以上に僕にちょっかいをかける回数も減るだろう。
そして何より…彼を『主人公』として、僕の『陰の実力者』として有効にプレイ出来る状況が揃った訳だ!)」
シドはとても嬉しい気持ちになっていた。
「(その為にも、ユノとはより親密になっておいておこう。)
ユノはカゲノー家の誇りだね!」
「はっはっは! シドもそう思うか!
だが、お前もカゲノー家の者として期待してるぞ!」
「え?」
「そうねー。私の子供達が優秀で嬉しいわー。」
「『達』をつけようね? 母さん?」
「当然、シドにもこれからも剣の修行をつけるから、覚悟なさい!」
「……うん!
(しまった…、僕にも期待の目を向けられている…っ。
何とか軌道修正をしていかなければっ…!
僕は目立たないモブでいなければならないのだっ…!)」
彼の『陰の実力者』の道はそう簡単には進まない。
◆◆◆
それから更に日は経つ。
ユノに魔剣士としての才を見出す為に訓練が始まった。
「…フッ!」
ユノが目の前にある大きな岩に目掛けて渾身の一振りを下ろす。
魔力の籠った一振りによって、岩は綺麗に割れる。
「ふぅ…。」
ユノは一息をつくも…
(…やはり可笑しい。
『魔力』をそれなりに出しているはずなのに、剣に殆ど流れない。
大体10分の1程度でしか伝達しない。)
ユノは疑問を抱く。
彼は『呪力』『影の能力』を高めるにあたって当然、『魔力』を高めていた。
その過程で『気配感知』を習得し、今では『魔力制御』を習得しようとしている。
『影の刃』による遠距離攻撃を行っていて順調だと思っていた。
しかし───
自身の『影』以外の伝達率は非常に悪かったのだ。
(明らかに偶然では無い筈だ。
俺自身の魔力は並。
多くもなければ、少なくも無い平均レベル。
しかし、制御によって低リスク高リターン…
最低限の魔力で刀身全体に流そうとしても、流れは悪い。
この前の盗賊の時の様に、ただの魔力の放出では効率が悪く燃費が激しいから効率が悪い。)
そんな事を思っていると、隣にいるクレアの方では───
「フッ!」
クレアの剣の一振りでは岩が真っ二つになっただけでなく、所々にヒビが入り、粉々になっていた。
「おお! 流石はクレアだ!」
父上たるオトンがクレアに賞賛を送る。
メイドや執事達も拍手を送っていた。
「まだまだおねーちゃんの方が上ね。」
「はい。流石です、おねーちゃん。」
「ユノも盗賊を追い払った実績がある筈だから、やれば出来るからね?
自信を持ちなさい。」
「はい。ありがとうございます。」
「…ユノは問題ないだろうけど、問題は───」
「えい。」
ユノの片方の隣で岩に剣を突き刺しただけのシドがいた。
「はぁ…。シド、アンタはもう少し頑張りなさい。」
「はーい。」
シドは全くヒビすら入っておらず、周りからは残念そうにしていた。
…当の本人は全く気にしてない様子。
(…俺には、
◆◆◆
夜
「さて、ここいらで悪さをしている不届者…
いや、
ユノはそう言いながら暗い森の中にへと進んで行く。
彼の中で盗賊は『ゴミ』と認識・判断していた。
人を簡単に殺める、人の物を盗む、品性のカケラもない盗賊をそう認知し、これからもゴミ駆除の為に殺める事を躊躇しなくなった。
奴等は消える事なく、所々で悪事を働く。
自分の様な犠牲者を出さない為に、ユノは立ち上がったのだ。
「俺の『
そう、決して一度殺めただけで納得いかないからって訳ではない。
更に言うなら、奴等を呪力と魔力を極めるのに良い練習台だなんて、これっぽちも思ってない。」
と、自分に言いかけるように前に進む。
「…お、【鵺】が見つけたようだな。」
空で偵察させていた【鵺】から何かがいる合図を受ける。
「さて、と…。」
持ってきていた大きいローブを羽織り、姿が見えないように慎重に進んでいく。
「どれどれ…ん?」
【鵺】の示した場所に行き、様子を木の陰から覗いていると───
「ヒャッハー!」
奇声と共に盗賊達に単独で奇襲し、血祭りを上げている様子が目に入る。
(何だ…っ!? 俺以外にも盗賊に手をかける奴がいるのか?
こんな田舎に王都の魔剣士が来るわけがない。
何せ、その担い手に領地の父上の仕事だからな。)
だから、誰が盗賊に奇襲をかけているのか、気になって仕方なかった。
それも凄まじい速度で盗賊を斬って斬って斬りまくっていた。
(早い…しかも、ただの動きとは違う。
何だ? 魔力で動かしている
ゼリーの様で…、っ!?
俺の『影』の様に変幻自在に操っている…!?)
ユノは血祭りに上げている…顔を紙袋で隠している人物を凝視する。
(服の格好は漆黒のカッコいいコート。
剣は…何だアレ、魔力の伝達が計り知れないっ…!?
あんな武器があるのか!
…それに、あの紙袋で狂気的に戦う姿…まるで───)
紙袋の者が最後の一人に手をかけた途端、ユノは咄嗟に声を漏らしてしまう。
「スタイリッシュ…暴漢スレイヤー…?」
「何っ…!?」
ユノが思わず声にした言葉に反応する紙袋の者。
声からして男だろうが、今は───
「しまった…!? つい声に…!!」
失態を漏らしつつ、ユノは素早く紙袋の者から逃げる。
(早く…早く逃げなければ…っ!
───って、早!?)
必死に足跡を立てずに駆け出すユノ。
しかし、それ以上のスピードで迫る紙袋の者。
(クソが…っ! このままだと捕まる!
ならば、魔力を使って高速で逃げるっ!
更に【鵺】の援護で奴を弱らせる!)
ユノは足に魔力を集中させる。
同時に【鵺】による飛行攻撃と雷で攻撃を行う。
「これ…っ!」
紙袋の者は【鵺】を見て驚愕し、一瞬止まるも───
【鵺】は紙袋の者の攻撃により吹き飛ばされる。
「何…っ!?」
ユノは驚愕し、木陰に隠れる。
(なんだ、あのパワーは…?
【鵺】を簡単に吹き飛ばしやがった…っ!)
「この辺にいる筈なんだけどなぁ…。
盗賊達とは違ってかなり腕が立つよね?
さっきの鳥も見た事ない姿と雷を纏っていたし。
大人しく捕まってよ、悪い様にはしないからさ。」
紙袋の者はそう語る。
紙袋越しで声が分かりにくいが…何処か聞き覚えのあるものだった。
(聞き覚えのある様な…
だが、今はコイツから逃げることを優先すべきだ…っ!)
ユノは歩み寄って来る紙袋の者に影を伸ばす。
「悪いが、お断りだ───《影斬》!」
『影の刃』が素早く斬りかかろうとする。
「これは…影の刃だと!?」
影による攻撃にまたもや驚愕する紙袋の者。
しかし───
「だが、効かない!」
『影の刃』を黒い剣(?)で薙ぎ払った。
「ちっ! これならどうだ…っ!」
今度は『影』を使い、紙袋の者を強く縛りあげて拘束する。
「…これは!」
「《影縛》。そして更に《影斬〝六連〟》!」
《影縛》によって拘束し、そこから更に無数の『影の刃』に呪力を纏った6連続の《影斬》を放った。
その連撃を受けた紙袋の者はカードの体勢をとっていた。
「これは流石に効いたろう。
トドメだ───【玉犬】!」
『影』から出現する【玉犬】が爪を立てて飛び掛かる。
更に戻ってきた【鵺】も奇襲を行う。
(もらった!)
ユノが勝利を確信する。
しかし───
「どれも良い攻撃だね。でも───」
紙袋の者から途方もない魔力を放出する。
そして、纏っているコートが変化して刃と化した攻撃を放つ。
【玉犬】と【鵺】はなす術なく力負けして吹き飛ばされて、形が保てなくなり、『影』に戻りユノの元へと戻る。
《影縛》も容易に切り裂かれ、《影斬》も砕け散った。
「何…だと!?」
ユノの有する術を悉く無力化されて、驚愕する。
そして…全力で逃げる。
(無理…無理無理無理無理!
こんなバケモノにどうやって勝つんだ!?
もうこうなったら……《影化》。)
ユノは体を『影』そのものへと変化させ、地面を泳いで逃げる。
「!? へぇ…そんな事も出来るんだ!」
紙袋の者は嬉々とした声をあげ、暗い森の中で逃げるユノを追いかける。
「…!? 何で、暗い森の中で俺の居場所が分かる!?
魔力も呪力も使ってないぞ!?」
「へぇ…さっきの影の刃に纏ってた『魔力』とは違うの『呪力』って言うんだ。
キミを追いかけられるのはこの暗い森の中でも相手の位置をハッキリと分かるくらいじゃないと『陰の実力者』じゃない。
何より殺気…いや、闘気まで隠しきれてないからね。」
(何てこった。闘気…そんな事まで考えたこと無かった…っ!
にしても…何の実力者と言った?)
疑問を抱くも、逃げながら『影の刃』で攻撃していく。
居場所がバレてしまう以上、意味がないからだ。
「はは! 攻撃が単調になってきてるね。
もう余裕がないとみた。」
「お前みたいな狂人、誰でも余裕がなくなるわ…っ!」
『影』の状態で喋りながら、素早く次の印を結ぶ。
「【脱兎】!」
無数の兎を目眩しに召喚する。
「!?」
(よし、今の内に距離を取る!)
一気に走るように加速する。
そのスピードはとても早く、【脱兎】のいる場所から一気に離れた。
「よし、これで───ん、何!?」
逃げる中、ユノは『影』から飛び出されてしまった。
「まさか…。この《影化》には時間制限があったのか!?
クソッ…。仕方ない、このまま全力で───」
「いや、終わりだよ。」
上から声が聞こえると同時に地に叩きつけられた。
「んぐっ!?」
「どういう仕掛けはしらないけど、中々面白い手だった。
そこいらの奴なら逃げ切れただろうね。
ま、そもそも僕以外だったらさっきの狼や鳥で倒せただろうけど。」
なんと、紙袋の者は『魔力』で一気に【脱兎】を吹き飛ばして来たのだ。
ユノが叩きつけられたと同時に【脱兎】は解かれてユノの影に戻った。
「さぁて、これでもう逃げられないよ。
キミには聞きたいことが沢山あるんだ。
僕が
しかも、その『影』を操るその力。
それらを聞くためにも…まずは顔を拝借させて貰おう。」
紙袋の物はユノの上に座り、頭の部分のコートをめくった。
「…っ!?」
「え?」
ユノは顔を見られ、何をされるのか怯えていると、紙袋の者は間抜けな声を出した。
「
そう言うと、紙袋を外す。
ユノは紙袋の者の顔を見る。
「え───
なんと、紙袋の者の正体は───『シド・カゲノー』だった。
・次回、『悪魔憑き』
シドに捕まったユノはどうなる?
・前回で告知した次回予告詐欺に…なってる?