昔から仲の良かった女の子と終わってる関係になる話   作:トマトは後ろから呼んでもトマト

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二つ目の結末を始めます。
こちらの世界では、男はどんな終わりを迎えるのでしょうね。



第8話{2回目}楽しんでいただけると幸いです。


二つ目の結末
8話{2回目}


男はシラを家に送り返す。

そうして、独りぼっちになった部屋で立ち尽くす。

 

結局、自分は変わることが出来ない。

 

いつまで経っても、選ぶことが出来ず。

ズルズルと物事を引き摺り続けている。

そうして、もう一年以上たっている。

 

あぁ、もしも。もしも本当にそうなってしまったら。

自分はどうすればいいのだろう?

あの二人からどちらかを選ぶ?

そんな事、男には出来やしない。

 

出来たのだったら、こんなことにはなっていない。

もしかしたら、恋人が自分に失望して振ってくれるかもしれない。

けれど、そうだとしても。

シラと幸せになることなど、出来るのだろうか?

 

無理だ。不可能だ。

そんなのは、余りにむごすぎるし、最低だ。

そんな自分に幸せが来るわけもないし、シラを幸せにできるわけもない。

 

男は自分の幸せはともかくとしても、シラには幸せになってほしかった。自分のような人間になぜ執着しているのかはほとんど理解できなかったが、それでもあの子の傍に寄り添っていたものとして。

あの子の幸せを願っていた。

 

しかし、その願いはあの子を、そして自分自身を苦しめている。

あぁ、どうしてこうなってしまったのだろう?自分はただ、大事な人を傷つけたくなかっただけなのに。

 

男の罪悪感が、苦しみが、男の心の中で循環していく。この現象はシラと関係を持ってから度々あった。

シラとの関係が続けば続くほど悪化し、酷くなっていった。

そうして、今。

男は真剣に、大真面目に自分が終わる方法を考えている。

 

気が付けば、男は自分を終わらせる方法を検索していた。

検索エンジンから相談を促す画面が表示される。

こんな事、誰かに相談できるわけもない。

 

それに、この問題の原因が己にあることを男は誰よりも理解しているつもりだった。自分が死ねば、全ての問題が解決される。

そんなバカげた極論を男は本気で信じ始めていた。

 

もう少し、マイルドな表現に変えて、検索してみる。

すると、いくつかの方法が出てきた。

それを見て、男は。

 

少しだけ、正気に戻った。

妙に生々しい実行方法に触れて、現実に引き戻されたのだ。

 

男は思いなおす。

取り合えず、今悔やんでもどうしようもない。

それよりも、日曜日に恋人が家に来るのだ。

そっちの方を優先するとしよう。

 

男は自分の部屋の整理を開始した。

さて、どう誤魔化したものかな。

男は自分の滅茶苦茶になった部屋を見ながら、そう思った。

 

 

まぁいい。一回落ち着いて何か飲もう。

男は、冷蔵庫から緑茶を取り出し、コップに注ぎ始める。

そうして、乱雑に掴んだコップを飲み干して。

部屋の片づけを開始した。

 

 

 

そうして、暫くして。

日曜日がやってきた。

 

朝日が昇って暫く経った頃、男のアパートのチャイムが鳴る。

男が扉を開けると、男の恋人がにこやかな笑みを湛えて立っていた。

 

『おはよ!』

彼女は笑顔で男にそう言った。

男も同じように笑顔を湛えながら、おはよう、と返した。

 

彼女が部屋に上がり込んでくる。

恋人が男の部屋のソファーに座る。

 

男はなんだか気まずくなって、冷蔵庫から飲み物を取り出そうとする。

何か飲みたいものはあるか? そんなことを恋人に聞きながら。

 

『ん~そうだな~』

『普通に緑茶とかお茶でいいよ』

 

恋人がそう返して、男が冷蔵庫を開けると。

 

飲み物が何も入っていなかった。

 

しまった…。そういえば飲んだ緑茶の補充してなかった…。アレが最後の飲み物だったっけ…

男はそんなことを思う。

 

恋人には申し訳ないが、少しこの部屋で待っててもらおう。

近所のスーパーで飲み物を買ってこないと。

 

男はそう考えて、恋人に声を掛ける。

 

すまない、飲み物がきれてたから、今から買ってくる。 と。

 

そう言って、男は財布を持ってそのまま玄関に向かう。

 

『え~?別にそこまでしてくれなくてもいいのに』

恋人がそんなことを言ってくるが、さすがに部屋に来てもらって飲み物も出せないのはどうかと思う。

そんな事を考えながら、男は最寄りのスーパーまで小走りで向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、一人取り残された男の恋人は。

机の上に置きっぱなしになっている男のスマートフォンを眺めていた。

 

『…おちょこちょいだなぁ…』

『…まぁ、試すくらいならいいよね?』

 

彼女は玄関の方を眺める。

誰も帰ってくる気配はない。

彼女が、男のスマホを手に取り、パスワード画面を開く。

 

彼女は思案を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、少し考えてみる。

 

私の恋人が設定してそうなパスワード…何があるかな。

浮気相手の誕生日…?は、ないな。うん。ない。除外。

私の誕生日を打ち込んでみる。 も、違う。

 

彼の誕生日は…

 

ピコン!音が鳴って、スマホのロックが解除された。

 

うわ。これなんだ。セキュリティ意識が低い…。

 

いや、まぁ。納得ではあるけど。あの人隠し事下手だし。

さて、それじゃあ、答え合わせをしてみよう。

 

私はそう思いながら、彼のSNSアプリを開いた。

目当ての人物のアカウントはすぐに見つかった。

 

『あ、絶対これじゃん』

彼と浮気相手の会話履歴を見つける。

名前はシラ。画像からじゃ顔は分からない。

 

この子とのやり取りだけ圧倒的に回数が多かった。

というか、私と同じくらい連絡してるなこの子。

…文章を見ているだけでも、この子の拗らせ具合が伝わってくる。

 

…これ問い詰めても別れてくれるか怪しくない…?

どう間違っても、メッセージだけで別れを受け入れるタイプには見えなかった。

 

いや、まぁいいや。今考えるべきことではない。

取り合えず連絡を取るために私のスマホにもこの子の連絡先を登録しておく。

…これでよし。取り合えず、最低限やりたかったことは出来た。

 

それじゃ、彼が戻ってくるまでに検索履歴でも見てみようかな…

少し悪いと思わないこともないけれど、彼がやっている事と比べたら遥にマシなはず。

そう思って。

私が検索エンジンを開くと。

 

 

 

そこには、びっしりと。

自分自身を終わらせる方法を検索した履歴が残っていた。

 

 

『…っと。これは…』

思わず、声が出てしまう。

この履歴からは、彼の罪悪感と自分自身に対する失望が強く見て取れた。

方法と一緒に、生きているうちに出来る後始末の方法を検索しているのも彼らしい。

 

…どうやら、私と浮気相手の彼女は彼を追い詰めすぎていたみたいだ。

 

私の口からため息が出る。決断できない挙句、全てを捨てようとするなんて。

本当にどうしようもない人だ。

 

よし…計画を変更しよう。このまま彼を問い詰めるとそのまま地獄に逃げ出しかねない。

何とか彼を終わらせないように根回しをするか。

あるいは、この『シラ』と話し合って私が着地点を見つけないと。

 

私の恋人に、自発的な解決は見込めない。

一年以上この関係を眺めていて確信した。私の恋人は恋愛関係においてどうしようもない欠陥を抱えている。ただのクズじゃないのが逆にめんどくさい。

あぁ、もう本当に…

 

『ふふっ…本当に、私がいないとダメなんだから』

 

何故か上がってしまう口角。

私の口からは、そんな言葉が流れ出ていた。

 

確かに私の恋人はクズで、どうしようもない人かもしれないが。

それでも、愛がないわけではないのだ。好きだからこそ、ここまでしてあげているのだ。

これを愛でないなら、なんだというのだろう?

 

 

 

 

 

彼のスマホを元あった場所に戻しておく。

その瞬間、玄関が開いて。

私の恋人が戻ってきた。

 

彼が、緊張した面持ちで今日は何をしに来たのかを聞いてくる。

本当は、貴方を問い詰めに来たのだけれど…

 

『別に?ただ会いたくなったら来ただけだよ?だめかな?』

適当に嘘を吐いておく。彼があからさまに安心した表情を見せるのが面白い。

 

本当にこの男は…隠し事が下手だなぁ…。

 

取り合えず、今日は適当に彼と一緒に映画でも見よう。

 

明日からは忙しくなりそうだから。

 

彼の体に寄りかかって、一緒に楽しく映画を見ながら。

スマホに新しく登録した連絡先のことを考えて、私はそう思った。

 

 

 

 

 

次の朝を迎えて。

 

『それじゃ、また週末にでも』

一緒に駅まで歩いて行って、彼の家の最寄り駅で別れる。

私の仕事場と、彼の仕事場は路線が別だから。

 

スマホを開いて、メッセージを確認する。

 

『分かりました。開いている日を教えてもらっていいでしょうか。休みが不定期なのでこちらで合わせます。』

 

『シラ』からのメッセージが来ている。

昨日の夜、彼の浮気相手に連絡をしておいたのだ。話がしたいという名目で。

即ブロックされたらどうしようかと悩んでいたのだが、意外とそんなことはなかった。

 

彼とのメッセージを見る限り、もっと粘着質で執着しているタイプかと思ってたんだけど。意外と礼儀正しい。

私の思い違いだったのかな…いや、まだ分からないか。

 

取り合えず、メッセージを送り返す。

『夜ならば一応開けることが可能です。そちらの都合に合わせますよ』

 

…そもそも、私は彼と恋人であり、婚姻関係にあるわけじゃない。

だから、落ち着いて接することが一番大事。

そう思いながら、連絡を返して。

私は職場につくまでイヤホンで音楽を聴くことにした。

 

 

 

そうして、職場についてから仕事が終わる。

 

 

職場のビルから出てきて、スマホを確認する。

そこには彼の浮気相手からの連絡が入っていた。

 

『でしたら、明後日の夜はいかがでしょう?』

明後日、明後日ね。

夜は空いていることを確認して、返事をする。

 

『分かりました。それでは、どこで待ち合わせをしましょうか?』

そう返すと、すぐに既読がついた。

 

『それでは、ここはどうでしょう?私が全て支払いますので』

既読がついてからそう経たないうちに返事が来た。

 

送られてきた返事と共に、指定された場所はこの都市でそれなりに名の知れてる料亭。当然それなりに値段は張る。

 

えぇ…?思わず少し困惑してしまう。

 

私の恋人はいったいどんな相手に手を出したのだろう?

なんだか不安になってきたが、こちらが退いては話が終わってしまう。

取り合えずメッセージを送り返す。

 

『分かりました。では、時刻はどうしましょう?』

『8時ごろならば問題ないと思われますが』

 

すぐに返事が来た。

 

『了解しました。八時ごろ、この場所でお待ちしております』 

『予約はこちらで取っておきます。また、追って連絡しますね』

 

よし、取り合えずやるべきことは終わった。

スマホをしまって、私は家に帰ることにしよう。

 

これからが大変なのだ。気張っていかないと。

 

男の恋人は地面を踏みしめるようにして、自宅へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、シラはというと。

 

 

 

 

 

 

 

お兄さんの恋人からの連絡に返信を送る。

 

日曜日の夜に急に連絡が送られてきた時は驚いたけれど、相手が話したいというならこちらとしても断る理由はない。

どのような事を言われるかは分からないが、こちらとしてもいつか直接ぶつかると思っていたから。それが今だっただけ。

むしろ遅すぎるくらいだ。

 

最近仕事で仲良くなった人から教えてもらった料亭を待ち合わせ場所に指定する。

あそこの個室なら、他の誰かに邪魔されることがないはず。

 

この事はお兄さんに話すなと言われているから、お兄さんは多分来ないのだろう。つまり、私と恋人さんの一対一だ。

 

さて、相手はどんなことを言って、どんな対応をとるのかな?

 

こちらとしても負けるつもりはないのだ。

頑張っていくとしよう。

 

 

…ただ、少し気がかりな事もある。

なぜ連絡を取ってきたのだろう?

お兄さんははっきり言って隠し事が下手だ。

いや、もっと言うならあれは下手という次元を超越している。

 

自分から教えているようなものなのだ。

それを今まで傍観していたことを考えて、彼女さんも同じくらい鈍感なのだろう。

あの分かりやすい彼が、浮気をしていることに気づかないくらい。

 

けれど、握手会であった時にはそのような印象はなかったし。

それに、本当に気づいていなかったのならば。

私と二人きりでなく、お兄さんを交えた三人で話すだろう。

 

 

そうなると、浮気を分かっていて放置をしていたことになる。

…なんで?何のために?

 

…考えれば考えるほどよく分からない。

握手会の時に感じたあの親近感もよく分からないし。

 

いや、今考えるのはやめよう。どうせ考えても分からないから。

単純に、あの人に気づかれずに私達の関係を終わらせたいだけの可能性もある。

 

取り合えず、どんな話が展開されるかだけを考えたほうがいい。

そんな風に思案に耽っていると、誰かが私の名を呼んだ。

 

あ、もう休憩終わりか。さっさと仕事に戻らないと。

 

シラはスマホをカバンにしまい、呼ばれた場所へと歩みだした。

明後日の事を頭の片隅で思考しながら。

 

 

 

そして、明後日の夜になり、二人の女性がある料亭を訪れる。

 

 

 

料亭に先についたのはシラだった。

彼女は予約者であることを店員に伝え、予約席である個室に案内してもらう。

 

そうして、座敷に座って。

スマホを見ながらその時を待ち始めた。

 

 

 

 

 

 

私は待っている。お兄さんの恋人よりも先に座敷に座って。

心臓が高鳴っている。

どんなことを言われるのだろうか、もしかしたら罵られるかもしれない。けれど、どんなことを言われても諦めるわけにはいかないのだ。

 

そうして、暫く待っていると。

一人の女性が部屋の中に入ってきた。

 

『失礼しま~す。はじめ…』

 

そんな事を言いながら、見たことのある女性が入ってくる。

その女性は、私を視界に入れると固まったから。

私はにこりと笑って。

 

『また、会いましたね』

 

そうやって、挨拶をしたのだった。

 




はい。すいません、今回少し短めです。 
何だか迷走してきた気がします。
次回は最終回じゃないです。もうちょっとだけ続きます。


第9話も、みていただけると幸いです。
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