昔から仲の良かった女の子と終わってる関係になる話   作:トマトは後ろから呼んでもトマト

5 / 12
今回は少し短めです。
コンサート編じゃないです。
ごめんなちゃい。

もうヤンデレを求めるのはやめました。
自分の性癖の赴くままに書きます。

第5話 皆様方のお口に合うと良いのですが。


第5話

 

私の恋人は浮気をしている。

 

特別に証拠があるわけではない。

けれど、疑わしいポイントはいっぱいあった。

 

彼の家に上がった時に何故かほとんど使われていない使用済みのシャンプーやリンス。

しかも高いやつ。私の恋人はそういうの興味ない。

 

料理が出来ないはずなのに、なぜか私以外に使われた形跡のあるお弁当箱。

お弁当どころか、料理をほとんどしてるところを見た事がない。

 

冷蔵庫にたまに入っている知らない誰かの作り置きの料理。

あの人、大体冷凍食品とかで済ませるタイプ。

 

何故か絶対に見せてくれないメッセージアプリ。

それどころか、私とデートしてる時、あの人は基本的にスマホを取り出さない。

 

こんなに状況証拠がたくさんあって、浮気を疑わないわけがないと思う。

 

それに、私と寝た後に、私が寝たふりをしていると見せるため息とか。

私が席を外している時に、スマホを見ていると死にそうな顔とか。

何故か浮気や不倫に関係しているものを見せると異様に挙動不審になる所とか。

 

そういった彼の立ち振る舞いも、彼が浮気をしてるんじゃないかと疑うには十分だった。

 

いや、もうほぼ浮気をしている事は確定していると言っていいと思う。

 

 

 

あぁ、本当に。本当に。

 

 

愚かしくて、可愛らしい。

 

 

 

私が気付いていないと思って、何とか隠そうと頑張る姿も。

私が見ていないと思って、罪悪感に苦しみ、吐き気を催している姿も。

 

何もかもが愛おしく。

見ていて、最高に愉しかった。

 

あぁ、勿論。私だって最初からこんなに歪んでいたわけではない。

それと、勘違いしないでほしい。

私は、彼が苦しんでいる様を見て愉悦しているだけである。

浮気をしていること自体は不愉快極まりないし、浮気相手には怒り心頭って感じだ。

 

実際、最初彼が浮気をしていると疑った時は憤りで頭の中がいっぱいだった。

状況証拠をあげて、浮気の事実を彼に認めさせて。

その浮気相手とさっさと別れさせてあげようと思っていた。

 

正直、この事実にたどり着いた最初は。

こっちから振ってやる! とか思ったけど。

 

それって、つまり。

彼の浮気相手が彼と結ばれるだけなわけで。

そもそも私は、恋人の心が最後に自分の手元にあればいいってタイプだったし。

その考えは、すぐに霧散した。

 

今にして思えば、本当にあの時の私を褒めてあげたい。

えらいぞ~。よく思い直した!ってね。

 

あぁ、だって。ねぇ?

 

こんなにも愉しい趣味を見つけられたのだから。

自分をものすごく褒めてあげないと。

 

この趣味に目覚めたのは、最初に彼に浮気をしているのではないかと、カマをかけた時。

彼の表情は、特に変化していなかったけど、彼の右足が細かく震えているのを見て。

 

背筋になんだか甘いものが迸った。

 

あんな気持ちになったのは、初めてだった。

キュートアグレッションっていうのかな?

 

いやまぁ、彼の見た目は男らしい方だと思う。

行動も可愛らしいとは相反している。むしろ対極にあるだろう。

けれど、なぜだか彼がとても可愛らしく思えたのだ。

 

彼は、私よりも背が大きくて、力も強い。

 

私が勝てるところは…ビジュアルとか、家事全般のスキルとかそこらへんだろう。

身体能力に至っては私とは比べ物にならない。

まぁそもそも男女の差ってのもあるけれど。

 

そんな彼が、私の一挙一動に戦々恐々としている。

そんな事実と、目の前の固まっている自分の恋人を見て。

思わず、ゾクゾクしてしまった。

 

私の恋人が、浮気相手と私との間で苦しみ、もがいている。

いつか、もしかしたらすぐにでもこの一瞬が修羅場になるのではないかと怯えている。

そんな姿が、見ていてとても興奮した。

 

基本的に自分と対等なはずの彼が、私の手のひらで踊らされている。

それが、最高に愉しかったのだ。

 

あぁ、でも一つ言っておきたい。

私は、あの人の事が嫌いになったわけではないし。

自分の恋人の事を愛玩動物として見るようになったわけでもない。

いまだに恋人の事を男として見ていたし、ちゃんと愛している。

人間としてはだいぶ、いやかなり見損なったけど。

 

それに、正直なことを言うならば。

この『趣味』はとてもリスキーだと思う。

 

苦しむ彼の姿を見て愉しむ傍ら、私もそれなりに怯えていた。

 

いつか、この内心が見抜かれて。

彼が私に失望するのではないか。

 

浮気相手への想いが、私への想いを上回って。

恋人が、私との関係を終わらせるのではないか。

 

そんな風な考え方が頭をよぎることも何回かあった。

 

私と彼が結婚しているならともかく、まだ恋人の段階だったから。

 

だから、決してそんなことにならないように。

彼との大事な交流は怠らなかった。

大学生時代の交流ペースを崩したことはなかったし。

週に1回は料理を一緒に食べて、土日はどこかに出かけたり。

彼の家でゴロゴロと二人で映画を見たりもした。

その日は決まって一緒のベッドで寝ていた。

彼も私も、とても満足していたと思う。

 

それに、私のこの『趣味』だって、ほとんど自分からきっかけを起こしたことはなかった。せいぜい流行っているドラマや音楽を話題にする程度で。

彼は放っておいても苦しみ続けていたし。それで十分に満足できた。

寧ろ、こっちから仕掛けすぎたら潰れて自分から首でも吊ってしまいそうだった。

 

何度か結婚をちらつかせたこともあったかな。

彼は、微妙な反応だったけど、嫌そうではなかった。

 

…ふむ。よくよく考えてみると。

私の恋人って最低な人かも?

 

どっちつかずで、優柔不断。私と結婚の話をしたりする傍ら、浮気相手と寝たりもする。

それで、私と寝るのを拒むこともしない。

私とその子を選べないで(おそらく)一年くらい関係をうだうだと続けている。

自責の念に駆られてはいるが、結局、我が身が可愛い男。

 

う~ん。考えれば考えるほど最低な男だ。

浮気相手の女性も、こんな奴のどこを好きになったのだろう?

 

私?私は、ほら。

こんなクズでも、好きになっちゃったから。

大学生時代からの共通の趣味でずっと仲良くやってきたから。

なんだかんだ一緒に居て楽しいし。

 

それに、私の趣味をぐちゃぐちゃにした責任を取ってもらわないといけないじゃん?

 

あぁ、ダメ男に引っかかる女性の気持ちが少しだけ分かったかも。

こういう事なのかな?

 

まぁ、彼がいかにクズであるかの話は一回置いておこう。

 

彼の浮気相手についてはあんまり分からないことが多い。

おそらく、彼と昔からそれなりの関係を持っているはずなのだ。

 

あの男は別に女性なら誰でもいいってタイプじゃない。

いや、まぁ確定は出来ないけども。

 

彼が苦しんでいる姿を何度も実際に見ているから。

あの苦しみ方は、多分相当な板挟みにあってる…はず。

あれだけ苦しんでいるってことは、おそらく…

私よりも長い間、一緒に居て。

尚且つ、昔からそれなりに交流していたはず。

 

少なくとも、その女性は私に出会うよりも前から相当に仲が良かったのは間違いない。

ただ、それだと気になるのが。

その子についての話を私は一度も聞いたことがないのだ。

 

恐らく浮気が始まったのが1年前。

それまでの彼は間違いなく私に対して誠実だったし、正直でもあった。

それなのに、彼の口から一度もその人物についての話を聞いていない。

 

わざわざ言うほどでもない関係なのかな。

…う~ん? いったいどんな人でどんな関係?

彼と昔から一緒に育った幼馴染とかかな。

いや、でもそれなら私と顔を合わせたことがないのはおかしいような…

 

考えても分からないものは分からない。

 

まぁ別に、分からなくとも構わない。

結局、最後に勝つのは私なのだから。

 

この一年間、その浮気相手も楽しかっただろう。

私もこの新しく出来た趣味を十分堪能できた。

 

だが、これ以上はさすがに看過しかねる。

このまま放っておいたら、彼が靡いてしまいそうだ。

 

そろそろ時間。 こんな茶番は終わりにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の恋人は、男との通話を切った後に浴室にいた。

少し思案した後、浴室を出る。

 

温まった体を冷ましながら、壁にかかったカレンダーを取り外す。

 

楽しみにしているRASIのコンサートには丸がついている。

その一週間後の日曜日に赤いペンで丸をして。

 

『…ちゃんと、私を選んでくれるよね』

 

ほんの少しだけ不安そうな顔をしながら。

そんな言葉を、ボソリと呟いた。




はい、ごめんなさい。
恋人ちゃんもだいぶ終わってます。
純粋じゃないですこの子。

この三人はいったいどこに向かうのか。
きっと、まともな道ではないのでしょうね。

第6話も、見ていただけると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。