ブロリーがボディーガードとして迎える最初のライブが始まる少し前、ブロリー達が舞台裏の楽屋にいる時、会場ではブロリーにとって顔馴染みであるパラガス達がいた。彼らはネットでアイドルフェスのライブにアイ率いるB小町が本日出演するという情報を得てやって来たのだ。アイは今となってはアイドル界でもトップクラスの人気ぶりで、既にもうこの会場は入場規制がかかっていて中に入れずに涙を飲む者もいた。そんな中で彼らはなんと最前列のど真ん中という最高の場所取りに成功していた。超満員のこの会場で全員がアイ達の出番を今か今かと待ちわびていた。
ガヤガヤ
パラガス「はははははー!!いいぞぉ!アイが出るライブを皆で楽しもうではありませんか!」
ベジータ「パラガス!今日こそは大丈夫なんだろうな?前回のように直前で中止になるような展開なんぞ御免だ!」
悟空「オラも前みたいに散々待たせといて見れないなんて嫌だぞ。悟飯、おめぇの出番だぞ。今からステージの裏に行ってちゃんとアイがいるか見てくるんだ。」
悟飯「無理ですよ。」
悟空「ごちゃごちゃ言うな!俺を困らせたいか!」
パラガス「落ち着けェ!心配することはない。前回は並んでいる途中に中止の連絡が来ただろう。だが今回は中に入れた。つまり、今日は予定通りに開催するという訳だぁ!」
トランクス「おーい!あと一人誰か忘れちゃいませんかってんだ!しょうがないからとてつもなく凄いこの僕が伝説のスーパーイケメンオタ芸を披露してアイを――」
ベジータ「トランクス!でしゃばるんじゃない。オタ芸でアイを釘付けにするのはこの俺だー!」
トランクス「父さん!駄目だ!それが父さんの一番の欠点なんだ!」
ベジータ「黙れぇぇぇぇぇ!!」
悟空「ベジータの奴しょうがねぇな。オラが夢中にさせるに決まってんだろ。」
悟飯「お父さん情けない・・」
悟空「なんだとー!!?」
パラガス「お前ら少しは静かに出来んのか!?アイのライブが始まる前に騒がしくしてどうする!?」
悟空「悪い悪い。」
トランクス「はい!」
ベジータ「ふん。」
パラガス「そんなことよりも、もうすぐアイの出番だぞぉ!その調子だ、どんどん近づけ、アイの出番よ。ふぁはははははは。」
悟空「いよいよか~オラわくわくすっぞ!」
ベジータ「ふん。待ちくたびれたぜ。せいぜい楽しませてくれよ?」
トランクス「悟飯さん、僕と一緒に見ませんか?」
悟飯「無理ですよ。」
トランクス「何故!?」
悟飯「お父さんとベジータさんの隣に並んだら振り回すペンライトに巻き込まれる気がします。」
トランクス「確かに・・」
悟飯の意見に納得したトランクスは悟空やベジータと少し離れて見ることにしたようだ。そして会場内にアナウンスが響いた。
『場内の皆様、大変お待たせいたしました。アイドルフェス開幕致します。是非とも楽しんでいってください。それではB小町のライブです。どうぞ。』
\ワアアアアア!!/
―――あなたのアイドル☆サインはB―――
アナウンスが終わると同時にアイ達が笑顔で手を振りながら姿を現した。そしてB小町の一番有名な曲が流れてライブが始まるのであった。
パラガス「うおおお!アイ、いいぞぉ!どんどん盛り上がってしまえー!」
ベジータ「おっしゃぁぁ!アイ可愛イイナァ!」
悟空「イェー!オラはアイを絶対に推し続けるぜ!」
悟飯「アイさんやっぱりうまいうまい上手!」
トランクス「僕もそう思います。やはりアイさんはとてつもなく凄い!」
周りの盛り上がりと共にパラガス達はペンライトを持って一緒にはしゃぎ出す。そして実はこの舞台裏でブロリーがアイ達の関係者スタッフとしてライブを見守っていることをパラガス達は知らない。それどころかブロリーがここに来ていることすら知るよしもないのだった。
―――一方、パラガス達とは別の関係者専用のステージ脇から見守っているブロリーは真剣な眼差しでアイ達を見つめている。その横にはミヤコと壱護、そして子供用の椅子に座ったアクアとルビーがいた。ミヤコと壱護は普段のレッスンでやっていることを存分に出せている現状に満足そうな表情を浮かべていた。ブロリーも最初は表情が少し堅かったが、今は腕を組んでいつも通り笑わず真剣な表情ながらどこか柔らかくなっていた。
ブロリー(フフフ!いい動きしているな。流石アイドルと誉めてやりたいところだぁ。)
\キャッキャッ/
ブロリー(それにしても、アイと出会った時は俺がアイのことを知らないことに驚いてたようだったが、この人気を見るとそうなるのも納得だな。今回はアイだけではないがな。)
\キャッキャッ/
ブロリー(・・ところで下の方がさっきから騒がしいな。一体何なんだぁ?)
ブロリーはアイのライブが始まってから自分のすぐ近くで聞こえてくる甲高い騒がしさに違和感を覚えて視線をそちらに向けた。
アクア「うおおお!アイー!」
ルビー「ママー!ママー!」
するとそこにはペンライトを持ってファンも顔負けのオタ芸を踊っているアクアとルビーがいたのだ。ブロリーは勿論アイドルのオタ芸なんて知るはずもない。そして会場のファン以上に盛り上がってるのではないかと思える程の熱狂ぶりに、ブロリーは絶句して固まりかろうじて声を出した。
ブロリー「・・何やってるんだぁ貴様ら?」
アクア「何って今やってる生ライブでアイを応援しているだけだろ?何もおかしいことはないはずだが?」
ルビー「そうそう!ママのライブで盛り上がらない方がおかしいからね。ブロリーさんも一緒にどう?」
ブロリー「いや、俺はいい。お前達で楽しんでろ。」
ルビーに差し出されたペンライトを見たブロリーは拒否しつつ視線をアイに戻した。
アクア「な、何故だ!?どうしてアイの生ライブを見てそんなに無頓着でいられるんだ!?ステージに立つアイはあんなに魅力的なのに!」
ルビー「そうだよ!ママの生ライブだよ!?億のお金が出てもまだ割に合わないくらいのお宝光景が目の前にあるんだよ!?なのに堪能しないなんて、馬鹿のやることだよ!」
ブロリー「俺は仕事で来てるんだ。浮かれてていざという時にアイやお前達を守れなければ意味ないだろう。」
アクア・ルビー「「!」」
ブロリーの言葉に二人は衝撃を受けて目を見開いて固まり、そしてすぐさま申し訳なさそうな表情になった。
アクア(ああそうか・・ブロリーはそこまでアイや俺達を守ることに全力を尽くしてくれてるのか・・俺達が安心して楽しめるように支えてくれてるんだな・・)
ルビー(ブロリーさん・・そんなに私達のことを考えてくれてたんだ・・楽しまないんじゃなくて楽しむ時間を惜しんでまで守ろうとしてくれてるんだ・・なのに私あんなこと言っちゃった・・)
アクア「ブロリーさん、俺が間違ってた・・そこまで考えてくれてたんだな・・だから俺、ブロリーさんの分まで楽しむよ!」
ルビー「ブロリーさんごめんなさい・・そっか、仕事だもんね・・忙しいブロリーさんの分まで私が楽しむことにする!」
ブロリー「フフフ!それでいい。」(なんとか仕事を盾に誤魔化すことが出来たな。アイのライブを見て頑張ってると思うのは本当だが、ここにいる連中やアクアとルビーのように凄くはまってる訳ではないからな。)
ブロリーは確かにアイを始めB小町のメンバーには頑張っていると感心しているが、ファンやアクア、そしてルビーのように熱狂的なファンというわけではない。なのでアクアとルビーにとって自分達に気を遣った発言に聞こえているようで感激しているが、ブロリー本人にとってはそのままの意味で言っているだけで、別に我慢している訳ではないのだ。その為、仕事を盾にしてうまく解釈させられたことで、ブロリーは初めて"この仕事について良かった"と実感したのだった。
その後も順調にライブは進んでいき、観客の盛り上がりも鳴りを潜めることはなく、大盛況したのだった。そして壱護やミヤコが懸念していた。アイ以外のメンバーを入れ替わりでセンターに立たせた時、会場は一瞬どよめきがあったものの、すぐに更なる盛り上がりを見せたのだ。こうして壱護とミヤコの懸念は杞憂に終わったのだった。そして最後の曲が終わり、アイが観客達に向かってお別れの挨拶をする。
アイ「皆~!今日は来てくれてありがとう~!楽しんでくれたかな~?本当はもう少しいたいけどもうお別れの時間なんだ~。次やるライブも来てくれるかな~?それまで元気に過ごしてね~!それじゃあまたね!バイバイ~!」
アイの挨拶が終わるとメンバー全員がステージ裏へと消えていった。それに合わせてブロリー達も移動を始めた。
ルビー「はぁ~・・最っ高!やっぱりママのライブ見る客は皆億払うべき!」
ブロリー「ぼったくリーです・・」
ルビー「何で!?」
壱護「全くだ、逆に客が寄り付かなくなるぞ。」
アクア「それはそれで困るな。」
ブロリーはアイの熱狂的なファンではない為、アイドルとして振る舞うアイがどれだけ凄いかなどは知らない。しかし、苺プロダクションに就職して金銭感覚がしっかりしてきたこともあり、ルビーの言った金額があまりにも高額だと理解した。その為突っ込みにも壱護が援護する形となった。
ブロリー「それより、この後は何があるんだぁ?」
壱護「アイ達と合流したあと、握手会の準備だ。」
ブロリー「あくしゅかいってなんだぁ?」
アイ「ファンの皆と握手するイベントだよ!ライブのチケットの他に握手券が必要なんだ!」
ブロリー「・・へぁっ!?アイ、何故いるんだ?」
アクア「アイ!?」
ルビー「ママ!?」
アイ「えへへ~♪早くブロ君に会いたくて来ちゃった。」
ブロリーの問いにいつの間にか背後から来ていたアイが答え、驚きと共に振り返る。ブロリーだけでなくアクアとルビーまでもが気づいておらず、同じように驚いていた。
壱護「アイ、他のメンバーはどうした?」
アイ「皆は楽屋で待機してるよ。私だけ早くブロ君に会うの我慢できなくて迎えに来たの。それよりブロ君、私達のライブどうだった?」
ブロリー「そうだな、普段の練習通りに出来ててよかったんじゃないか?今までの映像と比べたらお前がセンターに立つ時間は少なくなったが、お前自身が今までより楽しそうに見えたぞ。」
アイ「!うん!なんかね、メンバーの皆今まで以上に明るくてね、私も今まで以上に楽しかったの!」
ブロリーの感想にアイは満面の笑みで肯定する。それは嘘の鉄仮面ではなく、心からの笑みであった。そんな中、ブロリーとアイが二人の世界にいることに、アクアとルビーは嫉妬の視線を向けていた。
ルビー「ママ、ブロリーさんだけずるい。私達だってペンライトを持って全力で応援したんだよ?」
アクア「ああ、その通りだ。ブロリーさんとばかり楽しそうにするのは不公平だ。」
アイ「!そうだね、ごめんね二人とも。応援ありがとうね。」
アイはしゃがみこんで二人を抱き寄せる。すると二人の機嫌はすぐに直って年相応の笑顔になった。
壱護「アイ、握手会の用意をするから早くいくぞ。」
アイ「もう、社長はせっかちだなぁ。」
壱護「お前がマイペースすぎるんだクソアイドル!」
ブロリー(ライブが無事に終わったからなのかいつも以上に元気だなこいつら・・)
ブロリーは心底楽しそうにするアイと突っ込みを入れながらもどこか嬉しそうな壱護、そしてそれを見守るミヤコに母親に積極的に甘えるルビーに遠慮がちのアクア。楽しそうにする皆についていきながら、握手会での役割を聞くのだった。しかし、この後、ブロリーにとって何度も見た連中と遭遇することになるとはこの時は知るよしもなかった。
なんかボディーガードとしては全然活躍させられてない気がする。ではまた次回。