ブロリーがアクアとルビーを連れて拐われたアイを助けるために飛び出したとき、同時刻でアイを乗せた不審者集団の車は目的地に到着していた。それは海辺にある廃工場だった。車が停車すると拘束したアイを杜撰に引きずり下ろした。
「ほら!さっさと降りろ元アイドル!早くしろ!」
アイ「痛・・ちょっと!痛いからそんな乱暴にしないでよ!」
「うるせぇな。誰が裏切り者の言うことなんて聞くかよ。」
「車内でこういう目に遭わされなかっただけ有り難いと思え。」
アイ「・・っ!」
不審者の一人がアイの首に刃物を沿えて威嚇し、アイは青ざめて冷や汗をかきながら息を飲んだ。引っ張られて入った工場の中には、広いスペースの中に一つだけポツンと椅子が鎮座していた。そこへと迷うことなく一直線に進まされた。そして無理矢理座らされて椅子に縛られた。
「座れ!」ドカッ
アイ「ぎっ、痛いってば!やめてよ!」
「大人しくしろ!」
「暴れるな!命が惜しかったら暴れるな!」
またしても杜撰に扱われて抗議しながら抵抗するが、女性なのに加えて複数人の男性の力に敵う筈もなく。アイは腕を背もたれへと回されて腹周りと太腿に紐を巻き付けられて拘束されてしまった。そして完全に身動きが取れなくなったと同時に奥からカミキヒカルが黒いパーカーのフードを深く被ってゆっくり歩いてきた。
カミキ「君達、お疲れさん。よくやってくれたね。」
「雑作もないことだがな。」
「あとは何すればいい。」
「それと報酬のことは忘れてねぇよな?」
「フン!」
カミキ「それは勿論言い値で出すよ。もう一人来るだろうからそれに備えて外で待機しててくれないかい?」
「そいつが例のあいつだろ?」
「俺達のアイに手を出した報いを受けさせてやろうぜ。」
「息の根が止まる瞬間が楽しみだな。」
「いいだろう。貴様の罠にまんまとかかってやる。」
集団はカミキの指示には返事をしなかったのが多かったものの、文句を言うこともなければその通りに行動しているため了承したようである。指示通り工場内の様々なところへと散らばって行った。そして残ったのはカミキとアイの二人だけになり、アイはカミキを睨んだ。
アイ「カミキ君。これはどういうことなの!?人拐いなんて普通に犯罪だよ!!」
カミキ「それは申し訳ないね。でも自宅前で事を起こされるよりかはマシだよね?」
アイ「ふざけないで!!私をこんな目に会わせて何のつもりなの!?」
カミキ「そう怒らないでよ。久しぶりの感動の再会じゃないか。」
アイ「無理矢理拐っといて白々しい・・!」
カミキ「さっきからすごい強気じゃないか。こうして椅子に拘束されて身動きが取れないのにねぇ。算段でもあるのかい?」
アイ「絶対にブロ君が助けに来てくれるから!この事が公になったら貴方終わりだよ!」
カミキ「フフフフフ。」
しかし、アイがブロリーの名前を出した途端にカミキは不気味に笑い始める。
アイ「何がおかしいの?」
カミキ「僕が何も考えずに君を拐うわけ無いじゃないか。まさかこうも簡単に行くとはね。僕の目的は君もそうだけど彼でもあるんだよ。」
アイ「!!どういうこと!?」
カミキに目的はブロリーでもあると告げられてアイは声を荒げて聞くが、それに動じることなく淡々と答え始める。
カミキ「東京ドームでのことは覚えてる?」
アイ「!忘れるわけない。ブロ君とのことを正式に祝福された大切な思い出だよ。」
カミキ「君にとってはそうだろうね。でもねネットは見たかい?君のこと賛否両論だったよ。どちらかというと批判的な声が多かったかな?」
アイ「!そんな・・会場は皆が認めてくれたのに・・」
カミキ「あの日ドームにいるのだけが君のファンなわけないだろう。チケットを取れなかったのだっていたんだよ。泣く泣く放送や配信で我慢する人達からしたら、行けずに涙を飲んでそのうえ好きな人がいたなんて告白受けたらどう思うかな?」
アイ「!それは・・」
カミキ「そう、ネット上で炎上させていたのがその人達だ。なかには君の好きな彼に対して殺意を持っている人もいたもんなんでね。だから僕は、その人に協力してるってわけ。」
アイ「なんでそんなことを!?まさか私と子供作った関係だけで終わったことに未練でもあるの?」
カミキ「まぁそうだね。ある意味未練かな?」
アイ「私と貴方は利害の一致で子供をもつ関係だけで終わるって同意したはずだよ。それに無理だよ。私は本当にあの日ブロ君を好きになったの。身を呈して助けられて始めて本当の愛に気付けたの。しかもこんなことをする人となんてやり直せるはずないよ。」
カミキ「別にやり直そうなんて言う気はないよ。僕が欲しいのは君と彼の命だからね。」スッ
アイ「!!?」
ここまで言われて察っせないアイではない。言い終わると同時に懐から出した凶器によってアイは始めて焦燥を露にする。その取り出したものはなんと銃であった。
アイ(てっ鉄砲!?なんでそんなもの持ってるの!?いやそれよりも!)「私とブロ君を殺すつもりなの!?」
カミキ「ご名答!さっきも言っただろう。君達に殺意を持っている人に協力してるって。僕としては特になんともないんだけどね。」
アイ「特になんともないならどうして私達を狙うの・・?」
カミキ「それは勿論"価値ある命が奪われることで自身の命の重みを感じる"からさ!」
アイ「・・!!」
カミキは自分で述べた通り価値ある命を奪うことで自分の命の重みを感じることを喜びを味わう快楽殺人者であるが、その事をアイは、アクアとルビーが生まれる前に知り合ってた時には知るよしもなかった。
カミキ「それとアイ、何故僕がこんなにも君にはぺらぺらと話すのか疑問に思わないのかい?」
アイ(!言われてみれば確かにおかしい。どうしてカミキ君はこんなに私にはすらすら話すの?)「・・何でなの?」
カミキ「フフフ、ここまでの話の流れで普通は誰だって気付くはずなんだけどね。まぁいいよ、その理由はね。君も彼も今日ここでどうせ僕に殺されるからせめて冥土の土産にでもしてくれって算段だよ。」
アイ(カミキ君・・!本気で・・!)
カミキの歪んだ笑みを見てアイはカミキがやろうとしていることが冗談ではなく本気だと確信する。自身とブロリーの命が危ないとわかった今、死の恐怖に震えた。そしてこの場にいない最愛の相手のブロリーに必死に祈った。
アイ(ブロ君、助けて・・お願い助けて・・怖いよ・・殺される・・ブロ君・・ブロ君・・!!)
そして拘束されて動けないアイは目隠しをされて視界までもを遮られるなか、ブロリーに内心で助けを求め続けた。
―――一方、工場のすぐ近くで待機しているのはカミキを裏切ってアイの気を引く気満々のサイヤ人四人である。そこに先ほどの集団の格好をしたもう一人が加わり、五人となった。サングラスとマスクをとると、その正体はベジータであった。
パラガス「いいぞ、その調子だ。俺の想定どおりここでアイが運ばれてきて俺たちが助ける計画はもうすぐ実行されるぞぉ!」
ベジータ「パラガス、アイはもうそこにいる。早速アイを救助しに出かける。後に続け。」
パラガス「待て待て待て!タイミングは今ではない。もう少し様子を見ようではありませんか。」
悟空「パラガス何言ってんだ?助けるには早いタイミングの方がいいだろ。」
ベジータ「癪だがカカロットの言うとおりだ。運ばれてきた今いつでも俺は動けるんだからな!」
パラガス「気を沈めろお前ら、俺達の目的はアイを助けるのもそうだが、アイの気をブロリーから俺達へと向けさせる目的もあるんだ。」
ベジータ「だから一刻も早く行った方がいいだろ!」
悟空「そうだ!」
珍しくベジータと悟空の意見があってパラガスに今すぐの出動の要請をするが、パラガスはそれをよしとしない。何か考えがあるみたいだ。
パラガス「いいか?アイはまず自宅の前でブロリーに身を呈して助けられたことがある。それもその時は本当に殺される直前でだ。しかもブロリー単独でだ。そして今の俺達は五人だ。今行ったとしても人数の多さとまだ殺されそうになってないことを踏まえると、助けたというインパクトの上でどうしても劣る可能性がある。そうなるとアイの気は引くことはだいぶ難しいということだ。」
悟空「いい!?じゃあどうすんだ?」
ベジータ「それじゃあ結局無駄じゃないか!!俺は諦めんぞ!アイを俺のものにするまではなぁぁ!!」
パラガス「お前ら落ち着けぇ!そこでブロリーが来るまで待って、来たら目の前でアイを助けようではありませんか。要はブロリーと比較できる状況だということが大切なんだ。そこで俺達の優秀さを見せつけて助ければ、アイは俺達に確実に心変わりするという訳だぁ!」
ベジータ「いいなぁ!」
悟空「よし!それで行ってみっかぁ!」
パラガス「腐☆腐。さぁ俺達の手でアイとの楽園を築き上げるのです!」
悟飯「はい!」
トランクス「はいはいはいはいはーい!!」
ベジータ「・・ところであいつが決めたこととはいえ何故俺がアイを拐う係なんだ!カカロットがパラガスでもよかっただろ!」
悟空「しょーがねぇーだろ。じゃんけんで負けちまったんだから。」
パラガス「その通りです。形だけとはいえ協力してる訳だからな。何かしらの要請は受けるもんだぞぉ!」
ベジータ「不愉快だ。」(それでまさか子供を見ることになるとはなぁ!)
実はアイ宅のマンションで引っ付いたルビーを振り払ったのはベジータである。最初こそ乗り気ではなかったものの、アイと遭遇した際にアクアとルビーを見つけてアイの実子だとわかった途端に殺気だつのだった。そしてサイヤ人には普通刃物なんていらないが、このときのベジータはそれすら忘れていてつい刃物を向けて脅したのだ。実行に移さなかったりスーパーサイヤ人に覚醒しなかっただけマシなのかもしれないが、ルビーはその尋常ではない殺気に怯えていたのだった。だが、そんなことは知らないベジータは自分だけ拐う役割をさせられたことに不満をもっていたようでパラガスと悟空に当たるように吐くのだった。
―――そしてこっちはアクアとルビーを抱えて空を飛んでいるブロリーである。最初こそ飛んでもないスピードで空中を飛ばす普通ではあり得ない体験に二人とも絶叫をあげていたが、流石に数分経てば慣れるのか、ルビーは長い髪を風圧で羽ばたかせながらはしゃいでいた。
ルビー「速い速いはやーい!!凄い凄い!!下を走る車をどんどん追い抜いていくよー!!気持ちいいー!!鳥っていつもこんな気分なのかな?」
そしてアクアの方はルビーと対称的に全く慣れないのか、未だにブロリーにしっかりとしがみつきながら、目をきつく瞑って風圧に耐えていた。
アクア「・・ルビー・・お前・・なんでもう・・慣れてんだよ・・!」
ルビー「お兄ちゃんが慣れなさすぎなの!ブロリーさんだったら絶対に離さないから、頑張って目を開けてみなって。」
ルビーに促されて恐る恐る目を開けるも、凄まじい風圧と目下を凄い勢いで後ろに流れていく建物達の慣れない風景にやはりまだ慣れることは出来なかった。
アクア「・・やっぱ無理だ!」
ブロリー「アクア無理しなくていいぞ。それとルビー、あんまりはしゃぎすぎると死ぬぞ?」
ルビー「へーきへーき。ブロリーさんだったら絶対に落とさないって信じてるから!」
ブロリー「そうですかぁ・・」
ブロリーはルビーを更に強く抱えて、絶対に落とさないようにした。そんな中、アクアが必死に声を絞り出してブロリーに聞いた。
アクア「ブロリーさん・・本当に・・こっちで・・合ってるの・・?」
ブロリー「間違いない。アイは確実にこの先にあるデカい建物の中にいるぞ。未だに気がそこにあるからな。」
アクア「・・信じて・・いいんだね・・?」
ブロリー「任せロットォォ!!」
ブロリーは腕の中で怖がるアクアもしっかり落とさないように抱えて、助けを求めるアイや待ち構えているカミキ達のいる海辺の工場へと急ぐ為に更にスピードを上げた。
ビュオオオオオ
ルビー「きゃー♪!速い速い!!飛行機だー!」
アクア「・・うう・・」(き・・気持ち悪い・・)
そして飛ぶスピードが上がったことで、ルビーは更に興奮して絶叫系アトラクションに乗ったような反応を示した。一方でアクアは乗り物酔いしたようで少し顔色が悪くなっていた。そして風を切って飛び続けるブロリーは二人の真逆の反応に気付かずに表情一つ変えず急行した。その視線の先にはアイ達がいる廃工場の建物を捉えていた。
次回こそブロリーの戦闘描写を書きたい。なんかカミキのキャラが鬼滅の刃の童磨のような感じになってしまって、合ってるのかよくわからない・・