本日はアイのドームライブがある予定だった日だ。表向きには事件に巻き込まれたことで本人のメンタルを考慮しての延期だが、実際は"ブロリーと共に居たいから"という本人の希望で、東京ドームのライブは延期になったのだ。その表向きの概要がドーム関係者や他のメンバーに伝えられるまであと少しの時、そんなことを知るよしもないパラガス達をはじめとするファン達はでアイのライブを楽しみにしていた。
ガヤガヤ
パラガス「遂に来た。アイのライブを現地で楽しむことは、地球移住後の私にとって最大の願いでした。それがアイドル、星野アイに認知される最短の道だと信じて。今ここに最前列に並ぶことが出来て、悲願は達成されました。」
ベジータ「パラガス、でしゃばるんじゃない。会場のいい席は俺の物だー!」
悟空「と思うのか?一番の特等席はオラのもんだ!」
ベジータ「ダ二ィ!?貴様もでしゃばるんじゃない。」
悟空「ベジータ、なんか忘れてねぇか?」
ベジータ「何がだ。」
悟空「オラには瞬間移動があんじゃねぇか。」
ベジータ「だったら俺も一緒に行けばめでたく俺の特等席になるというわけだ。」
悟空「なんだとー!ちきしょう参ったな、言わなきゃ良かったぜ。」
パラガス「お前ら喧嘩するなー!こうなったらカカロットの息子よ、私と二人でライブを楽しもうではありませんか。」
悟飯「無理ですよ。お父さんとベジータさんなら絶対に入ってくると思いますし。」
パラガス「ああ確かに。」
?「おーい!!あと一人誰か忘れちゃいませんかってんだ!俺は二十年後の未来からやってきた伝説のスーパーイケメンサイヤ人、トランクスだ!しょうがないからお前達に伝説のスーパーイケメンオタ芸テクニックを・・」
ベジータ「パラガス、いつになったらこのドームとやらは開くんだ?」
パラガス「ベジータ王、お待ち下さい!もう少しでございます。」
?「ハァッ☆」
パラガス達一行の会話に何がが紛れていたような気はするが、誰も気にすること無く、全員見事なスルーを決めたのだった。「おーい!!」・・というのはさておき、急に現れたのは影が薄いベジータの息子"トランクス"である。一度のお約束を果たした全員はトランクスのことを輪に入れた。
ベジータ「トランクス!何しに来やがった。」
トランクス「今日はここでアイのライブがあると聞いて飛んできました!」
パラガス「はぁ、誰かもう一人来るのではと予想して予備を持ってきておいて良かったな。あなたもどうぞ、トランクス王子。ありがたく思え。」
トランクス「ありがとうございます!」
パラガスがトランクスに予備のチケットを渡すと同時に、ドームの中で慌てた様子のスタッフの服装を着た人物が扉を開けて外へと出てきた。そしてその手には拡声器とスピーカーが握られていた。
パラガス「ん?何か始まるのかね?」
そしてスタッフは拡声器とスピーカーの電源を入れると、列を作る沢山の客人に向けて知らせた。
「皆様にお知らせ致します。本日のライブですが、アイドルのアイが自宅で事件に巻き込まれたとのことで今日は来れないとの連絡を受けました。つきましては、本日のアイドルのライブは中止とさせていただきます。遠路はるばる足を運んでくださった皆様には大変ご迷惑をおかけしますが何卒ご理解ご協力をお願い致します。」
ガヤガヤ
パラガス「ゑゑゑゑゑ!?」
ベジータ「ぬゎんだとぉ!?」
悟空「なんだとー!?」
トランクス「嘘!?」
悟飯「うわあああ!!」
突然現れたスタッフにより衝撃の内容が伝えられた。ざわめきは更に大きくなり、パラガス達も驚愕して絶望の表情を浮かべている。そして納得出来ずにスタッフに詰め寄った。
パラガス「お、お待ち下さい!アイが事件に巻き込まれたって一体どうしたと言うんだ!?」
悟空「そりゃねえぜ、せっかくアイのライブを見に来たってのによぉ。」
「申し訳ありません。詳しい内容は我々にも伝えられていません。ですが、アイが勤めるアイドルグループの社長から直々の連絡があったので間違いありませんね。」
パラガス「そんな・・それじゃあチケットを買って列の最前列にならんでまで待っていた私のこれまでの苦労は・・」
「誠に申し訳ありませんが、後日ご購入頂いた店舗での払い戻しとなりますね。申し訳ありません。」
悟空「うええ・・そんなにか・・」
パラガス「何もかもおしまいだ・・」
ベジータ「俺のアイのライブが見れないだとぉ!?く・・くそぉ・・ふざけやがってぇぇぇ!!地球もろとも粉々に打ち砕いてくれるわーー!!!」ゴォォォォ
トランクス「父さん!駄目だ!それが父さんの一番の欠点なんだ!」
ベジータ「黙れぇぇぇーー!!!」
悟飯「ベジータさん、可哀想に・・」
ベジータ「貴様から殺してやろうかカカロットの息子ー!!」
悟空「ベジータのやつしょうがねぇな。修行ならオラもするぞ。」
ベジータ「貴様はもう少し状況を理解してから発言しやがれこのバァァカ!!」
悟空「なんだとーー!!許せねぇ・・く、うわあああああ!!」ゴォォォォ
悟空のベジータは互いにスーパーサイヤ人になって激突しそうになったが慌ててパラガスが止めた。
パラガス「待て待て待て!こんなところでそんな凄まじいパワーで戦ったら宇宙の中で一番環境が整った美しい地球が消え去ってしまうぞぉ!」
ベジータ「パラガス、だったらアイのライブが見れないのをどう解決するつもりだ。中止だぞ、つまりもう見ることは出来ない!いくら馬鹿でもそれくらいわかるはずだ!」
悟空「パラガス、おめぇになんとか出来るってのか?嘘だったらムシケラの様に岩場に叩きつけてぶっ殺すぞ!」
パラガス「気を沈めろお前ら、スタッフの方は"今日は"中止と言っていたぞぉ。つまり、また今度アイのライブをやる可能性が非常に高いという訳だぁ!その時こそ俺達がライブを一番楽しんでいることを全宇宙に知らしめてやろうではありませんか!」
ベジータ「いいなぁ!」
悟空「パラガス、すげーなぁ。」
トランクス「僕もそう思います。」
パラガス「腐☆腐。」(やれやれ、ひとまず一件落着でございます。)
悟空「そうと決まれば、悟飯帰るか。うまいもんを食いうまい酒に酔う、こんな楽しい生活はないぜ。」
悟飯「はい!」
ベジータ「ふん、次もしっかりと呼べよパラガス。」
パラガス「勿論でございます。」
ベジータ「トランクス!帰るぞ!」
トランクス「はい!」
いつの間にか人だかりはなくなっていて悟空達は空を飛んで帰っていき、今ドームの前に居るのはパラガス一人となった。
パラガス(はぁ・・流石にショックが大きいな。こうなったら、俺もひとまず帰ってブロリーに電話して愚痴るとするか。)
そしてパラガスも空を飛んで家に帰ったのだった。その道中、ため息が尽きることは無かったという。
――――――
一方場所は変わってここはとあるマンションの一室、ブロリーはそこの部屋の中央にあるソファーに深く腰かけてテレビを見ているが、楽しんでいたり、リラックスしている様子はなかった。
ブロリー「・・・・」
そしてその原因は自分の両膝の上と自身の真横にあった。隣にはアイが楽しそうに全身を隙間なく密着させていて、ブロリーの片腕を絡めるように組んでいた。
アイ「♪」
そしてブロリーの両膝の上にはルビーとアクアが馬乗りになっていて、むくれたような表情で拘束を施していた。とはいってもまだ四歳に満たない子供の拘束な為、少し体を動かすだけで簡単に振り払えるのでブロリーからすれば封じられてるわけではないが、かといってこの状態ではいい気分になるはずもなかった。そして四人の先にあるテレビにはアイの過去に出た様々なライブの様子が映し出されていた。ブロリーはアイドルに興味がない、つまり今はテレビを"見ている"のではなく、"見させられている"ということになるのだ。
ルビー(絶対にブロリーさんをママのアイドル沼に沈めてやるんだから!)
アクア(ブロリー、なんとしてでもアイの虜にさせてやる!)
アイ(ブロ君に跨がって座ってるうちの子きゃわ~///それに簡単に抜け出せるはずなのに付き合ってくれてるブロ君も素敵~///)
ブロリー(何故こうなった・・)
何故ブロリーが星野一家に囲まれているのか、それは数時間前まで遡る。
―――――アイ達と一旦別れて家に戻ってきたブロリーは、買ったものをようやく仕舞うことができてくつろいでいた。そしてそのまま三十分が経って家のインターホンが鳴る。
ピンポーン
ブロリー「んん?何だぁ?」
来客の予定など無かったはずと思っているブロリーは、玄関に向かってドアを開けた。
ブロリー「誰だぁ?」
アイ「ブロ君!約束通り来たよ!」
ブロリー「・・お前か、また後で来るって本気だったのか。」
アイ「勿論!じゃあブロ君!早速来て!」
アイはブロリーの手を取って引っ張ろうとする。しかし、力では完全にブロリーの方が上のためビクともしない。そもそも、行く場所も知らされてないのにいきなり手を引っ張られても誰もが"NO!"と言うであろう。なのでまずは目的を聞くことにした。
ブロリー「どこへ行くんだぁ?」
アイ「私の家だよ。アクアとルビーのこともしっかりと紹介したいし、それにまだまだ色々話したいから。」
ブロリー「そうですかぁ・・」(まぁ退屈しのぎには丁度いいなぁ。いいだろう、行ってやるとするか。)
ブロリーはアイの力に合わせて自分から歩きだす。突然動いたことにアイは喜びと同時にブロリーの力の強さに驚いていた。
アイ(ブロ君の力、ものすごく強かったなぁ。私もアイドルやるために走り込みしてるから普通の女の子よりは体力ある自信はあったんだけど。ブロ君の力は次元が違うみたい。・・格好いい///)
アイの家とブロリーの家は同じマンションの隣同士な為、少し物思いに耽りながら歩くだけですぐに到着した。
アイ「ほら、入って入って。色々話したいこともあるし。」
ブロリー「お邪魔します・・」
ブロリーはアイに促されるままアイの家へと上がった。そして前を行くアイに付いていくと、ソファーに座っているアクアとルビーの姿があった。
アイ「紹介するね、うちの子の愛久愛海(アクアマリン)と瑠美衣(ルビー)だよ。」
アイは振り返ってブロリーに満面の笑みを浮かべて告げた。ブロリーがソファーの方を見ると同時にアクアとルビーも此方を見た。そして二人とも笑みを浮かべてブロリーへとよってきた。
ルビー「あー!さっきママを助けてくれた恩人さんじゃん!手は大丈夫なの?」
アクア「先程はアイを・・母を助けてくれてありがとうございます。手は大丈夫なんですか?」
ブロリー「手?俺の手を何故心配する必要がある?」
ルビー「え?だってナイフの刃を掴んで折ったじゃん!」
アクア「あれだけ強く鋭利な刃物を掴んだんです。掌を切っていてもおかしくありませんよ。」
ブロリー「それくらいで怪我するほど俺は雑魚じゃない。見せてやろうか?」
ブロリーはアクアとルビーの前まで腕を持ってくると掌と手の甲を交互に見やすいようにゆっくりと左右にひねった。前世で医者の知識があるアクアは、彼の手に本当に異常がないか調べるために触診したり軽い刺激を与えたりしていたが、なんともないブロリーは二人の気が済むまで見せ続けた。やがて本当になんともないとわかった二人は、驚くと同時にどこか安心したような顔になった。
アクア「本当になんともないようですね、無事なようでなによりです。」
ルビー「どこも痛くなくて本当に我慢なんてしてないんだよね?良かった~。」
ブロリー「わかってくれたようでなによリーです。」
アクア「そういえば自己紹介がまだでしたね。俺は星野愛久愛海です。」
ルビー「私は星野瑠美衣!」
ブロリー「俺はブロリーです・・」
ルビー「ブロリー?改めて聞いたけど変わった名前だね。」
ブロリー「そうか?」
アクア「名字が無いというのも初めて見ました。名前で苦労とかは感じないんですか?」
ブロリー「特に無い、不便だと思ったこともないな。」
アクア「そうなんですね。」(すごい精神力だ。)
アクアはブロリーのキラキラネームをもろともとしない姿勢に感心した。ルビーも心なしか目をキラキラさせていた。するとアイがいきなりブロリーに飛びついた。
アイ「むぅ!」ぎゅ
ブロリー「ぬぅ!アイ、何だぁ?」
アイ「アクアとルビーだけじゃなくて私も構って欲しいなー。」プクー
ブロリー「・・了解した。」
アイ「わかればよろしい!それはそうと、ブロ君、助けてくれて本当にありがとう!ブロ君が助けてくれなかったら私は今頃・・こうしてアクアとルビーと一緒にいられるのも全部ブロ君のお陰だよ!」
ブロリー「・・さっきも言ったと思うが、あれは俺の好きでやったことだ。礼の必要など「そんなの関係ないよ!」!」
ブロリーの意見は変わらず同じ事を言おうとしたが、途中でアイに阻まれて思わず言葉を切った。それでもアイは続けた。
アイ「いくらブロ君が自分の好きでやったとしても、私にとって助けてくれたことには変わりないから。せめて感謝の気持ちくらいは受け取ってほしいな。」
アクア「母の言ってることは本当です。俺はあの時動くことすら出来ませんでした。ブロリーさんがいてくれなかったら間違いなく母は命を落としていたでしょう。俺もルビーも本当に貴方に感謝しています。」
ルビー「お兄ちゃんの言うとおりだよ!ママの命を助けたなんて世界一の偉業なんだからもっと堂々として自慢しまくっていいんだよ。」
アイ「それともブロ君は私達に感謝されるの嫌?」ウルウル
アイは悲しそうな表情をして目を潤わせて聞いた。アクアとルビーも同じような目をしてブロリーを見つめた。それを見たブロリーは視線を逸らしつつ答えた。
ブロリー「嫌ではない、礼なんぞ言われたことないからどうすれば良いかわからんだけだ。」
ルビー「ねぇお兄ちゃん、これがツンデレってやつ?」
アクア「近いようで違うと思う。ブロリーさんが言ってることはどれも嘘を付いてるようには見えない。」
ブロリーの返答を聞いた三人は安心したような表情になって笑顔に変わった。そしてルビーはアクアとのひそひそ話を終えると楽しそうにブロリーに聞いた。
ルビー「あの、ブロリーさんってママのファンなの?」
ブロリー「違う。」
ブロリーの即答にこの場の空気が凍りついた。特にアクアとルビーに至っては笑顔のまま固まっていた。
アイ「え!?」
ルビー「え?だってブロリーさんは自分にメリットが無いはずなのにママの命を助けてくれたよね?なのにママのファンじゃないの?」
アクア「アイは今アイドル界でもトップグラスの人気ぶりですよ?せめてテレビに見る分には知ってるとかは?」
ブロリー「メリットならあったぞ、俺の家で問題事を起こされずに済んだことがな。それに正直に言うとアイはおろか他のアイドルについても全然知らんな。というより興味がない。テレビでも見ていただろうが多分全て聞き流してる。」
アクア「・・そうなんですね・・!」プルプル
ルビー「・・・・」プルプル
ブロリーの返答にアクアとルビーはうつむくと全身を震わせていた。そして
ルビー「お兄ちゃん!ママ!」
アクア「ああ!」
アイ「うん!」
アクアとルビーがブロリーのズボンの裾を掴んでアイが後ろからブロリーの背中を力をいれて押し始めた。しかし、それでもブロリーはビクともしない。それでも突然のことに理解が追い付かない。
ブロリー「貴様らなにしてるんだぁ?」
アイ「ブロ君、ソファーに座って。」
ブロリー「何でだぁ?」
アクア「これからブロリーさんに全てのアイのライブのビデオを見てもらいます!」
ルビー「ママのファンじゃないどころか他のアイドルの事すら知らない上に興味もないなんて絶対に許さないんだから!」
ブロリー「へぁっ!?なに言っちゃってるんだコイツらぁ!!」
アクア「拒否権はありませんよブロリーさん!覚悟してください!」
ルビー「全部見終わるまで絶対に帰さないからね!」
ブロリー「ぬぅ!・・わかったよ。」
そしてブロリーはソファーに深く腰かけて両膝の上にアクアとルビーが拘束を施していて隣ではアイが腕を絡めるように組んで隙間なく密着している構図が完成して現在に至るのだ。パラガス達アイのファンがドームライブのドタキャンで気落ちしているなか、ブロリーだけが星野一家に密着されていることなど、本人と関係者以外は誰も知るよしもなかった。
星野一家のブロリーへの好感度は、疑問が残りながらも最高値を超えています。