星野家にて現在アクアとルビーに膝の上に馬乗りになられているブロリー。隣にはアイが隙間なく身体を密着させている状況の中、テレビにはアイのライブの映像が映し出されていた。そして、その映像はどうもブロリーには見覚えのあるものばかりだった。
『―――あなたのアイドル☆サインはB――――』
ブロリー(ん?これどこかで見たような気がするな。確かビデオに出てる女、星野アイだったか?)
ブロリーが見覚えがあると言った映像。それは前までパラガスと住んでいた時に、悟空やベジータと共にパラガスがアイが出ているライブで大騒ぎしていた為、アイドルに微塵も興味が無いブロリーが嫌でも覚えたシーンだったのだ。
ブロリー(このビデオに出てる女は星野アイ・・俺にくっついてるこの女も星野アイ・・見た目もそっくりだが、まさか同一人物か?)
一般の人が見れば一目で同一人物だと理解できるだろう。しかし、ブロリーは人に対してあまり関心を持たないのとアイドルの興味のなさに、今自分の隣にいるアイが様々なライブに出ている有名アイドルだとようやく理解したのだった。そしてアイで盛り上がっていたパラガス達を思い出したブロリーは、ふと言った。
ブロリー「・・そういや親父ィ達もアイがテレビに出るとはしゃいでいたな。」
アクア・ルビー「「親父達?」」
ブロリー「俺がここに住む前まで親父と一緒に住んでいた。今は別々で暮らしているが、その時は親父と友人達がテレビに映るアイを見て騒がしくてろくに寝られんかったな。今となってはどうでもいいことだがな。」
アイ「えっ?そうだったの?なんかごめんね・・」
ブロリー「気にすることはない。時間を考えずに騒ぐアイツらが悪いんだからな。」
アクア「ブロリーさんは一緒に盛り上がらなかったんですか?」
ブロリー「興味なかったからな。」
アクア「ですが今からでも遅くありませんよ!アイの活躍ぶりは本当に国宝級ですから!」
ルビー「そうそう!ママの活躍を一度見れば虜になること間違いなしだよ!」
アクアとルビーはブロリーにアイのファンになってもらおうと熱弁しながら布教する。そこへ本日のドームライブの中止を関係者全員に伝え終えたのか、壱護がアイの家へと上がってきた。
壱護「はぁ~、ようやくドタキャンの連絡が終わった・・」
アイ「社長、お疲れ~。」
アイは壱護の姿を確認してブロリーに引っ付いたまま呑気に手を振った。壱護は現状の光景を見て絶句した。アイがブロリーの隣に引っ付いていて、ブロリーの膝の上にはアクアとルビーが跨がっていたのだから当然である。
壱護「アイ、なにがあったのか手短に言え・・!」
アイ「ん~、ブロ君と私達四人で過去の私のライブの映像を見てるだけだよ~☆」
壱護「そんなことは見ればわかるわ!なんでお前ら揃いも揃って彼にくっついているんだと聞いているんだ!」
壱護は"ただでさえ子持ちということを隠しながらアイドルやってるというのに今度は男まで作るつもりか"という気持ちでいっぱいになった。これ以上ストレスの要因が増えるのは壱護にとって相当辛いことだった。そして当然アイ達に対して声を張り上げた。しかし、そんな心情など知るよしもないアイは何故壱護が声を張り上げているのか理解出来ずきょとんと首をかしげた。
アイ「社長、なんでそんなに機嫌が悪いの?」
壱護「誰のせいで機嫌悪くなってると思ってるんだクソアイドル!」
アイ「だってブロ君は嫌がってないよ?」
壱護「お前はアイドルだ!男を作ってはいけないことくらい理解してるだろ!」
アイ「でも好きになっちゃったし。」
壱護「それが問題だと言ってるんだ!後アクアとルビーもだ!なに彼の足に跨がってんだよ!」
ルビー「何ってママの良さをブロリーさんに教えてるところだけど?」
アクア「そうだ。アイのファンを布教するための教育をしていただけだ。」
壱護「本人の意思無視で拘束して映像を見せることのどこが布教だ!洗脳の間違いだろ!おい、ブロリー!大丈夫か!?なんか酷いことされてないか!?」
ブロリー「問題ない。俺なら嫌だと思ったらいつでも皆まとめて振り払えるからな。俺がそれをしないということは別に不快とはかんじていないという訳だ。」
壱護「なら良かった。」
壱護はブロリーの返答を聞いて安心したのか少し落ち着いたようだ。そしてそうこうしているうちにテレビの映像が全て終わったようである。それに気づいたアクアとルビーが同時にブロリーの方へ振り返った。
ルビー「ブロリーさん、ママの活躍はどうだった?」
ブロリー(・・はぁ駄目だったな、やっぱりアイの活躍を見てもなんとも思わないな。とりあえず適当に返しておくか)「・・頑張っていたんじゃないか?」
ルビー「だよね!ママ頑張ってたよね!それでそれで?」
ブロリー「それだけだ。」
ルビー「は?それだけ!?反応薄すぎじゃないの?」
アクア「チッ、布教は失敗したか・・」
ブロリー「ただお前達がアイの事を本気で愛してることは伝わってきたがな。」
アクア・ルビー「「えっ?」」
アイ「!」
ブロリー「俺がいくらいいと言っても何度もアイの命を助けた礼をするところだったり、決して拘束とは言えないくらいの非力だったが、俺をこの場にいさせようと身体の動きを封じようとしていたところがな。今言ったのはお袋としてもアイドルとしても本気で愛してないと出来ないことだ。だからお前達のアイに向ける思いは本物だ。違うか?」
ルビー「・・なにも違わないよ、全部あってる。ママの事を本気で愛してるよ。」
アクア「俺も・・恥ずかしいから言わないだけで・・本当は心から愛してる・・」
アイ「・・・・」
アイは俯きながらブロリーの隣からゆっくりと立ち上がった。そしておもむろにアクアとルビーを抱き締めた。その双眼からは大粒の涙が大量に溢れていた。
アクア・ルビー「「!?」」
アイ「・・ありがとう二人とも・・私もやっと言える・・アクア、ルビー、愛してるよ・・ああ、やっと言えた・・この気持ちは絶対に嘘じゃない・・」
アイはようやく愛を知ることができた喜びでそれをアクアとルビーにおもいっきり注いだ。ブロリーはそれを横目で見つめていると、壱護が寄ってきた。
ブロリー「なんだ?」
壱護「ありがとな、アイに本当の愛を教えてくれて。」
ブロリー「?どういうことだ?」
壱護「アイは過去の出来事から人を愛したり好きになることに関して疎くてな、でもお前に助けられたときからアイはその感情を薄々認識しかけたらしく、今回で確信へと変わったみたいだ。だからお前がアイに教授したと言っても過言じゃない。」
アイ「そうだよ!ブロ君、私に愛を教えてくれてありがとう!もう、まさか今日知り合った隣人のブロ君が私の悩み全部解決してくれるなんて・・!もう本当に!ブロ君大好き!」ぎゅ
ブロリー「!!」(またか・・)
ブロリーは感極まったアイに再び抱きつかれて遠い目をしていた。そして今度は壱護もなにも言わずにただそれを虚無顔で見つめているだけだった。そして何かを思い出したかのように壱護はブロリーに聞いた。
壱護「そういえばブロリー、お前って働いたりしてるのか?」
それを聞いた瞬間ブロリーは顔をしかめてゆっくり首を横に振って答えた。
ブロリー「いや、働いてない。会社の試験んんーが難しくて全部落ちてる。」
壱護「そうか!」
ブロリーの返答を聞いて壱護は何故か嬉しそうにしていた。壱護だけでなく、隣で抱きついているアイも、ブロリーの膝の上で拘束しているアクアとルビーも振り返っていて見つめていた。心なしかすごく目を輝かせていた。
ブロリー「何故そんなに嬉しそうなんだ?俺が働いてないのがそんなに無様に見えるか?」
壱護「そうじゃねぇ。俺はいや、俺達はお前にうちの事務所で働いて貰いたいって思ってたんだ。ボディーガードとしてうちに来ないか?」
アイ「ブロ君がボディーガードしてくれるなら私も安心してアイドル出来るし、二人でお忍びデートとかも出来るから。だからお願い、ブロ君、一緒に働こう?」
ルビー「ママの事を合法的に守れるんだよ。光栄なことこの上無いでしょ?断るなんて言わないよね?」
アクア「そうだ。望みなら給料も言い値で出す。アイの安全を守るためにはブロリーさんの力が必要なんだ。試験が出来ないなんて関係ない。」
壱護「お前ら勝手に決めるな!そこまで言ってねぇだろ!」
アイ「でも社長、もし断られたらこれくらいの好待遇するつもりで引き留めてたでしょ?」
壱護「・・間違いない。」
アイ「ほら、だったら最初から言った方が早いって。で、どうかな?ブロ君。」
ブロリー「何がだ?」
アイ「ボディーガードの話だよ。・・もしかして嫌?」ウルウル
アクア・ルビー「「・・・・」」ウルウル
アイ目を潤わせて涙目になりながら上目遣いで尋ねた。そして膝の上に馬乗りになっているアクアとルビーも目を潤わせてブロリーを見つめていた。良心を刺激して屈服させる作戦である。だが、そんなことをしなくても、元々職を求めていたブロリーにとっては願ったり叶ったりな話であり、断る理由も存在しない。返答は勿論決まっていた。
ブロリー「嫌ではない。むしろ俺から頼みたいところだぁ。」
壱護「そうか!」
アイ「!本当!?やった!これから毎日会えるね!」
ブロリー「そうだな。」
ルビー「お兄ちゃん、やったね。勧誘成功だよ。」
アクア「ああ、これでアイが安全に過ごせる。」
ブロリーの返答にアイは歓喜して満面の笑顔になり、アクアとルビーは勧誘に成功したことに満足していた。そして壱護は鞄から書類を出してブロリーに突きつけた。
壱護「それならばとりあえずこの履歴書に名前と住所を書いてくれ。その他は適当にこっちで処理しておく。」
ブロリー「良いだろう。」
ブロリーはとりあえず必須項目だけを簡潔に書くと壱護に履歴書を返した。
壱護「よし、これで新規雇用の手続き完了だ。ブロリー、お前の働きぶりに期待してるからな。アイ、俺は事務所に戻る。とりあえず今日は解散だ。」
アイ「は~い!」
壱護はブロリーが記入した書類をファイルに挟んで鞄に入れると、B小町のアイドル事務所へと帰って行った。
アイ「ブロ君!」
ブロリー「んん?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには心からの微笑みを浮かべてブロリーを見つめるアイがいた。振り返ったことで視線が合った。
アイ「これから末永くよろしくね!」
ブロリー「はい・・」
ブロリーは遂に仕事を見つけることが出来て、どこかスッキリしたような表情になっていた。こうしてアイのボディーガードとして雇われたブロリーだが、この事実をパラガス達アイのファンはまだ知らない。
ブロリーを仲間内に入れただけで安心できるのは私だけでしょうか?それではまた次回。