鈴木さんの話が終わった。全てを失い復讐に燃えた人間の話だった。話の間、彼女はずっと無表情で人形のように感じた。
僕は彼女の生き方が間違っていたとは思えない。ただ、彼女が生きている事に意味は無く空虚さを感じる。艦娘になった時点で彼女の行く末は決まっていたのだろうか?
「ありがとうございました」
「つまらない話でしたがお役に立てたのであれば幸いです」
「いえ、そんな事は……」
「笑って下さい。何かの為にしか生きられないのに、それを貫きすぎて何もかもを失った馬鹿な女の話です」
鈴木さんの言葉を否定したかったけど否定する言葉が見つからない。僕が何を言っても彼女は無表情のままだろう。
「笑うことなんてできませんよ……」
かろうじて口から出た僕の言葉に彼女はため息をついて、紅茶を口に着けた。
「そういえば、瑞鳳は元気ですか?」
「元気……だとは思います」
「詳しく聞かせてくれませんか?」
話して良いのだろうか? 高塚さんがそれを望むとは思えない。だけど、他人との繋がりが希薄な彼女に話してあげたい気持ちもある。
「私の証言を話した対価として話して下さい。瑞鳳に何か言われたら私に全責任を押し付けて下さい」
話すかどうか迷っていたら彼女が呟いた。
「分かりました……」
後ろめたさを感じながらも高塚さんとの間にあった事を全て話した。鈴木さんは僕の話を黙って聞いていた。
「ご協力ありがとうございます。瑞鳳は大丈夫そうですね」
「そうですか?」
「君に会う前よりも良くやっているとは思いますよ」
話によると高塚さんは僕と再会する前は立ち上がれない状況だったらしい。だけど、今の彼女は立ち上がろうとしているという話だった。
「あくまでも私の勝手な予想ですが、瑞鳳は君に感謝していると思います」
「自分にはそう思えませんが……」
「瑞鳳が本当に君の事が嫌いなら謝罪は受け入れませんよ」
彼女の言葉に、ハッとさせられた。
「言われてみれば……」
初めて高塚さんに話を聞きに行った時、彼女は過去の事を話すのを拒否した。彼女は本来、誰とも関わりたくないのが本音だろう。それなのに僕の謝罪を受け入れてくれたという事は答えは1つしかない。
「確かに君との間でトラブルはあったかもしれません。ですが、今の瑞鳳は彼女なりに立ち直ろうとしています。君の行動のおかげですよ」
「僕は高塚さんに迷惑をかけただけだと思ってましたが……」
「迷惑をかけたからこそ、瑞鳳は君の母親に言いたい事を言う事ができました。ネット上で拡散され、野次馬が増えるような被害にもあっていますがそれに対しても戦うつもりみたいです。君が思っているよりも瑞鳳はずっと強いですよ」
「そうなんですか……」
高塚さんは僕が思っているよりもずっと強い人だった。思えば僕に対して嫌味を言いながらも交通費を出してくれたし、鈴木さんとの約束も取ってくれた。彼女には感謝するべきなのかもしれない。
「最後に、瑞鳳に戦友会に顔を出すように言っておいて下さい。彼女と会いたがっている艦娘は多いですから」
「はい。分かりました」
「瑞鳳の事をこれからもよろしくお願いしますね」
鈴木さんは相変わらず無表情だったけど彼女なりの謝意を感じた。
ー--------------------
帰ってから鈴木さんとの間に起きた事を高塚さんに話したら、彼女はため息をついた。
「はぁ、全く……不知火も余計な事を……」
「鈴木さんの言っていた事は本当ですか?」
僕の言葉に高塚さんが小さく舌打ちした。
「……本当だよ。私は君に感謝してる。相変わらず、人のプライベートにズケズケ入り込んでくるのは嫌いだけどね」
「あっ……すみません……」
高塚さんは聞かれるのが嫌だったのだろう。失敗したと思った。
「君には感謝してるけど、それだけは本当に気をつけた方が良いと思うよ。不知火にも言われたでしょ?」
「はい……」
「悪いけど用が済んだなら早く帰って」
「失礼します……」
僕は慌てて高塚さんの家を後にした。
「戦友会か……顔だけ出しに行こうかな……」
高塚結衣は1人で呟いた。
現代編は必要は必要だと思いますか?(よろしければ投票した理由を一言で良いのでコメントにお願いします)
-
いる
-
いらない
-
どちらでもいい