艦娘の戦争   作:黒猫クル

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 久しぶりの新作です。
 筆が遅いこともあって難産でした。一話目は導入編で②からが本編になります。


陽炎編
私の見た戦争①


 鈴木さんから話を聞いてから1ヶ月後、高塚さんに戦友会に来ないかと誘われた。証言を話してくれる人がいるかもしれないし、断る理由は無く(勿論、親には無断だが)一緒に行くことにした。

 

 当日、高塚さんと電車を降りて目的地に向かおうとしたら、冷たい風が吹いた。

 

「寒いですね……」

 

 僕の言葉に高塚さんがため息をついた。

 

「なんで上着を着てこなかったの?」

「昼は温度が上がるからいけると思ってました」

「自業自得だし、我慢しなよ」

 

 僕は彼女の嫌味を黙って聞くことしかできなかった。

 

 10月になると急に寒くなった。昼は暖かくなるけど朝と夜は上着を着たくなる。忌まわしい夏を乗り越えたのは嬉しいけど、今度は寒すぎる。いつの間にか秋は無くなってしまったのだろうか?

 

 駅から10分ほどして目的地の会館についた。周囲の人数はまばらで、元艦娘らしい人が歩いているのが見えた。

 

「ここですか?」

「君の地図だとそうなっているね。多分、合ってるんじゃないかな」

「瑞鳳さん、お久しぶりです!」

 

 後ろからの声に振り向くと目が少しキリッとした狐色の髪の綺麗な女性が立っていた。フレンドリーな口調や見た目からして話しやすそうな人という感じがした。

 

「誰だっけ?」

「不知火の義理の姉の陽炎です。覚えていません?」

 

 陽炎と聞いて以前聞いた鈴木さんの話を思い出した。高塚さんの証言には出ていなかったから、2人が知り合いなことを意外に感じた。

 

 鈴木さんの話では陽炎さんは妹の不知火(鈴木さん)に嫉妬したり、強い意志を持って動ける人という印象を受けたが目の前の彼女は別人のように見える。本当に同一人物なのだろうか?

 

「不知火の姉……? 着任した時に色々聞いてきた子だったっけ?」

「はい、あの時は色々とありがとうございました」

「普通のことを言っただけだから気にしないでよ」

「私、あの言葉に救われました! 瑞鳳さんのこと未だに尊敬しています!」

「別に尊敬されるような人間じゃないんだけど……」

 

 元気の良い陽炎さんに対して高塚さんは少し引き気味に呟いた。

 

「久しぶりね。瑞鳳」

 

 声に振り向くと目を見張るような綺麗な人が立っていた。腰まで届く銀髪とウサギのような真っ赤な瞳。高塚さんや鈴木さんよりもずっと美人に見えた。プライドが高く強気な感じがしたけどそれが彼女の魅力を引き立てているように感じる。

 

「誰?」

「叢雲よ! 秘書艦だったでしょ!?」

「秘書艦……? あー、誰かと思ったら提督とできたチキンな秘書艦様か」

 

 叢雲さんの顔が歪んだ。

 

「……口の悪さは相変わらずね。貴女だって整備兵とできてたじゃないの」

 

 高塚さんがため息をついた。

 

「悪いけど戦死した人のことは話さないでくれるかな? ムカつくんだけど」

「アンタだって、昔のことを言うんだからお互い様でしょ?」

「何? 喧嘩売ってるの?」

「先に売ったのはそっちでしょ?」

 

 2人が言い合いを始めた。高塚さんにとって元交際相手の整備兵のことは地雷だ。それに正面から踏み込んでいくのが恐ろしいと思った。

 

「あーあ、あの二人はやっぱり会うとああなっちゃうわよねぇ」

 

 陽炎さんが呟いた。

 

「大丈夫なんですか?」

「近付くと巻き込まれるから、ほっといた方がいいわよ」

 

 彼女が僕の方を向いた。

 

「そういえば例の件をやらかしたのって君?」

 

 例の件と聞いてドキリとした。

 

「なんのことですか……?」

「艦娘の証言を本人に無断で学校で発表したことと言えば分かるかな?」

 

 予想通りの問いに心臓が握り潰されたような感触を感じた。

 

「はい……」

「うーん……やりたくなる気持ちは分かるけど、あまり関心はしないかな……他の人にも言われたかもしれないけど気をつけた方が良いと思うよ」

「はい……」

「まぁでも、結果的には瑞鳳さんを立ち直らせるきっかけになったかもしれないから、今回はそこまで気にする必要はないかな。これからも頑張ってね」

 

 陽炎さんはニッコリ笑顔を僕に向けてくれた。

 

 

ー--------------------

 

 

 戦友会の集会が始まった。

 

 高塚さんは多くの人に声をかけられた。ただ、彼女はあまり他人を見ていなかったらしく激戦区の鎮守府の時の戦友を除くとほとんどの艦娘のことを覚えていなかった。

 

「瑞鳳、お久しぶりです」

 

 集会が始まって30分ぐらいした時に鈴木さんが高塚さんに声をかけた。僕は彼女の方を見て小さくお辞儀をした。

 

「久しぶり。元気にしてた?」

「それなりに、ですね」

 

 鈴木さんがいつもの無表情で呟いた。

 お互いに話したいことがあるのだと思う。だけど、言い出しにくいのか口を開こうとしない。2人の間に沈黙が流れた。

 

「……終わったら久しぶりに飲みにでも行く?」

「お付き合いします」

 

 鈴木さんが呟いた。

 

 高塚さんは酒を飲めば話しやすくなると思ったのだと思う。二人が飲みに行くとなると付き添いの自分が何をすれば良いのか分からないけど、彼女の意思を尊重したいと思う。

 

 ふと、陽炎さんが悲しそうな顔をして二人を見つめていることにきづいた。彼女の右目から一筋の涙が垂れる。二人のどちらかに対して何か思うことがあったのだろうか?

 

「大丈夫ですか?」

 

 思い切って声をかけた。

 

「うん。平気。慣れてるから。心配してくれてありがとうね」

 

 彼女が涙を拭いた。

 

「鈴木さんのことですか?」

「うん……」

 

 当てずっぽうで言ったら当たった。二人は絶縁に近い状況のはずだったけど彼女のことが未だに気になるのだろうか? 彼女は何を見てきたのだろうか? この人の話を聞いてみたいと思った。

 

「良かったらですが……陽炎さんが艦娘だった時の話を聞かせていただけませんか?」

「いいけど、話すと長くなりそうだし戦友会が終わってからでいいかな?」

 

 高塚さんは鈴木さんと飲みに行くだろうし、調度良いだろう。

 

「はい、大丈夫です。また、後でよろしくお願いします」

 

 戦友会が終わった後に彼女の話を近くのカフェで聞くことになった。

 

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