艦娘の戦争   作:黒猫クル

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 告白シーン及びデート編は私と司令官(https://syosetu.org/novel/295051/5.html)です


承認欲求と依存と⑧

 四年が経った。自分の為に仕方なく受けていたつもりの秘書艦という立場にプライドを持てるようになっていた。

 四年の間で鎮守府は少しずつ大きくなり、艦娘の人材育成や試作兵器のテストをする後方拠点として欠かせない場所になった。鎮守府の艦娘は入れ替わりしたけども、私と陽炎と荒潮の初期組の三人は鎮守府に残り続けた。

 

 前線志望だった陽炎も今ではここが居場所だと思っているらしく鎮守府に居続けてくれている。加えて、最前線で戦っている義理の妹の不知火に会いに行く覚悟が決まらないらしい。陽炎の実の妹と不知火の妹が同じ鎮守府で戦死していたこともあると思うが、あれほど激しく嫉妬していた不知火のこともほとんど話さなくなっていた。

 

 

ー--------------------

 

 

 仕事が早く終わって自由時間に三人で外出した秋のある日のこと。喫茶店で一休みした際にコーヒーを飲みながら雑談をしていたが恋愛の話になった。

 

「ねぇ、二人とも最近、気になる人とかいないのー?」

 

 きっかけとなる質問を振ったのは荒潮だった。無縁な話だと思った。

 

「いないわ」

「私も……」

 

 即答の私に対して陽炎は顔を赤くして、動揺しているように見えた。

 

「陽炎ちゃんはいるみたいだけど、誰かしらー」

「いないわよ!」

「本当にー?」

 

 陽炎の額に汗が浮かぶ。この調子だと口を割るのにそう時間はかからないだろう。荒潮にからかわれる陽炎を後目に私はブラックコーヒーに口をつけた。

 

「誰かしらー? もしかして提督?」

 

 陽炎がビクッとした。図星らしい。

 

「あらー、一発で当たっちゃったわねー」

「いないって言ってるでしょ!?」

 

 司令官か。近くにいる異性としてはもっとも身近な人間だ。4年の年月があるし、陽炎が好きになるのも不自然ではないと思う。

 

「ちょっと叢雲! 黙ってないでアンタも誰かいるんじゃないの?」

 

 黙って静観していたら飛び火した。鬱陶しいと思った。

 

「いないって言ってるでしょ。異性を好きになったことはないの」

 

 私の言葉に荒潮が私を見た。

 

「本当にー? 叢雲ちゃんは美人だし、モテたんじゃない?」

「モテたわよ。告白されて付き合ったこともあるわ。でもそれだけ。どいつもこいつも長続きしなかった。 恋愛なんてそんなものよ」

 

 告白なんて誰でもできる。だけど、それだけ。恋愛に良い思い出なんてない。興味本位で異性と何度か付き合ったことはあるが、どの子も向こうの方から勝手に離れていった。むしろ、高嶺の花だった私と付き合えたことを自慢してた馬鹿がいてムカついたぐらい。

 世の中には私との関係に耐えきれなくなる人間か馬鹿しかいない。そう気づいてからは両親に気づかれると面倒だったこともあって、恋愛への興味を急速に失い、考えないようになった。

 

「あらー、勿体ないわねー。陽炎ちゃんはどうなのー?」

「私のことはどうでもいいでしょ!? 聞いてばかりいないで荒潮も何か話しなさいよ!」

 

 あくまでも私の勘だが陽炎はそれなりに経験がありそうな気がする。彼女の性格なら性別問わず好かれるだろうし、容姿も悪くないから誰と付き合っても上手くいくと思う。もっとも、あの様子だとお遊びレベルの付き合いしかしていないだろうが。

 

「えー、私? 私は秘密よー」

「なんで、荒潮だけ秘密なのよ!」

「あら? そうかしら? 陽炎ちゃんだって何も話してないんじゃない?」

 

 荒潮がケラケラと笑った。

 

「……ああ言えばこう言うわね……」

「でも、提督は私もいいと思うわよ。陽炎ちゃんに取られる前に取っちゃうおうかしら」

「何言ってんのよ!」

「あらー、提督が好きだって認めるの?」

 

 二人の馬鹿みたいなやり取りを見ていたら段々イライラしてきた。

 

「二人ともいい加減にしなさい! 外にまで出て喧嘩してるんじゃないわよ!」

 

 私の怒鳴り声をきっかけに二人の恋愛話は終わった。

 

 私は恋愛には無縁だし、これから先も意識することはないだろう。この時はそう思っていた。

 

 

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 陽炎と荒潮との恋愛話から一ヶ月後、司令官に飲みに誘われた。初めて司令官に誘われた時と同じで彼の奢りだ。馴染めの居酒屋に向かい個室で彼の対面に座った。

 

「いつも、付き合ってくれてありがとうな」

「奢りだから付き合ってあげてるだけよ」

 

 二人でビールで乾杯をした。

 

 司令官の愚痴を聞く関係は不定期だが、あの日からずっと続いていた。私としては奢りだから付き合ってあげているだけだし、愚痴話を適当に流しているだけだけど司令官はそれで満足する。一度、そのことを指摘したこともあるけど彼は聞いてくれるだけで満足だと言っていた。私としては適当に流しているつもりだが、彼にとっては私の言葉がそれなりに刺さるらしい。何が好きなのかはよく分からないが……

 

「それで、今日は何があったの?」

「先日のミスをケアしてくれたことの礼が言いたくてな……ありがとう叢雲」

 

 いつも通りではあるけどもそんなことかと内心ため息をついた。

 

「秘書艦として当然のことをしただけよ。それにアンタがミスするのは昔からじゃない」

 

 司令官が仕事でミスをするのは今に始まったことではない。書類をよくやり忘れるし、上に間違った報告をしたことさえある。最初の方はその度その度にキレていたが、今では慣れている。彼のミスが減っていっていたこともあり、最近はやらかしそうなミスを想定して対策をするだけであまり怒らなくなっていた。

 

「それもそうだな……」

 

 しばらくの間、彼の愚痴話が始まった。私はそれを適当に流す。そんな時間が続いた。

 

 話していてふと、彼のお猪口が空になったことに気づいた。世間では相手の酒が切れたら黙って注ぐものだと聞いたことがある。気まぐれだけど、それをしてみようと思った。

 

「あっ……悪いな」

 

 彼が少し驚いた顔した。

 

「気が向いたからやっただけよ」

 

 気まぐれでやってみたが特に何も感じなかった。相手に気を遣う風習だと思うけど、アルコールへの強弱があるだろうし弱い人にはありがた迷惑でしかない気がする。

 

「叢雲……」

「何よ?」

「いや、すまん。なんでもない」

 

 司令官は自分の気持ちを抑え込むようにアルコールを飲んだ。

 

 司令官が何かを言いかけて言わないのに違和感を感じたが愚痴に繋がるのも面倒だし、指摘しなかった。この後司令官はやけに酒が進んで悪酔いした。

 

 

 後に司令官自身に聞いた話だと、この時のことがきっかけだと言っていた。こんなことになるなんて当時は全く考えていなかった。

 ひと月ぐらいして、カフェでの恋愛話も司令官とのサシ飲みのこともすっかり忘れた頃……

 

 彼に告白された。正確には無理矢理させてしまったというのが正しいのかもしれない。

 

 よそよそしたり、何となく落ち着きのない司令官に違和感を感じサシ飲みの場で問い詰めた所、好きな人ができたと自白した。この時点で放っておけば良かったのに、あろうことか義務感でその相手を無理に聞き出そうとしてしまった。当時の私は色恋沙汰は調整しなければならないと思っていた……

 

 私に問い詰められ、逃げ道が無くなった司令官は私に告白した。

 

 唐突な告白に正直、動揺した。覚悟もしてなかったし、なんで好かれたのか分からなかった。

 好きになった理由を聞いたが、司令官は私を助けたい気持ちが次第に好意に変わっていったことを自白した。

 

 ……告白を受けるか悩んだが、責任を感じて受けることにした。彼のことは異性として意識していない。だけど、無理矢理聞き出したのは私だし、断るのは人間関係を壊すことになる。あの時にできた最善の選択肢だったと思う。

 当然ながら秘書艦として受けたことと本当に好きになるかは今後次第であることも了承させた。

 

 告白されるなんてここ何年もされていなかった。秘書艦として鎮守府運営のために司令官の全てを知らなければならないと思っていたが判断が軽薄過ぎた。

 

 

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 初デートは散々だった。

 陽炎と荒潮の二人のアドバイスを参考にしたデートはため息をつきたくなるぐらい滅茶苦茶だったし、二人には尾行されていた。尾行していた二人を追い払った後に司令官に挽回のチャンスを与え、何とか建て直したのに今度はデート終わりに私のトラウマが発症した。

 

 何とか良い感じの雰囲気で終わりそうだったのに私のミスで全てを台無しにしてしまい最悪の気分だった。自己嫌悪で落ち込む私を司令官は否定せずに受け入れてくれた。その時だけは心から彼に助けられたと思った。

 

 陽炎と荒潮の二人にバレていたせいで私と司令官の関係はたちまちのうちに鎮守府全体に広まった。多くの艦娘に彼との関係を聞かれ、茶化された。特にいつもの二人である陽炎には嫉妬され荒潮にはからかわれた。

 

 だけど、それ以外に司令官と交際関係になって変わったことはあまりなかった。私は秘書艦としてやるべきことを行い、司令官も私の指示に従って執務をする。サシ飲みの関係もそのまま。彼が私のことを気にかけてくれることは多少は増えたけど、私から彼に頼ることはほとんど無かった。 たまに、デートに行くことはあっても私がリードするのが大半。彼に感謝したのは最初のデート中に発作が発生したあの時の一回だけ。別れ話のようなことはなかったけど親交を深めるようなこともなかった。

 

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