ママと司令官おじさんがチェス盤を睨んでいる。二人は何も話さずにやっていて、アパートの部屋の中はテレビの雑音しかしない。真剣勝負だ。
ママの手が伸びてクィーンを動かした。
「いいのか? 叢雲。タダだぞ」
「取りたければ取りなさい」
「じゃあ……」
おじさんがクィーンをビショップで取った瞬間にママの手が動いた。
「チェックメイトよ。私の勝ち」
「あっ!」
チェス盤を睨んでいたおじさんが頭を抱えた。
「負けだな……」
「クィーンを取らなかったらまだ詰まなかったわよ」
「やっぱり、叢雲には勝てないな」
おじさんが笑った。
「ママ凄い!」
「司令官はそこまで強くないから澪もすぐに勝てるようになるわよ」
ママはそう言うけど、私はまだおじさんに一度も勝てていない。それなのに、ママはあっさりと勝ってしまう。ママが羨ましいと思った。
「そろそろ、年越しそば作るから待ってなさいね」
ママが立ち上がってキッチンに向かった。
今日は大晦日。外は静かに雪が降っている。ママとおじさんと年越しをする。満潮さんと陽炎さんは一緒に過ごしたい人がいるみたいで、今日はいない。
「澪、何かするか?」
「うーん……UNOがやりたい!」
「UNOか。実はトランプでも似た遊びができるんだがやってみないか?」
「そうなの!?」
ページワンという遊びをやっておじさんと遊んだ。結果は一勝一敗。UNOよりはカードの種類が少なかったけど面白かった。
二戦目が終わり、年越しそばを食べていたらテレビでカウントダウンが始まった。
「年越しね」
「そうだな」
カウントダウンが5……4……3……2……1……と続いて0になった。
新年明けましておめでとうございますと三人同時に言った。
「今年もいい年になるといいわね」
ママが呟いた。
「そうだな……」
おじさんが日本酒を口にしたのを見て、ふと新年の願いを言い合うつもりだったことを思い出した。
「そういえばママ、ママの、新年の願いって何なの?」
「ママの願い? ママの願いは澪が元気でいることよ。今年もよろしくね」
「うん! おじさんは?」
「あっ、えっと僕は……」
おじさんがまごまごしだしてそっぽを向いた。
「話したくないなら話さなくてもいいわよ」
「えー? 聞きたい!」
「そういう澪は何なの?」
「えっ? 私は…… 秘密!」
願いはあるけど話すのが恥ずかしかった。
「なんだ、澪も話せないじゃない。二人ともそっくりね」
ママがクスリと笑った。
今年も皆が笑顔でありますように。それが私の願い。