艦娘の戦争   作:黒猫クル

57 / 57
 年末なので年越し短編を投稿します。世界観的には前回と同じで叢雲の娘視点です


静かな年越し(叢雲)

 ママと司令官おじさんがチェス盤を睨んでいる。二人は何も話さずにやっていて、アパートの部屋の中はテレビの雑音しかしない。真剣勝負だ。

 ママの手が伸びてクィーンを動かした。

 

「いいのか? 叢雲。タダだぞ」

「取りたければ取りなさい」

「じゃあ……」

 

 おじさんがクィーンをビショップで取った瞬間にママの手が動いた。

 

「チェックメイトよ。私の勝ち」

「あっ!」

 

 チェス盤を睨んでいたおじさんが頭を抱えた。

 

「負けだな……」

「クィーンを取らなかったらまだ詰まなかったわよ」

「やっぱり、叢雲には勝てないな」

 

 おじさんが笑った。

 

「ママ凄い!」

「司令官はそこまで強くないから澪もすぐに勝てるようになるわよ」

 

 ママはそう言うけど、私はまだおじさんに一度も勝てていない。それなのに、ママはあっさりと勝ってしまう。ママが羨ましいと思った。

 

「そろそろ、年越しそば作るから待ってなさいね」

 

 ママが立ち上がってキッチンに向かった。

 

 今日は大晦日。外は静かに雪が降っている。ママとおじさんと年越しをする。満潮さんと陽炎さんは一緒に過ごしたい人がいるみたいで、今日はいない。

 

「澪、何かするか?」

「うーん……UNOがやりたい!」

「UNOか。実はトランプでも似た遊びができるんだがやってみないか?」

「そうなの!?」

 

 ページワンという遊びをやっておじさんと遊んだ。結果は一勝一敗。UNOよりはカードの種類が少なかったけど面白かった。

 

 二戦目が終わり、年越しそばを食べていたらテレビでカウントダウンが始まった。

 

「年越しね」

「そうだな」

 

 カウントダウンが5……4……3……2……1……と続いて0になった。

 

 新年明けましておめでとうございますと三人同時に言った。

 

「今年もいい年になるといいわね」

 

 ママが呟いた。

 

「そうだな……」

 

 おじさんが日本酒を口にしたのを見て、ふと新年の願いを言い合うつもりだったことを思い出した。

 

「そういえばママ、ママの、新年の願いって何なの?」

「ママの願い? ママの願いは澪が元気でいることよ。今年もよろしくね」

「うん! おじさんは?」

「あっ、えっと僕は……」

 

 おじさんがまごまごしだしてそっぽを向いた。

 

「話したくないなら話さなくてもいいわよ」

「えー? 聞きたい!」

「そういう澪は何なの?」

「えっ? 私は…… 秘密!」

 

 願いはあるけど話すのが恥ずかしかった。

 

「なんだ、澪も話せないじゃない。二人ともそっくりね」

 

 ママがクスリと笑った。

 

 今年も皆が笑顔でありますように。それが私の願い。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。