転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
ぼくは、『転生したら剣でした』というラノベの世界に転生したらしい。
死んだ時の事は、詳しく覚えていないのだが。
しかも何故かTSして女の子になった。白髪紅眼のアルビノ系スーパー美少女だ。
この世界でアルビノは白神子と呼ばれ、特殊な強いスキルを持っているらしく、ぼくにもそのスキルが宿っていた。
だが、村の人たちはぼくのことを化け物呼ばわりして関わりを持とうとしてくれることはなかった。
それでも親は一応は愛してくれていたのだが、名前すら貰えることなく微妙に避けられていた。
ある日ぼくたちのいる村が強い魔獣が襲われて壊滅し、家族も殺されて行く場所が無くなってしまったぼくは奴隷商に捕まってしまった。
人生これで終わりかなー、と思っていた矢先に、どういう運命なのか、一緒に捕らえられている奴隷達の中に猫耳黒目黒髪少女がいたのだ。
捕まえられる前の名前を尋ねると、フランと答えられた。
……間違いなく主人公である。
色々とあって、押し付けられた仕事をこなしていくうちに、ぼくとフランは仲良くなっていった。
そして今は、荷物運びが終わって馬車に乗っていたところに『ツインヘッド・ベア』とかいう魔獣に襲われているところです。
……誰か助けて(懇願)
■□■
──ドガシャア!
「ぐぇッ!?」
ぼくが馬車の中で座っていると、いきなり外に飛ばされた。
咄嗟に後ろを振り向くと、そこには頭が2つの熊が。
そしてぼくはすぐに理解した。僕たちが乗っていた馬車が吹き飛ばされたことに。
「逃げるなッ! そこのお前らは熊を足止めするんだよ。食われて時間稼ぎをしろ……ッ!」
……嘘だろ?
すると奴隷商の首輪が輝き出し、ぼくを含めた全ての奴隷が強制的に『ツインヘッド・ベア』に立ち向かわされる。
そして、何人かの奴隷が前足で払われただけで殺された。
「……序盤に出てきていい敵じゃなくね?」
だが、そろそろ首輪の強制力が……お、弱まった!
ある程度自由に動けるようになったぼくは、一目散に逃げ出した。
あんなのとマトモに戦うわけがないだろ! 死んじゃうよ!
「ッ……」
やらされてきた数々の労働のせいで疲労していたぼくの足が痛みを訴えてくるが、ここで立ち止まってしまったらどうなるか。
それは考えるまでもないだろう。
そうして痛みに耐えながら必死に走っていると、風が鳴った。
──ひゅぱ
振り返ってみてみれば、どこからか剣を持って走ってきたフランが、熊の前足に乗り、突きの一撃で心臓を貫いていた。
「どうもありがとう、剣さん。とても助かった! ん、すごい感謝っ! じゃあこれで……ん? ん……。……使いたい、とても使いたい。でも私は奴隷だから。きっと取り上げられる。……無理。この首輪がある限り……逆らえないし逃げられない。多分死ぬ。そういう呪詛がかかってる」
あれ? フラン、もしかして、僕に気付いてない……?
というか、師匠(予定)の言葉聞こえないからフランが変人みたいに見える……。
「わたしは──」
「くそっ、何から何まで大損だッ! 使えない奴らめ……ッ! おい! そこのお前!」
うっわ、あの外道が来やがった。
こっちに目をつけられたら嫌だし、奴隷契約が師匠によって無効化されるまで見つからないように隠れておこう。
「生きてるのはケダモノ1匹か。まさかお前がツインヘッド・ベアを倒したのか? ……その剣で?」
「……ん」
「フン……高そうな剣じゃないか。よこせッ!」
──ズガッ
剣が勝手に動き、奴隷商の頭蓋骨が刺されて瞬時に絶命した。
ついでと言わんばかりに契約書も切り裂かれ、効力を失っていく。
隠れていたぼくの首輪が壊れるのを見て、解放されたことに安心し息を吐いた。
「あ、そうだ。フランを鑑定しておこっと」
名称:フラン
年齢:12歳
種族:獣人・黒猫族
職業:なし
ステータス レベル:3
生命:39 魔力:25 腕力:24 敏捷:46
スキル:剣術1、夜目、剥ぎ取り上手、方向感覚
共有スキル:剣術7、拳闘術3、剣技7、拳闘技1、回復速度上昇1、回避2、回避上昇1、脚力上昇2、瞬間再生1、回復魔術1、火炎魔術1、浄化魔術3、土魔術4、火魔術10、補助魔術3、危機察知1、警戒4、気配察知2、採取2、反響定位1、魔力感知3、隠密3、気配遮断3、逃走1、威嚇2、覇気1、火炎耐性1、恐怖耐性1、衝撃耐性1、状態異常耐性1、精神耐性1、毒耐性3、眠気耐性1、病気耐性3、物理攻撃耐性1、麻痺耐性2、解体10、投擲3、料理10、空中跳躍2、鉱物学1、製薬術1、薬草学3、毒中呼吸1、分体創造1、気力操作、次元収納、振動牙、浮遊、分割思考、魔力操作、暗視、吸収強化、視覚強化、消化強化、鷹の目、聴覚強化、肺腑強化、敏捷力上昇[小]、魔力上昇[小]、味覚強化、腕力上昇[小]
称号:解体王、スキルコレクター、火術師、料理王
「……うわぁ」
急激に増えているスキルを見て、ぼくは絶句した。
知ってても驚くでしょこんな量……。
ついでにぼくのステータスを見てみると。
名称:なし(■■■)
年齢:12歳
種族:人間
職業:なし
ステータス レベル:4
生命:50 魔力:33 腕力:8 敏捷:10
スキル:剣術3、鑑定2
エクストラスキル:模改の理
称号:なし
……ぼくじゃ勝ち目無いなー。
「おーい、フランー?」
「……ん? あ!」
お、フランがこっちに気づいてくれたっぽいな。
「やぁ。ありがとねー、あの……ツインヘッド・ベア? を倒してくれて。危うく死んじゃうところだったよー……」
「ん、生きててよかった。……本当に」
「それにしても凄かったね……あんな大きい熊を一人で倒すなんてさ」
「すごいのは師匠」
「師匠? 誰かに戦い方を習ったの?」
「ん、剣」
「……ん? 剣?」
『なあフラン、こいつは?』
「け、剣が喋った!?」
師匠のことは知ってはいるが、一応は初見のフリをしておこう。
『えーと、フラン? この子は一体……?』
「わたしの友達。……たった一人の」
『友達?』
「ん」
「あのー、フラン? それと師匠、さん? どういうことなのかそろそろ説明してほしいなー、なんて」
フランと師匠が話しているところに、ぼくは困ったように頭を掻いて説明を求める。
「師匠が私を強くしてくれた」
「ほほう?」
『俺のスキルをフランに付与してるんだよ』
「付与? え、スキル? っていうか、そもそもきみは誰? いや……何?」
「ん、師匠」
「アッ、ハイ」
なんだこの会話。
『あーっと、君の名前を教えてくれるか? 奴隷にされる前の、元の名前な』
「……無いよ」
『え……? いや、でも──』
「……無いから。ね?」
少なくとも、親から貰った名前なんて無い。
そして、彼女からの冗談混じったあの名前は……名乗る資格なんて無いのだ。
「ねぇ、わたしが付けていい?」
「だから付けなくていいって。何回目……?」
「むぅ……」
流石に"師匠"って付けたフランに名前を付けられたくないので、これまでも名付けたいというフランの要望を断ってきたのだ。
『じゃあ俺が付けていいか?』
「師匠さんが?」
……師匠に名付けられたら、少しはぼくも変われるかな。
それにフランよりはネーミングセンス良いだろうし。
「お願いします」
『そうだな……なら、ルビーなんてどうだ?』
「ルビー?」
『ああ、その紅い目がルビーみたいだしな』
「ねえ師匠、ルビーって何?」
『あ、そうか。ここ異世界だったわ』
さらっと異世界出身だってバラさないでくれるかな!?
よし、スルーしよう。ぼくには超高度のスルースキルがあるのだ。
よし、できればここから自然に僕がフラン達についていくような流れにしたいけど……。
「ねえ、ルビー」
「ん? あ、ぼくか。まだ慣れないね、その名前」
『僕っ娘だと!?』
そこの剣。うるさいぞ。
「で、どうしたの?」
「私達の旅に着いて来てくれる?」
ぼくは、運命に勝った……! まさかフランから誘われるとは。
むしろ喜んでついていくよ!
「うん、いいよ。どうせ行く宛もないしね」
「ありがと!!」
〜〜ッ! ……ヤバ、可愛い。
「じゃあ、まずはどうするの?」
「森を抜ける」
『まあ、それが一番だろうなぁ』
「オッケー、それじゃあ行こっか」
「わかった」
こうして、ぼくたち二人と無機物一人の旅が始まったのだ。
〈ルビーが、パーティーの一人に登録されました〉
リメイク前との変更点
①ルビーの一人称
"僕"→"ぼく"
②エクストラスキル
"簒奪"→"模改の理"
③忌み子設定の消失
模改の理:このスキルを別のスキルへと改変可能。改変時、このスキルへ戻すことはできない。