転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜   作:氷月ユキナ

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「いやぁ、変な空気にしちゃってごめんねー?」

 

 ガルスさんの店を出て、ぼくたちは歩きながら取り繕った笑顔をフラン達に見せるが、フランは不安そうな顔をこちらに見せる。

 

「……ルビー、その」

「そんな顔しなくていいって、別に大したことじゃないしさ」

 

 フランが何を言えばいいのか分からないといいたげだが、別にそんなこと気にしなくていいのだ。

 

 もう終わったことだし、気にかける必要なんてない。

 

『あーっと……フランもルビーも、似合ってるぜ! ほら、どっからどう見ても、駆け出し冒険者だ!』

 

 この無言の空気をどうにかしようとしたのか、師匠の震えた声が《念話》でぼくたちに伝わってくる。

 

「……ありがと」

「ははっ、凄いでしょー」

『あ、ああ……あとは………えっと……その……う〜ん…………あ、二人とも肌着とか……パッ……下着とか平気、か?』

「? 下着? 別にいらない。無くても戦える」

『そ、そうか? じゃ、いいか……』

 

 …………え?

 

「あ、あのー、フランさん? ちょっと(よろ)しいですか?」

「ん……ルビー、敬語やめて」

「あ、うん……ごめん……じゃねーよ!? 今ノーパンなのフラン!? 嘘でしょ!?」

「? 無くても戦えるよ?」

「戦闘をまず考えから外そ!? 戦い関係ないよもっとこう、あるじゃん!?」

『そ、そうだぞフラン! そういう感じの下着類がなかったら、お尻の形が崩れて──』

「セクハラって知ってる!?」

「むう……ルビーも穿いてないのに」

「穿いてるが!?」

 

 ぼくがそう言うと、フランはまるで地球が丸いと初めて知った人ぐらいの動揺を見せた。

 

「ね、ルビー……ルビー……? 嘘、だよね……? なんで……パンツ、穿いてるの……!?」

「むしろ何で穿いてないと思ったのかが疑問でしかないんだけど!? ようし師匠! さっさと服屋行くぞッ!」

『ああ、そうだな! し、下着を買いに行くぞ! やっぱはいてねーのかよ!!

 

 ノーパンとか……いや、そういう人もいるかもだし、とやかく言えないけど!

 

 それでも戦闘で動き回った時に()()()()()ことを考えれば穿かせたほうが絶対いいだろ!

 

 

◇◆◇

 

 

 そうして、ガルスさんの店を出て10分程度を歩くと。

 

『……ここだな』

「ひらひらがいっぱい」

「……うわ、かわえー」

 

 かわいい服が沢山並んでいた。

 

 ……こんなひらひらの服、もし着るんだとしたら、ちょっと恥ずかしいな。

 

『婦人服の専門店だからな』

「何買うの?」

『何って、ナニだよ』

「?」

「話聞いて……? 下着だよ、下着」

「いらない」

「要らなくないから。必要だから」

『まあ、いいから。とにかく入ろう』

 

 ……こんな店、前世を含めて入ったことないから、なんかドキドキするんだけど。

 

 い、いや! 大丈夫……なんて言ったって、今のぼくは女の子だ!

 

「いらっしゃい」

「ん」

「あん? 冒険者かい?」

「そうですけど……」

 

 ……見るからに、陽キャな雰囲気のお姉さんだ。

 

 前世の僕は少し陰キャ寄りだったから、なんか眩しさを感じる。

 

「で? 何をお求めで? 下着に肌着。普段着から勝負服まで、なんでも揃ってるぜ?」

 

 勝負服は要らねーよ! 使う機会とか無いし!

 

「下着を5日分。簡単に洗濯できる物が良い」

「ふむふむ」

 

 すると、フランが注文し始めた。

 

 ……おそらくだが、師匠の指示だな。

 

「あと、鎧の下にも着込める服と肌着が欲しい」

「それも5日分で良いかい?」

「ん」

「そっちの娘も同じかい?」

「えっ? あ、はい。それでお願いします」

「下着はそこが一番小さいサイズになってる。どんな奴がお好みだい?」

「適当でいい」

「ま、ぼくも適当にお願いします」

「あんたらみたいに可愛い女の子がそれじゃダメだ!」

「え?」

 

 いきなり怒られたかと思うと、いつの間にかフランと一緒に試着室に入れられていた。

 

「エエッ!?」

 

 何この展開!?

 

「あんたみたいに、黒髪黒目黒耳の色白美人なら、こういったやつもいいかもしれないね」

 

 これは……く、黒のショーツ……?

 

「このシリーズは、獣人用にちゃんと穴が開いてるんだぜ? どうだ?」

 

 尻尾の穴がついてるのは良さそうだけど……。

 

「あんたは白髪赤目だから、これはどうだい?」

 

 僕に渡されたのはパンツ。しかもシロと水色のストライプ系だった。

 

「え? いや……えぇ?」

「あとはこんなのとか、これとか、こっちのはさすがに大人っぽすぎるかぁ

 

 店員さんがあちらこちらを駆け回り、色々パンツが試着室の前に現れる。

 

 なんなんだろう、この恥ずかしすぎる感情は。

 

 いま鏡を見れば、羞恥心で顔を真っ赤にした自分の姿が見れるだろう。

 

「こっちは尻尾穴を開けるサービスもやってるぜ?」

「じゃあ、それとそれで」

「え……フラン!? じゃ、じゃあぼくはこっちので!」

「よしよし。他はどうする? うちは服も色々置いてるからさ。見ていきなよ?」

「う〜ん」

「………」

『まあまあ、折角だから、見せてもらおう』

 

 ……おい師匠、楽しんでるでしょ。

 

「フランちゃんもルビーちゃんも可愛いから、何でも似合うわぁ」

「一応冒険者なので、動きやすいものお願いしますねー」

 

 

◇◆◇

 

 

 羞恥心と戦いながら、ぼくたちは見事下着を買い終えた。

 

 よく頑張った自分、とぼくは自らを褒めえていた。

 

「洗顔系の道具? もあれば」

「あるぜ。うちはその辺もばっちり押さえているからな」

「じゃあ、それで」

「あいよ」

 

 洗顔か……そういう物も必要だよな。

 

 前世はニキビが酷かったな……今世は大丈夫のはずだ。そう思いたい。

 

「じゃあ、5日分の下着と肌着。後は通気性の良い素材のシャツとショートパンツ。丈が長い物はいるか?」

「いる。2つは長いので」

「あっ、ぼくもそれでお願いします」

「了解。あとは、洗顔用の石鹸に、タオルだ」

「せっけん?」

「これは、錬金術で作った洗顔専用の石鹸で、肌がツルツルになるって評判なんだ。無臭で、冒険者の女性御用達なんだぜ?」

 

 おお……! 石鹸もあるのか!

 

 やっぱり、異世界だからって舐めちゃだめだね!

 

「毎度あり! 二人とも、またおいで!」

「はい」

 

 いやー、ショッピングなんで前世ぶりだから楽しかった。

 

 ついでに店員さんに良い宿屋も教えてもらったし、大満足である。

 

 暇があれば、また来るとしよう。

 

 

◇◆◇

 

 

『あとは野宿用の調理器具と、調味料が欲しいんだよなぁ』

「それは重要。最優先事項」

「そーだね」

 

 師匠の料理はチート使ってるのかと思うほど美味しいので、僕の中では最優先事項レベルの事柄なのだ。

 

『さっきのおねえさんが教えてくれたのはここか』

「そうみたい」

 

 先程パンツを見繕ってくれた店員さんオススメの店の前に来たのだが……サーベルタイガーって看板に描いてある。

 

 ……大丈夫かな、ここ。

 

「さーべるたいがー?」

『全然、雑貨屋っぽくないな』

「でも、ここしかない」

「よし、入ってみようか!」

 

 覚悟を決めて入ろう!

 

 行くよ、サーベルタイガーとやらッ!

 

 ──カランカラン

 

『うおっ』

「……へ?」

 

 ぼくは店に入ると、驚きで目を丸くした。

 

 当然だろう……目の前に、大きい虎の顔の剥製があったのだから。

 

 いや、ナニコレ。怖。

 

「いらっしゃいませー。サーベルタイガーへようこそ」

 

 店内は……普通の雑貨屋って感じかな? ……こんなマッチョで傷だらけのオッサンがいなかったら、だけど。

 

「ここは雑貨屋?」

「ええ、そうなんですよ。よく武器屋と勘違いされるんですけど、まぎれもなく雑貨屋ですよ」

 

 いや、勘違いされるのは当たり前じゃないかな?

 

 パンツの店員さんに紹介されてなかったら、雑貨屋には見えん。

 

名称:ルーファス  年齢:41歳

種族:人間

職業:商人

ステータス レベル:30

生命:188 魔力:73 腕力:150 敏捷:77

スキル

運搬3、解体4、採取2、算術1、商売2、戦槌技4、戦槌術6、追跡2、氷雪耐性2、料理1、気力操作、ジャイアントキラー

称号

ジャイアントスレイヤー

装備

商売人の前掛け、算術のイヤリング

 

 ……うん? この人が商人?

 

 レベル30なのに……詐欺?

 

「冒険者?」

「ああ、元ね。昔から、店を開くのが夢だったんだ。ようやっと資金が貯まってね。3年前に冒険者を引退して、この店を開いたんだ。見たところ、そっちの君は黒猫族だね。ひょっとして、冒険者かい?」

「そう」

「白髪の君も?」

「あーっと……そうなりますね。ぼくは彼女と違って弱っちいですけど」

「……そうか。まぁ、ゆっくり見ていってくれ」

「この店なんでこの名前? かわいくない」

 

 え、フランは可愛いが判断基準なの?

 

 他にもっとツッコミ入れるべきところあるじゃん!? 虎の剥製とか!!

 

「はは、よく訊かれるよ。何でだって。実は、お店を開くときに、何か目玉になるものがあった方がいいと思ってね。あれを飾ることにしたんだ」

 

 店主が指差すのは、サーベルタイガーの頭の剥製。いや、逆効果だろ。逃げられる未来しか見えない。

 

「かっこいい」

「そうだろ? でも、女性には不評なんだよね。あんなにかっこいいのに」

 

 …………大丈夫かなー、この店。僕不安になってきたよ。

 

「おっと、買い物の邪魔をしちゃったね。ごゆっくりどうぞ」

『じゃあ、買う物を指示するぞ』

「ん」

「……そうだね。ちゃっちゃと済ませちゃおう」

 

 最初はとてつもなく不安だったが、店の中を見てみると様々な種類の食器やスパイスがある。

 

 意外といい店だ。……なんだろうか、この悔しい気持ちは。

 

『おおぉぉ、こんなにスパイスが! 食器もいい感じに揃ってるじゃないか』

 

 その後、師匠と一緒に色々ああだこうだと話し合いながら品を選んで、買っていった。

 

 ……そろそろ日も暮れてきたし、後は宿だ。

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