転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
しばらく歩くと、ぼくたちは服屋のお姉さんに教えてもらった宿屋に到着した。
『外見も小奇麗で、悪くはなさそうだな』
「よし、中に入ろ」
ぎぃ……という音を鳴らして扉を開き、宿の中をぐるりと見渡す。
『店内も、掃除が行き届いてるし、植木鉢なんかも置かれてるな。念動で確認したが埃もない。うん、いい宿そうだ』
「師匠、小姑」
「師匠は細かいね〜」
『な!』
酷い、貴女たちのためなのよ! フランちゃん! ルビーちゃん! なんて師匠が言い訳しているが、正直どうでもいい。
とりあえず、疲れた。休みたい。
ぼくはベッドでぐっすりと寝たいんだよ……!
「いらっしゃいませ」
「フラン、ぼくが喋るね」
「ん、わかった」
よし、師匠やフランに少しはいい所を見せたい。
店員さんとのコミュニケーション……気合い入れろよルビー!
「ん"ん……あの、部屋は空いていますか?」
「お2人様ですか?」
「はい、2人です」
「保護者の人とか、いないかな?」
前回の宿と同じ反応……どうしよ。
服はもう新しいものを着てるし、大丈夫だと思ったんだけど……やっぱり駄目なのかな?
『ルビー、ギルドカードを出してみろよ』
「あ……そっか。あの、これ見てもらえます」
「……え? 本物?」
「はい、ギルドの方に確認していただいても構いませんよ」
「それじゃあ、もしかしてそっちの娘も?」
「ん。これ」
ぼくと同じように、フランもギルドカードを前に差し出して見せつける。
「………………」
……沈黙が重い。
泊まっても良いの? 駄目なの?
駄目だったら、別の宿を探すのが面倒臭いんだけど?
「……まあ、身元がはっきりしてるならいいか。素泊まりで300ゴルド、2食付きで400ゴルドとなっています。あと、うちは個室しかないんですが。どうされます?」
よし! 勝った!
何に勝ったのかはわからないけど!
『今日は食事つきにしとこうか』
「食事つきで1泊お願いします」
「わかりました。では、こちらがお部屋のカギになります。貴重品の管理は、お気を付けくださいね」
「分かりました」
「ん」
他にも色々生活用品の説明があったが、すべて師匠の浄化魔術で全てが解決できるので聞き流す。
師匠の浄化魔術、便利なんだよね。
それと全く関係ないが、宿には備え付けの歯ブラシもあるらしい。異世界凄い。
「食事は、食堂でこちらの引換札をお渡しください。うちは食堂もやっているので、時間はいつでも構いませんよ」
「はい、ありがとうございます!」
お姉さんに引換札を4枚渡された。
よっし、食券ゲット!
……あーでも、師匠の魔獣の肉(in次元収納)がまだ残ってるし、そっち食べたほうがいいな。
それに、師匠のカレーを食べたい。
「ルビー、ここで合ってる?」
「あっ、そうだと思うよ。部屋の番号も同じだし」
『まあ……悪くない部屋じゃないか』
「何目線?」
ベッドに机一式、サイドチェスト、衣装ダンス、それに武具用の壁掛けなんて物もある。最高。
この宿を勧めてくれた服屋のお姉さんに感謝だな。
うわぁ……なんか感動してきた。
転生してからこんなきれいな部屋で寝るなんて、初めてじゃない?
「……」
「フラン?」
『どうしたフラン? 具合でも…』
「おおぉぉ! すーごい部屋!!」
『そ、そうか? そんなに凄くないぞ、普通だ』
フランが叫んでベットに飛び込んだ。
ぼくもベットに触ってみると、すごくふわふわしている。
「こんな高級ぽい部屋泊まったことない! 夢のよう! ね、ルビー!」
「えっ? ああ、うん、そうだね、フラン。ぼくも少し感動してるよ」
……本当は僕もメッチャ感動してます。
「……師匠と出会ってからびっくりがたくさん。師匠のお陰……師匠に……助けられてほんとによかった……」
フランがベットの上で師匠を抱きしめた。
『フ、フラン……』
「……えーと、せっかくの機会だし、ぼくも改めて言うね。
──ありがとう。
ぼくを、ぼくたちを救ってくれて、ありがとう。
師匠がいなかったら、ぼくたちは悲惨な目にあっていたと思うから。
師匠。きみに、心から感謝を」
お礼の言葉を言ったぼくも、フランと同じように師匠を抱きしめた。
フラン程だなんてわがままは言わない。けど、僕も師匠にとって大切な人の一人だって思われたいなぁ、だなんて。
そんなことを願いながら、師匠をずっとずっと抱きしめ続けた。
◇◆◇
《情報神の根源》というスキルを持った一人の少女の、
それが、戦の神の創った世界の法則に干渉することで、一つの天職が生まれた。
自らの力のみでは神の束縛から逃れることは出来ないと悟った少女の、神罰が与えられないギリギリを攻めた、後世の誰かへと託した意思。
その天職の名は──"反逆者"。
失望。
恐怖。
絶望。
醜悪。
孤立。
軽蔑。
孤独。
嫌悪。
不安。
無力。
嫉妬。
不信。
その果てにあった──神に対する、悪意そのものだ。