転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
師匠を抱きしめた後。
師匠による異世界スパイスを使ったフライドチキンという豪華な夜ご飯を食べたぼくは、感動で涙した。
フライドチキンを久しぶりに、しかも異世界で食べたらそりゃ泣く。
そんな訳で見事に完食したぼくが、お手洗いから戻ってくるとフランはベッドに倒れていた。
「……ん? フランはもう寝ちゃったの? 涎なんて垂らしちゃって」
『ああ、仕方ないだろ。今日も色々頑張って疲れてたんだろうからなぁ』
「色々あったからね~。……ドナドロンドさんに殺されそうになったり、ね。うへぇ……あれは怖かった」
冗談でもなんでもなく、本気で怖かった。
《威圧》のスキルも合わさって、尚の事怖かった。
フランと師匠が居なかったら死んでたんじゃね?
……いや、これ以上は辞めよう。自分が弱いことを再認識して虚しくなる。
いやでも、明日から! 明日から頑張ってレベル上げするから! スキルも頑張って獲得するし!?
心の中で誰かに
『じゃあ、明日はギルドにいくぞ』
「……はーい。いやー、冒険者の仕事とか楽しみだねー」
『おう。暫くはお前らのレベルを上げないとな』
「その後はどうする?」
『ルビーはどうしたい? 何だってできるんだぜ?』
したいこと? ……したいこと、か。
「……恥ずかしながら、自分でもよく分からないな。一体全体、何がしたいんだろうね? ぼく」
『ははっ、じっくり考えればいいさ。時間はたっぷりあるんだし?』
「うん、そうさせてもらうよ」
『……なあ、ルビー。少しだけ、大切な話がしたい。良いか?』
……師匠の態度がいきなり真面目モードになったので、ぼくは手を膝の上に置き姿勢を整える。
「いいけど、急にどうしたの? 話って何? ……もしかして、ぼくに惚れちゃったとか? いやいやー、ちょっとルビーさん困っちゃうなー」
『茶化すな、ルビー。単刀直入に聞くぞ。
「……えっと、何者って? どういう意味?」
『分かった、言い方を変えよう。
「
『…………』
「…………」
『…………ん?』
「…………え?」
シーン……と、微妙な空気がぼくと師匠の間に流れる。何この空気。
『あれ……? ルビー、今俺の質問に肯定したか? それはもうあっさりと』
「あ、うん。転生者だしね」
『おう、そうか。……じゃねーよ!? こっから腹の探り合いみたいなことするのかと思ってたんだが!?』
「だって隠してたってわけじゃないし……」
『言わなかったのにか!?』
「聞かれなかったからだよ。……それに、ブーメランになってるよ? 師匠も一応は明言してないじゃん」
『うっ…………聞かれなかったからな』
「ぼくと同じこと言ってるぞー」
大丈夫なのか師匠……急にポンコツ臭出てきたぞ。
いや、ポンコツは今更か。
「それじゃ、何で気づいたのか聞いてもいいかな? ちょっと気になる」
『あ、ああ……といっても、特に決定的な証拠とかはないんだがな。強いて言えば、他の異世界の人達とは雰囲気が違ったんだ』
「雰囲気……?」
『ああ。例を挙げると、あまり自己主張とかしないところとか、礼儀がキチンとしてるところとかだな。他に言えば、ギルドマスターのクリムトに気を使っているところだったり、謙虚すぎるところとか』
「それが、他の人たちとは違ったと?」
『そうだな。最初に違和感を持って観察してみれば、そこから段々と日本人らしき要素が出てくる。これでも前世ではオタクという分類のやつだったからな。転生モノも学習済みよ!』
「おお……! なんだか探偵みたいだね!」
『そ、そうかぁ? へへ……』
師匠を褒めたら、凄く照れているような声が聞こえた。
お世辞でも何でもない本音だったが、喜んでもらえたのなら何よりだ。
『気分もいいし、もっと詳しく当ててやろう。ルビーの前世……性別は男だろ?』
「すっご! 何でわかるの?」
『ふっふっふ……プロだからな』
「何の!?」
転生者を判別するプロって何……? その能力、これから先には二度と使わないと思うんだが。
『例えば、ルビーは口数が少ない方だろ?』
「そう……なのかな? 意外と喋ってると思うけど」
『それでも長時間話してることとかは少ない。そこが男らしいんだ』
「……? どういうこと?」
『女性の脳はな? 言語野の細胞数が男性よりも多いんだ。だから男性よりも言語能力が高いって言われてる。女性の方がお喋り、みたいな印象あるだろ? それは此処に関係してるんだ』
「ほほう」
なんでそんなこと知ってるんだ。
『次に、ルビーは一つ物事を終わらせてから次に行くタイプだろ? それだ』
「んー……説明お願い!」
『任せろ! 男性はな、結論から言うと一つのことに集中するのが得意なんだ。言い換えれば、同時に複数の物事に目を向けて行動するのが苦手ということ。ルビーは、最初はアレ。次にコレ。ってな感じで行動してただろ?』
「はー……なるほど。流石は師匠。何でも知ってるねー」
『いやぁ、前世でなんとなく調べた知識がこんなところで役に立つとは俺も思わなかったけどな。つまり、このシチュエーションを想定できなかった。俺はまだまだ、未熟だ』
「師匠はどこを目指してるの……?」
こんなシチュエーションを想定できる人の方が頭おかしいと思う。
その感想を口から出すのを堪えたぼくは、身体の姿勢を楽な形に崩した。
「ふぅ〜……それで、真面目な話はこれで終わり?」
『……後、一つだな』
「ふーん……これのこと?」
ぼくは懐から、とある魔石を取り出す。
その魔石は、虹色に鈍く輝いていて。
『……聞いても、いいのか』
「んー、本当は余り話したくないんだけどね。これから旅する仲間だし、師匠には話しておくよ」
片手でクルクルを魔石を弄びながら、内心で話す覚悟を決める。
「ちょっと長くなるから、覚悟してね?」