転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜   作:氷月ユキナ

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13 過去語り

 昔々……といっても十数年前のことだけど。

 

 小さい村に、一人の女の子が生まれました。

 

 その子の髪は白く、目は赤い……それは、"白神子(しらみこ)"の特徴でした。

 

 

◇◆◇

 

 

『……ちょっと待て。白神子って何だ?』

「あー、そっか。そこからか……白神子っていうのは日本ではアルビノ。いや、正式名称は"眼皮膚白皮症"っていう遺伝病。メラニン色素ってやつが少なくて……えと、何だっけ? まあそんな感じのやつだよ」

『後半が適当すぎないか……? そんな感じって……』

「日本ではそれだけだったんだけど、この世界の白神子は特殊なスキルや能力を生まれ持っていることが多いらしいんだ。ぼくもそんなに詳しくはないけどね。ぼくの生まれつき持ってたエクストラスキル《模改の理》もその影響で生まれたスキルだと思う。そのお陰……って言えばいいのかわからないけど、奴隷商にいた頃は他の人たちと比べて待遇が良かったよ。……少しだけだけど、ね」

『……そうか。辛い頃の話させてごめんな』

「いやいや、別に。じゃ、話を戻すね」

 

 

◇◆◇

 

 

 白神子として産まれた小さい娘……その両親は彼女を愛しましたが、それでも彼女は他の子と比べて異質でした。ですから、他の村の人々からどう思われるのか分からない。

 

 なので、両親は彼女に名前すらも付けることなく、存在を隠しました。

 

 両親は彼女を家の外に出ることを禁じて、家の中で目一杯愛していました。

 

 ですが……それでも、そんな雑な方法では隠し通すことは無理でした。

 

 そうして少しの事故でいとも容易くバレてしまい、両親は娘を連れて逃げるように村から離れました。

 

 離れたばかりの時には、行く先は決まっていませんでした。ただ、逃げなければならなかったのです。

 

 そうして大きな街へ行くことを決めた直後……彼女の両親は、おそろしく強い魔獣によって、それはもうあっさりと殺されました。

 

 彼女は両親を犠牲にして、生き延びました。

 

 ですが、そんな彼女は自分がどうすればいいのか分かりませんでした。

 

 そうして目的もなく放浪していた彼女は、迷宮(ダンジョン)を見つけました。

 

 両親を亡くして鬱になり、死に場所を探していた彼女にとって、目の前にあった迷宮(ダンジョン)は救いのようにも見えました。

 

 魔獣が自分を殺してくれると思い彼女は迷宮(ダンジョン)に入りました。……ですがそこには、魔獣は一匹も居ませんでした。

 

 それは、迷路も魔獣も何もない一本道。

 

 その先には、自らをマレフィーと名乗る迷宮管理者(ダンジョンマスター)が居ました。

 

 その迷宮管理者(ダンジョンマスター)であるマレフィーは、種族は人間でありながら魔獣のような要素が身体にある不思議な人でした。

 

 詳しく聞けば、マレフィーは彼女と同じ白神子であり、エクストラスキル《魔獣化》を持っているそうなのです。

 

 それによって彼女は人でありながらも魔獣の力を持ち、体内に魔石も存在するらしいのです。

 

 そんなマレフィーは、彼女に言いました。自分を殺してほしいと。

 

 彼女は驚きました。死ぬために迷宮(ダンジョン)に入ったら、迷宮管理者(ダンジョンマスター)に殺してほしいと言われたのですから。

 

 理由を聞くと、迷宮管理者(ダンジョンマスター)となり、魔獣を召喚して他人を殺してまで生きたくないのだと返されました。

 

 それから、彼女がマレフィーを説得する日々が始まりました。

 

 マレフィーは彼女のことを"名無し(ナナシ)"と呼び、彼女もマレフィーのことを"フィー"という愛称で呼ぶ。

 

 そのようにどんどん仲良くなりながら、彼女は殺さない方法、どうにかする方法を、ひたすら探しました。

 

 それでもマレフィーを止めることができないと悟った彼女は、望み通りにマレフィーを殺してあげました。

 

 マレフィーを殺すと、その身体は光の粒子となって宙を舞い、最後に残されたのは、虹色に鈍く輝く一つの魔石だけでした。

 

 彼女には、マレフィーがどのような過去を生きてきたのかは分かりません。

 

 ただ……それでも。

 

 混沌の神なんて存在に弄ばれて、死を望むまでに苦しんだマレフィーが、どうすれば幸せになれたのか。

 

 それがいくら考えても分からないまま、彼女は地面に落ちていたマレフィーの魔石を拾いました。

 

 それから迷宮管理者(ダンジョンマスター)が死んだことによって暮らしていた迷宮(ダンジョン)は消え去りました。

 

 行く宛もなく、目指す場所もなく、彼女はひたすら心が急き立てるままに、何処かに向けて歩き続けました。

 

 ですがそこで、彼女は奴隷商に見つかり捕まってしまいました。

 

 自分の命もここまでかと奴隷商に馬車に乗せられたとき、彼女の目に入り込んできたのは。

 

 他の奴隷たちとは違い、唯一曇っていない眼をした黒猫族の少女でした。

 

 

◇◆◇

 

 

『それがフラン……って、ことでいいか?』

「うん、正解。この後は、師匠も知ってるでしょ?」

『ああ。……なんというか、壮絶だった』

「だろうねー。自分でもびっくりするくらいの人生の濃さだよ。これでまだぼく12歳だよ? ……疲れるねぇ、本当」

『……ちょっと気になったんだが』

「ん、何?」

 

 片手で虹色の魔石……フィーの魔石を覗き込みながら、師匠の疑問に耳を傾ける。

 

『ルビーの服、ポケット無いだろ。……その魔石、どこに入れてたんだ?』

 

 その思ってもみなかった質問に、ぼくの身体は凍りついた。

 

「…………」

『ルビーも《次元収納》を持ってるのかと思ったが、そういうことじゃなさそうだし……そもそもその服、ポケット無いだろ。奴隷商にもバレない隠し場所とかあったのか?』

「え、えぇ……あーと……その……うん…………女性の身体には、さ。凹んでる所があるじゃん」

『ん? 凹んでる……?』

「男性は出っ張ってて、女性は凹んでるところ。……その穴の中に入れてました。……これでいいよね?」

 

 顔を真っ赤にしながら師匠から目を背け、バクバクと鳴る心臓に手を当てる。

 

『んん……? ……ッ!? はッ!? おま、ハァッ!?!?』

 

 師匠も気づいたのか、声を荒らげて混乱したような声を出す。

 

『お、お前っ……つまり、その魔石を隠してた場所はルビーのマン──』

黙れッ!!

 

 師匠を思い切り蹴飛ばしたぼくは、絶対に悪くない。

 

 ぼくは心から、そう思った。




リメイク前との変更点
マレフィーの迷宮管理者(ダンジョンマスター)
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