転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……っ……」
ぼくの呼吸する声が、森の中で木霊する。
その周りには、血に塗れたゴブリンの死体が山ほどあった。
この状況だけを見ればとてつもない天災が訪れたのかと疑うほどの光景の中に、ぼくは剣を杖代わりにして立っていた。
ふと身体をみてみれば、ゴブリンの返り血やぼくの血で真っ赤に染まっていた。
「…………」
名称:ルビー 年齢:12歳
種族:人間
職業:反逆者
ステータス レベル:12
生命:121 魔力:180 腕力:71 敏捷:77
スキル
鑑定3、剣術5、剣技1、回避1、気力操作、精神安定、不退転、ゴブリンキラー
エクストラスキル
模改の理
固有スキル
反逆の魂
称号
百戦錬磨、ゴブリンキラー、殺戮者
ステータスを見れば、称号の欄には百戦錬磨が増えていた。
百戦錬磨:1戦で、同格以上の敵を、単騎で100体以上退けた者に与えられる称号。
効果:生命+20、腕力+20。スキル・不退転を獲得。
ゴブリンキラー:同一戦場内において、ゴブリンを100匹以上葬った者に与えられる称号。
効果:スキル・ゴブリンキラー獲得
殺戮者:同一戦場内において、100の命を刈り取った者に与えられる称号。
効果:敏捷+10。スキル・精神安定を獲得。
不退転:逆境において、恐怖無効、回復速度上昇[大]を得る。
ゴブリンキラー:ゴブリンに対して、ダメージ上昇。
精神安定:殺傷に対しての、精神的ハードルの低下。その後の、精神の安定効果。
「……よし」
これで目的は達成した。
後は、アレッサの街に戻るだけ。
……だけ、なのだが。
「体、動かないなぁ……この状況って、地味にピンチだよね……?」
ポーションの類は、全て使い切ってしまっていた。
もちろんぼくは回復魔術なんてものは使えないし、便利は力に覚醒できるわけでもない。
「ッ……」
それでも、一歩踏み出そうとするが、百戦錬磨を獲得したことで緊張が解けてしまったのか身体に力が入らない。
「しまっ……」
そのまま目の前に広がる地面が顔に近付いてくるのが見えて、ぼくは来るであろう痛みに耐えるように強く目を瞑った。
「…………あれ」
だが、いつまで経っても痛みが来ない。
まさかと思いながら、目を開けてみれば。
「
「……
◇◆◇
あの後、ぼくは何故かフランによってお姫様抱っこをされながら冒険者ギルドへと運ばれた。
門は行きと同じく、ギルドカードを見せると通過できたのだが、門番の男性はぼくをお姫様抱っこしているフランから目を逸らしていた。
おいそこ、スルーすんな。助けてくれ。
そのまま冒険者ギルドに入ればネルがツッコミ入れてくれたのだが、フランが『ルビーはわたしのお姫様だから』で押し切られていた。
チンピラのときの論破力はどこに行ったんだネル。
そうして、ぼくはフランに冒険者ギルドの医務室のベッドに寝かされた。冒険者ギルドに医務室なんてものあったんだと内心驚きながら横になると、フランが名残惜しそうな顔をしていた。
『ゴブリン
「スタミナ・ポーション飲まされて、ぼくもう回復してるんだけど……」
「ダメ。ルビーはそこで休んでて。絶対に」
「…………はい」
そうして、ぼくは強制的に休憩させられることになった。
そうして、ギルド員も出ていってしまい医務室に一人きりにさせられたぼくは。
名称:回復薬・初級
効果:生命回復[小]
使用回数:3回
回復量:50HP/回
名称:高級治療軟膏
効果:継続的生命回復[中]
使用回数:5回
回復量:10HP/秒、合計50HP(5秒間)
名称:麻痺治療パッチ
効果:麻痺回復、筋力回復[小]
使用回数:2回
効果持続時間:30秒
名称:毒素除去ポーション
効果:毒状態解除、毒耐性[小]付与
使用回数:1回
耐性効果時間:3分間
名称:応急処置包帯
効果:出血停止、生命回復[小]
使用回数:3回
回復量:20HP/回
名称:魔力回復薬・猫族用
効果:魔力回復[小]、魔術耐性[小]付与
使用回数:3回
回復量:30MP/回
名称:火傷治療クリーム
効果:火傷状態回復、火耐性[小]付与
使用回数:2回
耐性効果時間:5分間
名称:万能包帯
効果:生命回復[中]、毒・出血・麻痺状態解除
使用回数:1回
回復量:75HP
名称:栄養補給錠
効果:疲労回復、生命・魔力少量回復
使用回数:2回
回復量:HP30、MP20
名称:気付け薬
効果:眠り状態回復、スタミナ回復[小]
使用回数:2回
スタミナ回復量:25スタミナ
「へぇ……こんなものあるんだ」
《鑑定》を使って色々と医療用品を物色していた。
最初は置いていかれて不幸だと思っていたが、意外と発見がある。
原作には一切の言及が無かった場所という要素も、ぼくの好奇心を唆っていた。
──ガチャ
「──ルビー、迎えに来た。休んで……無い?」
「ヒュッ」
思わず、息を吸った。
怒られるか……と思ったが、フランはあまり気にしないように。
「ん……だよね。それより、こっち来て」
『ギルマスが呼んでるんだ。歩けるか?』
そうして、ぼくはギルマスの部屋に連れて行かれた。
ギルマスの部屋に行く途中に師匠と情報共有をしたが、フランのランクアップ手続きを奥でし終わったところらしい。
ギルマスの部屋に入ると、どこか疲れているような顔をしたクリムトさんが座っていた。
「色々とあったそうですが……あまり時間をかけるのも良くないと思うので、率直に用件を言います。ルビーさん、貴女にも是非ゴブリンの討伐隊に参加してもらいたい……こちらの都合で申し訳ありませんが…フランさんと同じく急遽Fランクへ昇格させます」
「えっ……いいんですか? そんな簡単にランクを上げることって」
「ええ……この緊急事態に、依頼などの段階を踏む余裕など無いのですよ。それに、貴女のような実力者をGランクのままにしておく訳にもいきませんからね……」
「……分かりました、了解です」
◇◆◇
そんな会話を済ませたぼくたちは師匠と相談し、防具の修復を頼みにガルスの所に行ってから、おとなしく宿に戻ることになった。
『フランさんとルビーさんは、今日はお休みください。その防具では、無理はさせられませんしね』
とギルマスにも言われたので、その言葉に甘えてゆっくり休む予定だ。
『なあ、今思ったんだが、防具の修復って今の手持ちで足りるかね?』
「え……不安になるようなこと言わないでよ……何か売るものとか無いの?」
「武器を売る」
「武器? そんなのあったの?」
迷宮で魔剣とか拾うのは大分先のことだと思うが……と、ぼくは原作知識を辿って考える。
『いや、ゴブリンが落としたやつでな。ギルドで売れるか?』
「あ、そっか。言われてみれば
『じゃあ、ガルスのところに持っていくか』
「うん。だから、残る問題は……」
『ああ……こんな出来の悪い武器を、ガルスレベルの鍛冶屋が引き取ってくれるかどうかだな』
武器を作る素材としてならいけるかな……と無理そうな考えを頭に浮かべ、すぐに無理だろうとぼくは自分の頭を掻いた。
『いや、待てよ。もう1人、商人の知り合いがいたじゃないか!』
「?」
「え、そんな人いたっけ」
『おいおい。まあ、影薄かったけどな。ランデルだよ』
「ああ」
「……あ、そういえばいたね。ランデルさん」
『その「そう言えばそんなのもいたな」的反応やめれ。まあ、俺も人のこと言えんけど。西の大通り沿いにあるって話だったな』
「探す」
ランデルさん、すっかり忘れてたな。モブだからって、申し訳なさがある。
ぱちん、と両頬を叩いて罪悪感を弾き飛ばしたぼくは、前を向き。
「それじゃ、行ってみようか!」
とびきりの笑顔をフランたちに見せて、ぼくたちは足を踏み出した。
そうして歩いていると、幸運なことにランデルのお店は、思っていたよりも早く見つける事が出来た。
「おや、フランさんとルビーさん! もしかして、僕の店をお探しだったり?」
「ん。売りに来た」
「武器を売りたいんですけど、いいですか?」
「もちろんだよ! ささ、入ってくれよ」
「あ、失礼しまーす」
ランデルさんの誘導に従って店の中へと入ると、そこにはいろんなものであふれかえっていた。
店内は思っていたよりも狭いので、なおのこと密度も高くなっている。
商品の一つ一つをちゃんと把握できてるのかと不安になるレベルだ。
それに、ハチミツと毒薬が一緒に並んでいる。物騒すぎる。間違えたら死人が出るぞ。
『何というか、非常にごちゃごちゃしてるな』
「うん。ツッコミどころが多すぎる」
「汚い」
『おおう。せっかくオブラートに包んで言ったのに!』
「言わないであげて。少しぼくも気持ちがわかるから」
前世のぼくの部屋も、ゴミ屋敷とまでは言わないけど汚かった。
母さんによく掃除しろって言われたな……懐かしい。
汚いと言われたランデルさんは、フランの辛辣な言葉に苦笑していた。
「はは。よく言われるんだ。売れそうなものを、片っ端から並べてるだけなんだけどね」
なるほど、売れそう……売れそうか?
疑問に思ったが、すぐに思考放棄して本来の目的を思い出す。
「これ、買い取って」
「うわ。アイテム袋を持ってたんだね!」
「一応」
本当は《次元収納》だが、師匠はこうしてアイテム袋として隠しているらしい。
そんな《次元収納》からフランが次々と大量の武器を取り出していく、ランデルさんは若干引いていた。
……うん、気持ちはわかる。目の前でこんなに大量の武器を出されたら誰だってそうなる。ちなみにぼくはもう慣れた。
「それにしても、これは……! 凄い量だね」
「まだある。同じくらい」
「ええ? ちょっと待って。悪いんだけど、床に置いてくれるかい?」
「分かった」
「こんなに入るなんて、かなり高級なやつなんだね。僕のは凄く小さくて使い辛いから羨ましいよ」
ランデルさんは、フラン出した武器をじっくりと見始めた。
そこには先程までのおちゃらけた雰囲気が無く、商人としてのスイッチが入ったのだと直感的に分かった。
「うーん、あまり状態は良くないね」
「ゴブリンが落とした」
「ああ、そういう出所の物だったんだ。いくつか鋼鉄製の武器もあったから、多少はましだけど……合計で13000ゴルドかな?」
「ルビー、いい?」
「う~ん……相場が分かんないから何とも言えないけど、騙してそうな雰囲気とかはないし別に良いんじゃない?」
『1つ平均200ゴルド強ね……状態から考えたら、良いところなんじゃないか?』
「分かった。それでいい」
「では、こちらをどうぞ」
「ん」
ランデルさんがアイテム袋から硬貨を取り出し、キッチリ13000ゴルドをフランに渡してくれた。
そのお金は、全て師匠の《次元収納》へ入れられる。防犯もしっかりしているのだ。
「ありがとうございました。またよろしくね」
「はい、また何かあったら来ますね!」
「ん、ばいばい」
ランデルのお店の場所は、覚えておくことにした。
また次に来る時もあるだろうし、その時はゆっくりと品物を見させてもらおうと、ぼくはひっそりと心の中で決めた。