転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
ゴブリン
ぼくたちは師匠の鞘を受け取るために、ガルスさんの鍛冶屋に行っていた。
「よお、待ってたぜ。こいつを持って行ってくれや」
『おお、これが俺の鞘か!』
ガルスさんから手渡されたのは、黒色が中心の……すごく見覚えのある鞘。
漫画とかアニメでよく見たな、この鞘。
「ん、師匠」
『おう。ではさっそく……』
スポ、と師匠が鞘に入る。
しっかりとサイズもぴったりらしく、違和感を全く感じない。
『おー……』
「……リラックスしてるけど、鞘に入るってどんな感じなの?」
『めっちゃ落ち着くな。台座にハマってる時と、同じくらいだ。むしろ、台座が、鞘っぽくて、落ち着けたってことかもしれない。あー……』
……あんまり言いたいことが伝わってこないが、それでも落ち着くということは理解した。
『ガルス爺さん。最高だ。さすがだぜ』
「がはは。気に入ってくれて何よりだ」
「師匠、嬉しそう」
『おう、これはいい鞘だ~』
「装飾のセンスもいいし。良かったじゃん」
「しかも、単なる鞘じゃないんだぜ? ただの鞘じゃ芸がないと思ってな、少々鞘に細工をしておいた」
『なに? 本当かロンベ〇ク!』
「ロン〇ルク? 誰だ?」
『すまん、ちょっと興奮しすぎた』
「……師匠、ロ〇ベルクって誰?」
『前世で読んだ漫画のキャラクターだ。ダ〇の大冒険っていうんだが……』
知らない漫画だった。どこかで聞いたことがある気がするが、読んだことはない。
「ここに金具があるだろ?」
「ある」
「これをこうして外すと──」
ガルスさんが鞘に力を入れると、パカッと軽い音を立てて縦に割れた。
「念動を使えば、嬢ちゃんの手を借りなくても、簡単に鞘から出れるって寸法よ」
『へぇ。こりゃいいな。鞘を元に戻すのも簡単だし』
「思ったよりも便利そうだね」
「ん、便利」
「だろ! 強度と両立するのに苦労したんだぜ?」
漫画で見たときは『へぇー』としか思わなかったが、こうして実際に見てみるとどれだけ凄いのかが伝わってくる。
『じゃあ、ありがたく貰っていくぜ?』
「おう。頑張って来いよ」
「ん」
「……はい!」
◇◆◇
ゴブリン
『冒険者って、こんなにいたんだな』
「うん、50人くらいかな」
「でもあまり強くない」
『ドナドが一番強いか』
「そーだね、さすがCランク冒険者」
その中で、ドナドロンドさんの声が響き渡った。
「注目してくれ冒険者諸君!! 本日昼過ぎより
……もう、始まるのか。
『しかしガルス爺さんが作ってくれたこの鞘……すっげー収まりがいいというか、やっぱり落ち着くな~……』
「師匠、似合ってる」
『そーか?』
「うん、カッコ良いと思うよ」
『そうかカッコ良いか!』
「ん、師匠はカッコ良い」
『そうかそうか!』
これ以上褒めると師匠が調子に乗りそうなので、このくらいにしておこう。
「……術師の使い魔にて偵察した結果、目の前の洞窟は多数のゴブリンの巣窟になっており、ゴブリン
……そろそろ、かな?
原作を思い出し、ハプニングが舞い込んでくるのをぼくは静かに待つ。
「まずは作戦決行前に木材を運び込み、仮設本部を設置し……」
「うわあああぁぁぁーー!! ゴブリンが大量に出てきたぞー!!」
「何……!」
ドナドロンドさんが指示を始めたその時、
この混乱に生じて、ぼくたちは
「くッ……昨日までおとなしかったくせにこのタイミングかよ……! 散開するな……固まれ!」
「ぎゃああ!」
「くそっ……!」
襲われてるな……あ、こっちにも来た。
ゴブリンを《反逆の魂》で強化した《剣術》で切り捨てながら、さらりとあたりを見回してみる。
『これはマズいな……! 寄せ集め冒険者ゆえに戦力分散されちまってる。ゴブリン……特に
「うん。
「いく」
「うん、そう来なくっちゃ」
『おう。ダンジョン突入前に、ある程度表の奴らを減らしておかんとな。冒険者が全滅したりしたら寝覚めが悪いし』
「師匠は寝ない」
「剣なのに寝るの?」
『比喩だよ、比喩! ……気を取り直して、行くぞ二人とも! フラン、迷宮入り口付近に大技ぶち込んで後続を止める! ルビーはフランの周りにいるゴブを斬って援護してくれ!』
「ん!」
「了解!」
ぼくは素早く剣を抜き、フランの前に出てゴブを斬る。フランの進行方向の近くにいる
「よし、と。そこの人、大丈夫?」
「う、うん! ありがとう! えっと、貴女は……」
「ルビー」
「は、はい! ありがとうございます、ルビーさん!」
心配いらないと判断すれば、すぐに別のゴブリンに襲われている人がいる場所へ向かう。
「おい新入り! 雑魚の癖に突出するな……うわ!」
……怒鳴られた。だが、そんな言葉の言うとおりにするわけない。
『ち! 乱戦で奥に進めん……! 仕方ねえ……前にタイラントサーベルタイガーから吸収した
「やってみる!」
「ん?
『ひゃほーっ!』
そんなぼくの悲鳴をフランと師匠は見事にスルーし、
「……れた」
ぼくは《空中跳躍》使えるのかというと、無理だ。当たり前だろう。
人間が《
そして、僕は《
それが示すことは、つまり──
「置いてかれた…………」
ということだ。
……どうやって入ろうか。
「うおッ!?」
「飛んだ!?」
「あれは、空中跳躍? 天騎士の固有スキルのはずだぞ!」
空を駆けるフランを見て、冒険者とゴブリンの両方が驚きで動きを止める。
よし、今だ。
「うりゃああああぁぁあああああ──ッ!」
──ドドドォンッ!
師匠の《火魔術》トライ・エクスプロージョンの音を合図に、ぼくは
そうしてぼくは
師匠が《火炎魔術》フレア・ブラストで入口に待ち構えていたゴブリンを燃やしてくれたので、さっさと楽に進めたのだ。
「──そういうわけだし、まあ結果オーライなんて言葉を使えば聞こえはいいけどさ。それでも何も言わずに置いてくのは酷いと思わない? せめて声をかけたりしてよ」
『だから悪かったって。しょうがないだろ? あの状況で、声をかける暇なんてなかったんだよ』
「言い訳してる時点で反省してないこと分かるからね……?」
『うっ……すまん』
「……はい、許すよ」
もし追いつけなかったらと想像すると、背筋が震えた。
置いていかれるのは流石に嫌すぎる。
『あー、これからのことを話してもいいか?』
「いいよー」
『サンキュ。
「分かった」
「体力と魔力は温存しとくよ。……魔力はそもそも、魔術使えないから消費用途ないしね。それに転移の羽を手持ちの金ほとんど使って買ったから、一瞬で戦線離脱できる」
『ああ、脱出手段を持っておけば多少は安全なはずだ』
「行けるところまで全力で行く」
「そうだね、行こう!」
軽い足取りで進んでいくと、2匹のゴブリンが目に入った。
「フラン、左殺って。ぼくは右」
「ん」
ぼくは剣を構えゴブリンの間合いに入り──
「「グギャーッ!」」
「……ふぅ、楽勝」
「ん、弱い」
『さすがだな、二人とも。それにしても、フランは魔石を狙うの上手になったな』
「ん、なんかゴブリンと戦うの慣れてきた」
『凄いぞ。魔石全部ほしいのは山々だが、後続のやつらやギルドの取り分も無いと恨みを買いそうだ。俺が《鑑定》して魔石値多そうなやつとか良いスキル持ってそうな奴だけフランが倒そう。ルビーはそれ以外のゴブリンを倒してくれ……できそうか?』
「了解、やってみる」
「勿論できるよ。……行くよ、フラン」
「ん!」
ぼくたちはうようよとわいてきたゴブリンに、剣を振るう。
『こいつはフラン』
「はぁぁ!」
一閃。
『ルビー』
「ふっ!」
二閃。
『そっちのフラン』
「はぁっ!」
三閃。
『ルビー』
「はいっ!」
四閃。
『ルビー』
「もういっちょ!」
五閃。
『フラン』
「んっ!」
六閃
『ルビー』
「へいっ!」
……七閃。
師匠の声に合わせて、フランと息を合わせてゴブリンを殺してゆく。
そうして、一通り倒し終わった。
「ふー……」
「……まあまあ疲れたなぁ」
『魔石がない死体は怪しまれるから、《次元収納》にポイだ。だが、予想以上に湧いてくるな。お、あれはどれも今更必要ないスキルばっかりだ。魔石不要ゴブか。なら、分割思考からの、二重詠唱、《火魔術》ファイヤ・ジャベリン!』
師匠の火の槍が、ゴブリンたちに降りかかる。
『はははは、《火魔術》ファイヤ・ジャベリン×2』
20本近い炎の槍が、またゴブリンたちにぶつかった。
「師匠凄い」
「……こわー」
『フランとは《分割思考》を共有できるからな。そのうちできるようになるさ』
「頭痛くなる。キーン」
『それは、俺には分からない感覚だからな~』
「ぼくはそもそも使えないから感覚分かんないな」
《分割思考》……便利そうだし使ってみたいが、頭痛がするのは嫌だ。
いや、やっぱり頭痛がするとしてもメリットが勝つ。欲しい。
「戦いながら、下級魔術の詠唱を目指す」
『俺の次の目標は、違う魔術を同時詠唱だな』
「ぼくは……《剣技》スキルを鍛えようかな」
「がんばって」
「師匠ならきっとできると思うよ」
『おう。俺にまかせとけ! 幸い、ここは練習相手に困らんからね』
その後も、三人の魔術や剣技の練習で無双していた。
なんの壁もなく、どんどん奥へと進んでいく。
『それにしても、結構奥に来たけど予想どおりゴブばっかだな』
「うん。道もほとんど一直線だったし、なんか簡単すぎない?」
『新しい迷宮だからだろうな』
「師匠、階段がある。下に続いてる……」
『この奥、地下2層目があったか……二人とも、体力温存できてるか?』
「ん、大丈夫」
「平気平気~」
『じゃあ進もう』
そうしてぼくたちは、地下2層目へと足を踏み入れた。