転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜   作:氷月ユキナ

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21 ボーナスステージ

『ゴブの強さも上がってきたな。パターン的に王の親衛隊的な強さのが来る頃か』

「親衛隊ねえ。今の所そんなに強くないし、居るならさっさと出てきてほしいな」

『……《反響定位》、《気配察知》、《振動感知》、《熱源探知》を使ってみたが、近くには居ないみたいだな。あっちかな、進もう』

「適当だなぁ」

 

 スキルでも場所がよくわからないならお手上げなので、直感で動くしかない。

 

「あ、いた」

 

 師匠が指した方向にひとまず進んでみると、何匹かのゴブリンを見つけた。

 

「逃げた!」

「うん、逃げたね。師匠、どうするの?」

『尾行だ』

「ん!」

「オッケー」

 

 師匠の指示によって、ぼくとフランは逃げていくゴブリンの後を追いかける。

 

 ほさっさとゴブリン(キング)とゴブリン女王(クイーン)の居場所に案内してほしいと思いながら、ぼくは足を早めた。

 

 

◇◆◇

 

 

 ゴブリンを影からこっそり追いかけていくと、どこかの道に出た。

 

「がちゃがちゃ聞こえる」

「うん、多分大量にゴブリンが居るんだと思う」

『……この奥か』

 

 気づかれないよう慎重になり、奥の広間を覗く。

 

「「!!」」

『見つけた! (キング)女王(クイーン)!!』

 

 そこには、大量に集まっている上位種(ホブゴブリン)と中心にいるゴブリン(キング)、ゴブリン女王(クイーン)の二体。

 

 

名称:ゴブリン・キング

種族:邪人 Lv21

生命:87 魔力:26 腕力:47 敏捷:26

スキル

威圧1、剣技2、剣術4、指揮4、士気高揚3、盾術2、挑発:1、投擲1、覇気1、気力操作

 

 

 ステータスで100を超えているものは無い。所詮はゴブリンだし、こんなものか。

 

「……行く?」

「いや、大量の上位種(ホブゴブリン)とゴブリン(キング)とゴブリン女王(クイーン)が居るとこに馬鹿正直に突っ込みたくないよ」

『俺もルビーと同意見だ。数が多いから、俺が牽制を兼ねて魔法をぶち込む。その隙に二人は(キング)女王(クイーン)を仕留めろ!』

「ん!」

「はいはーい」

 

 確かコレは、師匠の魔法で全滅するんだったなと記憶を思い返す。

 

 だが原作通りにいかない可能性もあるので、一応は警戒をしておくことにしよう。

 

『まずは、《火炎魔術》フレア・ブラスト×2!!』

「ギャワアァ…」

「ギョ!?」

「ギャハ…」

 

 師匠の炎に巻き込まれ、上位種(ホブゴブリン)がみるみる死んでいく。

 

『そんで周囲に、《火魔術》ファイヤ・シャベリン!!』

 

 師匠の魔法で、大爆発が起きる。

 

 ……やはり、もうこれだけでいいのではないか?

 

「はぁぁ……!」

「……フラン。ゴブリン(キング)とゴブリン女王(クイーン)、もう死んでるよ」

「!?」

『あれ? もう終わりか……?』

「みたいだね」

 

 《鑑定》をしてみるが、死んだふりなどの可能性もなく完全に死んでいる。

 

『それにしても、牽制の魔法で死んじまったか! ……拍子抜けだな。見事に蜘蛛の巣を散らしたな』

「逃げたゴブリンはどうする? 面倒だけど追いかける?」

『いや、放っておこう。ドナド達が倒してくれるだろ』

「そだね。ドナドロンドさんたちに任せようか」

「……」

「ん? フラン?」

『どうした?』

「師匠のバカ」

『え!? フランが不良に……!?』

「ゴブリン(キング)と戦ってみたかったのに、仕事取られた」

『あ……? あぁ……』

「……」

『わ、悪かったって…』

 

 師匠がこっちに『助けてー』と言いたげな目線を向けてきた。ぼくは目をそらした。

 

 ……だが流石に可哀相なってきたので、助け船を出してあげることにした。

 

「フラン、ゴブリン(キング)迷宮管理者(ダンジョンマスター)じゃないなら、もっと強い奴がいるかもしれないよ? ほら、まだ奥があるみたいだし」

 

 そう言って奥に続いてる道を指差す。

 

「ほんとだ」

「ゴブリン(キング)とゴブリン女王(クイーン)を師匠に先にやられてモヤモヤしてるし、行けるところまで行こう?」

「ん、まだ暴れ足りない。行こ」

『よし、行ったるか! ……助かった。ありがとうな、ルビー』

「どういたしまして」

 

 師匠の感謝の言葉を聞いたぼくは、フランに続き置く道を進んでいく。

 

 すると、怪しすぎる扉がその先にあった。

 

「扉……」

「うん、デカイ扉だね。鍵は……かかってないっぽいよ」

『そうみたいだな。いよいよボスか?』

「かもしれないね。入る?」

「ん」

「よし、開けるよ」

「ん」

『一応転移の羽を準備しておくぞ』

 

 ──ギギギィィ

 

 摩擦による金属特有の音を響かせて扉を開けると、その中には目を背けたくなるほどの数の虫がいた。

 

 具体的に言うならば、角がある大きい版のテントウムシだろうか。

 

 ……帰ってもいいか? 普通にキモイ。

 

 ──バァーンッ!

 

「え、何!?」

「閉まった……」

『おおう! あれか、定番の、ボスを倒さなきゃ出られない系の罠か?』

「あー……もしかして、閉じ込められた?」

『みたいだな……! それに、大量の虫がいるぞ!!』

「ん、虫がたくさん」

 

 

名称:アーミービートル・リーダー

種族:妖蟲・魔獣 Lv5

生命:8 魔力:10 腕力:4 敏捷:22

スキル

風魔術:1、眷属召喚5、指揮1、連携1、酸の牙

 

名称:アーミービートル

種族:妖蟲・魔獣 Lv2

生命:6 魔力:5 腕力:3 敏捷:20

スキル

硬化1、酸の牙

 

名称:アーミービートル・メディック

種族:妖蟲・魔獣 Lv4

生命:10 魔力:8 腕力:1 敏捷:20

スキル

回復魔術2、酸の牙

 

名称:アーミービートル・シューター

種族:妖蟲・魔獣 Lv4

生命:3 魔力:9 腕力:2 敏捷:20

スキル

風魔術3、酸の牙

 

 

『でけえテントウムシってとこか……凄い数いるな。百以上いるぞ』

「うん。その中にも、指揮官(リーダー)とか、治癒師(メディック)魔弾手(シューター)みたいな職業(クラス)持ちもちらほらいるよ」

「じゃ、魔石も素材もたくさん。いっぱい倒す!」

「そういうことだね! よし、殺ろっか!」

『よーし、それじゃ……《念動》!!』

 

 すると、師匠の《念動》でテントウムシもどきの動きが止まった。

 

『よし、やれッ!』

「んっ! しっ! はぁぁ!」

「分かった! ふっ! やぁぁ!」

 

 本来は脅威だったはずの虫どもが、師匠の《念動》によって動かない的となった。

 

 つまり、これは雑魚の無限湧きのボーナスステージ。

 

 レベル上げに最適なシチュエーションだ!

 

 

◇◆◇

 

 

 30分後。

 

『……こりゃ、キリねぇな!』

「うん……! 指揮官(リーダー)がスキルの《眷属召喚》でどんどん呼び出してるみたいだし……」

『二人とも、そろそろ満足か?』

「ん」

「まあ、このくらいにしておくよ。ずっとここにいるわけにもいかないしね」

『よし、《火魔術》トライ・エクスプロージョン!!』

 

 師匠が火魔術を使うと、うじゃうじゃと群れていた虫どもが一瞬で殲滅できてしまった。

 

 とてつもない威力の《火魔術》に、思わず背筋が震えてしまう。

 

「だいぶ稼げた?」

『ああ、レベルもだいぶ……』

 

 ──ガコン!

 

 師匠が『レベルもだいぶ上がったぞ』と言いそうになった時、入った場所とは違うもう一つの扉が開いた。

 

『おや? あっちの入口の扉じゃないところが開いたぞ?』

「隠し通路?」

「……ちょっと行ってみよう」

 

 その扉に近づくと、尋常じゃないほどの魔力を感じた。

 

『……っ! なんだ、すげえ魔力だぞ!』

「ん、凄い強い魔力」

『この奥にかなりヤバいのがいる。俺が平原にいた時に戦ったヌシ達と同じくらい……いや、それ以上だな……まさか、できたばかりの迷宮(ダンジョン)に、こんな魔力を持つ奴がいるなんて……』

「……」

 

 とてつもない魔力の存在によって、場の空気が重くなる。

 

 すなわち、ぼくたちはこの相手に勝てるのかという疑念があるのだ。

 

「──逃げるならぼくは止めないよ。どうする?」

「逃げる……?」

 

 上位悪魔(グレーターデーモン)は強敵だ。下手すればぼくたちが完全敗北してしまうほどに。

 

 原作通りに勝てるなんて確証は、どこにもない。

 

 しかも、この部屋に入ってしまえば『転移の羽』による脱出も不可能になってしまう。

 

「そ。もし逃げるなら、まずは『転移の羽』で迷宮(ダンジョン)から出よう。そしたら冒険者たちはおそらくこのヤバい魔力の持ち主に勝てずに壊滅するだろうから、アレッサの街もこのヤバい魔力の持ち主にやられちゃうだろうし、別の街に行く必要があるよね」

「……ルビー?」

 

 フランの困惑したような声を認識しないように意識をそらしながら、ぼくは話し続ける。

 

「そうだね。じゃあ、さっき師匠がテントウムシの指揮官(リーダー)から手に入れた《眷属召喚》スキルで魔獣でも呼び出して、そいつに乗って行こうか。足が速くて体力のある奴がいいよね」

 

 小首を傾げているフランを見ないようにする。

 

「あ、そうそう。長旅になるだろうし、食糧だのなんだの買い込んどいた方がいいよね。《次元収納》に適当に入れておけばいいし。ランデルさんのとこにも寄ればいい情報とか仕入られるかもしれないし」

「……待って」

 

 《次元収納》が便利すぎる。本来は色々と考えなければいけない荷物の移動方法がこれだけで解決するとは、商人などが非常に欲しがりそうだ。

 

「そうだ。ここからダーズに行って、船で南下してバルボラに。そこから陸路でヴァルミッサとかどう? 船旅とか楽しそうじゃない?」

「待って」

 

 ヴァルミッサというのは、冒険者ギルドの図書館にある本で見つけた街だ。あまり特徴は無いが歴史ある港町らしい。

 

 原作だと名前すら出てきていない街なので、ヤバい厄ネタなども無いはずだ。

 

「ヴァルミッサ以外だと、エルサンドとかかな。雄大な自然が売りの都市らしくて、山や川に囲まれてるんだって。それ以外だと騎士団とか戦士たちが集まってるらしい要塞都市のガルベリスとか? 後はちょっと趣向を変えて知識や文化が豊富な商業都市のサラウルムなんてのも──」

「待ってッ!」

 

 フランの、珍しく大きい声が迷宮(ダンジョン)内で木霊する。

 

「……どうかした?」

「逃げる、って……ルビーは、逃げたいの?」

 

 フランの真剣な瞳の中に、ぼくの顔が映る。

 

 それが少し愛おしくて、ぼくは思わず微笑んだ。

 

「そうじゃないよ。ただ、無理に挑む必要も無いってだけ。そういう選択肢もあるんだってことを知ってほしいだけだよ」

『それは……』

「…………」

 

 フランは主人公だ。

 

 冒険をして、強敵を倒し、世界を救う……そんな役割(ロール)

 

 原作を読んでいるときは、師匠を連れて逆境へと立ち向かっていく姿はとても強く見えた。

 

 ……ああ、何という筋違い。

 

 三次元(リアル)として出会ってみれば、彼女はただの少女だった。

 

 強くなんてない。ただ、黒猫族の自分が『進化』してみせるという夢のために強く在ろうと必死になっているだけのちっぽけな女の子。

 

「……さて。今一度聞くよ、フラン」

「ん……」

 

 フランの瞳に目を合わせて、真意を問う。

 

「──逃げる? それとも立ち向かう?」

 

 その問いかけに対して、フランは──

どうする?

  • 逃げる
  • 逃げない
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