転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜   作:氷月ユキナ

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22 逃げない

「がんばる」

 

 ぼくの問に対して、フランはそう答えた。

 

「……なん、で? ……理由を、聞いてもいいかな……」

 

 もし、その理由が大したことのないものだったのなら、説得し直そうと。

 

 そんな考えは、次の瞬間には吹き飛んでいた。

 

「だって、ルビーが悲しむから」

「…………は?」

 

 予想外の方向から殴られたぼくは、思わず絶句する。

 

 訳が、分からない。

 

「ぼく、が……?」

「ここで逃げたら、アレッサも無事じゃない。ルビーはあの街を気に入ってる。だから、滅びたら困る」

()()()()()()()()()()()()()()()!?」

()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 ぼくとフランの声が、迷宮(ダンジョン)に響き渡る。

 

「もしここで逃げたら、()()()()()()()

「……そん、な」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そんな、ことで……ッ!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ふと、フランの目を見た。

 

 その眼差しは、ぼくからすればとても眩しく見えて。

 

()()()()()()()()

「……は、ぁ?」

「私は、ここで逃げない。でも、死んでしまうかもしれない。だから、ルビーが私を助けて」

「フランの方が、ぼくより強いのに……? できることなんて……」

「ただ、私の隣にいて。そうすれば、私は勝てるから」

 

 そのどこまでも強い宣言に、ぼくは言葉を失って。

 

 水を欲する魚のように、口をパクパクと動かすことしかできなくて。

 

「私を助けて、ルビー。私は何も失わないで、あなたと笑ってアレッサに帰りたいから」

 

 そして。

 

 そして。

 

 ……ぼくは、もう、認めるしかなかった。

 

 フランが、この先に立ち向かえるほど"強い"ということを。

 

「……は、ははっ……ズルいなぁ、そんな言い方……」

「……ん、ごめん」

「謝らなくていいよ。うん、そっか。……分かった、いいよ。師匠は?」

 

 ぼくはそこで、空気を読んで口を挟まなかった師匠に意見を聞く。

 

『……わかった。だが、いざというときは『転移の羽』使うからな』

「ん、だけど大丈夫。私と師匠、それにルビーもいれば、きっと勝てる……」

 

 ……ぼくもいれば、か。

 

 フランと比べればステータスもスキルも劣っているぼくに、できることなんてあるのか。

 

 むしろ、足を引っ張るだけなのでは……。

 

 いや、今はそんなネガティブな事は考えなくていい。

 

「んじゃ、師匠に補助魔術かけてもらってから行こうか」

『そうだな。今回の敵は本当にヤバイ。ありったけの能力上昇系魔術かけるぞ』

 

 師匠の魔力が漲り、ぼくの身体を覆うように広がっていく。

 

 状態異常耐性上昇(オールレジスト)身体能力強化(フィジカルブースト)自動継続治癒(リジェネレ―ション)感覚強化(センシズブースト)即死無効化(アンチデス)……などなど。

 

 それらによって力が湧き上がって来るのを感じながら、ぼくは上位悪魔(グレーターデーモン)との戦いを前に拳を握りしめた。

 

「フラン、準備はいい?」

「いつでも」

 

 お互い頷いて、部屋へ向かう扉の取っ手を掴む。

 

 そして、開いたその先いたのは……

 

「よォオ……最深部へようこそ。初めての客だ。歓迎するぜぇ……?」

 

 

名称:上位悪魔(グレーターデーモン)

種族:悪魔・魔獣

ステータス レベル:30

生命:1900 魔力:2409 腕力:720 敏捷:675

スキル

穴掘り3、暗黒魔術4、威圧4、運搬2、恐慌4、剣技5、剣術5、状態異常耐性7、土魔術7、登攀1、毒魔術7、魔力障壁6、闇魔術10、料理1、暗黒強化、暗黒無効、暗視、自動魔力回復、支配無効、皮膚硬化、魔力上昇[小]、腕力上昇[小]

エクストラスキル

スキルテイカー6

称号

悪魔伯爵

装備

魔影鋼の長剣

 

暗黒魔術:闇魔術の上位魔術。闇と影、毒と死を司る。

 

恐慌:自身を目視している対象に、精神状態異常〈恐慌〉を与える。

 

魔力障壁:魔力を消費し、物理、魔術、双方に耐性のある障壁を展開する。

 

スキルテイカー:条件の合う、対象のスキルを収奪する。

 

 

 ……強い。それしか言えない。

 

『フラン! ルビー! 気を抜くなよ、多分こいつ脅威度Bだ! 油断したら瞬殺されるぞ!』

「ん!」

「分かってる!」

 

 《反逆の魂》を《剣術》にかけて超強化し、ぼくは剣を構えた。

 

 ……震えるな、頼むから。

 

「よぉ、ビビってんのか? 確かに見た目弱そうなガキだが、手加減はしねぇぜ? なにせ、迷宮(ダンジョン)を抜けきってこの部屋に来れたってことは、それなりに強い筈だからなぁ」

「……」

「おい、悪魔! 何やってる! 早くそいつを片付けるギョ!」

 

 あっちが、この迷宮(ダンジョン)迷宮管理者(ダンジョンマスター)……必要ないと思うが、一応《鑑定》しておこう。

 

 

名称:レアゴブリン

種族:邪人

ステータス Lv11

生命:25 魔力:131 腕力:12 敏捷:13

スキル

穴掘り2、眷属召喚5、棍棒術2、心話2、調教2、覇気1

称号

迷宮管理者(ダンジョンマスター)

装備

樫の棍棒、革のローブ、身代りの腕輪

 

 

 ……雑魚だな。いや本当に。

 

「……チッ」

「この部屋まで到達する奴がいるなんて……貴様ら……よくもニンゲンの分際で我が『ゴブリン帝国』の精鋭たちを……兵を増やし、ニンゲン共の街を征服する計画……またやり直しではないか」

 

 いや知らないが。それと『ゴブリン帝国』とかいうクソダサネーミングセンスどうにかならなかったのか。

 

「まあ貴様らを殺したあとに、次の(キング)を召喚するまでギョ……この迷宮核の混沌力(ゴッデスポイント)さえ補充できれば魔獣を喚び出すのは造作もないギョホ」

「おい! うるせえ! 侵入者はきちんと始末してやるからちょっと黙ってろ雑魚管理者(マスター)……殺すぞ!!」

「ギョ!? ギョォオ……この悪魔(デーモン)なんでずっと反抗的ギョホ……」

「俺に支配は効かねぇからな。好きに戦わせてもらうぜぇ」

 

 死闘を繰り広げる前のはずなのに、ぼくは何を見せられてるんだろう。何この漫才。

 

「さァ。あいつがうるせぇし、闘ろうぜぇ?」

「ッ!」

 

 その瞬間、上位悪魔(グレーターデーモン)の姿が消えた。

 

「おらぁ!」

「はぁッ!」

 

 上位悪魔(グレーターデーモン)は、まずはフランの所に飛び込み、大振りで剣を振り回す。

 

 それを、フランは冷静にそれを師匠で受け止める。

 

「おぉ? 剣ごとブチ折る気でいったんだがな。魔影鋼の長剣(こいつ)とまともに打ち合えるたぁ良い剣じゃねぇか」

「……っ!!」

「フランッ!」

 

 ぼくはフランを助けるために、剣を抜いて斬りかかるが、

 

「オラッ!」

 

 ──パキィン……

 

「……え?」

「あァ? お前の剣はこいつの剣と違ってもろいみてぇだなぁ。それも確かにいい剣だが、俺の剣には敵わねぇよ」

「くっそ……! 金ケチらなきゃよかった!」

 

 あっさりと斬られたぼくの剣を放り捨て、軽く舌打ちをする。

 

 

名称:魔影鋼の長剣

攻撃力:561+450 保有魔力:56 耐久値:1000

魔力伝導率・C+

スキル:影戻り

 

 

 確かに強いけど、一回打ち合っただけで壊れるか普通!? そりゃ奴隷商の奴らからパクってきたやつだけど!

 

「ルビー!」

「こっちは大丈夫! それより、上位悪魔(グレーターデーモン)を!!」

「ん!」

『あんまり無理するなよ!』

 

 僕は師匠の《補助魔術》で高められた敏捷で上位悪魔(グレーターデーモン)から一瞬で離れ、《反逆の魂》の効果対象のスキルを《回避》に切り替える。

 

 戦闘手段が早々になくなっちゃったし、ぼくは大人しく撹乱役になるとしよう。

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