転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
どうも、無理ゲーに挑んでいる真っ最中のルビーです。
なんとかして、この状況を打破したいと考えるが良さげな案は何も思いつかない。
……いや、嘘だ。正確には、いくつか思いついている。
だけど、これは一種の賭けみたいなものであり、これに負けたらぼくだけじゃなくてフランも──
「
「……あのさ、ナチュラルに心を読まないでくれるかな。《読心》スキルとか持ってないよね」
「ルビーのことは何となく分かる」
「こえーよ」
いつの間にか背後に居たフランが、グッと親指を立てていた。
「私にはよく分からないけど、何か思いついたんだよね」
「……まぁ、ね」
ああ、そうだ。思いついてはいる。
だが、それであの化け物に絶対に勝てるわけじゃない。むしろ、勝てない確率の方が高い。
それなのに。
「なら、それをやろう。私はルビーを信じる」
フランは何の迷いもなく、実行に移そうと言ってきた。
「……どうしてそんなに信じられるか、聞いても?」
「勘」
「もっと根拠になるものない!?」
「ない」
「ないかあ……」
フランの根拠の無さにぼくは少しだけ頭を抱えた。
「それに、絶対に勝てる戦いなんてない。やらないよりマシ。だから、やろう」
「期待が重いね」
「重いかも。でも、私はルビーにも自分を信じてほしい」
真っ直ぐな瞳で、フランはぼくを見る。
「……分かったよ。ちなみに師匠は?」
『このまま戦ってもジリ貧なだけだろ。聞かせてくれ、秘策ってやつを』
「秘策なんて言えるほどのものじゃないんだけど……」
もう、どうにでもなぁーれ。
どこか投げやりになりながら、ぼくは口を開いた。
◇◆◇
「──それで、ご相談は終わりましたか?」
「終わったよー」
わざわざ待っててくれた
「それで、どうされるのですか?」
「こうするんだよ、《スキルテイカー》」
手を伸ばし、《反逆の魂》によって強化されたことによって
「ふむ?」
初めて困惑の顔を顕にした
名称:ルビー 年齢:12歳
種族:人間
職業:反逆者
ステータス レベル:25
生命:207 魔力:308 腕力:122 敏捷:132
スキル
鑑定4、剣術5、剣技2、回避2、気力操作、ゴブリンキラー、精神安定、不退転、インセクトキラー、デーモンキラー
エクストラスキル
スキルテイカー、
固有スキル
反逆の魂
称号
百戦錬磨、ゴブリンキラー、殺戮者、インセクトキラー、デーモンキラー
よし、と《強欲の原罪》があるのを確認したぼくは内心ガッツポーズをした。
「これは……《スキルテイカー》? ああ、なるほど。私の前に召喚されていた
「察しが良すぎて怖いね」
「奪われたのは《強欲の原罪》……《スキルテイカー》でエクストラスキルは奪えないはず。ならば……スキルを強化するスキルを持っている? ああ、戦っているときに感じた違和感はそれですか。大方、戦っている最中に強化するスキルを状況次第で瞬時に切り替えていたのでは?」
「……キッショ」
『怖すぎだろ……』
《スキルテイカー》を使っただけでそこまで見破られると、隣のフランが持っている師匠の言う通り怖すぎる。背筋が寒くなるとはこのことだ。
ただ強いだけでなく、ここまで頭が良いなんて理不尽すぎないか。
「物理攻撃も魔術攻撃も効かないと見て、《強欲の原罪》による私の魂の簒奪を狙いますか。なるほど、それは確かに効果的ですね。先程
「……随分と、よく話してくれるじゃん。余裕なの?」
「余裕ですよ。なにせ、
その余裕綽々な態度に若干苛つきながらも、ぼくは思考を止めない。
『さて。俺たちもやるぞ、フラン』
「ん、絶対に勝つ」
師匠の鼓舞にフランは短く応じると、一瞬で次の魔術詠唱を始めた。
「さて、どう来ます?」
余裕の態度を崩さない
「行くぞ!」
ぼくは全力で《剣術》を駆使し、攻撃を仕掛けた。
師匠が放つ《フレア・ブラスト》が援護となり、幾分か動きを封じたものの、
「《剣技》
横一閃。
ぼくの《剣技》を
「《強欲の原罪》!」
魔影鋼の長剣を持っている右手とは別に動かせる左手が瘴気を纏う。
そして、左手が
「甘い」
──ずどぉっ、と。
ぼくは身体に衝撃を受けていた。
ただ蹴られただけという単純な事実を読み取るのに、数瞬の時間が必要だった。
『フラン! 今だ!』
「んっ! ストーン・バレット!」
フランはここぞとばかりに《土魔術》の全力を発動させ、ぼくを蹴飛ばした
──だが。
「温い」
まるで初めから想定していたかのように、彼はわずかな動きでファイア・アローを避け、さらに反撃の《暗黒魔術》を放ってきた。
「ぐっ……、がはっ!?」
漆黒の奔流がフランの身体を吹き飛ばし、地面に叩きつけられる。
『フラン!』
「……ぐ、ぅぅ」
フランも必死に立ち上がろうとするが、限界のようで上手く立てない。
というより、動くことすらままならないようだ。
無理もない、
……そして、それはこちらもだった。
「げほっ、ごほ……っ、くそ……」
今の
気付けばぼくも、地面に倒れていた。息が詰まり、ひどい耳鳴りが頭をかき回す。
それに呼応するようにアドレナリンで忘れられていた痛みが全身を支配する。
痛い。痛い。痛い。
「……ぐ、ごほっ」
それまでの傷がここぞとばかりに痛みを主張し、息をするのが精一杯になる。
立とうとしても、身体が言うことを何も聞かない。
「……ちく、しょ……」
負け惜しみしか、口から出ることはなかった。
◇◆◇
「……終わりましたか」
……実を言うと、
もちろん召喚された当初は、
だが、いざ戦ってみれば、その考えは変わった。
まず、黒猫の少女。確かフランと呼ばれていたか。彼女が持っていた剣は神剣には至らないものの、それなりの力を持っていた。
だが、
つまり、あの剣には他者の力を吸収する力がある。
それを踏まえて戦って
ゲームの勇者でもレベル1の時は弱いように。
そして次に、アルビノの少女。ルビーと呼ばれていた彼女には、最初はわざわざ言うような特徴は無かった。
だが、《スキルテイカー》と《強欲の原罪》を持っているならば、それなりには強くなれるだろう。
それが黒猫の少女の刺激となれば良い、そう考えていた。
「……さて、外で待っているゴミを掃除しますか」
他の冒険者たちが居る外へ。
まずはそいつらを皆殺しにして、次に街を滅ぼそう。
そして二人を外に放り出しておけば、おそらく復讐目的で強くなり帰ってくる筈だ。
何年かかるかは分からないが、未熟である今これだけ強いのならば、どこまでの高みに登ってきてくれるか。
そんな彼女たちとの戦いは、どれだけ愉しいものになるだろう。
未来に心を弾ませながら、
「……は?」
その反応からすると、間違いなく動いていなかったはずだ。
いや、動いていた。動いていたのに、そのことを
何が起こったのかを把握できずに頭が真っ白になっている
「ね、どこ行くの?」
その薄紅色の唇で、弧を描いていた。