転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
「勝っ、た……」
ドサリ、と音を立てて、ぼくは地面に倒れ込む。すでに体力は限界を超えていた。
目だけを動かして
──ガチャガチャ!
「おーい嬢ちゃんたち!! 無事か!?」
ドナドロンドさんがやって来たのを視界に入れたぼくは、安心して眠りについたのだった。
◇◆◇
「……知らない天井だ」
テンプレのセリフを口にして、ぼくは周りを見回す。
「ここ……馬車?」
「ん、帰る途中。起きたね、ルビー」
「あ、フラン」
隣を見れば、そこにはフランが座っていた。
ぱっと見は無表情だが、ぼくには何処か安心したような顔をしているように見えた。
『ルビー。いきなりだが、帰ったらカレー食わせてやるよ』
「……え? マジ!?」
『ああ、マジだ!!』
「よっしゃぁッ!」
腕を天に突き上げて、ぼくはガッツポーズをした。
なにせ、カレーだ。それも師匠のカレーだ。
転剣の代名詞みたいなところがあるカレーなのだ。テンション上がるに決まってる。
「ルビー、カレーってどんな食べ物?」
「ひゃっほー! ……ん? なんでぼくに聞くの? 師匠に聞けば──」
「ルビーは師匠と同じ、別の世界から来たんでしょ。……違う?」
…………。
……………………。
……………………ん?
「……はぁ!? え……なんで!?」
「前に師匠と話してた」
「……あ、ああ。聞いてたのね……まぁ、別にいいか」
ぼくとフランの関係が複雑になってしまわないか。
そんな怖さがフランに転生者だということを打ち明けるのを拒んでいたが、特に何もなさそうだし、いいか。
『え、はぁ!? 嘘だろ!?』
「本当」
『……マジか』
……いつ言おうか悩んでたぼくが馬鹿みたいだ。
『……大丈夫か?』
「師匠。うん、大丈夫。なんか普通に受け入れてくれてたし」
『そうか、なら良かった。あ、そうだ! お前に渡しておきたいものがあったんだ』
「ぼくに?」
『ああ、これだ』
師匠が《次元収納》から出したのは……。
「
『ああ、そうだ』
……《鑑定》。
名称:闇剣・
攻撃力:1200 保有魔力:800 耐久値:500
魔力伝導率・A
スキル:虚無吸収
おー……いや、つっよ。
『ルビーの剣は折られちまっただろ? だから、その代わりに使ってくれ』
「……うん。ありがとう」
剣か……よし、師匠と比べてみよう。
名称:師匠
装備者:フラン
種族:インテリジェンス・ウェポン
攻撃力:434 保有魔力:2050/2050 耐久値:1850/1850
魔力伝導率・A
スキル
鑑定7、鑑定遮断、高速自己修復、自己進化〈ランク8・魔石値3099/3600・メモリ70・ポイント40〉、自己改変、念動、念動上昇[小]、念話、攻撃力上昇[小]、装備者ステータス上昇[中]、装備者回復上昇[小]、保有魔力上昇[小]、メモリ増加[中]、魔獣知識、スキル共有、魔法使い
おーう……いや、師匠に比べて
名称:ルビー 年齢:12歳
種族:人間
職業:反逆者
ステータス レベル:25
生命:5228 魔力:6674 腕力:2018 敏捷:1919
スキル
鑑定4、剣術6、剣技1、回避3、気力操作、ゴブリンキラー、精神安定、不退転、インセクトキラー、成長効率上昇、デーモンキラー
エクストラスキル
強欲の原罪、スキルメイカー、スキルテイカー6
固有スキル
反逆の魂
称号
百戦錬磨、解体王、回復術師、ゴブリンキラー、殺戮者、スキルコレクター、火術師、料理王、インセクトキラー、超大物喰い、ダンジョン攻略者、デーモンキラー
インセクトキラー:同一戦場内において、蟲系魔獣を300匹以上葬った者に与えられる称号。
効果:スキル・インセクトキラー獲得
超大物喰い:圧倒的強者に単身で挑み、打ち勝った者に与えられる称号。
効果:HP+20、全ステータス5上昇、スキル・成長効率上昇を獲得
ダンジョン攻略者:ダンジョンマスター殺害、もしくはダンジョンコア破壊で与えられる称号
効果:ダンジョン内において、HP、MPの自動回復速度が上昇
デーモンキラー:デーモンを葬った者に与えられる称号。
効果:スキル・デーモンキラー獲得
師匠を短期間とはいえ装備したおかげで称号がある……ということよりも。
ぼくのステータス値が
それとスキルは……《スキルメイカー》か。
確か自分の好きなスキルを創り出せるとかなんとか……
……それにしても、あの黒い世界で会った謎の少女はなんだったのだろうか。
《情報神の根源》なんて、そうホイホイと他人にかせるようなスキルじゃあるまいし。
それに、おかしいのはそれだけじゃなくて──
『──
「……気持ち悪い」
前世の名前なんて、この世界の人間には誰も話していない。
だから、それを知るなんて大抵のことではない。
「……ルビー、酔った?」
「ん? あーいや、大丈夫。吐くほどじゃないから気にしないで」
そこで、気持ち悪い発言が聞こえてしまったのか不安げなフランが見つめてきたのを宥める。
安堵したのか、元の位置に戻っていくフランを片目にぼくは思考の海に戻った。
……あの謎の少女の正体、考えてみるか。
仮説一、ぼくの前世の友達。
もし、ぼくの前世の友達も転生していたのならば、ぼくの前世の名前を知っていてもおかしくは無い……ケド。
そもそも前世で女の子の友達なんて……いや、知り合い程度なら居るけどさ。
いや、ぼくみたいにTSしてる可能性もあるのか。……それか顔を直接確認はしてないわけだし、あんな透き通るような声をしておいて男ってことも……無いな。
というか、もしそうならぼくは男にずっと抱きしめられていたことになるのか。うっわ、ぼくの中の謎の少女が一気に変態野郎になった。
……話を戻そう。
仮設二、神様的な存在。
おそらく、これが一番可能性が高いまであると個人的には思っている。
だが個人的には、『転生したら剣でした』という作品の中に居る神様が、
おそらく、ぼくの前世と師匠の前世は、同じ地球の日本であっても
さっきも言ったことだが、ぼくは『転剣』という作品の外から来た存在。
そんなぼくの前世の名前なんて、知りようがないだろう。
……いや、記憶を読まれた可能性もあるか。
仮設三、ほくの裏人格的な何か。
フィクションの作品などでよくある、主人公のダーク版みたいなやつだ。
例えばヒロアカのダークマイト……いや、アレはただのパチモンか。
『ダークルビー……新しい象徴の名さ』
『これが、象徴の力ァ!』
……これ以上考えるのは辞めよう。精神が汚染される。
分かりやすい例を言うと、『ゼルダの伝説』のダークリンクだったり、『星のカービィ』のシャドウカービィだったり……そんな感じのやつ。
問題点は、どこからそんなもんが湧いてきたのか。それが全く分からない。なので、可能性は低いと思っている。
「……分かんねー」
脳内で色々と仮設を立ててみたが、今はまだ情報が足りなすぎて判断のしようがない。
結局何もわからないという結論が出たぼくは、不貞腐れるように馬車の端にあった毛布に手を伸ばし、包まった。