転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
現在、ぼくはアレッサギルドでギルマスに問い詰められていた。
討伐した
「魔石はどこに行きましたか?」
「……止めを刺したとき、斬っちゃったみたいで消えちゃいました」
無理のある言い訳だが、事実だ。
ギルマスは半信半疑だったが、精霊のあれこれで信じてくれた……その時、扉が乱暴に開かれる。
「いいや、待て!」
現れたのはアレッサ騎士団副長、オーギュスト・アルサンド。
彼は自分のユニークスキル《虚言の理》でぼくの言葉を嘘だと断定し、魔石を隠していると主張してきた。
「魔石を騎士団に渡せ。それでこの件は不問にしてやる」
何だこいつ……。
明らかな横暴に呆れつつも、ギルマスが丁寧に反論してくれたが、オーギュストは引き下がらない。
その時、フランが何かを差し出した。
「これ、あげるから仲直りして」
手の中には『ゴブリンの角』。もしかして煽ってる……?
当然だがオーギュストは激怒し、角を投げ捨てた。
『おいおいフラン! 今の煽りは高度すぎだろ! ぎゃはははは!』
「そ、そうだよフラン……ふふっ……はは……あはははっ!」
「ル、ビー……こいつ、斬っていい?」
「……え? あ、今の本気だったん?」
フランはそのまま師匠に手をかけて……。
「って、待って待って! ストーップ! ウェイトだよフラン! こんなところで貴族を殺したら面倒くさいことになる!」
『そうだぞフラン! 落ち着け! それとルビー! 悪い事とかじゃなくて面倒くさいって言ってる時点でお前も大概だぞ!! ……ギルマスの部屋で貴族を斬殺とか、アレッサの歴史に残りそうだからやめときなさい。もっと別の……そうだ! こいつ悪人っぽいし、アレ試そう!!』
「! おっけい、同時ね」
フランと師匠は、《スキルテイカ―》を使った……らしい。
ちなみに、ぼくはクールタイムが終わってないので使えません。残念。
〈師匠はユニークスキル《虚言の理》を奪取しました。フランはスキル《宮廷作法》4を奪取しました〉
「私は100歳。本当か嘘か分かる?」
「何だ貴様突然。そんなものは簡単にだな……」
『くくく。大事なスキルが無くなったことに気づいて、慌てふためくがいいわ!』
途端、オーギュストの顔が青色に染まっていく。
「早くこたえて」
「う、うるさい! その、何だ。きょっ、今日は気分が悪い! 帰る! また出直すぞ! 覚えていろよ貴様ら!」
そうしてオーギュストは、慌てて退散した。
何だったんだ……。
「……ふぅ、申し訳ありませんでしたね」
「あ、いえ。僕は大丈夫ですけど……」
「あれは誰?」
「彼はアレッサ騎士団の副長で、大貴族オルメス伯爵の息子です。地位を金で買った俗物で、身分を振りかざして町中で嫌われていますが、親の権力で守られているため手出しできません。《虚言の理》という嘘を見破るスキルも持っており、扱いが厄介です。実力は大したことありませんが、レベル30程度で、家族や雇った強者のおかげで見かけだけ整えたタイプです。彼に目を付けられたかもしれませんので、注意してください」
「ん、大丈夫」
「はい、大丈夫です。一応これでも、ぼくも強いので」
「そうですか。貴女達がそう言うのであれば、構いませんが……」
フランには及ばないと思うけど、強いからね。
……それとも、意外と勝てちゃったりするかな?
「話は以上です。ともかく…感謝を」
……ようやく終わった。これで帰れる。
「で、本当に魔石はお持ちではないのですか?」
「ギルマスも言うんですかそれぇ!?」
ぼくはキレのいいツッコミを入れた。
「冗談です」
「危なかった」
「何が?」
「手が出そうになった」
「手ェ出さないでね!? さっきの貴族とは違っていい人だからヤメテ!?」
「はははは。それは怖い。では、くれぐれも、奴には気を付けてください」
「だいじょぶ。……もう良い?」
「……フラン。その態度は少し失礼だと思うよ」
「ん」
「ええ、ありがとうございました。あ、ちょっと待ってください」
「?」
部屋から出ようとすると、ギルマスに呼び止められた。
「受付でランクアップして行ってください。すでに事務処理は終わらせていますので」
「また?」
「ええ。また、あなたがとんでもない成果を上げてくださいましたので。悪魔王撃破の冒険者を、ランクFと名乗らせるなんて、できませんからね。とりあえず、飛んでランクDに上がってもらいます」
「Eじゃない?」
「本来であれば、Cに上げたかったんですが。あまりにも短期間ですのでさすがに、他の支部の承認が得られませんでした」
「ん、分かった」
「了解です」
これでぼくもDランク冒険者……ここから頑張ろ。
「分かった。受付に行く」
「よろしくお願いいたします。そこで報酬も支払いますので、受け取ってくださいね。ボーナスも弾んでいますよ」
「ん。それはうれしい」
「おお!」
ボーナスは嬉しいな。
ぼくがいるせいで原作よりも金の減りが激しいし、収入は多いほうがいい。
……といういざこざもあれど、平和に冒険者として依頼を受けたりしていたら、いつのまにかゴブリン討伐から10日が経過していた。
そんな今日もいつも通り依頼をして魔獣を見つけたら殺して、アレッサに帰ってきていた。
たんさんの魔獣を相手にすることによって、急激に上昇しすぎた身体能力に慣れる為だ。
……と言っても魔獣が弱く瞬殺なので、完全に慣れたとは言い難いが。
「おォ! フランちゃんとルビーちゃん! また依頼かい?」
「ん」
「あ、どうも」
この人は門番のデルト。良く話しかけてきてくれるけど、そのせいで師匠にロリコンって言われてしまっている。
だがフランも結構気を許してるようだし、悪い人じゃないのは事実だ。
「いやぁ〜、今日も可愛いなぁ」
……師匠の言う通りロリコンなのかもしれない。
「ああ! そういえば気を付けなよ。アルサンド子爵は知っているかい?」
「ハムサンド?」
「ハムサンドはおいしそうだけど違うよ。もっと油だらけでマズそうなやつ」
『そもそも食い物じゃねぇよ! あれだよ。確かオーギュスト・アルサンド……多分この前ギルマスの部屋で文句言って突っかかってきた騎士団副長の貴族じゃないか?』
「ホホウ?」
「ほら、ゴブリンの角を捨てた貴族がいたじゃん」
「ああ、雑魚副長?」
「ぶはっ」
雑魚副長……いいね、あだ名に
「はっはっはっは。そうそう、その雑魚副長だ」
「あれがどうしたの?」
「ああ、何やらフランちゃんのことを探しているようだ。注意しておいた方がいい。昨日も、奴の部下だっていう奴が、君がここを通ったか確認しに来たし」
「へぇ?」
なるほど。そろそろ雑魚副団長に狙われるイベントかな。
だが雑魚副団長が雇った奴もフランの敵ではないだろうし、原作通り行けるだろう。
正直、警戒度は低い。
「奴は貴族だし、町じゃ好き勝手さ。しかも、嘘を見破るスキルというのを持っているらしいんだ」
「「知って
そこまで好き勝手できた理由の《虚言の理》は、既にフランに奪われているが。
「そのスキルは貴族社会では有効だ。弱みを握ったり、政敵を追い落としたりな。あの子爵も問題を起こしては実家に揉み消され、ますます調子に乗ってるらしい。二人にどう関わるか分からんが、何かしてくる可能性があるから気を付けな」
「分かった。注意する」
「最近、そのアルサンド子爵の様子が変だという噂もある。挙動不審になり、王族相手に大失態をやらかしたらしい。父親のオルメス伯も激怒し、見放されるかもしれないとか。邪神が乗り移ったなんて話まで……」
『うわ、ストーキングされてたら怖いな』
「だね、気を付けよ」
「ありがとう」
という会話の後の、宿への帰り道。
『……振り向くなよ、二人とも。誰かにつけられてる』
「ん」
「え、マジ? 感知系のスキル羨ましいな……《スキルメイカー》で創ろうかな」
『後でな。それより……二人、か。撒くのは簡単だが、いつまでもこういうのに付け狙われるのはごめんだな』
「うん。……裏道にでも行く?」
『ああ、それが良いかもな』
師匠のOKもありわざと裏道に入ると、気配がこちらに近づいてきた……らしい。
「……何かよう?」
おお、フランに強者感が出ててカッコいい。
「!! ……きっ、貴様……」
おお、やっぱりオーギュs──
「あッ……あのときわわ私に呪いをかけたァ、二人組だろォォお!」
「いや誰ぇ!? 誰っていうか魔獣!?
名称:オーギュスト・アルサンド 年齢:29歳
種族:人間
職業:戦士
状態:衰弱
ステータス レベル:30
生命:108 魔力:99 腕力:52 敏捷:45
スキル
演技1、歌唱1、騎乗1、欺瞞1、剣術1、算術1、社交2、毒耐性1、毒知識2、薬草学2
称号
子爵、アレッサ騎士団副長
状態:衰弱……衰弱ってレベルじゃねぇ!
「ねぇ、アレって……?」
『多分、オーギュスト子爵だよな? え? 僅か10日で何があった?』
「同意見」
全力で関わりたくねぇ。
「お、お前らのォォせいでェ私はおしまいだァァ!! 責任を取ってもらうぞォォ!」
「どちら様?」
「な、なに? 我を忘れたとでも、言うのか!」
「初対面」
「ほ、本当か? ひ……人違い? い、いや、嘘をつくな! そんなわけがない!」
「だって見覚えない」
よし、ぼくも流れに乗ってフランに加勢するとしよう。
「すみません……ぼくもあなたとは会った覚えがないのですが……」
「え? 本当に人違いか? いや、嘘だ! 嘘だろ?」
「嘘じゃない。じゃあ、そういうことで」
「え? え? 嘘じゃないのか? 嘘じゃない?」
「嘘じゃないです。では」
「じゃ」
……思ったよりも簡単に押し切ったな。
よし! ギュラン戦、スルー!
「あ! いや!! その剣は!! お前やっぱりあの時のギルドの冒険者ではないか!!」
「チッ」
やっぱ無理か。
「そ、それにその特徴的な白髪はぁ……や、やはり嘘だったのか! 舌打ちもしやがって! くそっ、どいつもこいつも嘘つきばっかだ!」
「いや、お前が言うなよ」
思わず突っ込んでしまった。
「お、お前ら、その剣を、こ、こちらに渡せ!」
「いや」
「そうです。これはぼくの剣ですよ?」
元
「う、うるさい! 薄汚い冒険者風情が、き、貴族様に逆らうんじゃない! と、とっとと渡せ!」
「やだ」
「人の話聞いてました? ぼくは渡したくないって言いましたよね」
「おお、俺を誰だと思っている! お、オーギュスト・アルサンド様だぞ!」
「知ってますけど? それが?」
するとオーギュストは突然、自傷行為を始めた。
「え……? な、何やってんの……?」
「? 気が触れた?」
『面倒だな。逃げるか斬るか、どうする?』
「どうしようか?」
師匠と相談していると、オーギュストが叫んだ。
「ゆっ許さァァん!! おいッ……ギュラン!」
「フン、ガキが二人、しかもそのうちの一人は黒猫族か……任せてください。俺たちの一族は、こいつらの扱いにゃ慣れてますんで。身ぐるみ剥いで奴隷商に売っちまいましょう」
そうして出てきた青猫族は、フランの猫耳とかと違い、顔そのものが猫なのですこしキモかった。
それから青猫族だというギュランと、ついでに後からやってきたジレンとやらを原作通りに倒した。
正直なところ、今の異常な身体能力を馴らす相手にすらならなかった。
「師匠、《次元収納》お願い」
『あ、ああ……だがルビー、こんな悪人でも殺しちまうのは……!』
「師匠、ここは日本じゃない。そりゃ、元日本人のぼくには説得力無いけどさ……殺さないと、殺されるよ?」
『……そうか。いや、ルビーもこの世界を生きてきたんだろ? なら、信じさせてもらうよ』
「……サンキュ」
師匠は納得してくれたらしく、死体を《次元収納》に入れた。
「ひひひひひぃぃい! きッ……消えた!! ギュランとジレンが真っ二つになって、消えてしまったァァ!」
「……このゾンビ、どうする? 斬る?」
『ゾンビじゃないぞ、一応な』
「そうだね……こんなゾンビでも一応は貴族だし、やめた方がいいと思うよ」
それに、そろそろギルマスの精霊が来るはず……。
そう思い周辺を感知すると、一つの気配を見つけた。
「師匠……!」
『ああ、かなりの魔力だ。脅威度Dは行ってるかもしれないぞ! 気を付けろ!』
「ん!」
……んん?
「は……!? ちょ、ちょっと待って! ストップ!」
ギルマスの精霊を殺しちゃ駄目だ! 後々メンドイ!