転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
ぼくたちは、受付嬢さんに連れられてギルド裏訓練場に連れてこられた。
「お前らが登録希望者か」
あっ、この人が試験管の……。
「俺はアレッサギルド試験官、ドナドロンドである!」
うるせぇっ!
てか《威圧》がヤバいな……さっき覚悟を決めたはずなのに、体が小刻みに震えてるんだけど。
『フラン、ルビー、威圧は大丈夫か?』
「ん」
「……うん、大丈夫」
こんなところで、躓いてられない。
名称:ドナドロンド 年齢:46歳
種族:鬼人
職業:大戦士
ステータス Lv:38
生命:246 魔力:133 腕力:198 敏捷:131
スキル
威圧4、運搬3、回復速度上昇5、危機察知4、教導4、気配察知3、再生4、瞬歩3、土魔術2、投擲5、毒耐性7、伐採4、斧技7、斧術8、咆哮3、起死回生、気力操作、筋肉鋼体、自動生命回復、腕力上昇[小]
称号
ギルド教官
名称:重錬鋼の大斧
攻撃力:650 保有魔力:3 耐久値:650
魔力伝導率・E+
スキル:なし
おお……ステータスが凄いな。
原作知識で分かってはいたけど、やっぱりパワータイプか。
『鬼人族のドナドロンドか』
「“ド”が多い」
「そだね」
「俺は手加減が苦手だ、どんな相手でも本気で行くぞ!」
「分かった、頑張る」
「はい、来てください!」
そして、ぼくたちは剣を構える。
ドナドロンドさんの斧と比べたらポンコツの剣だけど、無いよりはマシだ!
『フラン、ルビー、これまでで間違いなく最強の相手だ。出し惜しみはなしだ!』
「ん!」
「分かってる!」
「登録試験、始めっ!」
受付嬢さんの声がした瞬間、ドナドロンドさんがいきなり斧を振るってくる。
「ムゥン!」
その斧が地面に当たり、地面の土が空を舞う。
「ほう、避けたか!」
『っぶなかったー!』
それをぼくは、フランに服を引っ張られることでギリギリ避けられていた。
……あっぶねぇッ!
『フラン、ルビー!』
「「!?」」
「スラム・スラッシュ!」
そして、その一撃を間一髪で避ける。
『フラン! ルビー! よく避けた!』
師匠に返答したいけど、こちとらそんな余裕はないんだよッ!
心の中でぼくが愚痴を言っている間にも、ドナドロンドさんはこっちに迫ってくる。
……分かってたことだけど、ぼくじゃドナドロンドさんには勝てない。
なら、どうするか。答えは一つ!
「よしフラン、囮作戦だ! フランは餌に! ぼくは逃げる!」
『お前クズかッ!』
「ん、分かった。私が倒す」
『いや、戦闘能力を踏まえるとそれがいいのか……?』
「パワー・スイング!」
そこに飛んできたドナドロンドさんの攻撃を避ける。
フランが後ろに吹っ飛ばされていたが、地面に剣を刺して止まった。
「フラン!? 大丈夫!?」
ぼくは慌ててフランのもとへ駆け寄る。
「ん、大丈夫」
「ふん、剣で勢いを殺したか」
『フラン、奴の攻撃は剣で受けちゃ駄目だ』
「そうだね……ぼくみたいに避ければ?」
「でも、逃げてるだけじゃ駄目」
『……そうだな。補助魔法をかける。一応ルビーにも掛けとくぞ』
「うん……ありがとう」
正直めっちゃ助かる。
それとフラン、ぼくは時には逃げるのも大事だと思うぞ。
『よし、攻撃に転じるぞ!』
「ん!」
<個体名師匠が《補助魔法》を使用。個体名フラン及び個体名ルビーの腕力値と敏捷値が一時的に上昇します>
「……頼むよ、フラン。今のぼくじゃ、何もできないしね……」
フランとドナドロンドさんが斬り合うのを、ぼくは少し離れた場所で見ていた。
……やっぱりフランはすごいな。
いくら師匠がいるとはいえ、あそこまで剣術を使いこなすなんて。
「《剣術》のレベルが高いな。だが温い!」
すると、ドナドロンドさんの傷がみるみる塞がっていく……《再生》スキルか。
「どんどん行くぞ!」
ドナドロンドさんが地面に斧を振り落とした瞬間、地面が割れて衝撃がこっちまで来た。
「……え、ちょまっぎゃぁ!」
ああもう、《補助魔法》掛けて貰っておいてよかった!
心の中で師匠へお礼を言いながら、巻き込まれないように離れながら衝撃を避けた。
「私は、冒険者に、なるっ!」
フランがそう叫んでドナドロンドさんに斬りかかった時、師匠が《土魔術》の腕でドナドさんの動きを止める。
「! ……《土魔術》……だ、と……!? 唱えていた素振りなど……!?」
『魔法は俺の担当だ! 《火魔術》トライ・エクスプロージョン!』
「ぐおぉ……ッ!?」
ちょっと待て爆発がこっちまで来るんですけど危ねぇッ!!
ふっざけんな!?
「……決めるッ! 《剣技》
──ゴガァアンッ!
響き渡る轟音とともに、ドナドロンドさんが吹っ飛ばされた。
「ん……合格?」
──ボコォ
「……へ?」
何か鈍い音がした方向……ドナドロンドさんが吹っ飛ばされた方を見ると、土の下に埋もれたドナドロンドさんの腕が地上に出ていた。
その手はグッドマークになっており。
「え!? あ……えっと、合格……みたいです……」
その言葉を聞いたぼくは、大きく安堵の息を吐いた。
◇◆◇
「はぁ、厄介な。《剣術》Lv7の技に無詠唱魔法を使う12歳の新人ですか……」
「はは……」
……なんか、申し訳ないなー。
思わず苦笑いしちゃったよ。
名称:クリムト 年齢:136歳
種族:ウッドエルフ
職業:大精霊使い
ステータス Lv67
生命:180 魔力:616 腕力:87 敏捷:158
スキル
詠唱短縮7、鑑定5、弓術3、採取5、樹木魔術7、精霊魔術8、大地魔術6、調合5、土魔術10、毒耐性3、麻痺耐性4、水魔術5、薬草知識7、料理4、魔力操作、森の子供
ユニークスキル
精霊の恩寵
称号
ギルドマスター、アレッサの守護神、樹木術師、土術師
装備
老神桜樹の杖、分体創蛇の鱗服、若風竜翼の外套、月兎の跳靴、身代りの腕輪
「はっはっは! 負けたぜ負けた! まさかあそこまで強いとはなッ!」
「……笑い事では無いんですがね、ドナドロンド君……ギルドが舐められないように、君に試験官を任せているのです、よ」
「……も、申し訳ない……」
「舐めてない。長引いたら負けると思った。だから最初から全力で行っただけ」
「……らしいです。あ、ぼくはフランと違って全然強くないので誤解しないでほしいです」
「そうですか……ふむ。では、フランさん。その年齢で中級剣技を使いこなし、レベル10の火魔術を無詠唱で発動させる。貴方はどこでこれ程の力をつけたのですか。どんな方に習ったんです?」
「……黙秘。完全黙秘。力も師匠も秘密」
「……はぁ、そうですか…………ルビーさん、貴方は話してくれる気がありますか?」
「あると思う?」
「……そうですよね」
「…………ぬ?」
「うん? フランどうしたの?」
「……鑑定された」
《鑑定》か……《鑑定遮断》スキル持ってないけど、見られて困るものはないし別にいいや、
「フランさんは無効、《鑑定遮断》スキルですか……そしてルビーさんのステータスは、ユニークスキルはありますが、現在は機能していない状態……普通ですね、貴女は」
普通で悪かったね!?
「それで、ぼくたちは合格ですか? それとも不合格?」
正直、不合格にされたら大変困る。
原作が完全に崩壊しちゃうよ……。
「ドナド君と渡り合う様な猛者を、不合格にするわけにはいかないでしょう。……ルビーさんもその隣で逃げていただけだとしても、あの状況で大した怪我を負っていない時点で合格です」
「……そうですか。なら、ギルドカードをください」
「分かっています。今用意させますよ。この書類に必要事項を記入してください。文字が書けないのであれば、代筆させますが?」
「平気」
「ぼくも平気です。……文字は前に、親友に教わったので」
奴隷になる前に会った、ぼくと同じ白神子の少女を思い返しながら、書類に文字を淡々と書いていく。
そして必要なことを書き終わったら、ギルマスのクリムトさんに渡した。
「これで、オッケーですか? ……そっちからすれば、ぼくたちは不審すぎると思いますけど」
「腑に落ちない点はいくつかありますが、精霊が騒いでませんし、ね。冒険者として登録しますよ」
余裕そうにクリムトさんと話しているが、内心では冒険者になれたことに心から安堵していた。
「精霊?」
「精霊は邪心や悪意に敏感なので、そういう者がいると騒がしくなります。だからあなた達が悪意で事を隠している訳では無い事は分かります」
「おー」
……そんなこと、怪しすぎるぼくたちに話していいことなの?
ああ、精霊が騒いでないから大丈夫ってことか。
「ギルドマスター、準備が出来ました」
ギルマスの部屋の扉が開いて、そこから受付嬢さんが現れた。
「ギルドカードを発行します。皆さん行きましょう」