転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
ギルマスについて行くと、ぼくたちは中心に大きい水晶がある部屋に入った。
「まずはフランさんがこの水晶に触れてください。あなたの魔力の波長を登録します」
フランの登録は、横にいる受付嬢さんが水晶玉を少しばかりいじっただけで、すぐに終わった。
「あとは
「
「
「どうしました? ネル君」
ギルマスがそう聞き、後ろから水晶の画面を覗き込む。
へぇ、受付嬢さんの名前ってネルっていうんだ。
原作知識でもそこまで詳しくは覚えてないからな……知れてよかった。
「戦士、剣士、拳士、魔剣士、瞬剣士、魔術師、火炎術師、白術師、召喚術師、魔獣使い、隠密師、薬師、解体師、料理人……適性職が多すぎるんです」
師匠が共有スキルをセットしすぎたせいだな……もう目立っちゃってるから手遅れだし、ここで魔剣士になっておかないと後々困るから良いんだけど。
「ルビーさん、どう思われます?」
「どう思われますって言われても……フランだからね、としか言えないですねー」
「……今更ですしね。ドナドロンド君との戦いの様子からして納得せざるを得ませんし……」
「えっと、ではどの職になさいます?」
「ん、魔剣士にする」
<装備者フラン、
「了解しました。職業は後で変えられますが恩恵の変動、低下、職業固有スキルの変化などがありますのでご了承を。……登録完了、これがギルドカードです」
ネルさんができたてホヤホヤのギルドカードを、フランに渡した。
「おぉ、冒険者になった!」
「強い奴は歓迎だぜ! フラン嬢ちゃんよ!」
「ん!」
「では、次はルビーさんですね。この水晶に触れてください」
「はい」
ぼくは落ち着いたような態度ながらも内心ちょっぴりワクワクしながら、水晶に触れる。
すると、そこに現れた
「ルビーさんの適性職は戦士と剣士に……ん?」
そこに映っていた
戦士と剣士に、もう一つ。
……反逆者、という
どうしてこんな
だけど、得られる力なら使っておきたい。
「何でしょうか、これは……」
「……反逆者という
「え? ……ですがルビーさん、こんな
「それでも、それにしてください。……それがいいんです」
ネルさんがぼくの目を見て、ハッとしたような顔をすると、水晶に再び向き直り操作しだした。
「……登録完了、これがルビーさんのギルドカードです」
そして、ネルさんからギルドカードが渡された。
そこにはぼくの『ルビー』という名前が書いてあって。
「よし、これで……」
1つ目の試練はクリア、か。
「一定時間、ランクに応じた
「……あ、そうだ」
「ん? 何かあった?」
「素材買取」
「……あ、そうだった」
フランがいなかったら忘れるところだった……転生前から、こういうの覚えておくの苦手なんだよね。
宿題とかもよく家に忘れて先生に怒られたな、などと前世のことを思い返した。
「なるほど、素材買取ですね。こちらのカウンターへどうぞ」
「素材売らないと泊まるお金もない」
「や、それってそんな堂々と言う事じゃないよ……?」
「そ、そうですか」
するとフランは、アイテム袋から出すふりをしながら《次元収納》から魔獣の素材を出した。
……思ってたよりも量多いな。師匠はフランに会う前にどんだけ魔獣狩ったんだ。
こんだけ狩っちゃったら、そりゃあゴブリンが街道に出てくるわ……納得。
「こ、これを全部あなた達だけで解体まで?」
「ん(嘘)」
……さらっと嘘つくなー、この娘。
「ふえー、しょ、少々お待ちください! 手伝ってー、後輩ちゃん~」
「見ろよあの量…」
「脅威度Fまでいるぞ…?」
おわぁ、ちょっとした騒ぎになっちゃった。
……止めた方がよかったかな?
いや、だけど泊まるお金ないし……これが最適解か。
そう自分を納得させてから十分後、ネルさんが大量のお金を持ってきた。
「合計で169000ゴルドになります」
……えーと、あれ? 原作より少なくない……?
…………あ、ああああ! そっか、ゴブリンとかの死体を《解体》スキルの無いぼくも見様見真似で手伝って解体してたからか! やらかした!
「おぉー、こんなお金はじめてみた」
「……うん、すごい量だね」
くっ、キラキラしているフランを見ると、本来はもっとお金を貰えたという事実によって罪悪感が……ッ!
「ちゃんと適正の値をつけていますよ。脅威度Fの魔獣もいましたし解体も丁寧なものもあり! それに素材の状態も非常にいいものもありましたから」
「ネル先輩、コレはどこに?」
「ああ、それは──」
けど、16万あればそれで十分……ぼくはそう自分を無理やり納得させた。
今更どうにもできないし、こういうのは切り替えが大事なんだと、ぼくは心の中で呟いた。
「ありがと、お姉さん。これで泊まれそう」
「ありがとうございます、ネルさん!」
「ふふ、ネルって呼んでくださいフランさん、ルビーさん」
「ん。ありがと、ネル」
「ネル、ありがとうございます」
フランがちゃんとお金持ったし、これからは宿に行こう。
『よーし、出たらさっそく宿を探そうぜ♪』
「ん♪」
フランと師匠と一緒に宿を探すために歩きだした……のだが、足元にナイフが投擲された。
「ちょっと待てや、オォ?」
…………。
『……フラン、ルビー、聞こえないフリでいいぞ』
「ん」
師匠の言葉通り、ぼくたちは何も言わずに立ち去ろうとする。
「おいコラァ! 待てっつってんだろうが」
「聞いてんのかガキども!」
「……何?」
「別にぼくは貴方たちに用は無いですけど」
テンプレすぎて欠伸するよ。
「その金、不正に得たモノだろ?」
「ちがう。ちゃんと素材を売って稼いだもの」
「……何の根拠があって、そんなことを言ってるんですか?」
ああ、メンドイ。殴っていいかな?
いや、一応正当防衛になら何と駄目だし……我慢するしかない。
「……くせえ、くせえぞ!」
「くさくない。今朝、川で水浴びたくさんした」
「きっも!」
「川が汚れんだろ」
「そもそも人に臭いなんて言うのは失礼で──」
「いーや!! 弱いクソ猫のニオイが臭くてたまんねんだよォ!」
聞けよ!
……こいつら、マジでこれまでどうやって生きてきたの?
礼儀がなってないどころの話じゃないぞ。
「そっちの餓鬼はともかく、黒猫族は獣人の中でも最弱の一族だ。どんなに努力しても強くなれない宿命の雑魚なんだよ。そんな奴があんなに魔獣を狩れるわけねェだろ!」
──ブチ
そんな音が、フランから鳴った気がした。
「……黒猫族を馬鹿にしたな」
フランを見れば、いつもの温厚さが嘘のようにガチギレしていた。
あーあ、こいつら死んだな。
……そもそも鑑定してみたけど、こいつら弱すぎない?
一番強い奴でこんな感じだし。
名称:ダムン 年齢:27歳
種族:獣人・赤犬族
職業:戦士
状態:激高
ステータス レベル:15
生命:78 魔力:40 腕力:37 敏捷:33
スキル
運搬1、剣術1、窃盗2、恫喝1、毒耐性1、斧術3
称号
戦場の敗残者
装備
粗鉄の戦斧、粗鉄の胸当て、破れた鹿革の鎧、力の腕輪(偽)
「ハァ? 雑魚がナニガンつけしてんだコラ」
「ルビー、こいつ斬っていい?」
「向こうから襲い掛かってきてくれればいいよ。それまで我慢しといて」
さっさと襲い掛かって来てくれないかな。
ダムンとかいう名前の男は、そう思うぼくを置いてネルの前に行く。
「おい、受付の姉ちゃんよ……俺たちもさっきツインヘッド・ベアの死体を売ったよな。同じもの売ったのに俺たちのはだいぶ安かったぞ? これって依怙贔屓の不正じゃねぇのか?」
「不正とは聞き捨てなりませんね。あなたたちの売ったツインヘッド・ベアは解体もとても雑で、頭も1つつぶれていました。どうせ集団で囲んで、メッタ刺しにでもしたのでしょう」
「何が悪いんだ、アァ!?」
「冒険者の方々は素材を高値で売るために、狩りの方法や美しい素材の解体の仕方に努力を惜しみません。自分たちの無知を棚に上げて人に因縁をつける前に、あなたたちもそういう事を学ぶべきです!
冒険者なめんな死ねばいいのに!」
あ……心の声が……。
「アァ? ……死? お前、今死ねばいいっつったなァッ!」
「ネ、ネル先輩…! 内なる声が漏れていましたよ……」
「……え?」
まだ失言した自覚すらしてないし……。
「……あ……」
「受付女ァ~~! てめェが死ねェ!」
そう叫びダムンとかいうやつがネルさんに斬りかかったが。
──ガキィィン
フランが簡単にその剣を受け止めた。
「ネルに手を出すのは許さない」
「フランさん……」
フラン、ナイス!
……もしフランが男だったら、ここでネルの恋愛フラグとか立ってたのかな?
「最弱雑魚獣人が、赤犬族様に逆らうのか!」
「オレたちゃ戦場帰りの傭兵だぜ?」
「戦場では、テメェみてぇなガキ火あぶりにして遊んだっけなぁ」
「お前たちは喉潰してから売っぱらってやる。クソよりクセェ黒猫族が売れるとは思えねぇけどな」
「他にもアニキは生意気な上官を素手で捩じ切って殺し、モヒカンは女とみりゃあ犯してバラバラ。おれは子供を何人も犯して奴隷商に売った」
「ど……れ、い……?」
……原作じゃただのカマセだったから殆ど覚えてなかったけど、ここまでのクズだったか。
「てめェみたいな黒猫の子供もいたかなァ? てめェもヤってやろうか? ひゃーははは!」
そう言った奴の足をフランは一瞬で《剣技》
「へ……? ちょ、ひ、ひぎゃああああ! 足が足があしがああ!」
支えがなくなった男の身体は、叫びながら横にバタリと倒れた。
フランが使ったのは《剣技》Lv6の技の
そんな技をフランは《振動牙》も重ねて威力をより強くしたのだ。
やっぱり、スキルの多さもあるけど、それを組み合わせて使いこなすフランの戦闘センスも凄いな。
「言われた通り剣は抜かなかった!
『まじ?』
「おぅ……そっか。襲い掛かってきたのは向こうだし、正当防衛になるからもうやっちゃって平気だよ♪ あ、でも一応殺さないでおいてね?」
「分かった」
ぼくはフランの邪魔にならないように、後ろに下がる。
……いつか、フランの隣に立ってたたかえるようになりたいな。
リメイク前との変更点
ルビーの