転生したら転剣の世界でした 〜Ruby Memoria〜 作:氷月ユキナ
「がはははは。嬢ちゃん達を放っておいてすまなかったな!」
「いい」
「いや、ぼくも剣とか色々見れて楽しかったですし」
たくさんの武器や防具があったので、博物館に来た気分だった。
「だったら、今後も顔を出してくれよ。
『変なことするなよ?』
「大丈夫だって。鑑定と目利きをするだけだからよ」
『まあ、それくらいお安い御用だけど』
「あと、素材の持ち込みも歓迎だぜ? 材料持ち込みなら、安く作ってやれるしな」
素材……そういえば、師匠って魔獣の素材持ってたような。
「素材、ある」
「だよね。師匠ー?」
『そうだよな。爺さんに渡して、防具を作ってもらえば、目立たず処分できるし。爺さん、この素材何かに使えないか?』
そういって師匠が《次元収納》から素材を全部出す。
ってアレ? あんな量のをこんなところで出したら……!
「うおぉお!?」
「いやいや師匠ぉーーッ!? もうちょっと場所考えて出してよ! この部屋、素材まみれになったじゃん……」
『あ、悪い』
あーもー、なんかべとべとしてるんだけど……気持ち悪いな。
「こりゃ……! タイラント・サーベルタイガーにドッペル・スネイク、ブラスト・トータス……C,Dランクの魔獣の素材じゃねぇかよ! 《次元収納》ってヤツか、そりゃあ……」
おお……ぱっと見ただけで何の魔獣かわかるんだ。
さすがは魔法鍛治師といったところかな。
確か、Cランクが大都市の危機、Dランクが町の危機だったはずだ。
「お前さんたちが仕留めたのか?」
『まあね』
「この素材がありゃお嬢ちゃんのもっと強い防具が作れるぜ?」
『ただ、爺さんクラスの職人にオーダーメイドとなると、結構高いだろう?』
「基本素材を持ち込みでも、200万ゴルドは下らないな」
『……そんな金はないな』
「なら、余った素材を買い取って相殺ってのはどうだ?」
『えっ本当に?』
「ああ」
『それは助かる!』
「商談成立だな。下位ランクの冒険者じゃ手が出せないような防具が作れるぞ!!」
『……あのー、爺さん?』
「おお、すまんな。久々の面白そうな仕事に、興奮しちまってな。まったく、お前さんらはわしを何回驚かせれば気が済むんだ!」
お、おお……ガルスさん、楽しそうだな。
そのやる気で、凄い防具を作ってもらいたい。
「いつできる?」
「鞘は3日で出来るが、お嬢ちゃんたちのはひと月程はかかるぞ」
一ヶ月……
『思ったよりもかかるな』
「何言ってる。十分早い方だぞ! まあ、これだけの素材だ。半端な仕事はしたくねーしな。足りない素材の仕入れもあるから、それくらいはかかっちまうだろうな」
『仕方ないか。二人もそれでいいよな?』
「ん、分かった。楽しみにしてる」
「全然。よろしくお願いします!」
「おう。任せとけ!」
『でもそんなに良くしてもらっていいのか?』
「赤字にゃならんから気にせんで良い」
……なんか、お金無いのに防具を作ってくれるガルスさんが聖人に見えてきた。優しすぎない?
「お前さん方は大層な冒険をしそうだからな。わしが魂込めて作ってやりたいんじゃよ」
大層な冒険、か。確かに大層な冒険をすることになるな。
少しの高揚感と恐怖を抑え込むために、ぼくは少しだけ服を握りしめた。
◇◆◇
「ああ、そうじゃ。ルビー嬢ちゃん」
「……ぼく、ですが?」
フラン達とガルスのお互いの用件が終わり、別れようとしていたとき。
ガルスは不意に、ルビーを呼び止めた。
「んっと、何ですか?」
「そんな構えなくても、何もせんよ。ただ、聞きたいことがあるだけじゃ」
「聞きたいことですか? それなら別にいいですよー。ぼくに答えられるものならなんでも。……あ、別にさっきは作品を見てただけで、壊してたりはしてませんよ!?」
「そうじゃないわい! それじゃのうて……
ガルスがそれを言った瞬間、空気が急激に冷え込んでいく感覚をフランは味わい、思わず身を固くした。
原因は、ガルスの言葉を聞いて正面で俯くルビーだ。その鬼気にフランは息を呑む。
「ガルスさん。それ以上は止めてもらえますか?」
ルビーのその声はあまりにも冷たく、フランの背筋に怖気が奔るほどだった。
「……分かった。これ以上は詮索せんよ」
ガルスがそう諦めると、ふっと、気を緩めるような張りつめた空気が霧散した。
「それじゃ、師匠。そろそろ行こう」
『お、おう……そう、だな。じゃ、今日はここでお暇するか』
「……ん、ばいばい」
『色々騒がしくしてすまなかったな』
「出来上がりを楽しみにしてろよ? お前さんの鞘は、3日後くらいに取りにきな」
『分かった』
さっきの事を頭から追い出そうとしながら、フランは必死に言葉を紡いだ。
(……ルビー。あなたは、何を抱えてるの?)
そうして一足先に工房から出ていくルビーを見ながら、フランはルビーの抱え込んでいるものを知りたいと、そう漠然と思った。
リメイク前との変更点
ルビーが懐に忍ばせた、謎の虹色の魔石