産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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 野草を手に道を歩く梓……行き着いた先は、蝶屋敷であり彼女は屋敷へ上がると一目散に診察室の戸を開けた。


「しのぶさん、いる?」

「あら、梓さん。任務終わったんですか?」

「終わってその帰り。

これ、あげる!」


 手に持っていた野草を、梓はしのぶに差し出した。差し出された野草をしのぶは受け取りながら、観察した。


「この野草、どうしたんですか?」

「任務先の山で見つけた!それ、すり潰して傷に塗るとすぐ治るよ。目茶苦茶沁みるけど」

「梓さん、本当に詳しいですね。野草について」

「山住んでた時、父がよく教えてくれたから…かな?」

「お父さん、野草に詳しかったんですね」

「うん!色んな草花知ってて、それで……?」


 嗅いだことのある匂いが、フワァっと漂った。鼻を動かしながら、梓はその匂いを辿りしのぶが座る机の一番下の引き出しを開けた。


「……これ」

「藤の花から抽出した毒ですよ。鬼に一番効く毒ですが扱いが難しく、扱えるのは作成した私だけです」

「……」

「梓さん、どうかされました?」

「この毒、父の武器に塗ってあった」

「え」

「あ、父が使ってた武器は、鎖鎌とか苦無とか……忍?が使う武器で……?」


 緊張と負の混ざり合った空気が、しのぶの周りに激しく流れ始めた。それを見た梓は、咄嗟に口を閉ざし恐る恐る彼女の羽織を引っ張った。


「しのぶさん……ごめんなさい」

「…どうして、梓さんが謝るんですか?」

「だって…しのぶさん、何か怒ってる空気が凄いから……」

「……」


 目線を合わせるようにして、膝に手を付けしのぶは梓の頭を撫でた。


「大丈夫ですよ。少し疲れていただけですから」

「……本当?」

「えぇ」


同類の毒

  昼下がり……

 

 干していた洗濯物を取り込むアオイを、梓は手伝っていた。その頃、梓の迎えと薬を貰いに来た宇髄が診察室にいた。

 

 

「は?梓の親父さんが…何だって?」

 

「ですから、梓さんのお父さんはどういう人だったんですか?と聞いているんです。

 

宇髄さん、梓さんと暮らしているんですから…多少お父さんについて話を聞いていますよね?」

 

「うーん……無いな」

 

「はい?」

 

「アイツ、そんなに親父さんのこと話さねぇからなぁ。

 

けど親父さんは、梓を目に入れても痛くないくらい可愛がってたってことは確かだがな。アイツの昔話聞く限りだと」

 

「……」

 

「で?それがどうかしたのか?」

 

「……梓さんのお父さん、もしかしたら鬼のことを知っていたのかもしれませんね」

 

 

 しのぶの言葉に、宇髄は手に取った本を思わず落としそのまま彼女の方を見た。こちらを見た彼に、しのぶは手に持っていた物を見せた。

 

 

「……これは、確か」

 

「私が開発した、藤の花から抽出した毒です。

 

梓さん、これのニオイを嗅いで言ったんです……お父さんの武器に塗ってあったと」

 

「……」

 

「ご存知の通り、この毒の扱いはかなり難しいです。それに、私が数年かけて作り上げたもの……

 

このニオイが梓さんのお父さんが扱っていた毒だというのなら、お父さんは既に藤の花の毒を作れた可能性があるんです」

 

「……だとしたら、梓の親父さんは鬼の存在を既に知っていたって事か(これが事実なら、あの山で鬼退治していたのは親父さんってことか……)」

 

 

「天元!次の任務地行こう!」

 

 

 戸を開けながら、梓は勢い良く入ってきた。驚愕したしのぶは、思わず手から藤の毒を落としそれを宇髄が慌てて受けとめた。

 

 

「梓さん、部屋に入る際はノックしましょうね」

 

「のっく?何それ」

 

「扉叩くことだよ、部屋に入る前」

 

「何で?」

 

「襖開ける時も、声掛けてんだろう。それと同じようなものだ」

 

「フーン」

 

「そんじゃあ胡蝶、また世話になるぜ」

 

「お気を付けて」

 

 

 しのぶに手を振り、梓は先行く宇髄の後を追いかけていった。

 

 

 

 

  林道を歩く二人……

 

 宇髄の後ろを歩いていた梓は、珍しい物を見つけるとそちらへ足を運び、満足すると宇髄の元へと戻り、また見つけるとそこへ足を運んだ。彼女の動きを気配だけで把握していた宇髄は、だんだんとイライラし始め、足を止め振り返った。

 

 

「ウロチョロすんな!!大人しく歩けねぇのか!?」

 

「だってぇ」

 

「だってじゃねぇ!!」

 

 

 怒鳴られる梓だが、何か見つけまたそちらへ足を運び、それを見た宇髄は彼女の頭に拳骨を食らわせた。

 

 

 頭にたんこぶを作った梓は、宇髄に抱っこされ移動していた。自身達の周りに飛ぶ蝶を見つけると、それを捕まえようと身を乗り出し手を伸ばした。

 

 

「大人しくしてろ!!」

 

「っ」

 

「(全く落ち着きがねぇなぁ……)

 

山で暮らしてた時も、さっきみたいに色んな所チョロチョロしてたのか?」

 

「してない」

 

「は?」

 

「したら父怒るもん」

 

「……何で山で出来た事が、こっちで出来ねぇんだよ」

 

「珍しい物いっぱいあるから」

 

「あったとしても、大人しくしとけ。

 

山と違って、人里は物騒なんだから」

 

 

 怒られ膨れる梓は、ふと空を見上げた。空高く飛ぶ鳥に目を向けた梓は、指差した。

 

 

「天元、デッカイ鳥」

 

「ん?

 

珍しいな、あんな大きな鳥がこの辺り飛ぶなんて」

 

「なんて鳥?」

 

「さぁな」

 

「……」

 

「見たことあんのか?」

 

「昔……山に来てたなぁって。

 

デッカイ鳥」

 

 

  遠い記憶……

 

 幼き頃、空を見上げると鳥が飛んでおり、その鳥に導かれて何かがやって来た。

 

 

「……?

 

梓?」

 

「…!

 

ねぇ、天元。しのぶさんが作った藤の毒?の作り方って、天元知ってる?」

 

「知らねぇよ。というより、あの毒は扱いが難しいから作れねぇよ」

 

「しのぶさんに聞いたら、教えてもらえる?」

 

「無理だろうな」

 

「何で?」

 

「あれは胡蝶が持ってる知識と技術で作った毒だ。

 

そう安々、作れ……なぁ梓」

 

「?」

 

「亡くなった親父さん、薬作れたりしてたか?」

 

「薬?多分作れたと思うよ」

 

「本当か?」

 

「うん。しのぶさんの所にある薬作る道具、父も持ってたから」

 

(それが本当なら、作れた可能性はあるな……となると、鬼の弱点である藤の毒はどこで知ったんだ?

 

鬼退治していたとしても……日輪刀が無いのにどうやって?あいつ等を退治するのは不可能だ。毒があったとしても……朝日が昇るまでの耐久戦か?)

 

「天元、お顔険しいよ?」

 

「あぁ、悪い悪い」

 

「何か考え事?」

 

「そんなところだ」

 

「天元、もう降りる。歩く」

 

「駄目だ。ちょこまか動くだろう」

 

「ブー」

 

 

 

 

  任務地……

 

 鬼を討伐し終え、一息付く宇髄達。駆け付けた隠達に指示を出す宇髄の裾を、梓は握り眠そうに目を擦りながら欠伸をした。

 

 

「眠いならその辺で寝てていぞ、運んでやるから」

 

「ううん……嫌だ」

 

(梓ちゃん、ちっちゃい子みたいで可愛い)

 

(眠いけど、音柱様から離れたくないんだろうなぁ)

 

 

 ウトウトする梓……寝惚ける目に、一瞬鬼の空気が映った。それに気付いた彼女は、宇髄から離れその空気の元を探した。

 

 

 

 

 疎らに見える鬼の空気を辿っていき空気が重くなった時、梓は刀を手に辺りを警戒した。次の瞬間、物陰に潜んでいた鬼が飛び出し、彼女目掛けて攻撃を仕掛けてきた。

 鬼の方を向いた梓は、無意識に刀で自身の腕を切り、そこから流れ出る血を鬼に浴びさせた。

 

 梓の血を浴びた鬼の視界が崩れ、何が起きたか理解していない鬼は、自身の溶けた手を見て絶叫した。

 

 

 その音は隠に指示を出していた宇髄の耳に入り、彼だけじゃなく隠はもちろん他の隊士達にも聞こえていた。

 

 

「何だ、今の」

 

「鬼はもう、討伐したはずだぞ」

 

「少し見てくるから、警戒怠るんじゃねぇぞ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 地面に座り込み、もがき苦しみながら消えていく鬼を、梓はボーッと眺めていた。

 

 

  呪われし血だ……

 

  それを使え……

 

  鬼を殲滅しろ……

 

  斬れ……

 

  斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ

  斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ斬れ




  斬らなくていい。
「梓」


 宇髄の声に我に返った梓は、振り返り駆け寄ってくる彼の方を向いた。彼女の前で、顔が溶け苦しむ鬼を見た宇髄は目を見開いて驚愕した。


(この鬼、体が溶けてる……何があったんだ?)


 こちらを振り返り、攻撃をしようとした鬼を宇髄は光の如く、頸を斬り落とし退治した。


「……梓、腕見せてみろ」

「平気だよ。痛みあるけど…(何か凄い眠い……)」

「血ぃ出てるから、蝶屋敷行って治療してもらうぞ」

「また沁みるの嫌だぁ」


 駄々を捏ねる梓の頭に宇髄は軽く拳骨を食らわせ、抱き上げると元の場所へ戻った。
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