産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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  数週間後……

 任務を終えた宇髄は、蝶屋敷に駆け付けると一目散に梓がいる病室へ向かい戸を開けた。薬の影響か、梓は静かに眠っていた。


(眠ってるのか……十二鬼月とやり合ったって聞いた時は、少しビックリしたが)


 純粋無垢な表情で眠る彼女の頬を撫でながら、宇髄は安堵の息を吐いた。その時戸をノックする音が聞こえ、顔を向けるとしのぶがカルテを持って中へと入ってきた。


「梓さん、今は薬が効いて眠っています。宇髄さんが来る少し前まで、ずっと起きていましたから」

「それ聞くと、体の方は問題ないみたいだな」

「えぇ、治療は良好。あと数日入院すれば任務に復帰できます」

「そうか……」

「宇髄さん、梓さんのことで少しお話が」

「分かった」


驚異的な治癒力

「梓さんですが、やはり他の方と少し様子が違います」

 

「違う?それが何か問題なのか?」

 

「いいえ。ただ、頭に入れといてほしいんです。

 

 

彼女が運ばれてからの三日間、ずっと体温が三十九度代の高熱でした。熱は徐々に下がっていきましたが、それと並行して傷口の修復が早かったんです。本来傷を負えば個人差はありますが、軽傷で約一週間、深傷で約六週間は掛かります。しかし梓さんの斬られた傷は深傷だったのに、たった数日で塞がっていました。

 

はっきり言って、梓さんは私達と違う体質かと思います。宇髄さん、あの子を引き取ってから今までの間、何か変わったことありましたか?」

 

「いや特に。あいつ体調崩したことは何回かあったが……

 

別にこれと言って、気になる症状も無かったし。俺が仕事してる間、見てる嫁達からもそういう話は全く……最終選別を突破した日も傷だらけだったけど、数日微熱程度出して寝てたくらいだ」

 

「そうですか……もしかしたら梓さん、育った環境で人並み外れた治癒力が身についてるのかも……?」

 

 

 二人が話している最中、診察室の戸が叩く音と同時に開いた。音に気付いた宇髄が振り向くと、そこには目が覚めた梓が、ヒョッコリと顔を出した。

 

 

「あ!天元!」

 

「あら?起きたんですか、梓さん」

 

 

 駆け寄ってきた梓の頭を撫でると、宇髄は彼女を連れ診察室を後にした。手を振る梓に、しのぶは返し一人にとなった部屋で、ホッと一息吐いた。

 

 

(……親子みたい)

 

 

 

 

 

  数日後……

 

 隊服に着替える梓。ボタンを止め綺麗に修復された羽織に片腕を通しながら、彼女は玄関へ行き式台に座り、草履を履き紐を結った。その時、外から話し声が聞こえてきた。

 

 

「なぁ、知ってるか?乙に上がった奴、十二鬼月が出た任務で殉職したんだってさ」

 

「嘘……そいつ、不運だなぁ」

 

「しかも、その任務他に三人いたみたいだけど、そのうちの二人怖気付いて鬼殺隊辞めたんだってさ」

 

「逃げたって事か。あれ?あと一人は?」

 

「その一人が、十二鬼月討伐しちまったんだってさ。噂だと」

 

「嘘ぉ!そいつ、めっちゃ出世じゃん!」

 

「でも倒せて当然らしいぜ。

 

その倒した奴、音柱様の継子だってさ」

 

「じゃあ納得。継子って俺達と比べて現役の柱から直々」

 

 

 言い掛けた瞬間に、梓は玄関ドアを思いっ切り開けた。開く豪快な音に話をしていた隊士達は体をビクッとさせて、玄関ドアを見た。こちらに向いた二人を、梓は鋭く睨んだ。

 

 

「あ……えっと」

 

「噂してる暇があるなら、柱の役に立て」

 

 

 それだけを言うと、梓は蝶屋敷を去って行った。

 

 

 

 

  産屋敷邸……集まる柱一同。

 

 

「宇髄、テメェの継子退院したのか?」

 

「何だよ、いきなり」

 

 

 突然話し掛けてきた不死川に、宇髄はダルそうに答えるがすぐに彼が、梓を助けてくれたことを思い出した。

 

 

「…ついこないだ退院して、任務に復帰してる」

 

「なかなか根性あるな」

 

「まぁな。そんじゃそこらのガキとは比べ物にならねぇよ」

 

「だろうな、庚で十二鬼月討伐している時点で、かなり優秀だな」

 

「お前に褒められるとは、アイツも成長したなぁ」

 

「あのガキ、どこで拾ったんだ?どっかの侍風情の所か?」

 

「山ん中……(お館様からの命だってことは、まだ伏せとくか)忍の父親と二人暮らしだった」

 

「忍?」

 

「その可能性が高い。断言できねぇが」

 

「今度任務で、継子使わせろ。どれだけの実力か少し見たい」

 

「気が向いたらな」

 

 

 

  とある森の中……

 

 川で山茶花と一緒に、梓は遊んでいた。足を滑られ尻を着いた彼女は、頭を振り水を掃きその頭の上に山茶花は留まった。山茶花と目があると、彼女は面白おかしく笑った。

 

 森を抜けた梓は、鼻歌を歌いながら近くの街を物珍しそうに歩いていた。そんな彼女の後を、気配を消してつける者が数名いた。

 

 

(嫌な空気が……三つ?四つ?

 

鬼殺隊の気配じゃない……)

 

 

 隙間の道へと曲がる梓……彼女の後を追っていた者達も、その角を曲がったがそこに梓の姿はどこにもなかった。慌てて捜す彼等を、屋根の上から梓は眺めていた。

 

 

(ここ最近、変な連中に目ぇつけられてる……天元といる時は、全然なのに。

 

天元に話してみようかなぁ)

 

 

 

 やがて日は暮れ、辺りは闇に包まれた……街の中を走る鬼を追い駆ける隊士達。彼等より先に追いついた梓は、飛び上がり鬼の頸を斬り落とした。呆気に取られている隊士の一人を梓は押し倒すと、背後から襲い掛かって来ていた鬼の頸を斬り落とした。

 

 

「油断しない!!早く位置に着く!」

 

「は、はい!」

 

(クソ、偉そうに)

 

 

 他の隊士達が自身の持ち場へ戻ると、梓は屋根へと飛び乗り上から街を眺めた。自身に襲い掛かる鬼の頸を難無く斬り落とした彼女は、辺りを見回した。

 

 

(鬼の空気が充満してる……あれ?別の空気……

 

この空気、昼間に感じた嫌な空気だ……)

 

 

 何かが飛んでくる気配を感じ取った梓は、体を後ろへ下げその攻撃を避けた。息を切らし振り返ると、そこに四人の人間がおり、その中に銃を構えた者が一人いた。

 

 

(何、あの筒……音鳴った?)

 

「来て貰うぞ、共に」

 

「何で?誰?」

 

「貴様と同じ、音羽だ」

 

「……え?」

 

 

 再び放たれる弾を、梓は瞬時に避けその勢いのまま屋根から降り、駆け足で彼等から逃げた。その様子を見ていた彼等は、一人が合図を出すとそこから姿を消した。

 

 

(……あいつ等、誰?

 

音羽って……同じ名前の奴が、いっぱいいるの?

 

でも父、そんな事一言も)

 

 

 襲ってくる鬼を討伐しながら、梓は走った。鬼に気を取られている時だった……足に弾が掠り梓はバランスを崩し、盛大に転んだ。痛む体を擦りながら、起き上がり刀の柄を握り姿を現す彼等を睨んだ。

 

 

「大人しくしていれば、怪我はしなかったのに」

 

(嫌な空気……本当に音羽?同じだったら、父と空気が)

 

 

 手を伸ばしてくるその者の手を斬り落とそうと、刀を抜こうとした時だった。伸ばすその手に、苦無が刺さり痛みから腕を引っ込めた者は、何かの気配を感じ取り振り返った。雲で隠れていた月が顔を出し、その明かりが辺りを照らし闇中から、宇髄が既に倒したであろう敵の仲間の傍に立っていた。

 

 

「人攫いとは、あんまり褒められねぇな」

 

「何だ貴様」

 

「そいつの連れだ。手ぇ出すんだったら、容赦しねぇぞ」

 

「……フン、貴様などここで」

 

 

 そう叫んだ矢先、暗闇から突如として鬼が現れ彼等を襲った。悲鳴を上げる彼の喉仏を嚙み千切られ、同時に鬼は宇髄の手で討伐された。呆気に取られている梓が鬼によりこと切れた四体の遺体を見つめていると、宇髄が目隠しするようにして、彼女の前に立った。

 

 

「派手に転んだな」

 

「アイツ等……!

 

アイツ等、音羽って!音羽って言った!」

 

「……」

 

「天元?

 

ねぇ、音羽って……」

 

「俺も数回聞いたことがある程度だ(流石に交流があったとは言えねぇ)。

 

けど、もう随分前に離散してる」

 

「……何で、離散したの?」

 

「さぁな」

 

「何で、今頃になって私を狙うの?」

 

「仲間集め……かもしれねぇな」

 

「仲間集め?何で?」

 

「考えられるのは、一族の復興だ」

 

「でもあいつ等、嫌な空気流れてた!

 

それに天元と一緒にいる時は、そんな空気流れてなかったし、そんな奴いなかった……単独の時は別だったけど」

 

「おそらく俺に警戒してたんだろうな(薄々感じてはいたが、やっぱり単独行動は危険だな…必ず、誰かと組ませるか)。

 

夜が明ける。残りの鬼、討伐するが行けるか?」

 

「うん」

 

 

 宇髄に応急手当てをしてもらった梓は、彼と共に夜の街を駆け鬼を討伐していった。




  産屋敷邸……

 縁側へ降り立つ鴉。そこに座っていたお館様は、降り立った鴉の首元を撫でた。


「梓の功績は、素晴らしいもののようだね……


音羽梓……?」


 蓮華を咥えて、お館様の前に降り立つ山茶花……傍に蓮華を置くと、山茶花は一礼し飛び立った。それと同時に、あまねが彼の元へ寄り傍に座った。


「あの鴉は……」

「山茶花だよ。梓の鎹鴉」

「その花は?」

「彼女が送ってくれたものだよ……」

「音羽様、気になるのですか?」

「父上から、昔話で聞いたことがあったんだ」

「お義父様から?」

「自然に流れる空気を捉えて、鬼を討伐していた忍がいたそうだ。

そして、かつて私達産屋敷家の護衛に就いていた」

「……耀哉様、まさか」

「これは運命だよ。私達の読みは当たったようだね。


あまね、天元を呼んでくれ。『音羽』について、調べてもらおうと思う。

そして、こちらでも調べよう」
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