産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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 頬を膨らませ、そっぽを向く梓……隣に座っていた宇髄は、書類を見ながら彼女の態度に軽く溜息を吐いた。


「お前、また他の隊士と喧嘩しただろう」

「あっちが悪い」

「悪かろうがなかろうが、隊律違反するな」

「あっちが悪い」

「梓!!」

「あっちが先に手ぇ出したんだもん!こっちはそれに対応しただけだもん!」

「階級は一応、お前が上だ。そういう奴に注意するのがお前の役目なんだぞ」

「役目も何も、あっちがチビだ継子だとか言って、言う事聞かないんだもん。年下のくせに偉そうにとか言うし……

天元から言った方が、よっぽど効果覿面」

「まぁそうなんだけどよ。次の任務、かなり危険な場所だから注意しろよ」

「ハーイ」

「いつまで機嫌損ねてんだ、とっとと治せ」

「だって……アイツ等と組むの嫌だ」

「嫌だと言っても、同じ穴の狢。少しは集団行動に慣れろ」


 そっぽを向き不機嫌そうな表情を浮かべる梓に、宇髄は呆れたようにして軽く溜息を吐いた。


隊律違反

  月夜が照らす森……

 

 鬼殺隊から逃げる三体の鬼。その後を宇髄と梓、彼等の後を隊士達が追い掛けていた。

 

 後ろを振り返り、自身を必死に追い掛けてくる隊士達を嘲笑いながら駆けていると、横の茂みから突如として現れた梓が、二匹の鬼の頸を斬り落とした。

 

 

「何?!どっから!!」

 

「こっから」

 

 

 後ろを気にしていた鬼の背後にいた宇髄は、刀を振り頸を斬り落とした。逃げていた鬼達を退治した梓と宇髄の元へ、追いついた隊士達は既に片付いている現場を見て呆気に取られていた。

 

 

「遅ぇぞ!テメェ等!!」

 

「す、すみません!!」

 

「ヘタレ」

 

 

 ボソッと言った梓の言葉を聞いた隊士は、殴ろうとした歩み寄ろうとしたが、それを慌てて別の隊士が引き止めた。同時に隊士達を怒鳴った宇髄が、彼女に拳骨を食らわせた。

 

 

「痛っ!」

 

「余計なこと言うな!!」

 

「あいつ等が!!(あれ?空気の流れが変わった……?

 

鬼の空気!!)天元!!鬼!」

 

 

 その叫び声と共に、梓の背後に突如として襲ってくる数体の鬼。振り返った梓は、持っていた刀で自身に襲ってくる鬼の頸を次々と斬り落としていき、彼女に続いて宇髄達も対処していった。

 

 

(何だこの数?!どっから湧いて出て来た!!)

 

(鬼は群れないはずなのに、何で?!)

 

 

 背を向け避けようとしない隊士を襲ってくる鬼に向かって、梓は苦無を投げ動きを封じた。その間に隊士達は、持っている刀で動けなくなった鬼の頸を斬り落とした。

 

 

「流石音柱様の継子!」

 

「スゲェ楽だ」

 

 

 その声を聞いた梓は鬼を斬り倒すと、隊士の背後に周り思いっ切り回し蹴りを食らわせた。

 

 

「梓!!何他の隊士に攻撃してんだ!!」

 

「こいつが悪口言った!」

 

「戦闘中だ!!私情出すな!!」

 

 

 襲ってくる鬼の頸を斬り落とす梓に、蹴られた隊士は宇髄の目を盗んで彼女を転ばせようとわざとぶつかろうとしたが、運悪くそれは別の隊士に当ってしまった。

 倒れた先は地面ではなく、森が広がる崖下だった……それを見た梓は、倒れていく彼の手を引き自身と変わらせ、彼の代わりに崖の下へと落ちた。

 

 

「梓ぁ!!!」

 

 

 宇髄の声が響く中、梓はそのまま崖下の森へ落ち木々に当たりながら着地した。地面に座り込み、頭についた落ち葉を落としながら、梓は木の幹に手を掛け立ち上がった。

 

 

(……足ぶつけたかな?

 

痛い……)

 

 

 崖に生えている木々と崖の切れ目を伝い、上へと登った。戻ってくると鬼は既に全て退治されており、その中宇髄は二人の隊士を叱責している最中だった。

 

 

「油断し過ぎだ!!舐めてんのか!!」

 

「い、いえ…そんな事は」

 

「年下だろうと、階級はアイツが上だ!!上司の言う事は聞け!!」

 

「すみません……」

 

(ここまで油断する隊士が出て来るとは……何とかしねぇと)

 

「天元!」

 

 

 呼ばれた彼は振り返り、そこに立っている梓の姿を見ると一安心したかのようにして息を吐いた。その様子に首を傾げた梓は、彼の元へ駆け寄った。

 

 

「体は平気か?どっか痛むか?」

 

「足ぶつけた。それ以外は平気」

 

「そうか……(所々、怪我してるな……胡蝶の所に連れて行ったほうが良さそうだな)」

 

「天元帰ろう、眠い」

 

「やっぱガキじゃん」

 

 

 ぼそっと聞こえてきた声に、梓は姿を消したかと思うとその言葉を発した隊士の尻を思いっ切り蹴り飛ばした。

 

 

「お、おい!」

 

「何すんだよ!!」

 

「ガキに負けてるくせして、何偉そうにしてんだよ!!」

 

「何だと!!」

 

「やめぇねか!!!」

 

 

 宇髄の怒鳴り声に、何かを言おうとした梓は口を閉じた。二人の頭を拳骨で殴り、そしてまた怒鳴り説教した。数時間の説教を終えた隊士は、他の隊士に支えられながら帰っていった。

 

 

「ったく……隊律違反するなって言っただろう!」

 

「躾し直しただけじゃん」

 

「テメェが言うな!!

 

集団で生活するって事は、気が合わない奴とも過ごさなきゃいけねぇんだよ」

 

「別にあいつとどうこうする気ない。

 

というより、他の奴等全然弱いじゃん。今日だって、鬼に追い付てなかったし、油断して怪我しかけてたし」

 

「まぁ、それは同意見だな」

 

「あんな覚悟で、よく鬼殺隊に入隊出来たね」

 

「運が良かったんだろう。

 

夜が明ける。蝶屋敷行って、足診てもらえ」

 

 

 そう言いながら、宇髄は梓を抱き上げその場を去っていった。

 

 

 

 

 

  それからしばらくしたある日……

 

 梓は炎柱・煉獄杏寿郎と彼の継子・甘露寺蜜璃、そして少数の隊士達と共に暗くなった街に集まっていた。

 

 街へ着いた煉獄に気付くと梓は彼の元へ駆け寄り、同時に煉獄は彼女に気付き振り返った。

 

 

「君か!宇髄の継子と聞いた時は、どのような子かと思っていたが、なかなか逞しい子だな!」

 

「(空気熱っ!この人…誰?)音羽梓です、今日はよろしく」

「きゃー!煉獄さん、この子誰ですかぁ!」

 

 

 突然抱き着いてきた甘露寺に、梓は固まってしまった。彼女の事などお構いなしに、これでもかと言うくらい、撫でまくった。

 

 

「甘露寺落ち着け!その子は今回共に戦う、音羽梓だ」

 

「え?!そうなの!?

 

こんな小さい子まで、鬼殺隊士なんて……」

 

(ふわぁっとしてる空気……何か、綺麗…というよりか……何だろう、このホワホワ)

 

「初めまして梓ちゃん。私は甘露寺蜜璃って言います。これからよろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

「今回はお姉さん頑張るから、梓ちゃんは安心して!」

 

(逆に心配……)

 

 

「ラッキー!音柱の継子じゃねぇか!」

 

「生き残れる!」

 

「柱もいるし、今回楽勝じゃねぇ?」

 

 

 そのような会話を耳にした梓は、沸々とした何かが体中を巡り獲物を捕らえたかのような眼光で、彼等を睨み怒鳴った。

 

 

「ガキに命預けんな!!」

 

「っ!」

 

「あ、梓ちゃん!?」

 

「自分の命も守れないなら、とっとと鬼殺隊なんて辞めちまえ!!」

 

「何だよ!!その言い方!!」

 

「年下だろう!!上の言うこと聞け!!」

 

「やめとけやめとけ。音柱の継子って以外価値のない奴なんだからよ」

 

「ちょ、ちょっと!それは」

「価値が無いというのは、どういう意味だ?!」

 

 

 今にも殴り掛かろうとしていた梓の前に、煉獄は立ち悪口を言う隊士に質問した。彼等はタジタジになりながら、口を籠らせた。

 

 

「話によると彼女は既に十二鬼月を討伐している。それのどこに価値が無いんだ?」

 

「それはその……」

 

「今から任務が始まる。そこで競い合えばいいのではないか?」

 

「……」

 

「さぁ、行くぞ!!」

 

 

 暗くなった街に徘徊する鬼達……その鬼を次々と、煉獄達は斬っていった。梓は建物の上から下にいる鬼達に向かって苦無を投げつけた。毒で身動きが取れなくなった鬼達を下にいる隊士達が次々と首を斬り落としていった。

 

 

「やっぱ楽だな、音柱の継子いると」

 

「噂本当だったな。『音柱の継子といると、楽勝』って」

 

 

 談笑する彼等に向かって、物陰に隠れていた鬼が突如として襲い掛かってきた。襲われる寸前、建物から降りてきた梓が、音の呼吸でその鬼の頸を斬り落とし後ろにいる彼等を睨むと、そのまま別の場所へと行った。

 

 

(悪口言うくせして、全然じゃん。

 

正直言って、ああいう奴等とはもう組みたくない……柱とだけでいい……

 

 

にしても、何でこんなに群がってんだろう……鬼って、群がらないんじゃなかったっけ?)




  頼む、この者を殺してくれ。

  頸を斬っても胸を刺しても死なない……何故だ…

  普通じゃない……私達では無理だ。

  未来に託す……必ず、音羽の名に懸けて



「!?」


 ハッと我に返った梓……道路の真ん中に立っていた彼女は、周りに漂う異様な空気を察知した。


(何この空気……他の鬼達とは違う。

十二鬼月の鬼でもない)


 何かが梓の横を通り過ぎた……その瞬間、頬が焼けるように痛くなり傷が出来た頬を抑えながら振り返った。そこには銃を構えた鬼がおり、鬼はすぐに弾を入れ替えると再び打ち、その弾丸を梓は刀で切り防ぐと距離を置き、腰に付けている鎖を二本の刀の柄に付けると、息を吸った。


「音の呼吸伍ノ型 鳴弦奏々」


 激しい爆発音を立てながら、刀を振り回した。打ち放たれてくる弾丸を、刀で全て弾き飛ばし鬼の前まで行くと首を切り落とし、同時に放たれた弾丸が、彼女の肩を掠った。


(痛ったぁ……

この程度の出血なら、問題ないけど……早く終わらせよう)


 その時、爆発音が街中に響き渡りそれと共に悲鳴が上がった。梓は建物の屋根に登ると、そこから駆け足で移動した。
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