産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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  数週間後……

 診察室でしのぶから診察を受ける梓……頬と額に貼ってあったガーゼを取ると、傷跡は跡形もなく綺麗に無くなっており、しのぶは少々驚いていた。


「残ると思っていましたが、綺麗に治ってますね」

「しのぶさんの薬、凄ぉ」

「私の薬というより、梓さんの回復力が凄いんだと思いますよ(跡が残っていても、おかしくない傷の深さだったのに……)」

「そうなのかな?」

「他の傷はもちろん、毒も完治していますしもう明日には退院して大丈夫ですよ」

「やったぁ!」

「でも、無理は禁物ですからね」

「はーい」


同胞

  殴り付けるような雨が降る外……

 

 その中を、梓は耳を手で塞ぎながら駆けていた。しばらくして、藤の花の家紋家に着いた彼女は引き戸を開け中へと入った。

 

 

「隊士様!まぁ、そんなに濡れて」

 

「雨が凄い……」

 

「すぐにお風呂へ!風邪を引いてしまいます!」

 

 

 用意されていた手拭いである程度の水を拭きながら、梓は女将につられ風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

  硝子窓に叩き付ける雨……

 

 その様子を浴衣に着替えた梓は、用意された餡饅を口にしながら窓を眺めていた。

 

 

「凄い雨……雷鳴って欲しくない」

 

「カァ!」

 

「山茶花も雨嫌だよねぇ」

 

「濡レルカラ嫌デス!」

 

「雷鳴らきゃ、雨は好きなんだけどねぇ……?」

 

 

 その時、下の玄関の引き戸が開く音が聞こえ、梓は気になり襖を開け階段傍へ行った。そこから聞こえてくる女将と入ってきた者達の会話に、彼女は聞き耳を立てた。

 

 

「すみません、生憎本日は満室になっておりまして」

 

「げっ、間近よ」

 

「濡れた体を乾かせるかと思ったが……」

 

 

 聞き覚えのある声と見覚えのある空気に、梓は階段をソっと降り玄関を覗いた。そこにいたのは、雨でずぶ濡れになった煉獄と不死川だった。

 

 

「実弥さん!煉獄さん!」

 

「音羽!」

 

「テメェ、何でいんだよ」

 

「近くで任務があったから。

 

実弥さん達も?」

 

「合同任務でな!討伐が終わり、帰路についた途端この雨だ」

 

「泊まろうにも、満室みてぇだし」

 

「……部屋泊まる?」

 

「?」

 

「今日天元いないから、部屋私一人だよ!」

 

「ならお言葉に甘えて!」

 

「うるせぇのがいねぇなら、まぁいっか」

 

「すまないが、この子の部屋に布団を頼む」

 

「は、はい」

 

 

 煉獄に頼まれ、女将はすぐに部屋へと向かった。その間、梓は二人の刀を受け取り先に部屋へ戻った。

 

 

 

 

  降り続ける雨……

 

 眠る梓達の部屋を、照らすようにして稲光が差し込み、雷が鳴り響いていた。雷の音と光で起きた梓は、半泣きしながら羽織を手に起き上がった。鼻を啜りながら、宇髄がいないのを再確認すると押入の襖を静かに開け中に入ろうとした。

 

 その時、フワッと体が浮いた。半泣していた梓は降りようとしたがその瞬間、雷が鳴り思わず何者かの肩に頭を置き引っ付いた。優しく背中を擦られ、次第に眠気が襲い欠伸を一つすると、瞼を閉じ眠った。

 

 

 眠った梓を、自身の布団に寝かせた不死川は、軽く溜め息を吐くと横になり眠りについた。

 

 

 

「すみません!急患です!」

 

 

 明け方、突如として玄関戸を勢いよく開く音と共に、怪我人を支えた隊士達が入ってきた。その音に、眠っていた不死川と煉獄は目を覚まし、起き上がると互いを見合い部屋を出て行いった。

 

 

 下へ降りると、一室を行き来する隠達がおり自分達に気付いた隠が駆け寄ってきた。

 

 

「炎柱様!風柱様!ご滞在でしたか!?」

 

「昨日、この近くで大物の討伐があったからな」

 

「怪我を負った隊士は?」

 

「今、手当てをしている最中です。

 

毒を負わされているようで、先程隠が持参している解毒剤を打ってもらい何とか……」

 

「鬼は?」

 

「それがまだ……

 

不覚にも、逃してしまいました」

 

「……不死川」

 

「分かった。

 

後で状況報告しに、上の部屋に来いって部屋にいる奴等に伝えておけ」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

  まだ雨が降り続ける外……

 

 雨脚の音を響かせた部屋で、軽傷を負った数人の隊士が不死川達の部屋に入り、昨晩出会した鬼について報告していた。

 

 

「子供の鬼……」

 

「すばしっこく、我々では追いつけず」

 

「油断した隙を狙われ、二人が怪我を」

 

「話は分かった。

 

鬼に関しては、これから俺達柱で討伐する」

 

「し、しかし」

 

「怪我してんだ、引っ込んでろ。

 

テメェ等が来た所で、足手まといにしかならねぇんだ」

 

「……」

 

 

 立ち上がる不死川と煉獄が部屋を出て行き、二人の後を話を聞きながら刀を持ち待機していた梓はついて行った。ついて行く彼女を見て、隊士の一人は慌てて下へ降りた。

 

 

「か、風柱様!炎柱様!

 

そ、その隊士は……」

 

「ん?連れて行く予定だ!」

 

「コイツは一応、音柱の代わりだからな」

 

「実弥さん、代わりじゃないよ。継子だよ。

 

あと、一応って何?歴とした天元の継」

 

 

 二人に刀を渡しながら発言する梓を、身支度を整えた煉獄は抱き上げ先に出て行き、不死川は隊士との話を切り上げ、用意されていた傘を差し雨が降る外へと出た。

 

 

「太陽出てなければ鬼って出現するんだね」

 

「そうだな」

 

「しっかし、よく降る雨だなぁ」

 

「刀って雨に弱いんじゃないの?」

 

「その通りだ。

 

現場に着くまでに止んでくれれば」

 

 

 鳴り響く怒雷……足を止める二人の間を歩いていた梓は、煉獄の羽織の下に入り隠れた。

 

 

(……やっぱりか)

 

「音羽は雷が苦手か?」

 

「大きい音、嫌い」

 

(夜中に押入行こうとしてたからなぁ……)

 

 

 ざーざー降る雨の中、怪我を負った隊士達が襲われた場所へと三人は辿り着いた。鬼の空気を見つけた梓は刀を抜こうと柄を握るが、動きを見つけた瞬間、不死川と煉獄の制服を後ろへ引っ張り倒した。

 

 仰向けに倒れる二人の頭上スレスレに、鬼が放った攻撃が背後に生えていた木々に当たった。

 

 

「鬼見っけ!」

 

「攻撃が早いな!全く見えなかった!」

 

「目で追うのがやっ」

 

 

 飛ぶ苦無が鬼の腕に刺さり、動きが止まった。腕に刺さる苦無に意識がいっていた時、鬼は三人に囲まれ逃げ場を失った。

 

 素早く振る刀……次の瞬間、鬼は飛び上がりそこから移動し逃亡した。

 

 

「あ、逃げた!待てぇ!」

 

 

 逃げる鬼……息を切らし辿り着いたのは、廃れた神社だった。そこに建てられていた小さな社に身を隠し、鬼は中から外をこっそり覗いた。遅れてきた梓は、刀を手に辺りをキョロキョロと見回した。彼女の後に不死川と煉獄が着き、二人に気付いた梓は駆け寄った。しばらく何かを話した後、三人はそこから姿を消した。

 

 完全に気配が消えたのを確認した鬼は、静かに社の戸を開け誰もいないのを確認すると、外へ出た。

 

 

「炎の呼吸弐ノ型 昇り炎天」

「風の呼吸壱ノ型 塵旋風・削ぎ」

「音の呼吸参ノ型 木の葉の囁き」

 

 

 三つの呼吸が、鬼の頸を斬り落とした……何が起きたか理解出来ない鬼は、自身に背を向けていた不死川目掛けて、口から何かを吹いた。

 それに気付いた梓は、不死川に足払いし避けさせた。吹いた何かは建物の壁に突き刺さり、鬼は悔しそうな表情をしながら塵となり消滅した。

 

 

「不死川、大丈夫か?」

 

「何とか(音羽が足払いしてくれなきゃ、危なかった)」

 

「毒の矢みたい。

 

怪我して運ばれた隊士、これにやられたんじゃないかな」

 

「だったら、救護班に持っていったほうがいいな」

 

 

 そう言いながら、不死川は矢を抜き取り先端を梓から受け取った布で巻いた。その時、ゴロゴロと雷が鳴り響き音に驚いた梓は、身を縮込ませながら不死川に引っ付いた。

 

 

「雨脚がまた強くなってきたな」

 

「とっとと屋敷に戻るか」

 

 

 社から外へ出る三人……その時、梓の目に鬼の空気と別の空気が混ざり合っているのが映り、流れてくる方向を見た。精神を研ぎ澄ましそちらに意識を集中すると、微かだが鋼がぶつかり合う音が聞こえてきた。

 

 

「……戦ってる」

 

「?」

 

「誰かが鬼と戦ってる!」

 

「?!」

 

「見てくる!」

 

 

 刀を抜き、梓は森の奥を駆けていきその後を二人は追いかけて行った。駆けていく中、茂みから出た梓の目の前に何かから逃げる鬼が、自身に迫っていた。その鬼に彼女は、咄嗟に刀で鬼の胴体を斬り、倒れる鬼に目を向けた。

 

 上半身から再生する下半身を見て、頸を斬ろうとした時だった。霧のように、スッと現れる別の空気……梓はすぐに振り返った。

 

 

 鬼の面を着け、黒い服で身を包んだ者……

 

 

「……鬼狩りか」

 

「……」

 

 

 こちらに意識がいっていた時、下半身を再生した鬼が立ち上がり、梓目掛けて攻撃した。振り下ろした爪で腕に傷を負った梓は、振り返り際刀を振り同時に別の刀が振られ、二本の刀は鬼の頸を斬り落とした。




 梓を見つめる者……彼女に手を伸ばした瞬間、手を掴まれ阻止された。顔を上げると、手を掴む煉獄と梓の前に立つ不死川が立っていた。


「俺達の連れに、何か用か?」

「……」

「…何か喋ったらどうだ?」


 その時、スッと彼は消えた……二人が戸惑っていた時、彼等の前に梓が立った。気付くと、彼女の前に刀を振り下ろそうとする彼が立っていた。


(いつの間に!?)

(全く気配を感じなかった……)

「……斬っちゃ駄目。

鬼狩りだよ?」

「音羽?」


 彼を見つめる梓の右目が、一瞬鬼の目へと変化しそれを見た彼は、刀を下ろし鞘へと戻した。


「……同胞か」


 誰に言うわけでも無く、その一言を言うと彼は雨が降る森の奥へと姿を消した。


「……何だったんだ?野郎は」

「音羽、知り合いか?」

「知らなーい……(不思議な空気だったなぁ)」
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