産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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  暗い音のない世界……

  時折聞こえる、雫が落ちる音……



 地面に広がる夥しい血……


 その中に、梓は口から血を流し倒れていた……


黒いもの

  山奥……

 

 森にひっそりと建つ廃れた城……そこへ、宇髄と不死川が到着した。

 

 

「ここか……」

 

「音羽を含む何人かの隊士を送り込んだが、全員消息を絶った城」

 

「……」

 

 

 

  数日前……

 

 

『は?連絡が付かなくなった?』

 

 

 食事処でご飯を食べていた不死川の所へ、宇髄は山茶花を連れてやって来た。

 

 

『一月前に、北西の方に鬼の目撃情報があって、そいつの住処だと思われる城が発見された。

 

何人か送り込んだが連絡が途絶え、梓を含むもう一部隊送り込んだんだ』

 

『その部隊も消息を絶った……音羽の鎹鴉が来たのは』

 

『四日前だ……はっきり言って、梓はその辺の奴等とは違う。俺の優秀な継子だ。

 

その梓が連絡を断つってことは』

 

『下弦か、もしかしたら上弦』

 

『お館様からは既に、俺とお前さんに任務が下ってる』

 

『テメェが来る少し前に、爽籟から聞いた』

 

 

 

 

 息を殺しながら、城へ侵入する宇髄と不死川……異様な空気に彼等は警戒し、宇髄は先を歩き辺りを見回しながら歩いた。城内には、既に事切れた多くの人の遺体が転がっており、その中には鬼殺隊の剣士達も紛れていた。

 

 

「一撃でやられたみてぇだな、傷からして」

 

「心臓を一突き、頸を一突き……派手に頸撥ねられた遺体もあるな」

 

「見た所、音羽の遺体はないな」

 

「死んでないとすれば、アイツどこに隠れてんだ?」

 

「俺等が来てるの、気付いて出てきても……?」

 

 

 足に何かが当たり下を向くと、刃毀れを起こした梓の刀が一本転がっていた。

 

 

「……宇髄、早く見つけた方がいい。

 

刀が落ちてる」

 

「さっきから気配探してるが、全く感じない……(ここにいないのか、もしくは)」

 

 

 その時、宇髄の耳に何かが移動する音が聞こえた……振り向いた瞬間、目の前に光る何かが迫っており、宇髄は咄嗟に刀でそれを弾き防いだ。それはパリーンと割れる音を響かせ、パラパラと地面に落ちた。

 

 

「何だ?」

 

「硝子見てぇだな(かなり鋭い……これでここにいる奴等を)」

 

 

「ようやく、柱がやってきた」

 

 

 声がする方を振り向くと、そこには見覚えのある羽織を肩に掛けた『下弦 肆』を目に刻まれた鬼が立っていた。

 

 

「待ち遠しかったわぁ。

 

全然柱を送り込んでくれなくて……まぁでも、術を掛けたあの子供は柱と同じくらい強かったかしら」

 

「それはテメェの肩にある羽織の持ち主か?」

 

「そうそう!良く分かってるじゃない!

 

 

かなり手強かったけど、私の血鬼術に掛かったら足が止まって……そのまま一突き」

 

 

 羽織を頬ずりする鬼に、宇髄と不死川は間髪入れず攻撃した。鬼は軽々と避け、羽織を投げ捨てると手を動かした。次の瞬間、二人目掛けて硝子の破片が飛んできた。

 

 

「音の呼吸肆ノ型 響斬無間」

 

 

 ヌンチャクのように刀を振り回し、飛んでくる硝子を全て叩き割った。

 

 

「あの子と同じものを使うのね……

 

あの小娘も、私の血鬼術をすぐに見抜いて……今のような反撃をした。だが、判断が遅かった隊士は全員死んだけどね」

 

 

 

 

  暗い空間……雫が落ちる音が響いた……

 

  水の上を歩く音が聞こえ、その音はある場所で止まった。

 

 

 

  仰向けに倒れる梓……

 

 ゆっくりと息をする彼女の頬に触れながら、音の主は膝を付きしゃがんだ。

 

 

『梓、君の仲間が助けに来ているよ……さぁ、もう起きなさい』

 

 

 

 

 

 次々と放ってくる血鬼術を、宇髄は音の呼吸で防ぎその隙を狙い不死川は、風の呼吸を放とうと刀を振り上げた。その瞬間、刀は何かにぶつかり攻撃が塞がれてしまった。

 

 

「クソ!見えねぇ攻撃で、刀が振れねぇ!!」

 

(飛んでくる硝子に、色があれば不死川にも見え)

 

 

 何かが顔に飛びついた……それは不死川の顔にも付き、二人の暗闇に慣れた目に、赤黒く光る何かが飛んでくるのが見えた。

 

 

「な、何だ!?この血!

 

 

熱い……熱い!!」

 

 

 突然鬼の一部が赤く燃え出し、その火目掛けて不死川と宇髄は同時に刀を振り下ろした。すると鬼の背後から、何かが姿を現し横に振る刀が鬼の首に刺さった。振り向く鬼の目には、右目が鬼の目になった梓が、刀を振っている姿だった。

 

 

「な、何で?!!私の血鬼術が掛かってるはず」

 

 

 言い切る前に頸は撥ねられ、同時に宙に浮いていた硝子が効力を失い、床に落ち割れた。その破片の上に梓は落ち力無く倒れ、宇髄は彼女の元へ寄った。

 

 

「音羽は?」

 

「息はある……かなり酷い怪我だがな。

 

頸と腕に切傷、腹と足に刺し傷……?」

 

 

 目を開ける梓……目をグリグリと擦りながら、起き上がった。

 

 

「起きたか?」

 

「……あれ?天元?

 

 

何で?」

 

「お前含む送り込んだ隊士達から連絡途絶えたから、柱が派遣されたんだよ」

 

 

 ずっと目を擦る彼女を見て、宇髄はその手を握り行為をやめさせるが、振り払いまたを擦り始めた。

 

 

「擦るな、悪化するぞ」

 

「だって変なの目に映るんだもん」

 

「変なの?」

 

「そういやあの鬼、こいつ血鬼術か何かかけたって言ってなかったか?」

 

「あー、確か言ってたな。

 

だから、目を擦るな!!」

 

「変なの映るから嫌だ!!!」

 

「変なのってどういうのだ?」

 

「黒いなんか……時々赤いのが見える」

 

「何だそれ」

 

「これ以上擦るな。蝶屋敷連れて行くから」

 

「……抱っこ」

 

「ヘイヘイ」

 

(甘やかすなよ)

 

 

 宇髄に抱っこされた梓は、緊張の糸が切れたようにして彼の服の裾を握りそのまま眠ってしまった。不死川は地面に落ちていた羽織を拾い、彼女に掛けてやった。

 

 

「寝やがったな」

 

「気が抜けたんだろうよ。

 

しっかし長い期間、飲まず食わずでよく生きられたな」

 

 

 いつの間にかボロボロとなっていた廃城から出ると、既に駆け付けた隠達がおり彼等に不死川は指示を出した。宇髄はその間、隠に眠っている梓を渡し、運び出されてくる遺体を見つめた。

 

 

「かなりの数だな……」

 

「あぁ」

 

「俺はこのまま、梓連れて蝶屋敷に行く。

 

 

不死川、あと任せていいか?」

 

「おう」

 

 

「梓さん、それ以上擦っちゃ駄目ですよ!!」

 

 

 隠の大声に、宇髄はすぐに彼等のもとへ駆け寄った。眠っていたはずの梓は起きていたが、ずっと目を擦っておりそれを隠がやめさせるようにして手を抑えるが、振り払いまた擦った。

 

 

「擦り過ぎると、目に傷が」

 

「だって変なの映るんだもん!!

 

これヤダァ……」

 

「目ぇ閉じてる時は映らねぇのか?」

 

「うん……」

 

 

 隠が持っていた手拭いを手にした宇髄は、それを彼女の目に巻き目隠しをした。目を塞がれた梓は、目に巻かれた手拭いに触れようとしたが、すぐに宇髄に抱き上げられた。

 

 

「じゃ、あとは頼んだぞ」

 

「あぁ」

 

「実弥さん、帰んないの?」

 

「事後処理だよ」

 

「天元」

 

「何だ?どっか痛むか?」

 

「……腹減った」

 

「……途中で何か買ってやっから」

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