産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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  長屋が並ぶ街……

 集合地に到着した梓はずっと、縞模様の羽織を着た隊士を見つめていた。その隊士の首には、白蛇が巻き付いており、キラキラした目で白蛇を見ていた。


(白蛇……こんな間近で見たの初めて!

白鹿とかなら、遠くから見た事あるけど……白蛇、初めて!)


 興味津々に梓は、白蛇に向けて指を差し出そうとするが、白蛇の隊士がこちらに振り返った。


「何だ?」

「……白蛇」

「それがどうかしたか?」

「……触りたい」


 ジッと見つめる梓に、隊士はプイと視線を反らした。彼とは裏腹に蛇は、彼女の方をジッと見つめ差し伸ばす指をカプッと甘噛みした。


「あ!噛んだ!」

「!?」


「遅くなった」

「あ!天元!」


 着いた宇髄の元へ、梓は駆け寄り彼に飛び付いた。飛び付いた彼女を撫でながら、宇髄は隊士の元へ歩み寄った。


「よぉ伊黒、今回はよろしく頼むな」

「宇髄か」

「天元、この人誰?」

「先日柱に昇任した」

「蛇柱・伊黒小芭内だ。

して、貴様に懐いているその子供は?」

「俺の娘」

「……」

「そんな目で睨むなよ、冗談だ冗談。


継子の音羽梓だ」

「継子?

ではコイツか。なかなか面白い噂を聞いていたから、どのような奴かと思ったが……?」


 羽織を引っ張られ、伊黒がそちらに目を向けると、自身の頭に白蛇を乗せた梓が嬉しそうに指差していた。


「白蛇が頭乗った!」

「……」

「白蛇に名前あるの?」

「……鏑丸だ」


幸運の白

 寝静まる夜の街……提灯を手に警備する一般隊士達。彼等を屋根から宇髄達は見下ろし、辺りを警戒した。

 

 

「この街に、下弦の鬼が潜んでいると報告を受けたが、他の隊士達は何をやっているんだ?」

 

「目撃した隊士の話だと、飛び道具を使う鬼だったらしい。

 

そのせいで近づけず、そのまま」

 

「雑魚が」

 

「俺等はあっちを見てくるから、ここ頼んだ」

 

「承知した」

 

「行くぞ」

 

 

 傍にいた梓に声を掛け宇髄は移動し、別の区画へ着くと辺りを見た。

 

 

(こっちは特に問題なさそうだな……)

 

「ねぇ天元」

 

「ん?」

 

「さっき言ってた、飛び道具ってどんなの?」

 

「弓矢の事だ。他にもあるが」

 

「弓矢……!

 

天元!頭下げて!」

 

 

 宇髄が頭を下げた時、彼の頭上を矢が飛んだ。放たれた方向を見ると、弓を構える一体の鬼が立っていた。

 

 

「(あれか!?)他の隊士に、警戒態勢取るよう伝えろ!」

 

「分かった!」

 

 

 刀を手に宇髄は鬼の元へと向かい、梓は下へ降り警備する隊士達の元へ行った。

 

 

 

  街路へ降りる鬼……

 

 そこへ宇髄が着き、躊躇無くして刀を振り下ろした。鬼は自身の手から、槍を作り出しそれで彼の刀を受け止めた。

 

 

「……鬼狩り…柱か」

 

「流石下弦、反応が早ぇなぁ」

 

「……忍か。

 

まだ、生存していたのか」

 

 

 そう言いながら、鬼は懐から苦無を下から振り上げた。寸前で避けた宇髄は刀を振り下ろすが、鬼は難なく避け彼から距離を置き、瞬時に鬼の背後へ回り、音の呼吸で頸を斬ろうとするが、その刀が見えていたかのように刀を素手で食い止めた。

 

 

(見えていたのか?!)

 

「貴様の動きは、お見通しだ。

 

我は呪われた存在」

 

 

 斬り落とされる鬼の腕……刀を振り下ろす梓が、宇髄の前に現れた。

 

 

「まだいたか……集まった所で…?!」

 

 

 自身を見る梓に、鬼は目を見開き驚愕した……そして、人間だった頃の記憶が追想した。

 

 

「まだ続いていたか…」

 

「?」

 

「(違う……さっきと空気が)天元、一旦距離」

 

 

 言おうとした瞬間、梓は自身に突いてきた槍を刀で受け止め、もう一本の槍を素手で握り止めた。

 

 

「梓!!」

 

「貴様も呪われた存在。

 

その中に流れている血は、私と同等のもの!!」

 

 

 受け止めていた槍を地面へ払った梓は鬼から離れ、彼女と入れ替わるかのようにして、宇髄が前へ出た。

 

 

「柱に用はない!!あるのは、その小娘だけだ!!!」

 

 

 一瞬で梓の前に来た鬼は槍を突いた。脇腹を掠り、彼女は音の呼吸で鬼を攻撃し懐から出した苦無で頸を刺した。

 

 

(……コイツ…

 

何で……何で父と同じ動きを)

 

 

 

  遠い記憶……

 

  山の中、父と稽古していた……

 

  耳にタコが出来るくらい、父は言っていた……

 

 

  『必ず、頸を狙え』

 

 

 

 浅く息をした梓は、刀の持ち手を変え片足を後ろへ引き、構えた。こちらを振り返っていた宇髄は、彼女のその構え方を見て一瞬、別の人物と重なって見えた。

 

 

 鉄が叩き合う音と衝撃波が街全体に響き、その波動は別区画で別の鬼を相手にしていた伊黒と鏑丸にも感じていた。

 

 

(何だ?鬼が出現したか?)

 

「蛇柱様!

 

向こうを警備していた隊士からの連絡で、下弦の鬼が出現したそうです!」

 

「戦闘が始まったと、先程鴉から」

 

「お前達は住民の避難誘導しろ。

 

そのまま退却だ」

 

 

 他の隊士に指示を出し、伊黒は鴉に案内されその区画へと向かった。

 

 

 

  鬼と激闘する梓……

 

 突いてくる槍が、体に掠り傷が出来ていた。その様子を刀を手に立ち往生する宇髄が、二人の激闘を眺めていた。

 

 

(駄目だ……隙が無ぇ……

 

今入ったら、梓の音を崩す。それより、何でアイツあの鬼の動きを把握できてんだ……)

 

 

 

 その時、同時に突いた二本の槍が刃毀れを起こしていた梓の刀を掠り、彼女の頸と腹部を刺した。血を出し体勢を崩した彼女の首根っこを掴んだ宇髄は、後ろへ投げ飛ばし入れ替わるようにして鬼に攻撃した。

 

 

 地面に転がり倒れた梓は、急に咳き込み血を吐いた。息を切らし、フラフラと立ち上がりながら戦闘する鬼の背後へ回った。

 

 

 

「音の呼吸陸ノ型 花鳥風月」

「音の呼吸肆ノ型 響斬無間」

 

 

 爆ぜる音と草花が揺らぐ音、鳥の鳴き声が響く中で鬼の頸は斬られた。鬼は最後の力を振り絞り、槍を梓の脚を突き刺しそのまま塵となり消えた。

 

 

「梓!!」

 

 

 地面に尻をつく梓の元へ、宇髄はすぐに駆け付けた。彼女の脚に突き刺さっていた槍は消え、そこから血が流れており、すぐに袴を破り傷を見た。

 

 

(毒に侵されてる……だったら、首と腹もか)

 

 

 懐から解毒薬を出し、宇髄は梓の口に入れた。それから間もなく、救護班が駆け付け彼等と共に伊黒も到着した。

 

 

「被害は最小限だが……下弦相手に、何を梃摺った」

 

「ちょっとな。

 

伊黒、悪いが少し梓の傍にいてくれ」

 

 

 そう頼み、宇髄は駆け寄ってきた隠の元へ行った。壁に寄りかかり足と腕に包帯を巻き座る梓の元へ、伊黒は歩み寄り膝を付いた。

 

 

「かなり酷い傷だな」

 

「……死人、出た?」

 

「いや、出てはない。建物が少し破損しただけだ」

 

「よかった……

 

今回被害が最小限なのは、伊黒さん居たからだ」

 

「俺がいたからなんだ。俺がいた所で、何も出来ていないぞ」

 

 

 手を伸ばす梓の手に、伊黒の首に巻き付いていた鏑丸が頭を伸ばし、指先を舌で舐めた。

 

 

「伊黒さん、鏑丸連れてるから。

 

父がよく言ってた……

 

 

白い生き物は、神の使いの目印。だから、山とかで白い生き物に会うと……幸運が…巡るって……」

 

 

 そう言い終わると、梓は伊黒の羽織を掴みそのまま寝息を立てた。その行為に固まっている彼の元へ、用を終えた宇髄がニヤニヤしながら歩み寄った。

 

 

「あら小芭内ちゃん、うちの娘に懐かれましたね〜」

 

「黙れ!貴様、早くどうにかしろ!」

 

「そうしたいの山々なんだけど、俺この後別の任務入ったからそっち行かなきゃいかんのよ……

 

つう訳で、頼んだ」

 

 

 そう言って宇髄は一瞬でその場を去った……イライラする伊黒に、現場処理をする隠達はずっとオロオロしていた。

 

 

 

 

  一週間後……

 

 縁側でシャボン玉を吹く梓の元へ、彼女の様子を見に伊黒がやって来た。

 

 

「あ!伊黒さん!」

 

「体はもういいのか?かなり重傷だったはずだが」

 

「平気!あとは、足の傷口が塞がるの待つだけ」

 

 

 自身に寄ってきた鏑丸に、梓は裏山で摘んだであろう木苺を差し出した。鏑丸はニオイを嗅ぐとカプッと木苺を咥え、その様子に梓は嬉しそうな表情を浮かべた。そんな彼女を見て、伊黒は微笑を浮かべた。

 

 

「そういえば伊黒さん」

 

「?」

 

「何で鏑丸連れてるの?鴉いるのに」

 

「鏑丸は俺の目の代わりだ」

 

「目ぇ見えてないの?」

 

「もともと弱視でな」

 

「じゃくし?」

 

「あまり見えていないという意味だ」

 

「それで柱……凄い!」

 

 

 目をキラキラさせながら言う梓に、伊黒は何も言わずそっぽを向きながらも梓の頭に手を置いた。




  数日後……

 機能回復訓練を終えた梓が病室へ戻ると、そこには書類を手にした宇髄がいた。


「あ!天元!」


 彼の元へ一目散に駆け寄り、梓は飛び付いた。飛び付く彼女を抱き上げ、頭を雑に撫でた。


「思ったより、元気そうだな」

「全然平気!もう少ししたら、任務復帰だって」

「ならよかった。


梓、こないだの十二鬼月について聞きたいことがあるんだ」

「なぁに?」

「あの鬼、お前さんの知り合いか?」

「知らない」

「じゃあ何で、アイツの動きが分かった?」

「……同じだった」

「?」

「アイツの動き、父と同じ動きだった……だから、分かった」

「親父さんと同じ?」

「全部ってわけじゃない……何だろう。

基礎が同じって言えばいいのかな……だから、次に何の攻撃が来るか分かった」

「……そうか(だとしたら、あの十二鬼月はこいつの親族、または同じ家系)」

「ねぇ天元、あの鬼が言ってた『呪われた存在』って、何?」

「……さぁな。

お前さんを、人間だった頃に会った誰かと見間違えたんだろうよ」
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