産屋敷家に仕えた一族 作:アサヒ
街中に並ぶご飯処で昼食を食べひと息つく宇髄と、彼の向かいに座り最後の一口を頬張る梓がいた。
「ここにいたか」
その声に、宇髄が向くと店に不死川と伊黒が入ってきた。
「よぉ、お二人さん」
「食事中だったか」
「今食い終わって休憩してるところだ。
どうかしたか?」
「率直に言う。
音羽を貸せ」
「……ヤダ」
ニヤけながら答える宇髄に、不死川は青筋を立て握り拳を作り今にも殴りかかろうとした。
「不死川、抑えろ」
「実弥さん、お顔また怖い。
天元、話だけでも聞きなよ。どうせこの後任務無いし」
「仕様がねぇ。可愛い梓の頼みだからなぁ」
「テメェの耳に着いてる飾り、引き千切るぞ」
「おー怖い」
席に着き、注文した軽食を食べながら不死川は今受け持っている任務について話した。
「今引き受けている任務の鬼が、どうも見つからねぇんだ」
「探し方が悪いんじゃねぇの?」
(この野郎!!!)
「天元、須磨達にしばらく会えてないからって、意地悪するのはよくないよ」
梓の言葉に、宇髄は飲んでいたお茶を吹き出した。吹き出す彼とは裏腹に、梓は店員が運んできたあんみつのさくらんぼを鏑丸に与え、自身は美味しそうに白玉を口に頬張った。
「梓、テメェ!!!」
「どれくらい会ってないんだ?」
「三月」
「長えな」
「帰れるかと思ったら、緊急任務が入って帰路につけず」
「テメェもか?」
「私は一月前に一回帰った!」
「柱と一般を一緒にすんな!!」
「一般でも甲だもん!
ちなみに一月前までずっと冨岡さんと一緒だった」
「アイツと?」
「よく持ったな」
「髪の毛弄って遊んだ」
(遊ばれてんな)
「本題戻すぞ!
他の隊士達にも探させてるが、一向に見つからねぇ」
「俺も手伝っているが、鬼を見つけたかと思うと逃げられその後行方知れず」
「場所は既に絞られてる。
そこで」
「梓を……なるほどねぇ」
「実弥さん達の任務行けばいいの?」
「そうだ」
「行く!」
「だそうだ」
「決まりだな」
森に集まる数人の隊士……しばらくすると、不死川と伊黒に続いて、梓が集合地へ到着した。頭に鏑丸を乗せながら、二人の周りを梓は駆け回り、その光景に既に到着していた隊士達はホッコリした。
「以前から探している鬼を、今日という今日は見つけ出し速攻始末する……いいな?」
「しかし、もう一月も探してますが手掛かりは零に等しいです」
「見つけて追い掛けても、どこかへ見失ってしまいますし……」
「その為に今回は、こいつにも手伝ってもらう事にした」
そう言って不死川は、梓を見た。彼女の姿を見た途端、隊士達は顔を引き攣らせながら、目を逸らし始めた。
「か、風柱様、その子は確か……」
「お、音柱様の継子……ですよね?」
「それがどうした?」
「いや、だって……」
「ねぇ……」
ヒソヒソと話し始める隊士達を見て、梓は顔をムッとし、懐から爆薬丸を一つ取り出すと、それを隊士達の足元へ投げ付けた。突然起きた爆発に驚いた隊士は、数人尻餅をついた。
「油断大敵」
「この!!」
「油断し過ぎだ!!テメェ等!!
相手の動き見てれば、見抜けただろうが!!」
「!!」
怒鳴られた隊士達は、体をビクつかせ身を縮込めた。他の隊士と目が合うと、梓はフンと言わんばかりにそっぽを向いた。
「お前達がとっとと鬼を討伐すれば、風柱が他の柱に、不要に頭を下げずに済んだ。
分かっているのか?おい」
「す、すみません……」
「申し訳ありません……」
「とっとと持ち場に衝け!!」
不死川の怒鳴り声に、隊士達は各々の持ち場へと着いた。それを眺めていた梓の頭を、不死川は強めに叩いた。
「危ねぇ事すんな!」
「だってあいつ等が」
「脅しはいいとして、怪我させたら元も子もない。
あまり不要に使うな」
「……はーい」
森の中を歩き鬼を探す隊士達……木の上にいた梓は、辺りに漂う隊士達が放つ空気の中、鬼を探すが気配はもちろん、空気すら感じ取ることができずにいた。
(隊士達から漂う恐怖の空気の流れと、森に住んでる動物の空気は見える……
けど、鬼の空気は見えない……でも何だ?この異様な空気の流れ……死の空気も充満してるのに、遺体は無い……?)
流れる空気の中、以前祭り街の中で見たあの不思議な空気が見えた。梓は腰に提げていた巾着を握りながら、その空気の流れの元へ向かった。
空気を追い掛け木から飛び降り、辺りを見る梓だなあの不思議空気はいつの間にか消えていた。肩を落とす彼女だったが、次の瞬間背後から鬼の空気を感じ取りすぐに刀を抜き警戒した。
茂みから出て来る、鬼……鬼は不敵な笑みを浮かべながら、梓に歩み寄ってきた。
「鬼狩り……にしては、小さいね」
「……」
「あれ、不思議な血の持ち主だね」
そう言って鬼は瞬時に、梓の背後へ周り爪で首を狙った。梓はその攻撃が見えているかのようにして、刀で防ぎ攻撃した。
「……小さいから、油断したよ。
鬼狩りは退治しないと」
そう呟いた次の瞬間、鬼は地面を思いっ切り踏んだ。すると地面から無数の鬼達が姿を現し、一斉に梓目掛けて攻撃してきた。
「音の呼吸肆ノ型 響斬無間!!」
自身に襲い掛かる鬼達の頸を、梓は一斉に斬り落とした。轟音に気付いた不死川と伊黒、他の隊士達はすぐにその場へ向かった。
次々と襲い掛かってくる鬼達の頸を斬り落としていく梓は、飛び上がり爆薬丸、苦無と順に投げ付けた。派手に爆発し黒煙が上がる中へ梓は隠れ、親玉の鬼の背後へ回った。
「音の呼吸参ノ型 木の葉の囁やき!」
「遅いよ」
霧のように姿を消した鬼は、梓の横から姿を現し頸目掛けて爪を伸ばしてきた。次の瞬間、その間に暴風が吹き荒れ梓は鬼から離され、何かに抱えられ地面に着地した。
風が止み目を開けると、伊黒に抱えられその前には不死川が刀を構え立っていた。
「でかしたぞ、音羽」
「何か鬼群がってる!」
伊黒から降りた梓は、背後から攻めてくる鬼の頸を伊黒と共に一瞬で切り落とし、鬼に戸惑っている他の隊士達の元へ行き、稲妻の如く鬼の頸を斬り討伐した。
「柱二人……いい獲物だよ」
不敵な笑みを浮かべて、鬼は闇夜へと姿を消した。辺りを見回す不死川達とは別に、梓は地面に耳を当て音を聞くと刀を構え息を吸った。
「音の呼吸壱ノ型 轟」
刀を地面に叩きつけ、それと共に轟音を鳴り響かせ梓は地面に巨大な穴を作った。穴の中へと落ちた梓は、土煙が漂う中周りを見た。彼女に続いて伊黒と不死川も降り、中を見回した。中は空洞になっており、隅には行方知れずになっていた隊士と、既にこと切れた人間の亡骸、さらに骨が地面に転がっていた。
「何だ?この穴」
「土竜みたいな鬼だな」
「さっきの鬼達、地面から出てきてた」
「地面に潜ってたってわけか……道理で見つからねぇし、すぐに見失うわけだ」
「風柱様!蛇柱様!ご無事ですか?!」
穴の外から聞こえる隊士の声に、不死川は大声で答えその場から離れ待機していろと指示を出した。梓は腰に着けていた鎖を刀の柄に付けた……その時、異様な空気を察知し梓は不死川を押し倒した。同時に伊黒もその場から離れ、直後に泥で出来た槍が彼等の間をすり抜けた。
「へー、君攻撃が察知できるのかい?」
「チィ!嫌な攻撃しやがって!!」
「音羽、生きている奴等の護衛に当れ。ここは俺と不死川でやる」
「うん」
「君等柱に、興味ない。
あるのは、その小娘だけだ」
瞬時に移動した鬼は、梓に攻撃した。鎖で繋いだ刀を振り回し攻撃してきた鬼の腕を斬り落とし、彼女は鬼から距離を取った。不死川達が二人の元へ行こうとした時、鬼は腕を再生させると血鬼術なのか地面が盛り上がらせ分厚い土の壁で道を塞いだ。
「クソっ!!」
「まずいぞ。あっちにはまだ、生存者がいるぞ」
「!!」
盛り上がった土壁を見る梓……鬼は肩を回しながら彼女に歩み寄った。
「凄いねぇ、君。でも、柱無くして、その後ろにいる生きてる子達を守り切れるかな?」
目の色を変えた鬼は、無数の土槍を作り出しそれを雨のようにして放った。
「音の呼吸肆ノ型 響斬無間」
次々に来る槍の攻撃を、爆発を起こし全て防いだ。それを見た鬼は悔しさから歯軋りを起こしつつ、次の攻撃を仕掛けようとした時だった……鬼の中で無音の空間が広がった。
(え?音が……)
辺りを見回す鬼……その時、鳥や虫の鳴き声、草木が風に揺れる音が響き渡った。
「音の呼吸陸ノ型 花鳥風月」
音が聞こえ振り返った時には、二本の刀を構えた梓が鬼の前に立ち頸に刃を入れていた。
「残念。柱と引き離したからって、別にこっちに影響ない」
灰となり消える鬼……土壁が崩れ、不死川と伊黒はすぐにこちらへ駆け寄ろうとしたが、鬼がいなくなっている事に気づくと足を止めた。
「ぶっ倒したか」
「取り合えず、生存者全員ここから出すぞ」
「どうやって出す?」
「上の奴等に頼むか」
不死川が大声を出そうとした瞬間、梓は懐から爆薬丸を取り出し上へと投げつけると、それ目掛けて苦無を飛ばした。その瞬間、爆薬丸は爆発しその爆音に待機していた隊士達は、穴へと近付きながら声を掛けてきた。
「……さすが、宇髄の継子だな」
「爆薬丸使うなら、事前に言え!」
「天元の時そんな事言わないもん!」
「俺等の時は言え!!」
次々と運び出される生存者と、ことが切れた亡骸……やって来た隠達は、手際よく生存者を担架へ乗せ蝶屋敷へと運んで行った。
不死川は最後の一人を抱え縄梯子に足を掛けながら、梓の方を向き声を掛けた。
「音羽!こいつで最後だ、行くぞ」
「うん(何だろう……何か、まだ終わってないような気が。
さっき見た鬼の空気……他の鬼の空気もあったような……)」
「音羽、何かあったか?」
「何か空気が変」
「空気?
確かに、鏑丸が警戒しているな」
(鬼は倒したのに……
何かおかしい……転がってた遺体のほとんど、あの鬼の歯型じゃなかった。もっと大きい……獣みたいなのが……)