産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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  日中、森の中を歩く梓……

 道無き森林の中を探索していた彼女は、湿地帯を歩いていた。ふと顔を向けると、そこに紫の花が無数に生えている箇所を見つけた。


「……杜若、こんな所に生えてんだ……(あ!そうだ!)


山茶花!」


 生えている杜若を一本摘むと、自身に寄ってきた山茶花にそれを渡した。


「これ、耀哉様に送って!」

「カァ!」



 杜若を受け取った山茶花は、翼を羽ばたかせ空へと向かった。




  空を飛ぶ山茶花……

 森と街を通り、隠された屋敷へと着いた。縁側へ降り立つ山茶花は、同じく縁側に座るお館様の傍に杜若を置き鳴き声を放った。部屋にの中にいたあまねは、その杜若を手に取った。


「梓の鴉だね。今度は何を持ってきてくれたんだい?」

「杜若です」

「そうかい」


 手に取った杜若を、あまねはお館様の手に乗せた。それを手にしたお館様は、微笑を浮かべながらしばらくの間杜若を眺めた。


産屋敷へ

  早朝……

 

 大欠伸をする宇髄は、寝惚けながら隊服に着替えていた。そこへ虹丸が降り立ち、何かを彼に伝えた。

 

 

 同じ頃、眠っている梓の髪を山茶花は引っ張り、鳴き声を発しながら彼女を起こしていた。

 

 

「梓様!起キテクダサイ!緊急事態デス!!」

 

「う~ん……眠〜い。

 

さっき帰ってきたばっかなんだから、寝かせて……」

 

「梓様!!」

「梓ぁ!!!起きろぉ!!!」

 

 

 

 

  産屋敷邸……屋敷へ集まる柱一同。

 

 縁側を歩いていた不死川だったが、背後から何かが飛び付き後ろを見ると、自身に飛び付いたのは梓だった。

 

 

「……は?」

 

「実弥、見っけ!」

 

「……何でテメェがここに来てんだよ」

 

 

 青筋を立てた不死川は、どこかへ行こうとした彼女を引き止め肩に担ぎ、一目散に宇髄を探した。屋敷内を探した不死川は、庭で悲鳴嶼と話をする彼を見つけると怒鳴り声を上げた。

 

 

「宇髄!!!テメェ、ここを何だと思ってんだぁ!!」

 

「朝っぱらからうるせぇなぁ、何だよいきなり」

 

「俺が担いでるものについて、説明してもらおうかァ?」

 

「あれ、やっぱ梓お前さんの所行ってたか」

 

「天元!実弥、見つけた!」

 

「何で柱でもねぇ音羽が、ここにいんだよ!!」

 

「実弥、降りる」

 

「話聞くまで駄目だ!」

 

「朝一番にお館様から、こいつ連れて来いって連絡があったんだよ」

 

 

 不死川と宇髄が話をしている最中、つまらなそうにしていた梓は、見覚えのある空気の流れが見えそちらに顔を向けると、角から煉獄と伊黒、しのぶがやって来た。

 

 

「あ!伊黒さん、煉獄さん、しのぶさんだ!」

 

「音羽!?」

 

「なぜお前がここに」

 

「耀哉様に呼ばれて来た」

 

 

 突如として宇髄から、梓は頭に拳骨を食らった。頭にたんこぶを作った彼女は、不死川の肩で伸びてしまった。

 

 

「お館様って呼べ!!」

 

「天元が殴った」

 

「完全にテメェが悪い」

 

「耀哉様、別に気にしてないもん」

 

「お館様だ!!!」

 

「イテ!」

 

「というより、なぜお館様と交流を持っているんだ。一般隊士のお前が」

 

「山茶花に頼んで、珍しい花や小物、しょっちゅう送ってるもん」

 

「なんちゅう失礼なことしてんだ!!!テメェは!!」

 

「だって前に会った時、耀哉様見たこと無いものいっぱいあるって言ってたから」

 

「前に会った?」

 

「鬼殺隊入る前」

 

「……」

 

 

 不死川と悲鳴嶼以外の目線が、一斉に宇髄に目線を向けられた……ただならぬ空気の流れが見えた梓は、不死川の手が緩んだ隙を狙い彼の手から抜け出しその場から離れた。

 

 屋敷内へ入った梓は、部屋の中を見て回り縁側を歩いていた時、庭で遊ぶ二人の子供が目に入った。手毬を投げて遊んでいたが、投げた手毬が木に引っ掛かかってしまった。取ろうとする彼等を見て、梓は庭へと出ていき軽々と木へ登り、取った手毬を渡した。

 

 

「ありがとうございます」

 

「いいよ。

 

えっと……お二人は、耀哉様の子供?」

 

「はい。くいなと申します」

 

「輝利哉です」

 

「私は梓(二人にも耀哉様と同じ神聖な空気が流れてる……特に輝利哉に)。

 

あれ?そういえば、耀哉様は?」

 

「柱合会議の方へもう行かれました」

 

「ありゃ、すれ違っちゃった。

 

後で挨拶しに行こう」

 

「あなたは柱ではないですね」

 

「私は天元……音柱の継子。

 

随分前に十二鬼月、討伐してるんだ」

 

「そうでしたか」

 

「今日はどのようなご用事で、こちらへ?」

 

「何か耀哉様が来てって……!」

 

 

 その時、梓の目に池が入った。しばらく見つめると、何かを思いついたかのようにして、梓は傍に生えている草を抜き作業し始めた。その行動が気になり、二人は彼女の元へ歩み寄った。すると作成し完成した草を手に、それを池に浮かばせた。浮かんだのを目にすると、二人を手招きして見せた。

 

 池に浮かぶ二つの草で出来た船……それを見て、二人は驚きつつも嬉しそうに笑った。

 

 

「父から教わった笹舟!」

 

「凄い!」

 

「草が浮いてます!」

 

 

 嬉しそうにする二人の笑顔に、梓も満足気に笑みを浮かべて、池に浮かぶ笹舟を眺めた。

 

 

 

 

 

 しばらくして、池のある庭へ来たお館様は、庭で輝利哉とくいなと一緒に手毬で遊ぶ梓を眺めていた。縁側には彼等を眺めるあまねとかなたがおり、あまねはお館様に気付くと彼の元へ歩み寄った。

 

 

「梓はここにいたのかい」

 

「はい。

 

柱合会議が始まってから、ずっとこちらであの子達と」

 

 

 楽しそうに遊ぶ三人……投げ合っていた手毬が地面へ落ち、目線を屋敷の方へ向けた時、梓はお館様に気付いた。

 

 

「あ!耀哉様!」

 

「久し振りだね、梓。

 

 

こないだは杜若をありがとう」

 

「鬼探しに森探索してたら見つけたんだ。

 

他にもね」

 

 

 縁側に座り話し出す梓に、お館様は微笑を浮かべて傍へ座り、庭にいたくいなと輝利哉も駆け寄り話に耳を傾けた。

 

 

 

 

「ここにいたのか」

 

 

 お館様達と話をしていた梓の元へ、彼女を探していた冨岡が寄ってきた。

 

 

「あ!冨岡さん!」

 

「おや、義勇」

 

「お騒がせ致しました。

 

音羽、皆の所へ戻るぞ」

 

「はーい。

 

じゃあ耀哉様、また珍しいのあったら、山茶花に送らせますね!」

 

「楽しみに待っているよ」

 

 

 微笑む耀哉とあまね達に梓は手を振り、冨岡と共に去っていった。

 

 

 廊下を歩いていた二人だが、梓はまたしてもただならぬ空気が見え、咄嗟に冨岡の羽織の下へ隠れた。

 

 

「冨岡、梓そっちに……?」

 

 

 庭へ来た冨岡に、宇髄は質問しようとしたが彼の異様に膨らんだ背後を見て、首を傾げた。そして何かに気付いたのか、瞬時に彼の後ろへ回り、躊躇なく羽織を上げた。

 

 

「……梓」

 

「天元見っけ!」

 

「オメェが見つかってんだろうが!!!

 

今までどこにいた!!!」

 

「耀哉様達の所!」

 

「はぁ!?」

 

「輝利哉とくいなと遊んでた!」

 

「おま!!!何やってんだ!!!」

 

「手毬で遊んでた」

 

 

 

 

  屋敷内の一室……

 

 二つたんこぶを頭に作った梓は、スンスン泣きながらしのぶにしがみついていた。しのぶは彼女を宥めるようにして、頭を優しく撫でた。

 

 

「いい加減泣き止め!!」

 

「天元が打った」

 

「オメェが失礼極まりないことしまくってるからだろうが!!!」

 

「今日の会議は、一段と賑やかになりそうだな!」

 

「既に賑やかだがな」

 

「胡蝶、そいつはもう放っとけ。話始めんぞ」

 

「梓さん、大人しくしてて下さいね」

 

 

 広げられた地図を囲い、一同は鬼の情報が書かれた書類を片手に、指で指しながら話を始めた。

 

 真剣な眼差しで話し合う彼等の姿を見た梓は、開いていた障子から外へ出て縁側に座った。足をブラブラし暇を持て余していると、梓の元へ虹丸達が寄ってきた。鴉達と戯れていると、伊黒に付いていた鏑丸が彼から離れ、体をくねらせ梓の元へ寄った。

 

 

 鏑丸が自身の傍から離れたのに気付いた伊黒と、大人しくしている梓が気になり宇髄が顔を上げた時だった。

 

 

 不意に吹く風……木々のざわめく音と共に、縁側で野生の鳥はもちろん、鴉達に囲まれた梓が、隣に座る様子を見に来たお館様と楽しげに談笑していた。

 

 

(あいつ……)

 

(鏑丸、いつの間に……)

 

「お体の具合はよろしいんでしょうか、お館様」

 

「ありがとう、しのぶ。今日は調子が良くてね」

 

 

 お館様の周りに集まる柱一同……流れる和やかな空気を目にした梓は、自身の頭に手を置き傍に座る宇髄の穏やかな表情を見て微笑を浮かべた。




  探しても探しても見つからない……

  なぜだ……青い彼岸花も……音羽も……



  音羽……まだいるはずだ……まだ……




 寝息を立てる梓……宇髄は自身の肩に頭を置き、気持ちよさそうに眠る彼女を抱っこしていた。


「寝やがったな、こいつ」

「明け方帰ってきて、数時間眠った後にここ来たからな」

「俺は今日で三徹だ!」

「テメェは早く帰って寝ろ」

「宇髄はどうすんだ、この後」

「このまま任務だ。こいつ連れてな」

「宇髄さん、しっかりお父さんやってますね」

「あんな遊び人だったのになぁ」

「入隊前から梓に懐かれてる不死川には、敵わねぇけどな」

「あぁ!?」
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