産屋敷家に仕えた一族   作:アサヒ

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  ある昼下がり……

 買い物袋を置き、甘味処で出された団子を頬張る須磨にまきを、雛鶴。三人につられて、梓も団子を口いっぱいに頬張った。


「う~ん!みたらし団子美味しい!」

「たまにはこういうのもいいな!」

「はい!」

「梓、美味しい?」

「うん」

「梓ちゃん、表情最近豊かになりましたよね!」

「そうね。来た頃に比べると、笑顔見せてくれるようになったわ」

「子供らしくなってきたってことかな」


 梓の頬についたタレを拭いながら、雛鶴は微笑ましく笑った。団子を頬張った梓は、何かに気付き目を向けると串を口から抜き、どこかへと駆け出した。


「梓ちゃん!?」

「ちょっと!どこ行く?!」


 彼女が向かう方に雛鶴達が目を向けると、そこには他の隊士達を連れた宇髄がこちらへ歩いてくる姿があった。


「あ!天元様ぁ!」


 自身に飛び付く梓を抱え、手を振る須磨に対して振り返す宇髄は、他の隊士達に別れを告げると彼女達の元へと歩んで行った。


「音柱様って子供いたっけ?」

「違うよ。継子を取ったって随分前噂になってたじゃねぇか。

多分その子だろう?」

「凄いちっちゃいね、あの子。いくつ?」

「七歳くらいじゃねぇの?」

「俺、九歳に賭けるわ」

「賭け事しなくていいよ!ほら、次の任務地行くよ」


神聖な空気

  昼過ぎ……

 

 一人林道を歩く梓……手には胡蝶家から受け取った薬の入った袋があり、その中を見ながら彼女は歩いていた。その時、何かを感じ取り顔を上げ辺り見回した。

 

 

(何だ?時々見える、この神聖な空気……

 

汚れが一切ない……どこからの空気?)

 

 

 袋を片手に、梓は目に映る神聖な空気を辿って行った。着いた先……そこは、大きな門が建ち塀に囲まれた屋敷だった。

 

 

(……凄ぉ……神聖な空気が。

 

神社?にしては、大きい屋敷)

 

 

 塀を飛び越え、梓はその屋敷の内部へ入った。

 

 

「……?

 

あまね、お客さんが来たみたいだね」

 

 

 縁側にいた産屋敷家当主・産屋敷耀哉とその妻・あまねの前に、塀を飛び越え入った梓が現れた。

 

 

(……綺麗な人達…仏様みたい)

 

「こんにちは」

 

「……こんにちは」

 

「初めましてだね。

 

名前を聞いてもいいかな」

 

「音羽梓!」

 

「音羽……

 

梓はどうやってここへ?」

 

「空気辿ってきた!」

 

「空気?」

 

「いつも流れてる空気の中に、神聖な空気が流れてたから。

 

その空気を辿ってきたら、ここに」

 

 

 縁側に座りながら梓がお館様と話をする中、あまねは隠を呼び宇髄を呼ぶよう頼んだ。

 

 

 

 

  数時間後……

 

 鴉に案内された宇髄は、血相をかいて屋敷へ着いた。隠に連れられお館様の部屋へ入ると、縁側で楽しそうに話す梓と、微笑を浮かべながら彼女の話を聞くお館様がおり、二人の様子を部屋から眺めていたあまねは、宇髄の方を向くと軽く会釈した。

 

 

「大変失礼しました、まさかここに来てるなんて」

 

「いいえ大丈夫です。

 

私も主人も少々驚きましたが……見ての通り、楽しそうにあの子と話しております」

 

 

「梓、お迎えが来たようだよ」

 

「迎え?

 

あ!天元!」

 

 

 縁側の方へ歩み寄った宇髄は、お館様の前で正座をし頭を下げた。そして顔を上げると、青筋を立てながら梓を睨んだ。

 

 

(滅茶苦茶怒ってる……怖い)

 

「天元、この子はとても素晴らしい力を持っているようだね」

 

 

 そう言いながらお館様は梓の頭を優しく撫で、首を傾げる彼女に笑い掛けた。

 

 

「私とこの家に流れている空気を辿って、ここへ来たそうだ。

 

正直、驚いたよ。子供達以外の者が来るなんて滅多にないからね」

 

「……」

 

「やっぱり、梓は特別な子みたいだね。

 

さぁ、今日はもう遅いから天元と一緒に帰りなさい」

 

「また来てもいいですか?」

 

「私の方から呼ぶから、その時に」

 

「はい!」

 

「天元、急に呼んでしまって申し訳なかったね」

 

「こちらこそ、梓が突然の訪問をしてしまい失礼しました」

 

「大丈夫だよ。彼女と話せて楽しかったから」

 

 

 自身に向けて微笑むお館様……彼に釣られて微笑んだ宇髄は寄ってきた梓の頭に、ポンと手を乗せた。

 

 

 

 

  お館様の家を後にし、帰路に着く宇髄と梓……

 

 梓の目に見える宇髄に漂う空気は、怒りと喜びが混ざり合っておりそれに触れぬよう、彼女は少し距離を置いて歩いていた。

 

 

(あの屋敷、行っちゃ駄目だったのかな……

 

でも行くなって言われてなかったし……そもそも、あの家が鬼殺隊の長の人の家なんて、知らなかったし……

 

 

!!!?)

 

 

 肌に感じる得体のしれない恐怖……血混じりの空気を目にした梓は、一瞬にして足の力が抜けその場に座り込んでしまった。その音に気付いた宇髄は、振り返り座り込む彼女の元へ歩み寄った。

 

 

「どうした?疲れたか?」

 

「違う……何か、足の力抜けた」

 

「何だそれ……立てるか?」

 

「……無理」

 

 

 屈み込んだ宇髄は梓を持ち上げると、持ち直し歩き出した。抱っこされた梓は、自分達が歩いてきた道を眺めた。疎らに歩く人々……その中に見えていたあの血混じりの空気は薄くなっていた。

 

 

(……もういない。

 

あの空気、どっかで…見た事あったなぁ……どこだっけ)

 

 

 重くなる瞼……欠伸をすると、梓は宇髄の肩に頭を置き眠りについた。

 

 

(自由奔放だなぁ……まぁ、ここの生活に慣れてきたってことか。

 

 

しっかし、お館様の屋敷に行ったって聞いた時は正直驚いた。教えてもいないのに、何で道が分かったんだ?そもそも、鴉も付いてない上に隊士でもない、堅気の人間……)

 

 

 一瞬思い出す苦無で傷付けられた木々……そして、その先で出会ったナタを手に持った梓の姿。

 

 

(……元が違っていたのか……

 

こいつが見えるっていう空気の流れについて、少し調べた方がよさそうだな。上手くいけば、俺達が血眼になって探している、鬼舞辻無惨の住処を見つけられるかもしれねぇ)

 

 

 

 

  殴り付けるような雨が降る外……

 

 時折鳴る雷に、横になっていた宇髄は起き上がり部屋を出ると、梓の部屋へ向かった。

 

 部屋の襖を開けると、空の布団が敷かれており梓を探しながら、宇髄は中へと入った。

 

 

(外に出た形跡はない……厠に行ったか?

 

 

……?)

 

 

 押入れから微かな物音に気付き、宇髄は少し空いていた戸を静かに開けた。中には羽織を頭から被り、蹲り鈴を持った手で耳を塞いだ梓がいた。

 

 

(……誰かの部屋に来ればいいのに。

 

鈴の音で、雷の音をごまかしてたのか?)

 

 

 腰を下ろした宇髄は、手を伸ばし蹲る梓の頭に手を置いた。体を強張らせながら、梓は顔を上げ怯え切った目で宇髄を見た。

 

 

「そこにいねぇで、こっち来いよ」

 

 

 激しく頭を左右に振りながら、再び鳴り響く雷に驚き梓は再び身を竦めた。そんな彼女の姿を見た宇髄は、傍に座り梓の頭を宥めるようにして撫でた。徐々に落ち着きを戻した梓は、耳を塞いでいた手を少し緩め、自身の頭を撫でる彼の手を握った。

 

 

「親父さんと暮らしてた時、どうしてたんだ?こういう日は」

 

「……(イノ)の住処にいた」

 

「イノ?猪か?」

 

「うん……

 

あの家、少し雨漏りするから……激しい雨の日は、猪の住処にいた。

 

 

薄暗いけど、雨風入って来ないし……猪はもちろんだけど、他の動物もいて寒くなかった」

 

「雷はどうしてたんだ?」

 

「聞こえないもん……父、傍にいたし……動物の寝息しか聞こえなかった」

 

「……そうか。

 

ここは響くもんな(雷で父親が恋しくなったのか……)」

 

 

 ゴロゴロと鳴る雷に、梓は握っていた宇髄の手をさらに強く握り下を向いた。握られた手を宇髄は伸ばし、梓を自身の方へ引き寄せようとした時だった。怒雷が鳴り響きその瞬間、梓は押し入れから飛び出し宇髄にしがみついた。

 少々驚いた宇髄だが、笑みを溢し自身にしがみつく梓の頭を撫でた。鳴り響く雷に怯え抱き着く彼女を抱え、宇髄は自室へ戻った。

 

 

 

 

 部屋へ戻ると、宇髄は自身の布団へ戻りスンスン泣く梓を寝かせた。足元にある掛け布団を、彼女に掛けながら自身と布団へ入り、梓の頭を撫でた。

 

 宇髄に撫でられた梓は、欠伸を一つすると手に握っていた羽織に顔を埋め、目を閉じそのまま眠りについた。眠る彼女に宇髄は微笑み、もう一度頭を撫でると眠った。




  稽古場……

 至る所に設置された的に、次々と苦無を投げ当てる梓。その様子を、宇髄は近くの岩に座り見ていた。全ての的に当て終えると、梓は気配を消し宇髄の背後へ周り、彼の頭を殴ろうと拳を振った。当たりかけた拳を、宇髄は受け止め振り返ると彼女の額にデコピンを食らわした。


「気配消したからって、俺を攻撃するな」

「父の時はやってたもん」

「親父さんと俺を一緒にするな!」

「同じ空気なのに?」

「駄目だわ!!」


 自身の隣に座る梓に、持ってきていた水筒を差し出した。受け取り中に入っている水を飲んでいた時、虹丸が彼の腕に留まり仕事の言伝をした。伝え終えると梓の頭へと飛び移り、彼女はそんな虹丸の体を撫でた。


「鬼殺隊入ったら、虹丸みたいな鴉が就くの?」

「あぁ」

「他にも鴉って、いっぱいいるの?」

「隊士全員就いてるからな」

「ふーん……

ねぇ、天元」

「ん?」

「鬼の弱点って頸だけど、生身の人間と弱点同じなんだね」

「そうだな。けど、鬼の弱点はもう一つある」

「日の光?」

「正解だ」

「……父、鬼のこと知ってたのかな」

「?」

「父と修行してる時、耳にタコができるくらい言われたから。

必ず、頸狙えって」

「それは多分、お前さんの家系が原因だろうよ」

「家系?」

「家によって、物事の教わり方が十人十色なんだよ。

親父さんは、多分自分もそうやって教わったから、お前にも同じことを教えたんだよ」

「ふーん……!

ねぇ、鬼殺隊?の最終選別って、いつなの?」

「まだまだ先だ。

音の呼吸、まだ全部取得してねぇだろう」

「早く隊士になりたい!」

「そう慌てんな。

もう一年、修行積めば受けられる」

「本当!?」

「あぁ。

そうと分かれば、早く木刀持って再開するぞ」

「はーい!」
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