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「はじめまして、御客様。此度はL社―――ロボトミーコーポレーションに御来社していただき、誠にありがとうございます」
幾つものモニターが飾られた場所。モニターには様々な部門が、職員が、光景が映し出されている。まるで映画の様に鮮明に映し出されている。
此処が管理室。此処こそ監視室。この会社を、そしてこの会社で働く職員を見守り、見通し、監視し、命令し、操作する場所。
その中央に座すは一人の人間。黒いシャツの上に白衣を着た大人。ノイズの様なもので顔が覆い隠されてしまっている。熱を感じさせない低い声から察するに男性なのだろう。
その隣に立つのは一体のAI。人の姿こそしているが決して人ではない。女性の姿をしているが人間ではない。腰辺りまで伸びた白髪、閉じた瞳。人のようではない白い肌。女性として完璧そのものが如き容姿のロボットだ。
そして、その一人と一体と顔を合わすのは、一匹の小動物だった。
「こちらこそ、話し合いの場を設けてくれた事に感謝しているよ。まさか僕たちの他にも、エネルギーの生成をしている存在が居るだなんて知らなかったんだ」
「私も驚きました。
「僕もそう願うよ。それじゃあ、さっさく始めようか」
小動物の名をキュゥべぇ。正式名称をインキュベータ。
地球よりも遥かに高度な文明を築き上げた彼方の惑星から、高尚たる目的の為に地球に訪れた知的地球外生命体である。
話し合う男の名前はX。サポートするAIの名はアンジェラ。このロボトミーコーポレーションの管理人と秘書である。
まず、話し合いはキュゥべぇが切り出した。
「僕たちは増大する宇宙のエントロピーを解決する為に地球にやってきた。エントロピーが増大し続け、最終的には宇宙の熱力学的な死を回避する為だ。その為に、僕たちは魂のエネルギーを他のエネルギーに変換する技術を開発したんだ。けれど、そもそもの前提から間違っていたと言うか、既に僕たちは感情というものを持っていなかった。だから宇宙中から強い魂をエネルギーを有する生物を探していたんだ」
「ふむ。その魂のエネルギーというのは、話から察するに要すれば感情などの想いという事ですね?」
「そうなるね。様々な生物を探す中で、僕たちが目を付けたのは人間、その中でも特に多感な第二次性徴前の少女達だ」
「なるほど、素晴らしい目の付け所だ。ただ無闇矢鱈に人を選ぶのではなく、最も多感な時期の人間を選ぶ事でエネルギーの生産と収集を効率化している訳ですね」
Xは大いに感心した。宇宙規模のエネルギー問題を解決しようとするだけあり、その行動力と計画性は称賛に値した。
人間はとにかく多彩だ。機敏で激情的な者から鈍感で厭世的な者まで、人間という種には様々な性格・感情を持っている。それが億単位で存在しているのだ。
がむしゃらに、無闇矢鱈に適当な人間を選んでも得られるエネルギーなどたかが知れる。だが、彼らは人間が最も多感である時期を正確に定めて狙っている。
目的の為に効率的な行動だ。人間を調べたからこそ出来るものだ。
「理解が早くて助かるよ。僕たちは契約を交わした少女達の願いを叶える代わりとして、魔女と呼ばれる存在と戦わせる。彼女達の魂を加工した容器『ソウルジェム』に、瘴気―――要するに絶望や恨みなどの負の感情が貯まり、それが砕けて魔女の卵であるグリーフシードへと変質する時のエネルギーを回収して宇宙に補填するんだ」
「負の感情限定なのですか?」
「うん。気に障ったかい?」
「いえいえ、寧ろ納得しました。喜怒哀楽の内、最も作りやすい感情とは即ち怒と哀。感情を昂ぶらせてエネルギーの収集を行うのであれば、負にまつわる感情の方が効率的ですから」
「本当に理解が早いね。その方が都合が良いから構わないんだけど。それじゃあ、次は君たちのやり方を教えてもらってもいいかい?」
「えぇ、それでは我がロボトミーコーポレーションのエネルギー生産の実態を、貴方にお話し致しましょう―――くれぐれも、他言は無用で」
Xがそう言った直後、モニターが移り変わる。
其処は収容室。中には一本のか細い木とそれに停まる小鳥が居る。
「我が社は
「なるほど。なら、その画面に映っているのもアブノーマリティなのかい?」
「えぇ、我が社が管理するアブノーマリティの一体、『O-02-56』―――罰鳥です。この他にも様々な生物、道具、現象があり、それら全てを一括りにしてアブノーマリティなのです。これらを管理し、特定の作業を行うことでエンケファリンを抽出するのです。その抽出したエネルギーの一部を利用し、未知のアブノーマリティの情報の開示、または私共の職員に『E.G.O』という装備を与えています」
「E.G.O?」
「アブノーマリティから抽出する事が出来る装備の様なものです。『自我の殻』とも言われるこれは、文字通りアブノーマリティの
「脱走する事もあるんだね。正体不明な存在なだけはある訳か」
「えぇ、それでよく
「管理人」
「すまない、アンジェラ。……失礼、
「管理人…」
「……オフィサーが死んでしまいますが、まぁ大した損害でもありません。代わりは幾らでも雇用出来ますので。アブノーマリティには危険度として、低い順からZAYIN・TETH・HE・WAW・ALEPHというランク付けがされたおり、ALEPHともなれば都市一つが壊滅してしまう程の危険性を秘めていますが、その分得られるモノも大きいのです。ALEPHクラスのアブノーマリティから抽出されたE.G.Oは非常に強力で、職員によっては同じALEPHクラスのアブノーマリティを単独で鎮圧するに至ります」
「それは凄いね。自我の殻、E.G.Oか…興味深いよ。もしかすればE.G.Oから僕たちが必要とするエネルギーが取れるかもしれない」
「我々としても、貴方達のやり方で作り出されるエネルギーがエンケファリンとどの様な作用を起こすのか興味があります。もし仮に、貴方が集めるエネルギーと我々のエネルギーが上手く融合したならば…それは、きっと貴方の解決に大きな貢献を残す事になるでしょう」
「エネルギーの融合か、それは考えた事がなかったな。確かに、それが成功すれば今よりも早く解決出来るかもしれない」
「では、改めてどうでしょう? 貴方―――いえ、貴方々『
「ぼくも同意だよ。こちらとしては願ったり叶ったりだ。是非とも受けさせてもらうよ」
「それは良かった。では、これより提案を承諾。L社からの提供に、満足いただける様に務めさせていただきます」
ここに、最悪と最悪が結ばれた。
恐怖に直面し、未来を創る。
まさしく魔法少女にぴったりな看板文句だと思いませんか?