黒崎
教師である父と会計士の母の間に産まれたごくごく普通の子供である。
「お子さんの個性に心当たりはありますか?」
「やっぱりアレかしら……?」
「"たぶんそうだと思うよ"」
幼い頃から好奇心旺盛で身の回りのもの全てに興味を示し、両親の仕事のパソコンをいつの間にか開いて遊んでいたり、父の"秘密の金庫"を開いて中のものを母に見せたりしていた。
何故そんなことができたのかと聞かれれば、この世界にありふれた『個性』と呼ばれる異能の力である。
個性「暗号解読」
能力は読んで字の如く暗号を解読するだけのシンプルなもの。
しかし、現代はコンピューターの発達した情報社会。コユキにとってパスワードで守られたデータなど鍵のかかっていない扉も同然である。1人の無邪気な子供が持つには危険な能力だった。
難解なパスワードをあっという間に解読したり、頑丈な金庫でも簡単に開けてしまう凶悪
しかし、コユキが小学校へ入学する頃にはすっかりダメなことはダメと認識するようになり、無闇矢鱈にこじ開けてイタズラするなどという悪癖はすっかり鳴りを潜めていた。
「あっ、先生だ!こんにちは〜」
「"こんにちは"」
「もしかして先生のお子さんですか〜?」
「"そうだよ。ほら挨拶して"」
「黒崎コユキです!6歳!」
生徒一人一人に寄り添い、どんな小さな悩みでも真摯に向き合い解決しようとする父の姿は職業としてのヒーローではないが確かに「ヒーロー」そのものだった。まだ「早瀬」だった頃の母が惚れてしまうのもよく分かる。
多くの人々に愛されてしまうが故にばったり女子生徒と遭遇してタジタジしてしまう父の姿と怖い顔をする母の顔はコユキにとって日常風景だ。
「先生!」
「見てください!先生!」
「ちょっと聞いてくださいよ先生ぇ〜〜」
「ありがとうございます!先生のおかげです!」
たくさんの人々に愛され、頼られ、慕われ、尊敬されている父の姿はコユキにとってまさに『理想の
だが、現実とは非情なものである。
いくら周りが正しい方向へ向かうよう導いても圧倒的な巨悪によってその道はあっけなく破壊されてしまった。
黒崎コユキは7歳の誕生日を迎える前に突然、その姿を消した。
そして、時は流れ……
黒崎コユキ15歳。
もしあのまま普通の家庭で過ごせていれば高校に入っていた歳だろう。
『さて、これから雄英の予定表のデータを抜き取りたいのだけど……できるね?コユキ』
「はい、できます……