時々ボソッと淫夢語録をつぶやく隣のアーリャさん 作:ほろろぎ
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あまりにも皆様の評価が高くてブルっちゃうよ…
蛇足じゃないかと恐れつつ、続きを思いついたので投稿します
「やっぱり淫夢界の王者は、なんといっても野獣先輩よね」
「いまだに野獣とかウッソだろお前! 今のトレンドは拓也さんだろ」
アリサ・ミハイロヴナ・九条──アーリャと久世政近の間で、バチッと火花が交錯した。
アーリャは切れ長の瞳で、政近を射抜くように見据える。
「久世くんったら、とぼけちゃってぇ……先輩ほどの知名度を誇る淫夢キャラなんて、他にいないじゃない」
「中国人のたった一割しか知らないじゃんアゼルバイジャン」
「一億人が知ってたら、それもう十分だって一番言われてるから」
「拓也さんだって、
「冗談はよしてくれ(タメ口)。ネットの中でも一部の界隈だけでの流行でしょ、それ? 肉おじゃブームとどっこいどっこいやな、どっこいどっこい」
他人に対して良くも悪くも怒りの感情を見せない政近の額に、薄っすらと青筋が浮かんだ。
素知らぬ顔でアーリャは話を続ける。
「久世くんだって四章を見たでしょ? 先輩と遠野の一大ロマンスを! あれは誰の心も打つ名作だって、ハッキリわかんだね」
「レイプが結果的にいい方にいっただけじゃねえか。犯罪ですよ犯罪! 助けてー! (集団)ストーカーに襲われてまーす!」
「先輩ほど語録が豊富な淫キャいる? いやいない(反語)。出てくるセリフが全て語録と化すのはタドちゃんくらいよ。まさに血をパンとワインにするキリ〇トの再誕ね」
「野獣先輩救世主説やめろマジで。あと淫夢キャラって単語を略すな、別の意味に聞こえるから」
そして政近は、懐から自身のスマートフォンを取り出すと、待ち受けの画面をアーリャの眼前に差し出す。
「これなんか見ろよこれ! なあ! この勇敢な姿をよぉなぁ!」
待ち受けには、土砂降りの大雨の中の中で、自らの裸体を傘と化して捨てられた子猫を庇う拓也さんの写真が飾られていた。
写真を大切に眺めながら、政近はウットリと感想をもらす。
「やっぱ……拓也さんの……優しさを……最高やな!」
「コラ画像じゃない! それ元はポイテーロを溺死させようとしてる所でしょ。殺人未遂ですよ、殺人未遂!」
だんだん二人の鼻息が荒くなり、口論の声をも大きくなっていく。
「先輩は未だに消息が不明のミステリアスさが魅力なの! こんな一億総ネット社会でなんの手掛かりもなしなんて……まさに神の巨根内在証明よ(意味不明)」
「とっくに死んでんでしょ(直球)」
「は?(威圧)」
「拓也さんは一族化するほど各種の業界に顔が広いんだ! 名前だけ無駄にバリエーションがあるウンコの擬人化とは格が違うぜ!」
「グロンギ怪人とか混じってるし、こじつけも
「野獣だっておはぎとかコロッケになってるじゃねえか!」
「それだけ皆の心の中に広がってる証拠よ! 拓也なんて合ドラ仕込んでる薬中の犯罪者だわ!!」
「昏睡レイプかました性犯罪者(のファン)に言われたくねーよ!!」
以前からアーリャが秘かに口にしていた淫夢語録に気づいた政近は、それをきっかけに彼女に好意を持ち(謎の展開)、告白するにまで至った。
結果的に政近の気持ちはアーリャに届かず、二人は淫夢を共通の趣味にしたいいお友達になるんぜよ!という終着を迎える。
二人は人目をはばかり、秘かに語録でやり取りを交わして仲を深めていった。
しかし今……アーリャと政近の友情に、底深き奇妙かつ美しい谷よりもなお深き亀裂が走った。
それは淫夢界の頂点に立つ男優が、永久不動の野獣先輩と主張するアーリャと、期待の新星である拓也さんがその座を奪い取るという政近で、意見が対立したことに起因する。
「頭にきますよ~」
「だ↑ま→れ↓」
売り言葉に買い言葉。
アーリャの故郷であるロシアの極寒の吹雪よりも、さらに冷たい空気が政近との間に流れた。
二人の交流はそのまま途絶え、学校に居ても、隣同士の席だというのに顔を合わせることもなくなった。
当然一切の会話も無くなり、これまでの彼らの不思議な仲の睦まじさを知るクラスメイトたちは、みな疑問に首をひねることとなる。
遠巻きに心配するクラスの面々をよそに、アーリャと政近の険悪な関係は続いた。
政近との会話が途切れて何週間かが経ったある日、アーリャは自宅でふと、姉のマーシャに喧嘩の愚痴をこぼした。
「淫夢のトップオブトップは、王道を征く野獣先輩に決まってるのに……マーシャも、そう思うだら?」
「このド変態野郎が!」
「ファッ!?」
今までの人生の中で姉が大声で人をなじったことなど、一度として目にしなかったアーリャ。
そのマーシャが、初めて妹を叱責した。サファイヤのごとき青い瞳が、驚きに見開かれる。
「ま、マーシャ……?」
「急に怒鳴ってごめんね、アーリャちゃん。でも~、今怒っておかないと、人生を間違えちゃいそうだったから~」
いつもはフワフワとした雰囲気で周囲の一太刀を和ませるマーシャが、今はいつになく真剣な表情でアーリャと向き合っている。
「アーリャちゃん、貴女の好きな野獣先輩が出てくる、淫夢の四章を思い浮かべて」
「うん……」
素直に目を閉じたアーリャの脳内で、自動的に四章の映像が無修正で再生されていく。
対外的にはクッソ汚いホモレイパーの記録映像が、彼女の脳内では壮大な恋愛譚へと変換されていた。
「遠野さんは、自分を襲ったヤジュパイを……どうした?」
「受け入れた、わ」
「そうよね。普通なら出来ないことだわ」
「だから素晴らしいのよ、四章は」
なら、とマーシャは妹に問う。
「ヤジュミちゃんを受け入れたレシリザさんの様に、アーリャちゃんも……久世くんを受け入れてあげたらどうかなぁ?」
一方の政近も、自宅で
「なんでアーリャは拓也さんの素晴らしさを認めないんだよ……あんなジャニ系イケメンで激エロのモロホスト、男女問わずみんな大好きなはずなのになぁ」
「…………」
お母さん想いの拓也さんの素敵なエピソードを話して聞かせる兄を、妹である周防有希は冷めた目で見つめる。
有希は家庭の事情で、政近とは家族ではなく幼馴染として周囲に認知させていた。
その理由の一部に、この淫夢中毒の兄の性格があったのは言うに及ばないだろう。
「TAKUYA is GOD」
そう話しの最後を締めくくった政近に対して有希は
「じゃあ……死のうか」
と兄妹の情も無く、風呂上がりのばっちぇ冷えたビールのように、ひどく冷たく言い放った。
そんなチョーSな妹の態度も政近は慣れたもので、「おう、考えてやるよ」とさらりとかわす。
有希は兄と違い淫夢に染まっていないくそノンケなので、正直拓也だの野獣だのどうでもいいのだ。
それなのに先ほどはつい語録が出てしまったのも、家族の血は争えないということだろう。こんな血族滅びた方がいいと思うんですけどそれは……
政近は兄としての威厳をもって、妹を挑発する。
「なんだその偉そうな……すわわっ!」
「冷めてんだルルォ!? 実の兄貴が日常でホモビ語録使ってはしゃいでる所さんを見せられたら、兄妹仲も冷めきって当然。ハッキリわかんだね」
「と言いつつ。お前もしっかり語録使いが板についちゃってぇ。すっかり拓也さんの魅力に当てられてげいじゅつし、ひんに……芸術品に仕立てや、仕立て上げられたんじゃん」
「アホぬかせお前、誰がボケェ」
殺されてぇかお前……と明日には出荷される養豚場のブタを見るような冷酷な目つきで、有希は政近にツッコミを入れ続ける。
「そもそもさぁ……、さっきから拓也さん拓也さん言ってるけど、ネットのおもちゃのホモビデオ男優に敬称付けるとか、異常だってそれ一。加藤鷹だってさん付けしないでしょ」
「確かに、タカさんなんて呼ばれるのは石橋くらいだな。つまり拓也さんは、ネットのおもちゃから脱した一流のスターってことだ!」
「これマジ? ガタイに対してメンタルが強靭すぎるだろ……」
一般のアニメやゲーム、漫画のオタクである有希も、さしもの淫夢にドップリつかった政近に対しては、いくら罵声を浴びせようともはやお手上げの様子だった。
こうなると彼女に言えるのは、ただの一言しかない。
「きっしょ、もう語るな、そして死ね」
アーリャは姉のマーシャの問いかけに、やわらかスマホで
なんでこんな単純なことに気づかなかったのだろう。彼女の言う通りだ。
敬愛する野獣先輩が愛するパートナー、遠野のような広く深い心を、どうして私は持てなかったのだろう……。
「まだ、遅くはないんじゃない?」
マーシャは優しく、けれども強くしっかりと、妹の背中を押す。
「なぁ何ができるんだよお前はぁ!」
「久世くんに謝らないと……ッ」
「さぁ、歩け! オラ!」
マーシャはお姉ちゃんらしく、妹を
家を出ようと玄関のドアノブに手をかけ、直前でふと止まるアーリャ。振り返って姉に問いかける。
「そういえば、マーシャには推しの淫夢キャラっている?」
「もちろんよ~。私の推しは、オク男ねぇ」
「……誰?」
「オークション男よ~」
「だから誰? マシンマンの敵怪人?」
「三軍淫夢を知らないなんて渋いなぁ~。私も天六で、半年前にほんへが収められたビデオをひらってきて、鑑賞したのがきっかけなの。なかなか、手に入らないでしょ!」
アーリャは姉のコアな趣向に、小さく苦笑を浮かべ
「姉妹なんだから、そこは野獣大先輩でしょ。……やっぱり、久世くんとしか話は合わないようね」
ドアを開け放った。
久世政近は、夜の人気の無い歩道を走っていた。
妹である周防有希は淫夢を嫌っており(正常な反応)、こんな奴といても気分が↑んねぇ!と家から飛び出したためである。
おりしも外は、彼の愛する拓也が子猫を庇うコラージュの画像のごとき大雨に見舞われている。
「マヂ苦しい、酸欠で死にそう」
息苦しいほどの豪雨の中での全力疾走。息が上がっているのはそれだけではない。
これまで断絶しいたアーリャとの交流を、久世政近の心が求めているのだ。
傘も持たずに家を飛び出たのは、彼だけではない。
やはり彼女も傘をも持たず、懸命にここまでやってきた様子がうかがえる。
「アーリャ……」
「久世くん……」
互いに求めあった二人は今、ついに真正面からの再会を果たした。
共に相手の姿を見て、「この雨の中の中で外出!?」と驚き、やがて笑い声に変わる。
ひとしきり笑いあったあとで、政近は今一度──過去の言葉と同じセリフを口にした。
「アーリャ、お前のことが好きだったんだよ!」
返事は待たない。求めてもいない。ただ、政近は気持ちを伝えておきたいと、改めて思ったのだ。
少女は雨に打たれ尚折れない花のような、気高いまでのほほ笑みを浮かべ、
「ウッス!」
とだけ返した。
えっ?と予期せぬ返答に、間の抜けた声をもらす政近。
「私ゎ 揉め事ゎ嫌いだけど 揉む事ゎ好き みんな 愛し合って生きようね」
アーリャは初めて、確固たる意志をもって拓也語録を使った。
目の前の男が愛する拓也さんの言葉で、少女は応えたのだ。
それが自然な行いのように、アリサ・ミハイロヴナ・九条は、久世政近に体をよせる。
あぁ、そういうことか……ハッキリわかんだね、と政近も彼女の意図を察した。
「入って、どうぞ」
両腕を広げ、胸の中にアーリャを抱きとめる。少女の尊敬する、野獣先輩の語録を使って。
少年と少女は、どしゃ降りの雨の中で、互いの体を強く抱き寄せた。
雨の寒さなど、もう気にならない。二人の体温は循環し、一つとなる。
そうして気持ちと心でつながった政近とアーリャは、ゆっくりと顔を近づけていった。
つまりは──二人は幸せなキスをして終了、ということだ。
アニメほんへに淫夢ネタぶち込まれてると知って正直えぇ…(困惑)
お前(視聴者)の自意識過剰なんじゃねえか?そうであってくれ
事実だとしたら公式がそんなことしなくていいから(良心)