ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う?   作:新月

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攻撃全部跳ね返されるんだけど、どうすればいいと思う?

「“セレクト・エッジッ!!” “セレクト・エッジッ!!” “セレクト・エッジィィ──ッ!!”」

 

 レイスのテストが始まって数分。

 俺は自分の必殺技を間を置かずに3連打を放ったところだった。

 だが……

 

「オーっホッホッホッ!! 無駄ですわ! “ディメンション・ホール!!”」

「うおっと?!」

 

 その連続攻撃ですら2穴のセットで跳ね返され、俺への攻撃に使われる始末。

 やっぱり跳ね返せるの一回だけとかの制限は無いか!! 

 元々ダメ元だったけど、予想通りやはり効かなかった事を実感する。

 いや、それ以前に……

 

「やっぱり、トール戦の時の威力が出ない……!」

 

 そう、自身の技の威力を確かめるために、敢えて複数回“セレクト・エッジ”を放っていたんだが、やっぱりあの時ほどの威力が出せない! 

 その事に気づいていると……

 

「出力が予想より出ないことに疑問をお持ちですか?」

「っ!」

「もっと本当は自分はやれるはずなのに、こんな筈じゃ無いのに、と。違いますか?」

「……だったら、何だ」

 

 俺の内心をピシャリと言い当てられ、少なからず動揺してしまう。

 そんな俺に対し、まあ、そこまで不思議なことでは無いですわ。と、そうレイスが言い始めた。

 

「あなたの【ジャッジメント】のトールとの対決は、ティアー様達に聞きました。人事評価の為に、事前の確認は当然ですわよね」

 

 私、人事担当ですので、とトールは呟いた。

 

「それでお話を聞いた結果、事実上のデビュー戦であれ程の相手と引き分けとは、素晴らしいです。奇跡ともいえる程の快挙ですね。凄まじいポテンシャルと言えるでしょう」

 

 ですが……と区切り。

 

「その出力を、いつでも放てるようにはまだ慣れていませんわね? それでは、【ダーク・ガジェット】使いとしては、まだ未熟と評価せざるを得ません」

「っ!!」

「まあ、デビューしたばかりだから当然とも言えますが……はっきり言って、そのままではただトール戦で偶然上振れただけ、としか言えませんわね」

 

 真剣な鋭い目つきで、レイスにそう指摘される。

 

「既にご存知でしょうが、【ダーク・ガジェット】は感情によって出力が変わりやすい武器。だからこそ、自身の感情はある程度コントロールして、一定出力は常に担保出来るようにせねばなりません」

 

 そう言いながら、レイスはあえて目立つように手に握ったロッドをクルクル回して、俺に対して見せ付けるようにして来ていた。

 

「少なくとも私含め、幹部級の実力者は常に最高時の“9割”の出力は保っています。それくらい出来るようにならなければ、安定した実力とは言えません……違いますか?」

「ぐうの音も言えねえ……」

 

 その言葉に、俺は何も言えなかった。

 確かに、仮に偶にだけ上位ヒーローと同等の実力出せますよ、と言われたヒーローがいたとして。

 だからそいつが上位ヒーローと同等の実力者だ、と言われると、首を傾げる話だ。

 偶にしか出せない実力なら、それは本当の実力なのか? と言われると違うと言える。

 常に発揮出来る実力こそ、そいつの本当の実力と言える話だろう。

 

 俺は改めて、トール戦の時のことを思い返す。

 そう、確かにあの時はデビュー戦としては出来過ぎていた。

 あの時は、初めて【ダーク・ガジェット】を使った高揚感と、自分にぴったりな新技を手に入れられた興奮でかなりテンションが上がっていたのが大きいだろう。

 あの時を100%とするなら、今の俺はせいぜい出力60%くらいか? 

 それくらいそこそこ大きな差があった。

 

 そして、そんな俺にレイスはロッドの先をビシッと俺に向けて……

 

「──はっきり言って、今のあなたの実力では【カオス・ワールド】の人員の中で、“10人中1人”の割合で、同等の実力者はゴロゴロいますわ!! 自分だけが特別などと、思い上がらないことですわね!!」

 

 ……は? 

 はあああアアアアアアアッ?!! 

 その言葉を聞き逃せなくて、俺はつい反論してしまう。

 

「ちょっと待ってくれ、10人に1人!?」

「そうですわね。先ほどまでの攻撃だと、そう評価せざるを得ませんわね」

「ちょっと待て!! さっきまでの“セレクト・エッジ”でも、そこそこの威力は出ていた筈だ!? 並のヒーローと同等の火力は出てる筈だ!?」

 

 具体的には、【ジャスティス戦隊】のレッドとしての俺の“レッド・ハイパーエッジ”! 

 あの“レッド・ギフト”一回分の強化した技と、同等の威力でサタン・クロス状態なら連続で放てるんだぞ!? 

 さっきの3連打だって、“レッド・ハイパーエッジ”3連打と実質変わらない!! 

 2桁台後半のヒーローと同等だと、言い張る俺に対し……

 

「ええ、その上で10人に1人の割合だと、言ったのですわ」

「っ?!!」

 

 その言葉に、今度こそ俺は言葉を失った。

 今のこのレベルで、その評価かよ……!? 

 と言う事は、一般兵レベルでその実力者がゴロゴロ【カオス・ワールド】には転がってるって事かよ!? 

 

 俺は俺自身の実力を低く見られた事より、【カオス・ワールド】の層の厚さ自体に驚きを隠せないでいた。

 どんだけ人材宝庫なんだ!? もうヒーロー連合に近いくらいの戦力とっくに持ってるんじゃねーの!? 

 

「……さて、どうしますか? このままリタイアいたしますか? それはそれで、テスト終了と判断致しますが」

「っ! ……」

 

 そう声を掛けられて、俺は……

 

「……ふぅー…………」

 

 ゆっくりと、一呼吸を置いた。

 半ば混乱していた頭を、冷静に戻す。

【カオス・ワールド】の層の厚さについて知れたのは、大変大きな意義があったと言えるだろう。

 それはそれで重要な情報だった。これは大事だ。

 けど……

 

「よし! まだ、やれる!!」

 

 俺は気を取り直して、レイスに向き合った。

 そうだ、せっかくのその【カオス・ワールド】の幹部との直接対決! 

 テストとは言え、こんな機会はなかなか無い!! 

 今のうちに、色々試したり、挑戦したりしないとそれこそ損だ!! 

 

「結構! なら、来なさい!!」

「ああッ!」

 

 俺は構え直したレイスに向き合い、俺も黒刀を構え直した。

 冷静になった頭で、一つ考える。

 

「確か、常に9割の出力は保て、だったな!」

 

 さっきレイスに言われた言葉を思い返し、俺はその言葉に対して思考をする。

 確かに【ダーク・ガジェット】の性質上、それが出来たら常にベスト。

 

 ……けれど、それでいいのか? 

 

 確かに並の相手なら、それで十分だろう。

 けれど、今目の前にいる相手は、人材宝庫の【カオス・ワールド】の幹部だ。

 あくまで俺自身の予想だが、9割の出力では目の前のレイスに対しては、攻撃が届かないように思える。

 最低でも、トール戦の時の威力、100%は必要だ。それでも届くか怪しいレベルだから、本当に最低限がそれだ。

 

 けど、常時テンションを上げ続けるのは、かなり難しい。

 トール戦の時のように、自分の生死がかかった状況なら、確かに必死になってテンションが上がるだろう。

 けれど、今のテストの一環みたいな状況だと、何処か“心の余裕”のようなものが生まれて、感情が昂り切れない部分がある。

 なら、どうするか……

 

「……常時、感情を昂らせるのは諦める。けど……」

 

 ──“一瞬なら?

 

 つまり、“攻撃の瞬間だけ、感情を昂らせる”。

 常時は厳しくても、黒刀を振るう一瞬だけ、その時だけトール戦の時のような感情を思い出せ。

 “いわば、ついカッとなって”。

 ……まるで殺人鬼のような微妙な例えだが、ある意味適切だと思う。

 そのテンションの上げ方が都合がいいだろう。

 

「いくぞ!!」

 

 目の前にいるのは、トール!! そう思って、思いっきり力を込めてッ!! 

 

「“セレクト・エッジィィィィ──ッッッ!!”」

 

 最高の、一撃を放った。

 その掛け声と共に放たれた斬撃は、トール戦の時にかなり近かった。

 よし、とりあえず成功だ!! 

 100%まではいかないが、95%は再現出来た!! 

 この気合いの込め方なら、常に出せる自身はある!! 

 

 俺は【ダーク・ガジェット】の使い方に慣れてきた事を実感し、その間に飛ばした斬撃はレイスに向かって飛んでいった。

 その速度は、今日の最高速度! 

 

「さあ、この速度ならどうだ!! それとも、これすら跳ね返すか!?」

 

 最速の一撃を放てたとしても、俺は一切油断出来なかった。

 仮にも三幹部と呼ばれる相手だ。この程度の攻撃すら、対処してくる事も十分考えられる。

 それを想定して、俺はいつでも回避できるように準備をしていた。

 そして……

 

「……素晴らしい一撃ですわ。高評価致します」

 

 そう言って、レイスは感心したように呟き……

 

「──なら、その一撃を“そのまま自身で味わってくださいな”」

 

 そして、手元のロッドを軽く振り始めていた。

 くそ、やっぱりこの速度でもダメだったか!! またあの穴を開けられる!! 

 取り敢えず今は切り替えて、予定通り回避を……

 

 

 ──“あれ? なんか俺のすぐ目の前に穴が空いてない?

 

 

 レイスの目の前に一つと、俺の目の前に一つ? 

 つまり、これって……

 

「──地球の裏側にも繋げられますのよ? “敵の目の前なんて、簡単ですわよね?”」

 

 その言葉の意味を思考する前に、今さっき放った斬撃が“目の前”に現れた。

 ちょっと待て、これ回避の余裕なんてな──

 

「ぐぶッおおおおおおおぉぉぉ────ッ?!!」

 

 ドカアアアアアアンッ!!! と、巨大な威力が壁まで飛んでぶつかる音が辺りに響くのだった……。

 

 ☆★☆

 

「あちゃー……モロに引っ掛かったわね、クロス君」

「まあ、初見殺しだからな。レイスのあれは」

 

 アリーナの専用席で見ている私は、カイちゃんとそんな会話をしているところだった。

 軽くドリンクを飲みながら、話を続けている。

 

「レイスちゃん、攻撃能力は殆ど持って無いけど、カウンターと生存能力が高いからねー」

「まあ、それもあっての今回のルールだろうからな。単純に、防御をガチガチに固めたレイスは、中々突破出来ないだろう」

「そうねー。私もかなり手こずるだろうし」

 

 カイちゃんの言葉に、私も同意する。

 私の【ツイン・ティアーズ】でも、レイスちゃんを直接攻撃するにはかなりやり辛い。

 本人に対して打っても、ほとんどの弾丸を適当に跳ね返されるだけだ。

 レイスちゃん相手にするなら、搦手が必要だ。

 

「私だったら、“地面に伝う攻撃”を使って、穴を避けて攻撃するかなー」

「ま、手数の優秀なティアーだから出来る攻略法だな。様々な効果を持つ弾丸を自由に放てるからこそ、状況対応力が優秀だ」

「えへへー。それで、クロス君の場合だけど……」

「まあ、あのままだと無理だろうな。単純に攻撃方法が“飛ぶ斬撃”一種類だけじゃ、対処が簡単過ぎる」

 

 カイちゃんは、今の現状のクロス君に対して冷静に判断を下した。

 やっぱりそうよねー。トールちゃんの時は、相手がそこまで搦手使ってこなく、かつ相手が頭に血が登ってたからねー。

 攻撃方法が一種類だけの状態だと、それを対処された時に突破方法がなくなってしまう。

 これはヒーロー、ヴィラン関わらず、どの分野の話題でも関係する話ね。

 クロス君個人を気に入ってたとしても、そういう判断は冷静に下すよね、カイちゃん。

 

「けどさー。クロス君なら、“次元の穴ごと切る斬撃”とか、放てそうじゃない? ポテンシャルは十分でしょ?」

 

 ふと、思いついたそれをカイちゃんに言ってみるけど……

 

「無理だな。仮に出来たとしてもあくまで将来的にで、“今すぐは無理”だろう。無論、私もクロスならそこまでいくと思っているが……今この時のこの場だと、現実的じゃない。元々【ダーク・ガジェット】は、そう言うものだろう?」

「だよねー」

 

 すぐに否定されて、それを私も否定しない。

【ダーク・ガジェット】は、本来物理特化の武器にしている。

 元々ヒーロー側の【ライト・ガジェット】は、神様から授けられたと言われるだけあって、物理現象とは違う特殊な効果を持っているガジェットが多い。

 それを物理現象特化にする事で、人工で出力だけでも再現、威力だけなら上回れるようにしているのが【ダーク・ガジェット】だ。

 

 もちろん、【ダーク・ガジェット】でも今のレイスちゃんみたいに特殊な現象を起こす能力持ちもいるにはいるけど……

 それもかなりのレアな能力だし、使えたとしてもかなりの修行や【ダーク・ガジェット】使いとしての経験を積み重ねなければいけない。

 

 今のクロス君は、威力は十二分にあるけれど、やっぱり【ダーク・ガジェット】デビューしたばかりだからか、物理現象特化の方向性しか出せていない。

 “セレクト・エッジ”は優秀だけど、あれ斬る対象を選んでいるって言う、物理現象の選択だからまだそこまで特別じゃないし。

 

「【ダーク・ガジェット】使いは、発現する能力が個人の資質に左右される以上、その一つを封じられたらかなりキツイ武器だ。だからこそ、ティアーもよく言ってるんだろう……」

「そう。“サブウエポン”が大事になってくる。“最近のヴィランは、武器二つ持ちがトレンド”だって……」

 

 この武器二つ。それはただ【ダーク・ガジェット】を二つ持つだけを指し示しているわけじゃない。

 武器の予備は大事と言う意味でもあるけど、それだけでなく……

 

 “特化した能力を二つは持て、とも言える

 

「──だからこその、【ダーク・ガジェット・プロキシー】」

 

 私は、そう呟いた。

 それに、カイちゃんは同意する。

 

「ああ。本人の資質によらない、別の能力の武器。単純に、自分の手数を増やすためにも便利だな」

「そうね。“レイスちゃんだって、持ってるし”」

 

 そう、レイスちゃんだって、【ディメンション・ロッド】以外の武器をちゃんと用意している。

 まあ、組み合わせる前提だけど……それだってレイスちゃんの攻撃手段に使える意義のある武器だ。

 

「レイスは、クロスの実力を確かめるために“徐々に本気を出している”ようだからな。そろそろ使うだろう」

「そうね。クロス君はこのままだと負けちゃうけど……」

「元からある手札を進化させるか、支給された【ダーク・ガジェット・プロキシー】を使いこなせるかで、勝負は決まるだろうな」

 

 そう、このテストはその意味もある。

 支給された【ダーク・ガジェット・プロキシー】で、自分にあったサブウエポンを見つけて使いこなす、と言う側面も。

 

「さて、まだまだ試合は長引きそうだな」

 

 そう言って、カイちゃんはヘルムの下でククッと軽く笑っていた……

 

 

 


 

 

 ★佐藤聖夜(さとうせいや)

 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 

 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。

 サンタクロース改め、サタン・クロス。

 

 今回やっと【ダーク・ガジェット】に慣れてきたと思ったら、その分の威力をそのまま返された男。

 ポテンシャルはある事は間違いないが、まだまだ使いこなせていないと思われている。

 

 

 

 ★天野涙(あまのるい)

 22歳

 168cm

 青髪

 混沌・善

 

 【ジャスティス戦隊】のブルー。

 兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。

 

 手数が優秀な女。

 状況対応能力だけなら、【カオス・ワールド】トップクラス。

 

 

 ★カイザー

 22歳

 172cm

 紫髪

 混沌・悪

 

【カオス・ワールド】のボス。

 ティアーの幼馴染み。

 

 戦闘能力まだ不明。

 一般兵たちには、力持ちと言われている?

 

 本人曰く、ティアー含め三幹部はどれも能力が優秀だな、と思っているらしい。

 

 

 ★レイス

 20歳

 162cm

 紅髪

 秩序・善

 

 三幹部の一人。お嬢様口調。

 通称、【次元のレイス】。

 

 物理現象特化になりやすい【ダーク・ガジェット】で、次元を繋げる能力が発現した女。

 持ち物の運搬にすごく頼られている。

 以前カイザーがレイスに運搬で負けるなと言ったのはこれが理由。

 

 




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