ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
おかげで活力になり、続きが書けました!
どうかお楽しみ下さい!
「……雰囲気が変わりましたわね」
ワタクシはアリーナの上空、ドーム状バリアのギリギリの位置から見下ろしながら、クロスさんを見つめてそう判断した。
会場を盛り上げようとするエンタメ精神から、敵を倒そうとする鋭い刃のような殺気……
それもまた、【ダーク・ガジェット】を扱う際には最適な精神の方向性の一つ。
先ほどは先ほどで戦いづらい戦法でしたが……ここからが、彼の暴力性の側面としての戦いでしょう。
これだけで彼を乱暴者、と評価する気はありません。人間にとって、自身に害あるものを排除しようとする側面は当たり前に持ち合わせていますから。
しかし、ワタクシが入隊試験で最も判断したい側面でもあるのが……今。
「さあ、どうくる気ですの?」
「………………」
……そう見下ろしていると、アリーナの地面で彼が“ビーチパラソル”を展開するのが見えた。
あれは、なるほど。先ほど見せてくれた空中移動の方法。
自分の傘に対して“飛ぶ斬撃”を当てて飛行する。
確かにそれなら、上空に避難したワタクシに対して接近は出来ますわ。
「けれど、もうタネは割れています。分かっているなら対処は容易いですわ」
ワタクシの所に来る前に、“ディメンション・ホール”で捕まえる。
それだけで、彼の攻撃はワタクシに届かなくなる。
しかしそれくらい、彼も想定出来ている筈。
一体どうするつもり……
──その時だった。
ワタクシから見て、ビーチパラソルを中心に“大爆発”。そして、轟音。
そして“高速で迫ってくるビーチパラソル”。
──は?
そう思考する間に、“目の前に来たクロスさん”。
「ッ?!!」
「──よう」
ッやられた!? 爆発を利用して、想定以上の速度で急接近された!?
見ると、片方の手に“黒刀”も握られている。
恐らく、“セレクト・エッジ”によるブーストと、通常プロキシの爆発による衝撃の二段ブースト! 自傷覚悟の超加速!!
それで想定以上の速度で接近された! むしろ勢いが強すぎて、ワタクシの目の前を通り過ぎて天井のバリアにぶつかっている!
けれど、ワタクシ自身天井の近くにいたせいで、彼と距離がそこまで離れた訳じゃ無い!!
一気に距離を積められた!
「喰らえ!!」
「っ!」
そう言って、ビーチパラソルを解除して落下して来た彼が、腰を捻って大きく振りかぶっている!
“セレクト・エッジ”が来る! けれど、ギリ回避できますわ!
そう思い、“ディメンション・ホール”を発動しようとすると……
視界が“色に染まった”。
「ッ?!」
ワタクシの視界が、“水色と白のチェック柄”しか見えなくなっていた。
一体何が……ッ?!! なッ?!
そう思う暇も無く、“ワタクシの胴体が締め付けられていく”。
何故!? 一体何が!?
……後から分かった事ですが。
この時のワタクシは、“複数の浮き輪を装備していた状態でした”
積み重なった浮き輪の中心に子供が入った事のある状態のような、まるで“ボンレスハム”みたいに。
唯一伸ばしていた腕だけが、拘束を逃れてはいましたが……
彼がやったことは至極単純。黒刀で必殺技を放つと見せかけて。
浮き輪のプロキシを起動して、“展開位置が丁度ワタクシがいる場所に重ねるように”スイッチを押しただけ。
それにより、浮き輪を拘束具代わりにした、と。
……言うのはたやすく、出現位置が固定されてると言っても、それを実戦で、しかも落下中に正確に──!??
「プレゼントだ」
「っ!?」
「いっぺん海でも行って遊んでこい!!! “セレクト・エッジィッ!!”」
「ッしまっ?!! があ!?」
ワタクシの混乱しているうちに、“衝撃が浮き輪越しにぶつかる”。
ワタクシが空中で立っている位置から、そのまま強い衝撃で押され、作った足場から落ちていく。
体は、“浮き輪で包まれたまま”。
「ま。海は海でも……“火の海”だけどな」
上で、そんな彼の呟きが聞こえた気がした。
──ッ!??
まずい、確かアリーナの地上は、元々1/4が炎上中だった筈!
そこに、さっきの二段ブーストで爆発させた分を合わせれば……“アリーナの半分近くが炎上している!?”
このまま火に落ちたら、ドレスが燃えて負ける!?
「っアアアアアアアぁぁぁぁ────────ッ!!!! “ディメンション・ホールゥッ!!!”」
ワタクシは空中で、最低限頭を囲っている浮き輪を外し、視界を確保。
ワタクシの真下に“穴”を開き、まだ燃えていない地上付近に転移して落下した。
ゴフっ! っと、体勢を整いきれず、浮き輪越しに背中から着地した形ですが、浮き輪とはいえ、そこそこの衝撃が加わって地味に痛かった。
と言うか、変な形での衝撃になったから逆に変に痛いですわ。
「ゲホ、ゴホッ!! や、やってくれましたわね!!」
ワタクシはなんとか立ち上がり、体に付いている浮き輪をなんとか全部取り外した。
そうしている内に、地上に彼が離れた位置で着地して来ていた。
よく見ると、彼の体があちこち煤けている。自爆同然の爆発加速をしたのだから、向こうもそれなりのダメージを負ったのでしょう。
「はー、さっすが三幹部。上手く着地すんのな」
「嫌味ですの!? いいえ、いいえ!! それより、聞きたい事があります!!」
そう、何よりも聞きたい事が、たった今出来た。
それは……
「何故、空中のあの時、“浮き輪ごとドレスを切らなかった”のですか!? それであなたが勝っていたでしょうに!!」
そうだ。空中に立っていて、浮き輪で視界も行動も封じられた状態。
あの状態なら、切断型の“セレクト・エッジ”で決着が付いていた筈だ。
「まさか、手を抜いてでもしていらっしゃるの!? だとしたら、あなたを見損ないますわ!! 評価を大幅に下げる事になります!!」
まさかワタクシに対して、舐めるなと言ったくせに、舐めプをしている?
だとしたら、大いにワタクシのプライドが傷つきました。
だから彼に強く追求し、そんな彼はふーん……と、割れたヘルムの一部から目線をワタクシに向けて……
「嘘だな」
「……は? 何がですの?」
「“勝ち確”って部分。だって、“あそこで斬ろうとしたら、
「……は?」
その言葉の意味が一瞬よく分からず、彼は続けて話を始めた。
“黒刀”の背を肩にポンっポンっと叩きながら。
「そもそも、この戦いの最中ずっと疑問に思ってたんだよ。三幹部とはいえ、“あまりにも回避が出来すぎてない?” って。途中何度かとっくに当たってもおかしくなかったのに、俺の攻撃を尽く回避し続けている。自画自賛っぽくなるが、俺自身そこまで自分が弱いつもりは無いんだよな」
「……っ」
「けれど、その回避。どうもそう言う“特別な能力って訳じゃない”感じがするんだよな。“ディメンション・ロッド”以外、あんたは武器を使ってない筈だし。……正直、俺は一つ心当たりがある。────“極限までの反復練習による、無意識の回避行動”。それがあんたの異常な回避能力の正体だ」
そう言って彼は、ビシッと“黒刀”をワタクシに向けて来た。
ヘルムの一部から見える目は、確信を持っているように。
「恐らく、カイザー……もしくは他の三幹部とか、ティアーと、模擬戦か何かで普段から特訓してるんだろ。多分、自分の命はもちろん、“自分のドレスに影響のある攻撃を何がなんでも回避する”、そんなルールの特訓を繰り返してるあたりか。試験に最適化する為に。違う?」
そう言った彼は一瞬だけ、ワタクシでは無く、観客席のカイザー様とティアーのいる位置に対して、目線を向けていた。
『……ふふふ、バレているな』
『はー……、よくそんな事見抜くわねー。後付けで頑張ってレイスちゃんに付けた癖なのに、大体の背景まで当てられちゃった』
そんなお二人は、むしろ関心したように彼を見てウンウンと頷いている。
それを見て、ワタクシも隠す必要は無いと判断し、素直に彼に肯定した。
「……ええ、その通りですわ。主にカイザーとティアー様に、そんな特訓を授けられていました」
「やっぱり。……ところで、あそこまでの回避能力、生半可な特訓じゃ身につかないと思うんだが、どれだけ厳しかったんだ? 命はともかく、“ドレスまで”含むなんて普通にやっても身につき辛いと思うんだが」
単純に疑問に思ったのか、口調の鋭さを緩めて、彼がそう聞いて来た。
あら、そんな事が気になりますの?
「ふふ、答えは単純、とってもシンプルですわ」
「うん」
「──“数百万はする高級ドレスを付けられて、回避の特訓をしてるだけ”ですわ」
「うん、……うん!?」
ふ、ふふ、ふふふふふッ……
今思い返しても、冷や汗が出ますわ。
普通の高級ドレスでも、せいぜい30万〜50万が相場ですのに。
それが最低倍以上の値段のドレスを毎度のように用意されていると。
「あなたに分かりますか? 一戦するたびに、最低3桁万円の金額がワタクシの未熟で飛んでいくと言う恐怖が。ええ、傷をつける度にカイザー様からそれはそれは丁寧に、“新しく用意しておいたぞ”、とポンっとオーダーメイド品を手渡される畏怖を」
しかも……しかもッ!!
「その全てがッ!! “カイザー様のポケットマネーから出されている”と言う恐れ多さを!!」
「は、はあ!?」
「分かりますか!? ワタクシが未熟であればあるほど、カイザー様がビンボーになって行くという恐怖!!! カイザー様にしてみれば微々たるものとは言え、事務作業を担当している身としてはその金額があっという間に飛んでいくという恐れが!! 酷い時は数千万が飛んでいった日もありましたわアアァ────ッ!!!」
「そ、その金額弁償とかどうなるんだよ!? カイザーは何て言ってる!?」
「何も言いませんわよ!! ただただ、“気にするな、我からの心からのプレゼントだ。存分に受け取るといい”とずっと無償で授け続けてくれてますわよッ!!」
「それ下手な代償ある奴より、よっぽど心にくる奴!! 俺の時といい、アイツいい性格してんなあ!?」
ワタクシの渾身の叫びに引いたのか、彼が一歩後ずさった。
ゼー、ハー、ゼー、ハー、……と、荒い息を整えた後、ワタクシは冷静になって話を続ける。
「……まあ、流石に試験では無く、実戦で命かかってる場合は普通に命取りになる為、あくまで“カイザー様から賜ったドレスを着ている場合のみ”という条件反射にはしておりますが」
「ということは、今着てるそれって……」
「ええ、お察しの通り、
「おいそれ、俺が斬ったら俺が弁償するって流れじゃ無いだろうなッ!? そんな最悪なトラップ仕掛けてんのかこの試験!?」
「する訳ないでしょう!? あくまでワタクシの責任! ワタクシの覚悟でこのドレスを着て来ただけですの!! 破れたら、それはワタクシ自身のせいですわ!!」
ですが! と、ワタクシは叫ぶ!
「それが一体何の関係があるんですの!! ワタクシの異常な回避理由が分かったところで、あなたになす術は無い筈!! 大した影響にはなりませんわ!!」
「いいや、“大アリ”さ」
「っ!」
そう言って、彼は調子を取り戻したのか、確信を持った目つきと態度でこちらを見つめて来ていた。
「あんたのその特訓は、凄く成功したんだろう。大成功だ。おかげで異常と言えるほど無意識の回避行動力が凄い……“良すぎる”程だ」
「……何が言いたいんですの!?」
「分からないか?」
そうして、彼は淡々と。
「──“精度が良すぎる”って言ってるんだよ。異常なほどドレスを庇うように無意識を鍛えたおかげで、“ドレスに影響が無い攻撃に対して、無意識が反応し辛い”」
「ッッ?!!」
「それを確かめる為に、空中で“非切断モード”の“セレクト・エッジ”を使ったら案の定、今まで一発もヒットしなかったアンタに浮き輪越しとは言え、クリーンヒットしやがった。つまり……」
そう言って、彼は“黒刀”をよく見えるように掲げ。
「──ドレスを切らない“セレクト・エッジ”に対して、アンタは反応が遅れる。“セレクト・エッジ”は、アンタに対して特攻になる」
「っ」
「決めてにはならなくとも、体勢を崩せれば十分。どうあがいても回避出来ない状況に追い込んで、そこでトドメをさせばいい。それがアンタへの攻略法だ」
『うっわ、クロス君あったまいいー!?』
『くっふふふ! まさかレイスに、そんな弱点を付けるとはな! あの必殺技が!』
その言葉に、ティアー様とカイザー様が。
関心したように声を上げたのが聞こえた。
「舐めないで下さいまし!!」
ワタクシは、そんな指摘を掻き消すようなつもりで大声で叫ぶ。
そんな……そんな程度で!!
「無意識に頼らずとも、攻撃を避ける手段だって特訓しております!! その程度のこと、対策していないとお思いで!!」
「ほーう? つまり“オート”から、“マニュアル”に切り替える事も出来ると。なるほどなるほど……じゃあ質問だ」
そう言って、彼は“黒刀”を振り上げる。
「俺が今から発動する“セレクト・エッジ”は、“切断する方”でしょうか? “切断しない方”でしょうか?」
「っ!?」
「“オート”を止めるっていうんなら、それはそれでいい。だったらシンプルに、さっさとドレスを斬るだけでいいからな。さて……」
そうして、彼はもう片方の手で、“浮き輪のガジェット”を起動した。
彼の目の前で、また浮き輪の山の壁が築き上げられる!
また、浮き輪を使って……!?
「あいにく俺は、不意打ち上等なタイプでな。もう素直に斬撃だけで必殺技は発動しねえよ。──アンタの思考リソースを奪って奪って、パンクした所にトドメを差してやる」
「世迷言を──ッ!!」
「さあ、クライマックスだ!! 準備はいいか──ッ!!」
☆★☆
『いいぞ、新人! やれー!』
『レイス様、頑張ってー!!』
『うわー、今の惜しい!!』
『あれ躱す!? 流石三幹部様!!』
『あ、レイス様がまた新人を捕まえた!!』
『だめだ、また傘で脱出された!?』
『浮き輪を拘束具代わりに使うって?!』
『今度俺もやってみたい!!』
『無理だろ、あんなんセルフで座標設定出来るか!?』
『レイス様四刀流やってるー!!』
『曲芸じみた戦いだな!? サーカス会場かな!』
『新人口に刀加えてるよー!!』
『海賊狩りでも目指してらっしゃる!?』
『アッハハハハハッ! 楽しー!! 二人とも頑張ってー!!』
『フフフフッ! 飲み物飲んでる暇も無いな!』
──こうして、あれから数十分。
ワタクシとクロスさんの攻防はずっと続いておりました。
この数十分の間に、出るわ出るわの新戦術。
大量の浮き輪で“穴”をぎゅう詰にして、一時的に使用不可にしてくるは序の口。
まさか傘を槍のように突き刺して来た後、傘を開いて引っ張って、ワタクシを引き寄せてトドメを刺してこようとした時はガチで焦りましたわ。
それでも何度か空中に飛ばしたり、あえて壁付近につなげて衝突させたりで徐々に彼にダメージを与えておりますが。
こちらも、非切断モードの“セレクト・エッジ”を何度かくらってしまい、あちこちズキズキとし始めておりますわ。
そして……
「おらあ! “セレクト・エッジィッ!!”」
「がッ!! クッ!?」
非切断型の“セレクト・エッジ”を、真正面から喰らいそうになってしまいました。
彼のいう通り、無意識の反射は遅れてしまった。
ワタクシはとっさに、両腕で攻撃から身を庇い、そして……
カラン、カランッ……
「しまッ!?」
両手の“ディメンション・ロッド”を落としてしまった!?
「トドメぇ────ッ!!!!」
「アアアアアぁぁぁぁ────ッ!! まだあぁ────ッ!!!」
ワタクシは、“条件反射”のほうで、予備の二つの“ディメンション・ロッド”で“穴”を出した。
出した先は……彼の“刀”の先。
“穴”の縁に、彼の刀が引っかかる!!
ガッ!!
「ッ!?」
「止めましたわ! これで──、──っ?!」
彼のもう片方の手に。
通常のプロキシのスイッチが、押される────
☆★☆
「────っはあ、っはあ、っはあ…………」
……。
…………。
………………。
……………………ふふ。
ふふふふふ。
うふふふふふっ!!
やりました、やってやりましたわ、“凌ぎ切りましたわ!!”
“上空”に寝っ転がっているワタクシは、そう喜んだ。
ここはアリーナのドーム状バリアの天井付近。
姿勢を起こし、ワタクシは真下を見下ろした。
──そこは、もはや地獄とも言えるほどだった。
アリーナの地面の3/4以上が炎に包まれている。
もはや火災現場と同等の状態。
その炎に包まれている一部から、彼が倒れ込むように現れた。
近距離で通常のプロキシーの暴発に、しかも二回も巻き込まれた。
ワタクシの攻防で何度か落下ダメージなども負っている為、もはや致命的なダメージな筈。
例え、仮にまだ動けたとしても……
「ゲホッ、ゴホッ……今度こそ、詰みですわ。最早あなたに、空中にいるワタクシにダメージを与える手段は無い」
そう、“通常のプロキシ”3つ、それを全て使い果たした。
もう二度と、先ほどのような自爆特攻のブーストは出来ない。
通常の傘と飛ぶ斬撃とのコンボだけでは、速度が足りない。
“ディメンション・ロッド”が二つしか残っていないとは言え、十二分に対処出来る。
対して、彼は地上で炎に囲まれている。
ただでさえ、近くの熱で火傷しそうなのに、あの蓄積ダメージ。
もし動けるなら、確かに彼にワタクシからトドメは刺しきれなさそうではあるが……それは彼からしても同じ事。
「ゴホッ、正直、試験でこのようなガン逃げ戦法はするつもりはありませんでしたが……」
空中で立っていれば、そりゃあ殆どの新人には攻略は不可能でしょう。
タイムアップまでここにいれば、何も出来ないでしょうから。
しかし、それはあくまでタイムアップ。勘違いされているかもしれませんが、新人の敗北条件は“諦めるか気絶”のみ。
タイムアップでは試験不達成なだけで、“ワタクシの勝ちでは無い”。
まあ制限時間内に達成出来ていないんだから、受験者側の負けだろうとも言えますが……ある意味、消極的なドローとも言えるでしょう。
だから本来、ここまではやるつもりは無かった。
ですが、彼の全力に当てられて、本気で最後にはこの手段をとるしか無かった。
「ゲホッゴホッ……ここまで、よくやりました。十分、評価に値します」
ワタクシは、下にいる彼に対して、そう呟いた。
彼の今の戦闘力は十分把握した。
ギリギリ引き分け……いえ、このような手段を取ってしまったワタクシの実質敗北と言えるでしょう。
今回の目的は達成した。“この程度なら、いざと言う時三幹部で何とかなる”。
今回のように、本気で大人気ない方法を使えば十分対処可能ですから。
ですから、安心なさい。
あなたを十分新人として扱い、手の届く範囲でなら好きにして構いませんから……
──すると、地面にいる彼が、ゆっくりと立ち上がった。
やはり、まだ動けましたか……ではやはり実質引き分け……
そう思っていると、彼が懐から何か取り出した。
例のマイクだ。
『……あー。今のでトドメを刺しきれなかったか』
そう彼の声が、アリーナ中に響く。
ワタクシも、マイクを取り出して聞こえるように声を出す。
『ゲホっ、ええ、残念です。決着は着きました』
『ああ、そうだな……』
『──“俺の勝ち”でな』
──は?
その言葉に、会場中がざわついた。
一体何を……!?
ワタクシは、とっさに自分のドレスに目を見渡した。
……傷は無い。向こうの勝利条件は達成していない!
『どういう意味ですの!? 嘘はやめなさい! ゲホっゴホッ!!』
強い言葉を言ったせいか、喉が……っ。
ずっと全力で戦ったせいか、呼吸が乱れている。
『ああ、悪い。確かに、“まだ”、だな。一応』
『ゲホッ!? まだ、何かするつもりですの!? これ以上あなたに取れる手段は無い筈です!! あったとしても、ワタクシが十分対処可能の範囲のはず!! ゲホ、ゴホッ!!!』
『おいおい、そんなに呼吸荒くして大丈夫か?』
誰のせいだと……!! ゲッホ、ゴッホッ!!!
喉が、いた……
──いや待て、何かおかしく無いですか?
いくら全力で戦ったとは言え、ここまで呼吸が荒く……というか、“咳がでます?”
『まだ気づかないか? おかしいな、一緒に“消火活動”した仲なんだけどな、ペーパーテストの時。人事部なら、“避難訓練”くらい想定してると思ったんだが……』
消火活動?
避難訓練?
火……────
────ッまさか?!!
『会場のみんなも知ってるだろう? 避難訓練で火事の時、“姿勢を低くして”移動するようにって言われた事ない? 今のレイスみたいな位置はもっての外だな』
彼はそう言って……
『そうだ。俺の目的は、これだった。そう……』
『──“煙による、酸欠だ”』*1
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
サンタクロース改め、サタン・クロス。
終わった。
★
22歳
168cm
青髪
混沌・善
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
座席からひっくり返っている。
★カイザー
22歳
172cm
紫髪
混沌・悪
【カオス・ワールド】のボス。
ティアーの幼馴染み。
腹筋が逝った。
★レイス
20歳
162cm
紅髪
秩序・善
三幹部の一人。お嬢様口調。
通称、【次元のレイス】。
ただいま、火事の中、天井付近に、いる。
しかもバリアで、ドーム状。
感想、評価があるととても嬉しいです!
お気に入り登録もしてもらえると、励みになります!
次回で決着、クロス君の解説です!